行政書士による「権利擁護」とは?支援できる分野から具体的な業務の例、費用の目安まで解説

行政書士による「権利擁護」とは

権利擁護」とは、広い意味では、高齢者や障がいのある方、子どもなど、自分の意思を十分に表明したり、権利を主張したりすることが難しい人々が、その人らしく尊厳を持って生活できるよう支援する取り組みを指します。具体的には、本人の意思や利益を尊重しながら、生活上の困りごとや不利益が生じないように支えたり、必要に応じてその意思を社会や行政に伝えたりする活動が含まれます。福祉や法律の分野では、こうした取り組みを通じて、社会的に弱い立場に置かれやすい人々の権利を守ることが重要視されています。

一方、行政書士は、行政書士法に基づき「官公署に提出する書類」「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」を作成する専門家です。建設業許可や飲食店営業許可などの許認可申請をはじめ、契約書や内容証明などの権利義務に関する文書、議事録や各種報告書などの事実証明に関する文書の作成を通じて、個人や企業の活動を支える役割を担っています。これらの文書は、行政手続きの円滑化だけでなく、権利関係を整理したり、事実関係を明確にしたりするうえで重要な意味を持っています。

では、こうした行政書士の業務と「権利擁護」はどのように結びつくのでしょうか。2021年6月4日施行の改正行政書士法では、同法第1条の目的規定に「国民の権利利益の実現に資することを目的とする」という文言が新たに加えられました。これは、行政書士が単に書類を作成する専門家にとどまらず、行政手続きや文書作成を通じて国民の権利利益を守る役割を担う存在であることを明確にしたものといえます。

さらに国際的には、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)において、「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」という理念が掲げられました。社会の中で声を上げにくい人々の権利や利益を守り、すべての人が尊厳を持って暮らせる社会を実現することが、世界的な共通目標となっています。

こうした背景を踏まえると、行政書士による権利擁護とは、許認可申請や各種文書作成、行政手続きのサポートなどを通じて、多様な人々の声や意思を行政や社会の仕組みに届け、すべての人がその人らしく生きることをを支える活動であるといえるでしょう。行政書士は、日常生活や事業活動のさまざまな場面で必要となる文書作成や手続きを通じて、人々の権利を守る役割を担っているのです。

行政書士が具体的にどのような分野でどのような支援を行っているのかについては、次の項目で詳しく解説します。

 

権利擁護に関する行政書士の業務の例

行政書士による権利擁護の活動は、高齢者や障がい者、外国人、LGBT等のマイノリティ、子どもや女性など、さまざまな立場の人々が安心して生活し、自らの意思を実現できるよう支援する形で行われています。ここでは、代表的な分野ごとに行政書士が関わる業務の例を紹介します。

 

高齢者・障がい者分野

高齢者や障がいのある方の権利擁護の分野では、将来の生活や財産管理に関する法的備えを整える支援が重要になります。行政書士は、相続が発生した際の手続きを円滑に進めるための「遺産分割協議書」や、本人の意思を反映した「遺言書」の作成支援を行ったりすることで、財産に関するトラブルを未然に防ぐ役割を担います。また、認知症などで判断能力が低下した場合に財産管理や生活支援を行うための「任意後見契約」の作成支援も、権利擁護の観点から重要な業務の一つです。

さらに、福祉サービスの提供体制を整える分野でも行政書士が関わる場面があります。例えば、老人ホームや老人福祉センターの設置に関する届出手続き、介護タクシー事業を行うための許可申請など、高齢者や障がい者の生活を支える事業の行政手続きをサポートします。また、社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO法人)の設立支援を通じて、地域福祉を支える団体の活動基盤づくりに関わることも、行政書士による権利擁護活動の一例といえるでしょう。

 

外国人分野

外国人に関する権利擁護の分野では、日本で生活し働くための在留資格に関する手続きが重要な役割を占めます。

在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請などの入管手続きでは、多くの書類を準備する必要があります。行政書士は、これらの申請書類の作成や添付資料の作成・収集等を通じて手続きを支援することができます。その中でも、出入国在留管理庁に届出を行った「申請取次行政書士」は、本人に代わって入管へ申請書類を提出することができるため、原則として申請人本人の窓口出頭が免除されるというメリットがあります。

また、日本国籍の取得を希望する人に対する帰化申請の支援も、行政書士が関わる代表的な業務です。帰化申請では、身分関係や生活状況を説明するために数多くの資料の作成・収集が求められますが、行政書士はこれらに対するサポートを行うこともできます。

さらに、外国人が日本で事業を始める場合には、会社設立の準備や営業許可申請などの起業支援を行うことで、安定した生活基盤を築くためのサポートを行うこともあります。

 

LGBT等マイノリティ分野

LGBTなどの性的マイノリティの方々にとっては、法律上の家族関係が十分に整備されていないこともあり、将来の生活や医療、財産管理に関する備えを文書として残しておくことが重要になります。行政書士は、パートナーシップ関係にある当事者同士の権利や役割を明確にするための「パートナーシップ合意契約書」の作成を支援するほか、財産の承継について意思を残すための遺言書作成の支援を行うことができます。

また、将来的に認知症や病気等で判断能力が低下した場合に備えた「任意後見契約書」の作成支援や、死亡後の手続きをパートナーや第三者に委任する「死後事務委任契約書」の作成なども、将来の不安を軽減するための重要な手段となります。これらに加えて、「医療に関する意思表明書」の作成を通じて、自分の治療方針についての意思を明確にしておくケースもあります。行政書士は、本人の家族関係や生活状況、将来の希望などを確認しながら、状況に応じてこれらの文書を作成することにより、当事者の意思が尊重される環境づくりを支援することができます。

さらに、外国人のパートナーが日本に滞在する場合には、在留資格に関する手続きを支援することで、生活基盤の安定につなげることも行政書士の役割の一つです。

 

子ども・女性分野

子どもや女性に関する分野では、子育て支援や福祉サービス事業の許認可申請を支援する形で、行政書士が権利擁護に関わる場面があります。例えば、保育園や認可外保育施設の開設手続きでは、行政への届出や必要書類の作成をサポートすることで、地域における子育て支援の環境づくりに貢献します。また、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業の指定申請を支援することにより、障がいのある子どもや家族が必要な支援を受けられる体制づくりを後押しします。

さらに、風俗営業許可申請は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的とした制度であり、適切な手続きを通じて社会秩序を守る役割を持っています。こうした手続を専門家として支援することも、広い意味での権利擁護に関わる活動といえるでしょう。

また、女性の起業を支援する場面では、会社設立の準備や各種営業許可申請をサポートすることで、社会参加や経済的自立を後押しする役割も果たしています。

 

行政書士に依頼する場合の費用の目安

行政書士に依頼する費用は、手続きの種類や必要となる資料の量などによって大きく変動します。また、行政書士報酬とは別に、収入印紙代や登録免許税、公証人手数料などの法定費用が必要となる場合もあります。

ここでは、権利擁護に関連する代表的な手続きについて、行政書士費用のおおよその目安と主な法定費用(2026年時点)を表にまとめました。なお、実際の費用は地域や事務所ごとの料金体系によって異なるため、正式な金額は見積もりを取って確認するようにしてください。

分野 手続きの種類 行政書士費用(目安) その他の費用(法定費用など)
高齢者・障がい者分野 遺産分割協議書の作成 5~10万円程度 戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、郵送費など
遺言書の作成 5~15万円程度 公正証書遺言の場合は、公証人手数料など数万円程度
任意後見契約の作成 8~15万円程度 公証人手数料約1~2万円、登記手数料2600円、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)など
老人ホーム・老人福祉センターの設置に関する届出手続 30~100万円程度 行政への申請手数料、図面作成費、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
介護タクシー事業の許可申請 15~40万円程度 登録免許税(3万円)、車両関係費用、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
社会福祉法人の設立 100~200万円程度 戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
特定非営利活動法人(NPO法人)の設立 15〜25万円程度 戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
外国人分野 在留資格認定証明書交付申請 8~15万円程度 各種証明書取得費用、翻訳費用など
在留資格変更許可申請 8~15万円程度 手数料(6千円)、各種証明書取得費用、翻訳費用など
在留期間更新許可申請 5~10万円程度 手数料(6千円)、各種証明書取得費用、翻訳費用など
永住許可申請 10~20万円程度 手数料(1万円)、各種証明書取得費用、翻訳費用など
帰化申請 15~30万円程度 各種証明書取得費、翻訳費用など
起業支援 10~30万円程度 株式会社の場合:定款認証手数料(3~5万円程度)、登録免許税15万円~
合同会社の場合:登録免許税(6万円)
営業許可などの許認可申請 10~30万円程度 許認可申請手数料(手続きの種類により異なる)、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
LGBT等マイノリティ分野 パートナーシップ合意契約書の作成 5~10万円程度 公正証書化する場合は公証人手数料など数万円程度
任意後見契約の作成 8~15万円程度 公証人手数料約1~2万円、登記手数料2600円、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)など
死後事務委任契約書の作成 5~10万円程度 公正証書化する場合は公証人手数料など数万円程度
医療に関する意思表明書の作成 3~8万円程度 公正証書化する場合は公証人手数料など数万円程度
子ども・女性分野 認可保育園の開設手続き 100~200万円程度 図面作成費、建築確認申請費、消防関係手続費、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
認可外保育施設の開設手続き 8~15万円程度 図面作成費、建築確認申請費、消防関係手続費、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
障害福祉サービス事業の指定申請 30~100万円程度 図面作成費、建築確認申請費、消防関係手続費、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
風俗営業許可申請 15~30万円程度 申請手数料(2万4千円)、図面作成費、戸籍・住民票等の取得費用(数千円~)、各種証明書取得費用など
起業支援 10~30万円程度 株式会社の場合:定款認証手数料(3~5万円程度)、登録免許税15万円~
合同会社の場合:登録免許税(6万円)

 

まとめ

行政書士による権利擁護の活動は、特定の制度や手続きに限られるものではなく、高齢者・障がい者、外国人、LGBT等のマイノリティ、子どもや女性など、さまざまな立場の人が自分らしく生活できる社会を支える重要な役割を担っています。

行政書士は、官公署に提出する書類の作成や各種契約書の作成などを通じて、権利利益の実現をサポートする専門家です。法律や手続きに関する知識を活かしながら、誰もが安心して社会制度を利用できる環境づくりに貢献していくことが、行政書士の重要な役割と言えるでしょう。

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