許認可とは?基礎知識から知っておくべきポイントまで徹底解説

許認可とは

「許認可」とは、国や地方自治体などの行政機関が、一定の基準を満たした事業者や個人に対して行う事業開始や活動に関する承認行為の総称です。事業を始める際や特定の業務を行う際に、法令で定められた条件をクリアしていることを確認するための制度であり、公共の安全や取引の公正を守るために設けられています。

日本における許認可手続きの種類は膨大な数に及び、その数はなんと1万種類以上とも言われています。民間事業の多くが何らかの許認可を必要としており、事業者にとって避けて通れない重要なステップといえます。

 

「許認可」に含まれる手続きの種類

一口に「許認可」といっても、その中には5つの種類があり、行政法上の性質や効果が異なります。ここでは、5種類の許認可について詳しく解説します。

 

許可

「許可」とは、法律によって原則として禁止されている行為を、一定の条件を満たした者に対して特別に認める行為です。たとえば、建設業許可や風俗営業許可、在留許可などがこれにあたります。無許可で営業した場合は罰則が科される場合もあり、5種類の中で最も厳しいルールに基づく手続きと言えるでしょう。

 

認可

「認可」とは、民間で行われた契約や決定、行為などに対し、行政がその内容を確認・承認し、法的に効力を持たせるための手続きです。たとえば、学校法人の設立認可や社会福祉法人の定款変更認可などが該当します。認可を受けることで、初めて法的に有効な行為として成立します。

 

届出

「届出」とは、新たに事業を行う旨や、あらかじめ行政に知らせていた内容に変更があった旨を行政機関に報告することによって効力が発生する手続きです。行政の許可を得ることなく「報告」のみで手続きを完了できる点が特徴ですが、法令上の要件を満たしていない場合には、行政から是正指導が入ることもあります。たとえば、飲食店の深夜営業開始届出などがこれにあたります。

 

登録

「登録」とは、行政が管理する名簿や帳簿に事業者や資格者の情報を記載することで法的効果を生じさせる手続きです。建築士事務所の登録や解体工事業の登録などが代表例で、登録を受けなければ業務を行うことができません。

登録は、行政が一定の基準を満たした事業者を公式に把握・管理するためのもので、届出よりも厳格で、許可ほどの審査は行われない中間的な性質を持っています。

 

免許

「免許」は、一定の行為を行う包括的な資格を行政が与える行為で、申請者の能力・適性・経歴などを厳格に審査したうえで付与される点が特徴です。個人に与えられるものとしては、運転免許や医師免許のように、能力や資格を公的に証明するものが挙げられます。事業免許としては、宅地建物取引業免許や旅行業免許などがあり、社会的信用を担保する機能もあります。

 

主な申請先

許認可の申請先は、手続きの内容や業種によって異なります。代表的な申請先としては、都道府県や市区町村などの自治体の他、国土交通省、法務局、出入国在留管理局、保健所、警察署、消防署などの行政機関が挙げられます。

 

「許認可」の具体例

ここでは、実際にどのような事業ケースで許認可が必要となるのかを、代表的な例を挙げて紹介します。事業の開始時点で必ず取得しなければならないものと、必ずしも事業に関連するわけではなく個人で行う場合もあるものに分けて整理します。

 

開始時に許認可が必要な事業の例

下記のように、事業開始時に許認可が必要な分野は幅広く存在します。「許可」や「免許」が必要なものは、行政による審査・現地調査などが行われ、取得までに一定の期間がかかる点に注意が必要です。また、都道府県単位で条例や細則が異なる場合もあるため、地域の行政窓口での確認が不可欠です。

事業の例 許認可の種類 許認可権者
建設業 許可 都道府県知事または国土交通大臣
産業廃棄物処理業 許可 都道府県知事または市長
タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業) 許可 国土交通大臣
貨物運送業(一般貨物自動車運送事業) 許可 国土交通大臣
飲食店 許可 保健所
酒類販売業 免許 税務署長
食品製造業 許可または届出 保健所
美容院・理容院 届出 保健所
性風俗関連特殊営業 届出(※実質的には許可) 都道府県公安委員会
古物商 許可 都道府県公安委員会
警備業 認定(※許可に近い扱い) 都道府県公安委員会
宿泊業(旅館業) 許可 保健所
不動産業(宅地建物取引業) 免許 都道府県知事または国土交通大臣
化粧品製造業 許可 都道府県知事または厚生労働大臣
医薬品販売業 許可 保健所

 

それ以外の許認可の例

事業の開始時点だけでなく、個人の活動においても許認可が必要となるケースがあります。ここでは、個人の方が行うことのある代表的な手続きを紹介します。

手続きの例 許認可の種類 許認可権者
農地転用 許可または届出 都道府県知事または農業委員会
在留資格(ビザ)関連 許可または届出 出入国在留管理庁(法務省)
自動車登録 登録 運輸支局(国土交通省)
ドローン(無人航空機)の飛行 許可 国土交通大臣

 

許認可に関して知っておきたい知識

事業に関する許認可手続きは、単に書類を提出すれば良いというものではなく、事前の準備や確認が極めて重要です。ここでは、許認可の取得を進めるうえで押さえておきたい基本的な知識や注意点を解説します。

 

定款の「目的」と許認可申請の整合性

会社を設立して事業を行う場合、定款に記載された「事業目的」が、申請する許認可の内容と一致している必要があります。たとえば、建設業許可を取得したいにもかかわらず、定款の目的欄に「建設業」や「土木工事業」などの文言がない場合、申請が受理されないことがあります。定款の目的は、行政機関が事業の適法性や実態を判断する基準となるため、事前に確認・修正しておくことが重要です。

特に法人設立後に新たな事業を追加する場合は、定款変更(目的変更)を行う必要があります。定款変更には株主総会の特別決議が必要なため、早めの準備が求められます。

 

物件・設備に関する要件に注意

許認可の中には、事務所や施設、設備の構造・規模などに関する基準が定められているものが多くあります。たとえば、旅館業では客室数や換気設備、衛生管理の基準が細かく規定され、産業廃棄物処理業では処理施設の配置や安全基準が求められます。また、飲食店営業許可では厨房の面積・手洗い場の設置など、保健所による現地確認が行われるのが一般的です。

そのため、物件の賃貸契約や内装工事に着手する前に、法令や各自治体の基準を確認しておくことが重要です。基準を満たさない構造や設備では、後から改修が必要となり、結果的に時間や費用のロスにつながるおそれがあります。

 

欠格事由とは

「欠格事由」とは、一定の条件に該当する場合に許認可を受けられない、または取り消される原因となる要件のことです。欠格事由は許認可の種類ごとに細かく定められており、同一法人内の役員全員や主要株主が対象となる場合もあります。申請時には、これらの事実がないことを誓約書などで証明する必要があり、虚偽が発覚した場合には行政処分や刑事罰の対象になることもあります。

具体的には、以下のような欠格事由が定められていることが多くあります。

  • 法令違反などにより過去に許可を取り消された者
  • 禁錮刑・拘禁刑などの刑事罰を受け、一定期間を経過していない者
  • 成年被後見人や被保佐人に該当する者
  • 破産手続き中で復権を得ていない者
  • 暴力団関係者、または暴力団関係者でなくなってから一定期間を経過していない者

 

有効期限の有無に注意

すべての許認可が無期限で有効というわけではありません。許可や登録には一定の有効期限が設けられている場合が多くあり、更新手続きを怠ると失効してしまうことがあります。たとえば、建設業許可は5年ごとの更新が必要であり、期限を過ぎてしまうと改めて新規申請をしなければなりません。古物商許可や旅館業許可などは更新不要ですが、変更届や報告義務が課されている点に注意が必要です。

 

許認可の取得における行政書士の役割

許認可の申請手続きは、事業内容に応じて求められる書類や条件が複雑である上、法律・条例・各自治体の基準を的確に理解しておく必要があります。ここで重要な役割を担うのが行政書士です。行政書士は、行政手続の専門家として、以下のような業務を行うことができます。

 

相談

行政書士は、まず事業内容や計画をヒアリングし、どの許認可が必要か、どの順序で進めるべきかを判断し、アドバイスを行います。特に複数の許認可が関連するケース(例:飲食店+深夜営業+消防法関係など)では、必要な手続きの全体像を整理し、申請漏れを防ぎます。また、物件の選定段階で基準を満たすかどうかの助言を行うなど、事業の準備段階から関与することも多くあります。

 

書類作成

許認可申請には、多くの書類作成や図面、証明書などの添付資料の準備が必要になります。行政書士は、官公庁へ提出する書類の作成を代理することができる唯一の国家資格であり、豊富な知識を生かして正確な書類作成を行います。申請書や添付資料に不備があると、補正や再提出を求められ、結果的に時間がかかることが多いため、行政書士が間に入ることで手続きが効率化されます。

また、法人や個人の状況に応じて、住民票・戸籍謄本・登記簿謄本などの必要書類を収集することも行政書士の専門領域です。

 

申請代理

行政書士は、依頼者に代わって官公庁への申請や届出の提出を代理で行うこともできます。建設業許可、産業廃棄物処理業許可、旅館業許可など、行政書士が代理で提出できる申請は数多く存在します。特定行政書士の資格を有する場合は、不許可処分に対する不服申立て(審査請求)の手続きも行うことが可能です。

 

許認可の取得にかかる費用

許認可の申請にかかる費用は、大きく分けて「法定費用」と「専門家への依頼費用(行政書士報酬)」の2つがあります。費用の総額は申請する許認可の種類や自治体によって異なりますが、事前に全体の目安を把握しておくことで、資金計画を立てやすくなります。

 

法定費用など

法定費用とは、行政機関に支払う手数料や証紙代など、法令で定められている公的な費用を指します。これは全国共通の場合もあれば、都道府県や市区町村ごとに異なる場合もあります。

以下の表に、6つの許認可申請を例に挙げて法定手数料を示します。なお、下記の費用に加え、添付書類として必要となる登記簿謄本、印鑑証明書、住民票などの取得の際にも1通あたり数百〜数千円の実費が発生します。

許認可の種類 主な法定費用
建設業許可(新規) 知事許可:9万円
大臣許可:15万円
古物商許可 19,000円
飲食店営業許可 16,000~18,000円程度
※自治体により異なる
旅館業許可 2〜3万円程度
※自治体により異なる
産業廃棄物収集運搬業許可 81,000円
酒類販売業免許 手数料:無料
登録免許税:3~9万円
※販売形態等により異なる

 

行政書士に依頼する場合の費用

行政書士に許認可申請を依頼する場合、書類作成・代理提出・官公庁との調整を含めた報酬が発生します。報酬額は事業規模や手続きの複雑さによって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

許認可の種類 行政書士報酬の目安
建設業許可(新規) 知事許可:10~20万円程度
大臣許可:15~30万円程度
古物商許可 5〜10万円程度
飲食店営業許可 5〜10万円程度
産業廃棄物収集運搬業許可 10〜20万円程度
旅館業許可 15〜30万円程度
酒類販売業免許 10〜20万円程度

 

まとめ

許認可手続きは、事業を始める上で避けて通れない重要な行政手続きです。法令で定められた要件を満たすことはもちろん、様々な観点から確認が求められます。

こうした複雑な手続きを円滑に進めるために、行政書士のサポートを活用することは大きな助けになります。行政書士は、事業内容の確認から必要書類の作成、官公庁との調整、更新手続きまでを一貫して支援できる専門家です。

それぞれの許認可制度を理解し、専門家の力も借りながら、適切に準備を行うことが事業の成功への近道といえるでしょう。

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