行政書士に依頼する費用の目安は?サービスごとの料金相場を紹介

行政書士とは

行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格を有する専門家です。官公庁への申請書類や権利・義務関係、事実証明に関する書類の作成・提出を担うほか、さまざまな法務面で地域社会を支えています。

行政書士は2023年時点で全国に約5万人が登録しており、身近な専門家として幅広い分野で活躍しています。

 

行政書士の業務

行政書士は幅広い分野の業務を担っていますが、それらの業務は主に以下の3つに分類することができます。

官公庁に提出するための書類の作成

行政書士は、官公庁に提出する建設業許可申請や飲食店営業許可申請など、主に許認可関連の書類を作成し、必要に応じて代理申請も行います。官公庁の審査基準や添付書類などに精通しているため、無駄なくスムーズに手続きを進められる点が強みです。

権利義務に関する書類の作成

権利義務に関する書類とは、遺産分割協議書、契約書、内容証明郵便、示談書などが該当します。行政書士は、依頼者の意向を踏まえつつ、法的に有効な内容で書類を整え、トラブルの予防や解決を手助けします。

事実証明に関する書類の作成

議事録、会計記帳、実地調査に基づく図面などの事実を証明する書類の作成も行政書士の業務範囲です。これらの書類は企業活動や行政手続きにおいて信頼性の裏付けとなり、取引先や関係機関への証明にも役立ちます。

 

特定行政書士とは

特定行政書士は、通常の行政書士業務に加えて行政不服申立ての代理業務を行うことができます。特定行政書士制度は2015年に創設され、行政手続きにおける不透明さをなくし、市民や事業者が行政とのやりとりをよりスムーズに行えるようにすることを目的として設けられました。

特定行政書士になるには、専門研修を修了し試験に合格する必要があります。現在、全国で約1万人が特定行政書士として登録されており、行政への不服申し立て(各種許認可申請が不許可になったことへの不服申し立てなど)を通じて、市民と行政とのトラブル解決のサポートを行っています。

 

行政書士の費用の内訳

行政書士に業務を依頼する際には、さまざまな費用がかかります。ここでは、一般的に発生する主な費用の内訳について詳しくご紹介します。

 

相談料

行政書士に相談する際には、まず「相談料」がかかることが多いです。相談料は1時間あたり3,000円〜10,000円程度と各事務所ごとに幅広い価格設定が見られますが、初回無料相談を設けている事務所もあります。また、相談後に案件の依頼へ進んだ場合には、相談料を案件の依頼料金に充当できる(相談料が実質無料になる)場合もありますので、事前に確認をしておくのがおすすめです。

 

手数料

手数料は、行政書士が書類作成や申請手続きの代理を行う際の報酬です。業務内容や複雑さによって幅があり、例えば簡単な書類作成であれば1万円前後、許認可申請など複雑な案件では数十万円になることもあります。見積もりをしっかりと取り、納得できる範囲で依頼することが大切です。

 

法定費用

法定費用とは、行政機関に支払う収入印紙代や登録免許税などの公的な費用です。これは行政書士報酬とは別に必要になるため、事前にどのような費用がかかるのか確認しておくと安心です。たとえば、許認可申請の場合には数千円から数万円の収入印紙代が発生することがあります。

 

その他の実費

書類の郵送費用や行政書士の交通費、住民票・登記事項証明書などの取得費用など、手続きに付随して発生する実費もあります。これらの費用は案件によって異なりますので、事前に「どれくらいの実費がかかりそうか」を確認しておくと安心です。

 

行政書士に依頼する際の料金相場

行政書士に依頼する際の費用は、業務内容や案件の複雑さによって大きく変わります。以下では、行政書士がよく行う5種類の業務について料金相場をご紹介します。

 

相続関連業務

相続関連の手続きでは、遺産分割協議書や遺言書の作成、相続財産・相続人の調査、遺言執行など、多岐にわたる業務があります。

行政書士に依頼する際、相続財産の規模や相続人の人数、案件の複雑さによって料金は変動しますが、平均的には以下のような金額で手続きが行われています。

  • 遺産分割協議書の作成: 5万円から10万円程度
  • 遺言書の作成: 5万円から15万円程度
  • 相続財産や相続人の調査: 5万円から15万円程度
  • 遺言執行の手続き: 30万円から100万円程度

また、不動産等の相続登記が必要な場合は司法書士との連携が必要になることが多く、その際の手数料が別途かかることも覚えておくとよいでしょう。

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相続手続きで困ったら行政書士に相談!手続きの流れとサポート内容を詳しく紹介

 

企業・法人支援

行政書士は、企業・法人が円滑に運営を進めるために必要な多岐にわたる業務をサポートしています。この項目では、会社設立の手続き、契約書の作成、議事録の作成、会計記帳、公的補助金・助成金の申請サポートにかかる料金相場についてご紹介します。

  • 会社設立手続き(定款の作成や必要書類の整備): 5万円から10万円程度
  • 契約書作成: 1件あたり2万円から5万円程度(内容の複雑さや個別対応の有無による)
  • 議事録作成: 1件あたり1万円から3万円程度(会議の種類や内容による)
  • 会計記帳や帳簿の整理: 記帳代行は月額で2万円から5万円程度
  • 公的補助金・助成金の申請書類作成サポート: 数万円から10万円程度が多い傾向(補助金・助成金の規模や種類による)

 

許認可申請

行政書士は、さまざまな許認可の申請手続きを代行する役割を担っています。許認可申請には、建設業許可や宅建業免許、飲食店営業許可など、多くの分野が含まれます。これらの申請には専門的な知識と経験が必要で、行政書士の力を借りることでスムーズな手続きが期待できます。

料金の相場は申請内容や地域によって異なりますが、平均的には以下のような金額となります。

  • 建設業許可の新規申請: 15万円から30万円程度
  • 宅建業免許: 10万円から20万円程度
  • 飲食店営業許可: 5万円から10万円程度
  • 古物商許可申請: 5万円から10万円程度

なお、申請内容が複雑な場合や追加書類が多い場合は、さらに費用がかかることもあります。また、申請先の自治体によって必要な書類や手続きの詳細が異なるため、行政書士が許認可申請に関する案件の依頼を受ける際には、事前に詳細な打ち合わせを行い、見積もりを提示するのが通常です。

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国際業務

行政書士は、外国人の在留資格(ビザ)申請、永住許可申請、帰化申請などの国際業務にも対応しています。

これらの手続きは、添付資料の種類が多いことや要件が複雑であることなどから、外国人の方にとっては不安の大きい手続きでもあります。行政書士に依頼することで、要件を押さえた書類作成や、スムーズな手続きの進行を期待できます。

行政書士に依頼する際の料金は、ご本人の状況や添付資料の手配の難しさなどによっても異なりますが、平均的には以下のような金額となります。

  • 在留資格(ビザ)申請: 10万円から20万円程度が目安
  • 永住許可申請: 15万円から30万円程度
  • 帰化申請: 20万円から50万円程度

 

建設業関連業務

行政書士は、建設業に関わる様々な手続きにおいても頼りになる存在です。

建設業許可申請のほか、経営事項審査や入札参加資格審査など、事業の運営に必要な重要な手続きを全面的にサポートします。建設業に関連する手続きは、書類の整備や役所との調整など知識や経験を要する場面が多いため、専門知識を持った行政書士が活躍している分野の一つです。

行政書士に依頼する際の料金は、届け出を行う地域などによっても異なりますが、平均的には以下のような金額が相場となります。

  • 新規の建設業許可申請: 15万円から30万円程度
  • 建設業許可の更新申請や変更届出: 5万円から15万円程度
  • 経営事項審査申請: 10万円から20万円程度
  • 入札参加資格申請: 10万円から20万円程度

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行政書士と他の士業の料金の違い

行政書士は、書類作成や官公庁への手続きを専門とする国家資格者です。これに対し、司法書士や弁護士も同様に法的な手続きのプロフェッショナルですが、それぞれ取り扱える業務範囲や得意分野が異なります。これらの士業は、料金相場にも大きな違いがあります。

例えば、会社設立の際に必要な登記は司法書士の独占業務です。司法書士の登記手続きは10万円から20万円程度が一般的です。一方で、行政書士は登記以外の定款作成や許認可申請などを5万円から10万円程度で代行するケースが多いです。書類作成の範囲により、費用感に差が出るのが特徴です。

また、弁護士は法律相談や紛争解決を扱う専門家で、交渉や裁判対応が可能です。弁護士の相談料は30分あたり5,000円から1万円程度が相場で、書類作成だけの場合でも1通あたり5万円から30万円程度かかることがあります。これに比べて行政書士の相談料は1時間5,000円前後、書類作成も数万円程度で済むことが多いため、相手との間に争いがない単純な書類作成の場合には行政書士への依頼が有効です。

このように、行政書士、司法書士、弁護士はそれぞれ得意分野が異なり、業務範囲に応じて料金も変わります。まずは自分の依頼内容がどの士業に適しているかを見極め、料金だけでなくサービス内容や対応力も含めて比較検討することが大切です。

 

まとめ

行政書士は、個人や法人のさまざまな手続きをサポートする専門家です。行政書士が対応できる手続きは多岐にわたり、許認可申請や相続手続き、外国人の在留資格申請、建設業関連の各種申請など、幅広い分野で活躍しています。

日常の生活の中で、行政手続きや契約などに関して困ったことがあれば、ぜひ身近な法律家である行政書士へご相談ください。