目次
エンディングノートとは
エンディングノートとは、自分の人生の終末期や死後に備えて、希望や大切な情報をまとめておくためのノートです。遺言書のように法的拘束力はありませんが、家族や身近な人へ想いを伝え、残された人々の負担を軽くする役割を果たすため、近年注目されています。エンディングノートは「終活」の一環として活用されることが多く、自分らしい人生の締めくくりを準備するための有効なツールといえるでしょう。
遺言書との違い
エンディングノートと遺言書は混同されがちですが、大きな違いは法的効力の有無にあります。遺言書は民法に則った形式で作成する必要があり、財産の分配や相続に関する内容については法的効力を持ちます。
一方で、エンディングノートは形式に縛られず自由に記載できる点が特徴です。例えば「延命治療を望むかどうか」「葬儀の形式や参列してほしい人」「ペットの世話を託したい相手」など、法的効力はなくても家族が判断に迷ったときの指針となる情報を残すことを目的としています。
作成のメリット
エンディングノートを作成するメリットは数多くあります。まず、家族の負担を軽減できるという点です。死後の手続きや葬儀の方法、財産に関する情報が整理されていれば、遺された家族が迷わず対応できます。また、自分の希望を形に残すことで、意思を尊重してもらいやすくなり、安心感を得ることができます。さらに、財産や連絡先などをまとめる過程で、自分の人生や人間関係を見つめ直す機会にもなります。結果として人生でやり残したことが見えてきたり、今後前向きに生きていくきっかけになることもあるでしょう。
エンディングノートを作成するタイミング
エンディングノートは高齢になってから書くものと思われがちですが、実際には年齢を問わず作成を始めてよいものです。病気や事故は突然起こることがあるため、早めに準備しておくことで万が一の時にも安心です。一般的には、50~60代ごろに作成を始めるのが良いと考える方が多いようですが、最近では30~40代の若い方が作成するケースも見られます。
若い方では、結婚や出産、住宅購入など人生の節目を迎えたタイミングで作成を始める方も増えています。その他には、子供が独立した時、自身の健康状態に変化があったとき、退職した時、年金をもらい始めたとき、還暦を迎えたとき、結婚30周年などの節目といったタイミングで作成する方が多いです。
また、一度作成して終わりではなく、状況の変化に応じて定期的に見直すことが大切です。書き直しや加筆が自由にできるのもエンディングノートの大きな特徴といえるでしょう。
エンディングノートに記載する内容
エンディングノートを作成する際には、記載する内容を整理しておくことが重要です。ここでは代表的な項目を紹介し、それぞれの意味や役割を解説します。
自分に関する基本情報
まずは、「氏名、生年月日、血液型、本籍地、現住所、電話番号、家族構成」などの、本人を特定するための基礎情報を記載します。これらは役所での各種手続きや金融機関での対応に欠かせません。併せて、マイナンバーや健康保険証番号などの公的情報も整理しておくと便利です。
医療・介護に関する希望
エンディングノートで特に重要なのが、医療や介護に関する基本情報や意思表示です。
基本情報としては、病歴や服薬状況、アレルギーの有無、かかりつけ医の情報などを記載します。それ以外の意思表示としては、延命治療や臓器提供、献体などの希望の有無に加え、どのような介護施設を希望するか、在宅医療を選びたいか、判断能力が低下した場合の財産管理はどうするか、最期を迎える場所はどこが良いか、などを具体的に記しておきます。
これらの情報によって家族が判断を迫られる場面で迷うことが減り、本人の意思を尊重した選択がしやすくなるでしょう。
財産の情報
財産に関する情報も整理して記載します。銀行口座、証券口座、生命保険、不動産、負債(借入金やローン)などの内容をリスト化しておくと、相続手続きがスムーズに進みます。財産の分配については遺言書で正式に定める必要がありますが、エンディングノートに現状の財産状況を記載しておくことで、家族が全体像を把握しやすくなります。相続トラブルを防ぐ第一歩は、財産情報を正確に残すことだといえるでしょう。
遺言書に関する情報
エンディングノートと遺言書は別物ですが、両者を連携させておくことが理想的です。例えば「遺言書を作成済みかどうか」「保管場所」「公正証書遺言か自筆証書遺言か」といった情報を記載します。これにより、家族が遺言書を確実に見つけられ、スムーズに相続手続きに進むことができます。遺言書の存在を明記するだけでも家族にとって大きな助けとなるため、忘れずに記載しておきましょう。
葬儀・お墓に関する希望
葬儀の形式や規模、宗派、参列してほしい人など、具体的な希望を書いておきましょう。例えば「家族葬を希望する」「音楽葬を行いたい」「お墓は既に契約済み」などです。お墓についても、埋葬先や納骨堂の指定だけでなく、近年注目されている樹木葬や散骨といった新しいスタイルを希望する場合にもしっかりと希望を残しておきましょう。
親戚、友人の連絡先
死後に連絡してほしい親戚や友人、恩人の連絡先をリスト化しておきましょう。最近はスマートフォンで連絡先を管理するケースが増えていますが、パスワードがかかっていて遺族がアクセスできない場合があります。紙にまとめておくことで、必要な人へ確実に連絡が行き届くでしょう。
家族、親戚、友人などへのメッセージ
普段はなかなか言葉にできない感謝や想いを、エンディングノートに残すのも大切です。「ありがとう」「元気でいてほしい」といった短い言葉でも十分意味があります。手紙のように個別のメッセージを書いておくと、残された人にとって大きな心の支えになります。
ペットに関する希望
ペットを飼っている場合は、死後に誰に預けたいか、どのように世話をしてほしいかを具体的に記載しておきましょう。好きなおやつやおもちゃ、1日の過ごし方、病気や服薬の状況、かかりつけ医の情報などもあれば、預かった人がお世話をしやすくなるでしょう。さらに、飼育費用をどのように確保するか、保険や信託を利用する方法も併せて検討しておくと、より安心です。
死後に行ってもらう手続きの整理
死亡後には、相続手続き以外にも多くの手続きが発生します。具体的には、役所への死亡届、年金の停止手続き、銀行口座の解約や公共料金の名義変更、携帯電話の解約、クレジットカードの解約などです。このような手続きをリストアップして、整理しておきましょう。
また、近年では各種サブスクリプションサービスを1人で複数契約しているケースも珍しくありません。それらの解約のために、加入しているサービス名とID・パスワードなどの情報を一覧にしておくと良いでしょう。さらに、SNSアカウントを持っている場合、死後にアカウントを削除してほしい等の希望があれば記載しておくと安心です。
このような手続きのリストがあれば、残された家族は効率的に手続きを進めることができるため、遺族にとって非常に役立つ情報と言えるでしょう。
その他
その他の項目として、次のような内容を記しておくとエンディングノートがより充実します。
- 自分の人生史:生い立ちや学歴、職歴、取得した資格、趣味活動、旅行やスポーツの思い出、印象深い出来事などを自由に記載します。人生の軌跡を残すことで、家族や友人がその人の人となりを振り返る大切な資料になります。
- これからの人生でやりたいこと:エンディングノートを作成する中で、まだ達成していない目標や挑戦してみたいことが新たに見えてくることもあります。これらを明記し、これからの人生をより前向きな気持ちで生きていくためのきっかけにすると良いでしょう。
- 大切なものの保管場所:通帳、印鑑、権利証、保険証書、貴金属類、アルバムなどの所在を明記しておくと、家族が遺品整理などをする際の手助けになります。
エンディングノートを作成するための準備
エンディングノートを有意義なものにするためには、作成前の準備が欠かせません。ここでは、エンディングノートを家族にとって本当に役立つノートとするために必要な3つの準備事項を紹介します。
書式を決める
エンディングノートを作成する際は、市販の専用ノートや無料でダウンロードできるテンプレートを利用する方法に加え、白紙のノートに自由に記載するという方法もあります。市販のエンディングノートは、必要な項目があらかじめ整理されているため初心者におすすめです。一方で、自分で作成する場合は自由度が高く、自分にとって必要な情報だけをまとめられるというメリットがあります。
また、最近ではパソコンやスマートフォンで作成し、デジタルデータで保存しておくというケースも見られます。この方法は、修正や更新が容易なため、頻繁に見直しを行う方には便利ですが、一方で、家族がデータを見つけにくいというデメリットもあります。デジタルデータで保存する場合には、家族がアクセスできるクラウドストレージに保存し、あらかじめ保存場所を伝えておくなどの工夫が必要です。
情報収集
ノートに記載するためには、あらかじめ情報を整理しておく必要があります。例えば、銀行口座や生命保険、不動産などの財産情報、親族の情報などです。必要に応じて戸籍や登記簿を取り寄せ、正しい情報を記載するように努めましょう。
家族会議
エンディングノートは自分の希望を残すだけでなく、家族と共有してこそ意味があります。そのため、作成にあたっては家族と話し合いの場を持ち、どのような内容を記載しておいて欲しいかについて聞き取りを行うのがおすすめです。これまでに紹介してきた情報以外にも、家族から希望された事項があれば積極的に取り入れるように心がけると良いでしょう。
エンディングノートを作成するための注意点
エンディングノートは一度作成すれば終わりではなく、長く役立てるためにはいくつかの注意点を押さえておくことが重要です。ここでは、作成後に気を付けるべきポイントを4つ紹介します。
定期的な見直し
家族構成、財産、健康状態などは常に変化するため、エンディングノートもその都度内容を更新する必要があります。最低でも1年に1回程度の見直しを行い、情報が古くなっていないか確認しましょう。誕生日や年末など、定期的に見直すタイミングを決めておくと習慣化しやすいです。
保管方法
エンディングノートは大切な個人情報が詰まっているため、保管場所には注意が必要です。金庫や鍵付きの引き出しなど安全な場所に置くことが望ましいですが、同時に家族が必要な時に取り出せることも大切です。「家族に存在を知らせつつ、安全に保管する」というバランスを意識しましょう。また、デジタルデータで残す場合は、家族にしかわからないパスワードを設定するなどの工夫も重要です。
遺言書との使い分け
エンディングノートと遺言書は役割が異なります。遺言書は相続など財産の分配に法的効力を持ちますが、エンディングノートは意思表示の補助や家族へのメッセージの役割を果たします。財産分与など法的効力が必要な内容は遺言書へ、希望や想いを伝える部分はエンディングノートへと使い分けることが大切です。両者を併用することで、より安心感のある終活が実現できるでしょう。
銀行口座の暗証番号は記載しない
エンディングノートには多くの個人情報が含まれますが、銀行口座の暗証番号など、悪用される危険のある情報は書かないようにしましょう。銀行の預金に関しては、本人の死後に家族が銀行で相続手続きを行う際には、暗証番号は必要ありません。万が一、ノートが第三者の手に渡った場合のリスクを考え、「記載すべき情報」と「記載してはいけない情報」を区別することが重要です。
行政書士に作成支援を依頼する場合の費用相場
エンディングノートの作成支援を行政書士に依頼する場合、料金は依頼内容によって幅がありますが、主に以下のような金額が相場です。
- エンディングノート作成支援:8,000~20,000円/人
上記以外に、出張費や戸籍謄本・登記簿謄本などの取り寄せにかかる実費が発生する場合もあります。
依頼のメリット
行政書士にエンディングノートの作成をサポートしてもらうことで、以下のようなメリットが得られます。専門家の支援を受けることで、ノートが単なる備忘録ではなく、家族にとって本当に役立つ資料となるでしょう。
- 面倒な記載事項の整理や書き方がわからない部分を専門的にサポートしてもらえる
- 遺族が迷いやすい部分を事前に整理できる
- 書き忘れや記載漏れを事前に防げる
まとめ
エンディングノートは、自分の意思や想いを大切な人に残すための大切なツールです。遺言書のように法的効力は持ちませんが、家族にとって判断の指針となり、死後の負担を大幅に軽減する効果があります。
行政書士などの専門家にエンディングノートの作成補助を依頼することで、書き忘れや不備を防ぎ、より実用性の高い内容に仕上げることが可能です。専門的な視点からアドバイスを受けられるため、家族にとって本当に役立つエンディングノートとなるでしょう。
エンディングノートは、未来を安心して迎えるための準備であり、自分らしい生き方を最後まで表現できる手段でもあります。早めに取り組み、定期的に見直しながら、家族への思いやりを形にして残しておきましょう。
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特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)