法定後見と任意後見の違いとは?利用場面から手続きの流れ、費用まで行政書士が解説

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない人について、財産管理や契約手続きを支援するための制度です。本人の権利や財産を守りながら、その人らしい生活を続けられるように支えることを目的としています。

私たちは生活の中で、預貯金の管理、介護サービスの利用、施設への入所、不動産の処分など、さまざまな契約や手続きを行います。また、相続が発生した場合には、遺産分割協議への参加が必要になることもあります。しかし、判断能力が低下すると、契約内容を十分に理解できなかったり、必要な手続きを自分だけで進められなかったりすることがあります。また、悪質な訪問販売や詐欺などによって、不利益な契約を結んでしまうおそれもあります。

成年後見制度では、このような人に代わって手続きを行ったり、本人が行う法律行為を支援したりする人を契約によって定めます。具体的な支援内容や権限は、本人の判断能力の程度や財産の状況などにより異なり、家庭裁判所の判断や契約内容に基づいて決められます。

また、成年後見制度は、大きく法定後見制度」任意後見制度」の2つに分けられます。

法定後見と任意後見では、利用を検討する時期、後見人の選ばれ方、与えられる権限、手続きの流れなどに違いがあります。次章以降では、成年後見制度が利用される具体的な場面や、法定後見と任意後見の違いについて詳しく解説します。

 

成年後見制度の利用場面

最高裁判所が公表した「成年後見関係事件の概況」によると、令和7年12月末時点における成年後見制度全体の利用者数は、25万9,901人です。前年の25万3,941人から約2.3%増えており、制度を利用する人は増加傾向にあります。

制度利用の背景として最も多いのは認知症です。令和7年中に後見開始、保佐開始、補助開始または任意後見監督人選任が認められた事件では、開始原因の約61.3%を認知症が占めています。次いで、知的障害約9.6%統合失調症約9.3%高次脳機能障害約4.4%となっています。このほか、発達障害、うつ病、双極性障害、アルコール依存症、てんかんによる障害などをきっかけとして利用される場合もあります。

利用者の年齢を見ると、高齢者の割合が大きいことも特徴です。令和7年中に制度開始等が認められた事件では、本人が65歳以上のケースが、男性では約71.3%、女性では約85.8%を占めています。特に女性は80歳以上が約63.1%と最も多く、男性でも80歳以上が約34.5%、70歳代が約28.1%となっています。

一方で、20歳未満から50歳代までの利用者もいます。知的障害や精神障害などによる支援は、高齢になってから突然必要になるとは限らず、本人の生活状況や家族環境の変化に応じて検討されます。たとえば、これまで財産管理を担っていた親が高齢になり、障害のある子の将来を考えて成年後見制度を利用するケースもあります。

成年後見制度を利用する具体的な動機として最も多いのは、預貯金等の管理や解約です。令和7年の統計では、成年後見関係事件の主な申立ての動機として、全体の約93.4%が「預貯金等の管理・解約」を挙げています。本人名義の口座から生活費や施設費を引き出したい場合でも、家族であるという理由だけで自由に手続きできるとは限りません。そのため、本人を正式に代理する権限を得る目的で、成年後見制度が利用されることがあります。

次に多いのが身上保護で、全体の約74.2%です。身上保護とは、本人の生活、医療、介護、福祉に関する契約や手続きを行い、本人が適切なサービスを受けられるよう支援することをいいます。具体的には、介護サービスの利用契約、福祉施設への入所契約、入院手続き、医療費や施設利用料の支払い、要介護認定に関する手続きなどが挙げられます。

このほか、申立ての動機としては、介護保険契約約45.7%不動産の処分約36.3%相続手続き約25.6%保険金の受取り約17.8%となっています。たとえば、介護施設への入所費用を確保するために本人所有の不動産を売却したい場合や、本人が相続人となったものの遺産分割協議に参加することが難しい場合などに、成年後見制度が必要になることがあります。

また、悪質な訪問販売などによる不利益を防止・回復することも、成年後見制度の役割の一つです。利用する制度や本人の判断能力の程度によっては、本人が単独で行った一定の法律行為について、後見人等が取り消せる場合があります。

なお、成年後見制度の必要性は、病名や年齢だけで判断するものではありません。本人が預貯金や支払いを管理できているか、契約内容を理解して意思を示せるか、家族による支援だけで手続きを進められるかなどを総合的に考えます。

本人の判断能力に不安があっても、すぐに成年後見制度を利用しなければならないとは限りません。日常生活自立支援事業、金融機関の代理人制度、家族信託など、状況に応じて他の支援方法が適している場合もあります。

 

法定後見と任意後見の比較

先ほども少し触れましたが、成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」に分類されます。これらの2つの制度は、利用を検討する時期、後見人の選び方、後見人に与えられる権限などには大きな違いがあります。

両制度の主な違いを整理すると、次のとおりです。

比較項目 法定後見制度 任意後見制度
主な利用場面 本人の判断能力がすでに不十分になっている場合 将来の判断能力低下にあらかじめ備えたい場合
利用の準備をする時期 判断能力が低下した後 契約内容を理解できる判断能力があるうち
制度の種類 後見・保佐・補助の3類型 任意後見契約の内容に応じて支援範囲を決める
支援する人の正式名称 成年後見人/保佐人/補助人 任意後見人
支援する人の選び方 家庭裁判所が選任する
(候補者を挙げられるが、希望どおりに選任されるとは限らない)
本人が任意後見受任者を選んで契約する
(本人が信頼できる人を契約相手として選べる)
支援する人の権限 法律や家庭裁判所の審判によって決まる 任意後見契約で定めた代理権の範囲に限られる
本人の行為に対する取消権 類型に応じて認められる 任意後見人には取消権がない
契約の方法 家庭裁判所に開始の審判を申し立てる 公正証書によって任意後見契約を締結する
支援が始まる時期 家庭裁判所による開始の審判が確定した後 家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後
監督人の有無 家庭裁判所が必要と判断した場合に選任される 任意後見を開始するために必ず選任される
家庭裁判所の関与 後見人等の選任や権限の付与、後見事務の監督などを行う 任意後見監督人を通じて後見事務を監督する

法定後見と任意後見の大きな違いの一つが、後見人の選任方法です。任意後見では、本人が信頼できる家族、知人、専門家、法人などを任意後見受任者として選べます。

これに対し、法定後見では、最終的に誰を成年後見人等に選任するかを家庭裁判所が判断します。申立ての際に家族などを候補者として挙げることはできますが、本人の財産額、家族関係、候補者の適格性などを考慮した結果、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選任される場合もあります。

また、法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて後見」「保佐」「補助の3つに分かれています。それぞれの違いは、次のとおりです。

類型 対象となる本人の状態 支援する人 主な権限
後見 判断能力が欠けているのが通常の状態で、多くの契約や手続きを一人で行うことが難しい 成年後見人 原則として広い代理権と取消権を持つ。ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せない
保佐 判断能力が著しく不十分で、借金、不動産の売買、相続の承認・放棄などの重要な法律行為を一人で行うことが難しい 保佐人 民法で定められた重要な行為について同意権・取消権を持つ。必要に応じて家庭裁判所から特定の代理権を付与される
補助 判断能力が不十分ではあるものの、日常生活の多くは自分で行うことができ、特定の手続きに支援が必要 補助人 本人の申立てまたは同意を前提として、家庭裁判所が定めた特定の行為について同意権・取消権・代理権を持つ

一方、任意後見人の権限は、本人の判断能力の程度によって自動的に決まるものではありません。公正証書で作成した任意後見契約に記載された代理権の範囲によって決まります。

たとえば、預貯金の管理、公共料金の支払い、介護サービスの契約、不動産の管理などを代理権目録に定めておけば、任意後見人は任意後見開始後にその範囲で本人を代理できます。反対に、契約に記載されていない行為については、原則として任意後見人であっても代理できません。

法定後見と任意後見のどちらが適しているかは、本人の現在の判断能力によって大きく変わります。すでに重要な契約や財産管理を一人で行うことが難しい場合は、法定後見制度が主な選択肢となります。本人に十分な判断能力があり、将来の支援者や任せる内容を自分で決めたい場合は、任意後見制度を検討できます。

 

「監督人」とは

成年後見制度における監督人は、後見人等が本人のために適切に事務を行っているかを確認し、必要に応じて家庭裁判所へ報告する役割を担います。

ただし、法定後見と任意後見では、監督人が選任される条件や制度上の位置づけが異なります。ここでは、それぞれの監督人の役割について見ていきましょう。

 

法定後見における監督人

法定後見における監督人には、制度の類型に応じて、成年後見監督人保佐監督人補助監督人があります。それぞれ、成年後見人、保佐人、補助人の事務を監督します。

法定後見では、家庭裁判所が直接、成年後見人等の事務を監督するのが基本です。そのため、必ず監督人が選任されるわけではなく、本人の財産額、財産管理の複雑さ、親族間の関係、後見人候補者と本人との関係などを踏まえ、家庭裁判所が必要と判断した場合に選任されます。

たとえば、本人が多額の預貯金や複数の不動産を所有している場合、親族間で本人の財産管理をめぐる意見の対立がある場合、親族が後見人等に選任されたものの専門的な支援が必要な場合などには、監督人が選任されることがあります。

監督人には、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職や法人が選任されるのが一般的です。誰を監督人にするかは家庭裁判所が決めるため、本人や家族が希望した人が必ず選任されるわけではありません。

法定後見における監督人の主な役割は、成年後見人等から定期的に報告を受け、財産管理や身上保護に関する事務が適切に行われているかを確認することです。必要に応じて、預貯金の出入金、不動産の管理状況、本人の生活費や施設利用料の支払いなどを確認します。

成年後見人等の事務に疑問がある場合には、監督人が説明や資料の提出を求めます。重大な問題が確認された場合には家庭裁判所へ報告し、家庭裁判所が成年後見人等に対して指示を出したり、事情によっては解任を検討したりすることがあります。

また、本人と成年後見人等との利益が対立する法律行為では、監督人が本人を代理する場合があります。

たとえば、本人と成年後見人がともに同じ被相続人の相続人となり、遺産分割協議を行う場面では、成年後見人が自分の利益と本人の利益の両方を代表することになります。このような利益相反が生じる場合、成年後見監督人が選任されていれば、監督人が本人を代理できます。監督人が選任されていない場合には、原則として家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。

なお、監督人が選任された場合、その報酬は家庭裁判所が本人の財産額や監督事務の内容などを考慮して決め、原則として本人の財産から支払われます。

 

任意後見における監督人

任意後見における監督人は、任意後見監督人と呼ばれます。任意後見監督人は、任意後見人が契約で定められた内容に沿って、本人のために適切に事務を行っているかを監督する人です。

任意後見制度では、任意後見監督人の選任が制度開始の条件となっているため、本人と任意後見受任者が公正証書で任意後見契約を締結しただけでは支援は始まりません。

契約を締結した後、認知症などによって本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約の効力が生じます。この時点で任意後見受任者が正式に任意後見人となり、契約で定められた範囲の代理事務を開始します。

つまり、法定後見では必要に応じて監督人が選任されるのに対し、任意後見では、任意後見監督人が選任されなければ制度そのものが始まらないという違いがあります。

任意後見監督人は、任意後見人から財産目録、収支状況、預貯金通帳の写し、契約書などの提出を受け、本人の財産管理や生活・療養に関する手続きが契約内容に沿っているかを確認します。そして、監督の状況を家庭裁判所へ報告します。

また、本人と任意後見人の利益が相反する法律行為については、任意後見監督人が本人を代理することもあります。たとえば、本人と任意後見人との間で財産の売買や贈与を行う場合など、双方の利益が対立する可能性がある場面が該当します。

なお、任意後見監督人は家庭裁判所が選任します。監督の独立性を確保する必要があるため、弁護士、司法書士、社会福祉士などの第三者である専門職や法人が選ばれることが多くなっています。任意後見人との利害関係を避けるため、任意後見人本人や、任意後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹などは、監督人になることができません。本人が任意後見監督人の候補者を希望していたとしても、最終的には本人の心身の状態、財産状況、候補者の適格性などを踏まえて家庭裁判所が判断します。

 

成年後見制度の利用の流れ

成年後見制度の利用手続きは、法定後見と任意後見で大きく異なります。

法定後見では、本人の判断能力がすでに不十分になった後に家庭裁判所へ申立てを行います。一方、任意後見では、本人の判断能力が十分にあるうちに契約を締結し、将来判断能力が低下した段階で任意後見を開始します。

ここでは、それぞれの基本的な流れを確認しておきましょう。

 

法定後見制度

法定後見制度を利用する場合は、まず本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、後見・保佐・補助の開始を申し立てます。申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などです。

申し立てに当たっては、一般的に、申立書、本人の戸籍謄本、住民票、診断書、財産目録、収支予定表、預貯金や不動産に関する資料などを準備します。必要書類や書式は家庭裁判所によって異なる場合があるため、事前に案内を確認しておきましょう。

申し立て後は、家庭裁判所が本人の判断能力、生活状況、財産の内容、後見人等の候補者などを調査します。本人、申立人、候補者との面接や照会が行われるほか、必要に応じて医師による鑑定が実施されることもあります。

調査が終わると、家庭裁判所が後見・保佐・補助のいずれを開始するかを審判し、同時に成年後見人、保佐人または補助人を選任します。申立書に候補者を記載していても、その人が必ず選任されるわけではありません。

審判が確定すると、後見人等による支援が始まります。選任された後見人等は、本人の財産や生活状況を確認し、財産目録や収支予定表を家庭裁判所へ提出します。その後も、財産管理や身上保護に関する事務を行い、定期的に家庭裁判所へ報告します。

申し立てから審判までの期間は、一般的には1~2か月程度が目安ですが、鑑定が行われる場合や、調査に時間を要する場合には、さらに長くなることがあります。

 

任意後見制度

任意後見制度では、本人の判断能力が十分にあるうちに、将来任意後見人になってもらう人と、任せる事務の内容を決めます。任意後見人には、家族や知人のほか、行政書士、弁護士、司法書士などの専門家や法人を選ぶこともできます。

契約内容が決まったら、公証役場で任意後見契約公正証書を作成します。任意後見契約は、必ず公正証書の形で締結しなければなりませんので、注意しましょう。契約後は、公証人の嘱託によって任意後見契約の内容が登記されます。

ただし、この時点では任意後見人による支援は始まりません。その後、認知症などによって本人の判断能力が不十分になった場合に、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見受任者が、家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申し立てを行います。

家庭裁判所は、本人の判断能力や生活状況、任意後見受任者の適格性などを確認したうえで、任意後見監督人を選任します。任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が生じ、任意後見受任者が正式に任意後見人となります。

任意後見の開始後は、任意後見人が契約で定められた代理権の範囲内で、預貯金の管理、各種料金の支払い、介護サービスや施設入所に関する契約などを行います。そして、財産管理や支援の状況について任意後見監督人へ報告し、その監督を受けます。

 

成年後見制度の利用にかかる費用

成年後見制度の利用にかかる費用は、法定後見と任意後見で異なります。

法定後見では、家庭裁判所への申立てに必要な手数料や郵便料、診断書などの取得費用がかかります。一方、任意後見では、公証役場で任意後見契約公正証書を作成する費用に加え、本人の判断能力が低下した後に任意後見監督人の選任を申し立てる費用が必要です。

さらに、制度の利用開始後は、後見人や監督人に対する報酬が継続的に発生する場合があります。専門家に契約書の作成支援や申立手続きを依頼するときは、その報酬も見込んでおきましょう。

 

手数料など

法定後見制度を利用する場合、後見・保佐・補助の開始を家庭裁判所に申し立てます。後見開始の申立てに必要となる主な費用は、次のとおりです。

  • 申立手数料800円
  • 登記手数料2,600円
  • 家庭裁判所との連絡に使用する郵便料
  • 本人の戸籍謄本や住民票などの取得費用
  • 医師の診断書作成料

保佐や補助の申立てと併せて、保佐人や補助人に代理権または同意権を付与する審判を申し立てる場合には、内容に応じて追加の申立手数料が必要になることがあります。

郵便料は家庭裁判所によって異なるため、申立先となる本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ確認してください。また、家庭裁判所が本人の精神状態をより詳しく確認する必要があると判断した場合には、医師による鑑定が行われ、鑑定費用の予納を求められることがあります。

任意後見制度では、まず公証役場で任意後見契約公正証書を作成します。任意後見契約公正証書の作成にかかる主な費用は、次のとおりです。

  • 公正証書作成手数料:1契約につき1万3,000円
  • 法務局へ納める収入印紙代2,600円
  • 登記嘱託手数料1,600円
  • 郵便料
  • 公正証書の正本や謄本の交付手数料

公正証書を書面で発行する場合は枚数に応じた交付手数料がかかり、電磁的記録で発行する場合は1通ごとの手数料が必要です。本人が病院や介護施設などに入所しており、公証役場へ出向くことが難しい場合には、公証人の出張に伴う病床執務加算、日当、交通費なども発生します。

任意後見契約を締結した後、本人の判断能力が不十分になった場合には、家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行います。この際にも、次のような費用がかかります。

  • 申立手数料800円
  • 登記手数料2,600円
  • 郵便料
  • 診断書や戸籍謄本などの取得費用

 

後見人・監督人に支払う報酬

法定後見における成年後見人、保佐人、補助人の報酬は、本人や家族が自由に決めて支払うものではありません。後見人等が家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行い、家庭裁判所が財産額や事務内容、後見事務に要した時間や負担などを考慮して金額を決定します。

一般的な後見事務を行った場合の基本報酬は、月額1~2万円程度とされる例があります。ただし、管理する財産が多い場合や、不動産の売却、遺産分割、訴訟対応などの特別な事務を行った場合には、報酬が増額されたり、別途付加報酬が認められたりすることがあります。親族が成年後見人等に選任された場合でも、家庭裁判所に申し立てれば報酬が認められる可能性があります。反対に、親族後見人が報酬を希望せず、申立てをしなければ報酬は発生しません。

法定後見で成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人が選任された場合には、監督人にも報酬が発生します。一般的な目安としては、月額1~2万円程度とされることが多いですが、本人の財産額や監督事務の内容によって増減することがあります。監督人の報酬も家庭裁判所が決定し、原則として本人の財産から支払われます。

一方、任意後見人の報酬は、法定後見とは異なり、本人と任意後見受任者が任意後見契約の中で定めます。家族や親族に依頼する場合は無報酬とすることもできますが、行政書士、弁護士、司法書士などの専門家に依頼する場合は、月額報酬を設定するのが一般的です。

専門家に任意後見人を依頼する場合の報酬は、月額2~3万円程度が一つの目安ですが、管理財産の額、不動産や預貯金口座の数、介護施設や医療機関との調整頻度などによって変わります。

任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所が決定しますが、目安としては月額1~2万円程度とされることが多いです。任意後見では監督人の選任が制度開始の条件となるため、家族が任意後見人となり無報酬で事務を行う場合でも、監督人への報酬は原則として必要です。

 

専門家に依頼する場合の費用

成年後見制度について専門家へ依頼する場合の費用は、依頼先の資格と依頼内容によって異なります。

行政書士には、主に任意後見制度に関する相談、本人の希望や財産状況の整理、任意後見契約の原案作成、公証役場との調整、必要な戸籍謄本や住民票などの収集を依頼できます。

任意後見契約と併せて、判断能力が低下する前から財産管理を依頼する財産管理等委任契約、定期的に本人の生活状況を確認する見守り契約、死亡後の葬儀や各種解約手続きを任せる死後事務委任契約などの作成支援を依頼することもあります。

行政書士に任意後見契約の原案作成や公証役場との調整を依頼する場合の報酬は、おおむね5~15万円程度が目安です。複数の契約を同時に作成する場合や、管理財産が多い場合、代理権の内容が複雑な場合は、これより高くなることがあります。

ただし、行政書士が対応できる業務範囲には注意が必要です。行政書士は、任意後見契約などの権利義務に関する書類の作成支援や、公証役場へ提出する書類の準備などを行えますが、家庭裁判所に提出する法定後見開始申立書や任意後見監督人選任申立書を、依頼者のために業務として作成することはできません。また、家庭裁判所における手続きの代理や、裁判官・家庭裁判所調査官とのやり取りを本人に代わって行うこともできません。

法定後見の申立書類作成を専門家に依頼したい場合は、司法書士または弁護士への依頼を検討します。

司法書士は、家庭裁判所へ提出する後見・保佐・補助開始申立書や添付書類の作成を依頼できる専門家です。本人や家族から事情を聞き取り、申立書、申立事情説明書、財産目録、収支予定表などの作成を支援します。司法書士へ法定後見の申立書類作成を依頼する場合の報酬は、一般に8~20万円程度が目安ですが、財産や親族関係の複雑さによって異なります。

ただし、司法書士が家庭裁判所の成年後見開始事件について、申立人を代理して審判手続きのすべてを行えるわけではありません。司法書士の中心的な業務は裁判所提出書類の作成であり、原則として申立人本人が手続きの当事者となります。

弁護士には、家庭裁判所へ提出する申立書類の作成だけでなく、申立代理人として法定後見の申立手続きを依頼できます。親族間に対立がある場合、本人の財産をめぐって紛争がある場合、遺産分割や損害賠償請求などの法的問題を併せて解決する必要がある場合は、弁護士への依頼が適しています。

弁護士に法定後見の申立てを依頼する場合の報酬は、一般に10~30万円程度が一つの目安ですが、事案が複雑な場合はこれを超えることもあります。相談料、着手金、実費などが別に定められている場合もあるため、依頼前に見積書を確認しましょう。

 

まとめ

成年後見制度は、判断能力が不十分な人の財産や権利を守り、生活に必要な契約や手続きを支援するための制度です。法定後見と任意後見では、利用を始める時期や後見人の選び方、与えられる権限などが異なるため、本人の現在の判断能力や希望に合わせて選ぶ必要があります。

成年後見制度は、一度利用を開始すると、原則として本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。後見人等の報酬が継続的に発生することもあるため、目の前の手続きを進めることだけでなく、将来の生活や財産管理への影響まで考えて検討することが大切です。

どの制度が適しているか判断しにくい場合や、任意後見契約の内容を具体的に決めたい場合には、行政書士をはじめ、依頼内容に応じて司法書士や弁護士などの専門家へ相談することも検討してみてください。

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