遺言書の検認とは?必要なケースから手続きの流れ、費用まで行政書士が徹底解説

遺言書の検認とは

遺言書の「検認」とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、その状態を公的に明らかにするための手続きのことをいいます。相続が開始した後、遺族の方が自宅などで遺言書を発見した場合には、この検認手続きを経る必要があります。

ここで大切なのは、検認は「遺言の有効・無効を判断する手続き」ではないという点です。検認はあくまで、遺言書の形状や記載内容、加除訂正の有無などを確認し、その時点での状態を記録に残すための制度です。つまり、勝手に内容を書き換えられたり、隠されたりすることがないように、「どのような遺言書が存在していたのか」を明確にしておくことが主な目的なのです。

さらに、検認は相続人全員に対して遺言書の存在を知らせるという役割も果たしており、透明性・公平性を確保するための重要な制度といえるでしょう。

 

検認が必要な遺言書の種類

遺言書にはいくつかの方式があり、すべての遺言書に検認が必要というわけではありません。 どの方式で作成されたかによって、家庭裁判所での検認手続きが必要かどうかが異なります。

以下の表は、4種類の遺言書について検認の要否を整理したものです。

遺言書の種類 検認の要否
自筆証書遺言(法務局保管制度を利用していない) 必要
自筆証書遺言(法務局保管制度を利用) 不要
公正証書遺言 不要
秘密証書遺言 必要

自筆証書遺言であっても、令和2年から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合、法務局が遺言の原本を保管しており、改ざんや隠匿の恐れが低いことから検認は不要とされています。同様に、公正証書遺言も原本が公証役場に保管されていることから、検認は必要ありません。

秘密証書遺言は、公証役場において遺言作成の事実を証明したものですが、公正証書遺言とは異なり、公証役場で保管されません。法務局保管制度を利用していない自筆証書遺言と同様に自宅や貸金庫等の公的機関でない場所で保管されることから、改ざん等の防止のために検認を受ける必要があるのです。

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検認手続きの流れと必要書類

ここでは、遺言書の検認が実際にどのような流れで進むのか、そしてどのような書類が必要になるのかを整理しておきましょう。

 

1. 管轄の家庭裁判所を確認する

検認の申し立てを行うことができるのは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。管轄の家庭裁判所は、裁判所の公式ホームページで確認することができます。

 

2. 検認申立書を作成し、必要書類を添付して提出する

申立人となるのは、遺言書を保管している人、または遺言書を発見した人です。多くの場合は相続人が該当しますが、必ずしも相続人である必要はありません。たとえば、被相続人の知人や、行政書士・司法書士・弁護士などの士業が保管している場合には、その方が申立人となることもあります。

また、申立人に該当する方が複数いる場合は、平日の日中に現地の家庭裁判所へ出向くことができる方を選ぶのが良いでしょう。申立人は検認期日に必ず出席しなければならないため、注意が必要です。

申立ては、書類を家庭裁判所の窓口へ直接持参する方法のほか、郵送で行うことも可能です。遠方の家庭裁判所が管轄となる場合には、郵送での申立てを活用すると良いでしょう。郵送の場合は、事前に裁判所へ電話で確認し、必要書類に漏れがないかチェックしておくと安心です。

なお、申立ての際には、以下のような書類を準備します。必要な書類は相続人の構成によって異なりますので、詳しくは裁判所のホームページをご確認ください。

  • 検認申立書:裁判所のホームページからダウンロード可
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 収入印紙(1通につき800円分)
  • 連絡用の郵便切手(例:「110円×相続人の数」など):相続人に通知を郵送するための切手。裁判所ごとに金額が異なるため、裁判所のホームページや電話等で正確な金額を確認すると良い。

 

3. 検認期日の決定

申立書と必要書類を提出すると、家庭裁判所で書類の確認が行われます。その後、家庭裁判所から申立人に電話連絡が入り、検認期日を調整するのが一般的な流れです。

ただし、書類提出後すぐに連絡が来るわけではなく、数週間〜1か月程度経ってから電話がかかってくるケースが多い印象です(裁判所の混雑状況によって前後します)。電話では、裁判所の担当書記官から候補日が提示され、申立人の都合を確認したうえで正式な検認期日が決定します。

なお、検認期日は、電話連絡があった日からさらに1〜2か月後に設定されることが多いです(こちらも、裁判所の混雑状況によって前後します)。

 

4. 家庭裁判所から相続人へ通知が発送される

裁判所は、提出された戸籍謄本から確認できる相続人全員に対し、検認期日の通知を郵送で行います。申立人以外の相続人の検認期日への出席は任意となりますので、欠席しても構いません

ただし、遺言の内容をできるだけ早く自分の目で確認したい場合や、筆跡が本当に被相続人本人のものかを直接見て確かめたい場合には、出席することが望ましいといえるでしょう。特に、遺言の有効性について疑いがある場合には、期日に立ち会っておくことで、その後の対応を検討しやすくなります。ご自身の状況に応じて、出席するかどうかを判断するとよいでしょう。

 

5. 検認期日

検認期日当日は、申立人が遺言書の原本を持参して家庭裁判所へ出向きます。そして、家庭裁判所の一室で、裁判官、書記官、申立人、そして出席した相続人が立ち会って検認が行われます。

封がされている遺言書の場合は、裁判官がその場で開封し、出席者に回覧されます。封がない場合でも、遺言書の枚数、日付、署名、押印の有無、訂正の状況などが一つひとつ確認されます。

また、裁判官から出席者に対して、

  • 筆跡は被相続人本人のものと思われるか
  • 印影は見覚えがあるか
  • どのような経緯で遺言書を発見したのか

といった質問がなされることがあります。これは、遺言書の状態や発見経緯を明確にするためのものであり、その場で有効・無効を判断する趣旨ではありません。

裁判官は、遺言書の外観や発見経緯、出席者の回答内容などをまとめた検認調書を作成し、正式な記録として残します。これにより、「その時点でどのような遺言書が存在していたのか」が公的に証明されることになります。

検認自体の所要時間は、実際には10〜15分程度で終了することが多いですが、当日の待ち時間や手続きの順番によっては、裁判所内で1〜2時間程度滞在するケースもあります。

 

6. 検認済証明書の申請(必要に応じて)

遺言書の検認を受ける場合、ほとんどのケースで検認済証明書の申請を行います。詳しくは後述しますが、相続手続きのあらゆる場面でこの検認済み証明書が求められるためです。

この検認済証明書は、遺言書1通ごとに申請することになっており、申請の際には1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要になります。

 

7.欠席した相続人および受遺者へ検認終了の通知が発送される(必要に応じて)

検認期日に出席しなかった相続人がいる場合でも、手続き自体は予定どおり進みます。そして、必要に応じて、家庭裁判所から欠席した相続人等に対し、検認が行われた旨の通知が発送されます。

また、検認で遺言書が開封された結果、それまで把握していなかった受遺者(相続人以外に財産を受け取る人)の存在が判明することがあります。このような場合には、家庭裁判所は、検認手続きが実施されたことを受遺者にも通知します。これにより、受遺者は自らが遺言の対象となっている事実を知ることができます。

なお、後日、相続人や受遺者が遺言の内容や当日のやり取りを確認したいと考えた場合には、家庭裁判所に申請をすることで検認調書の謄本(写し)を取得することが可能です。検認調書には、遺言書の外観や発見経緯、期日における確認内容などが記録されており、あわせて遺言書のコピーも入手することができます。

 

検認に関連して知っておきたい知識

ここでは、遺言書の検認に関連して知っておきたい重要なポイントを整理しておきましょう。

 

遺言書を勝手に開封することは厳禁

封がされている自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した場合、家庭裁判所で検認を受ける前に開封してはいけません。民法では、封印のある遺言書を裁判所以外で開封した場合、5万円以下の過料が科されることがあると定められています。ただし、この過料は刑事罰ではないため、前科が付くものではありません。

万が一誤って開封してしまったとしても、それだけで遺言が無効になるわけではありません。ただし、相続人間の疑念や紛争の原因になりやすいため、発見した時点でそのままの状態を保ち、速やかに家庭裁判所へ申立てを行うことが重要です。

 

検認済証明書の用途

検認が終わった遺言書は、そのままではその後の相続手続きで使えない場合があります。金融機関での預貯金解約、不動産の名義変更など、遺言に基づく相続手続きを行う際には、遺言書に「検認済」であることを示す証明が付いていることを求められることが一般的です。

そのため、検認済証明書を忘れずに取得し、厳重に保管しておく必要があります。

 

検認手続きの期限

検認の申立て自体には、法律上の明確な期限は設けられていません。しかし、遺言書を保管している人や発見した相続人は、相続開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出しなければならないとされています。

ここで特に注意したいのが、他の相続関連手続きとの関係です。たとえば、相続税の申告・納付期限は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内と定められています。また、相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です。

遺言の内容によっては、「財産よりも債務の方が多い」「特定の相続人に多額の負担が生じる」といったケースもあり得ますが、遺言の内容を確認しないままでは、相続放棄をするかどうかの判断がつきません。

先述の通り、家庭裁判所の混雑状況によっては検認の申し立てから2~3か月程度を要する場合があるため、可及的速やかに検認の手続きを進めるようにしましょう。

 

検認を受けた遺言が有効であるとは限らない

検認は、遺言書の内容や外観を確認して記録に残す手続きですが、検認を受けたからといって、その遺言が必ず法的に有効であると確定するわけではありません

たとえば、自筆証書遺言に日付の記載がない、署名がない、加除訂正の方法が法的な要件を満たしていないなどの場合には、遺言そのものが無効になることがあります。また、筆跡が本人のものか疑わしい、作成当時に意思能力がなかった疑いがある、第三者による改ざんの可能性があるなど、不審な点がある場合も同様です。

このような場合に検討されるのが、遺言無効確認訴訟です。これは、その遺言が法的に無効であることの確認を求める訴訟であり、判決によって無効と確定すれば、遺言は初めから効力を持たなかったものとして扱われます。遺言無効確認訴訟には、法律上の明確な出訴期間(短期の時効)は定められていませんが、長期間放置すると証拠関係が不利になるおそれがあるため、疑義がある場合は早期の検討が重要です。

一方で、遺言自体は有効であっても、特定の相続人の取り分が極端に少ないなど、遺留分を侵害している可能性がある場合には、遺留分侵害額請求を行うことになります。これは、遺留分を有する相続人が、侵害された相当額の金銭の支払いを請求する制度です。

なお、ここでいう「遺留分」とは、配偶者や子、直系尊属などの法定相続人に対して、法律上最低限保障された取り分のことをいいます。

遺留分侵害額請求には明確な期限があり、相続の開始および遺留分侵害の事実を知った時から1年以内に行使しなければなりません。ただし、相続開始から10年を過ぎると、それ以降に遺留分侵害の事実を知ったとしても請求そのものができなくなります。

このように、検認はあくまでも遺言書そのものの存在を確認するための手続きであり、その後に争いが生じた場合には、別途民事訴訟によって解決を図ることになります。遺言の内容や作成経緯に疑問がある場合は、早い段階で弁護士に相談し、法的手段を検討することが重要です。

 

遺言書が相続手続き完了後に発見された場合

すでに遺産分割協議が成立し、預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きが完了した後に、遺言書が見つかるケースもあります。

まず重要なのは、新たに発見された遺言書についても、自筆証書遺言(法務局保管制度を利用していないもの)や秘密証書遺言であれば、たとえ相続手続きがすでに終わっていても、改めて家庭裁判所で検認が必要になるということです。一方、公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言であれば、検認は不要です。なお、すでに別の遺言書について検認を受けていたとしても、新たに発見された別の遺言書が見つかった場合には、その遺言書ごとに検認の要否を検討することになります。

また、新たに発見された遺言が法的に有効なものであれば、原則としてその内容が優先されますが、実際には「すべてのケースで必ず遺産分割がやり直しになる」というわけではありません。まず、相続人全員が遺言の存在および内容を知ったうえで、従前の遺産分割内容のままでよいと合意する場合には、そのままの内容を維持することも可能です。遺言はあるものの、全員が納得しているのであれば、改めて紛争に発展させる必要はありません。

一方で、相続人の中に「遺言の存在を知っていれば、このような遺産分割の合意はしなかった」と主張する人がいる場合は問題が生じます。過去の判例では、遺言の存在を知っていれば遺産分割の合意をしなかったであろうと言える場合には、遺産分割に錯誤があったとして無効となり、やり直しが認められると判断されたケースがあります。

さらに、「相続人以外の第三者に財産を遺贈する内容の遺言があった場合」「遺言によって子の認知がなされ、新たに相続人が増える場合」「遺言によって相続人の廃除がなされている場合」などは、相続人の範囲や取得割合そのものが変わるため、従前の遺産分割協議の前提が大きく覆ることになります。このような場合には、遺産分割をやり直す必要が生じます。

特に、すでに財産の移転が完了している場合には、返還請求や精算が問題になることもあり、状況によっては訴訟に発展する可能性もあります。相続手続きが完了した後に遺言書が見つかった場合は、弁護士などの専門家に相談しながら対応を検討することが重要です。

 

遺言書の検認にかかる費用

遺言書の検認には、一定の法定費用や書類収集費用に加え、専門家へ依頼する場合には別途報酬がかかります。ここでは、それぞれの費用の目安をご紹介します。

 

法定費用など

検認の申立てにあたって必要となる主な費用は次のとおりです。これらを合計すると、相続関係が単純な場合でも数千円から1万円前後が目安となります。相続人が多い場合や本籍地が複数にまたがる場合は、戸籍収集費用がさらに増える可能性があります。

  • 検認申立て手数料(収入印紙代):800円(遺言書1通につき)
  • 検認済証明書の申請費用(収入印紙代):150円(遺言書1通につき)
  • 郵便切手代:数千円程度(各家庭裁判所の規定や相続人の数によって異なる)
  • 戸籍謄本等の取得費用:450円/1通(除籍謄本・改製原戸籍は750円/1通)
  • 住民票・戸籍附票等(相続人の正確な住所確認のため、必要に応じて):約300円/1通(自治体により異なる)

 

専門家に依頼する場合の費用

検認の申立書作成や関連手続きについて、専門家へ依頼することも可能です。ただし、業務内容によって依頼できる資格者が異なりますので、注意が必要です。

まず、検認申立書の作成および家庭裁判所への提出手続きは、司法書士または弁護士が行うことができます。行政書士は家庭裁判所に提出する書類の作成を業として行うことはできません。 費用の目安としては、司法書士へ申立書作成を依頼する場合は5~10万円程度、弁護士へ依頼する場合は10万円~が一般的な相場といえます。

しかしながら、検認の申立て自体は、書式に沿って必要事項を記載して添付書類と一緒に提出するだけでよく、手続きとしては比較的シンプルでご自身で行うことも十分可能です。

一方で、検認の申立て以前の段階で多くの方がつまづくポイントが、添付書類として求められる被相続人の出生から死亡まで戸籍の収集です。本籍地が複数の自治体にまたがっている場合や、改製原戸籍が多い場合には、想像以上に労力を要することがあります。そのため、「申立書は自分で作成するが、戸籍収集(相続人調査)の部分だけを行政書士や司法書士に依頼する」という方法も検討してみると良いでしょう。費用を抑えつつ、負担の大きい部分だけ専門家に任せられるという点で、大きなメリットがあります。

相続人調査(戸籍収集)の費用の目安は、行政書士に依頼する場合は3~6万円程度、司法書士に依頼する場合は4~8万円程度となります。一般的に、金額は収集する戸籍の数や相続関係の複雑さによって増減します。また、相続人が多い場合や、代襲相続・数次相続が発生している場合には、追加費用が発生することもあります。

さらに、他の相続人と絶対に顔を合わせたくない、どうしても現地に行くことができない等の事情から検認期日への出席を代理人に依頼したい場合、これを依頼できる専門家は弁護士に限られます。弁護士に代理出席を依頼する場合は、検認の申立て等にかかる費用に加えて、別途日当として3~5万円程度が加算されることが多いです。ただし、家庭裁判所の判断によっては、申立人本人が出席するよう求められることもありますので、事前に確認が必要です。

 

まとめ

遺言書の検認は、遺言の有効・無効を判断する手続きではなく、遺言書の状態や内容を家庭裁判所が確認し、記録に残すための制度です。

その最大の目的は、遺言書の改ざんや隠匿を防止し、相続人間の無用な争いを防ぐことにあります。裁判所が中立的な立場で遺言書の形状や記載内容を確認し、検認調書として記録に残すことで、「どのような遺言書が存在していたのか」を客観的に明らかにし、後日の紛争予防につなげる役割を果たしています。

遺言書を発見した場合は、まず検認の要否を確認し、相続税の申告や相続放棄の期限との関係を意識しながら早めに準備を進めましょう。状況によっては、戸籍収集のみを行政書士に依頼するなど、無理のない方法で手続きを進めることも有効です。

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