相続人調査とは?調査方法から法定相続割合まで徹底解説

相続人調査とは

相続人調査とは、被相続人(亡くなった方)の財産を誰が相続するのかを確定するために、戸籍や住民票などの公的書類を収集・確認し、法定相続人を明らかにする手続きのことを指します。

相続は法律で「誰がどの割合で相続するか」が定められていますが、実際には戸籍の記録を丁寧にたどらなければ正しい相続人を把握できません。特に、再婚や養子縁組、認知された子どもがいる場合などは相続人の範囲が複雑になりやすく、調査を怠ると後に重大なトラブルへと発展する可能性があります。

 

相続人調査が必要な場面

相続人調査は、遺産分割協議や、その後の不動産の名義変更、銀行口座の解約・払戻しなど、相続に関するあらゆる手続きで必要となります。例えば、遺産分割協議書を作成する際には「相続人全員の合意」が前提となるため、誰が相続人であるのかを確実に特定しておかなければなりません。仮に一人でも相続人が漏れていれば、その協議は無効となり、やり直しや訴訟の原因になりかねません。また、相続税の申告においても正しい相続人の確定は必須です。

さらに、遺言書を作成する際にも相続人調査は重要です。遺言の内容が法定相続人の遺留分を侵害しないか確認するためにも、正確な相続人の把握が欠かせません。特に、複数の異性の間に子どもがいる場合や、本人に異母(異父)兄弟がいる場合などには、戸籍を通じた正確な調査が必要です。

 

相続人調査を依頼できる専門家

相続人調査は、自分で戸籍を取り寄せて進めることも可能ですが、戸籍の読み解きや複雑な家族関係の整理には専門知識が必要となります。このため、行政書士や司法書士、弁護士といった法律専門職への依頼が幅広く用いられています。

行政書士は、戸籍の収集や相続関係説明図の作成など、相続人調査を中心とした「書類作成・整理」のサポートを得意としています。司法書士は、不動産登記の申請まで含めて依頼でき、弁護士は相続人間で争いがある場合の紛争解決まで対応可能です。それぞれの専門家の強みを理解し、状況に合わせて依頼先を選ぶことが大切です。トラブルのない円満な相続の場合には、行政書士への依頼は費用対効果が高い方法といえるでしょう。

 

相続人調査の方法

ここでは、相続人調査の代表的な方法である戸籍の取り寄せと、相続人が行方不明の場合の対応について解説します。

 

戸籍の取り寄せ

相続人調査の第一歩は、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの一連の戸籍をすべて取得することです。これにより、被相続人の親子関係や婚姻歴、養子縁組の有無などを確認し、誰が法定相続人に該当するのかを明確にすることができます。

具体的には、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を順にさかのぼりながら収集し、家族関係をつなげていきます。途中で婚姻や転籍があると複数の市区町村から取り寄せる必要があるため、手間と時間がかかる作業です。戸籍は原則として本人や法定代理人、または正当な利害関係人であれば請求できます。亡くなった方の法定相続人にあたる方が、他の相続人を調査する目的で取り寄せるのであれば、「利害関係人」としての請求が認められるケースが一般的です。

 

相続人が行方不明の場合

相続人の一部が行方不明で所在が確認できない場合、まずは戸籍の附票や住民票の除票を取り寄せ、転出先や過去の住所履歴を確認することから始めます。これでも所在が分からないときは、親族・勤務先への聞き取りなどを通じて調査を行うこともあります。

それでも発見できない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる必要があります。不在者財産管理人は所在不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加し、本人の利益を保護する役割を担います。このような手続きを経ることで、行方不明者がいても相続手続きを進めることが可能になります。

 

法定相続人と法定相続分とは

遺産を分ける際には、民法で定められた「法定相続人」と「法定相続分」を確認する必要があります。法定相続人とは、亡くなった方の遺産を相続する権利を持つ人のことを指し、その範囲と順位は法律で明確に決められています。また、それぞれの相続人が取得できる割合(相続分)も規定されています。

ここでは、相続人について理解するために必要な「代襲相続」の仕組みや、家族構成ごとの相続割合を整理して解説します。

 

代襲相続とは

代襲相続とは、本来相続人となるはずだった方がすでに亡くなっている場合、その子ども(孫や甥姪)が代わりに相続人となる制度です。例えば、被相続人の子が被相続人より先に亡くなっていた場合、その子の子である被相続人の孫が親に代わって相続分を引き継ぎます。これにより、親より先に子が亡くなったようなケースでも、下の世代に対して公平に相続が続いていく仕組みになっています。

また、この代襲はさらに次の世代へと続く場合があり、これを「再代襲」と呼びます。たとえば、被相続人の子が死亡し、その子(孫)も相続開始前に死亡しているときは、孫の子(ひ孫)が孫に代わって相続します。さらにひ孫も死亡していれば、その次の世代へ…というように、直系卑属(子・孫など)については再代襲に制限はありません。一方、傍系(兄弟姉妹)の代襲は甥姪までに限られ、甥姪がすでに死亡していても、その子(姪孫)には再代襲は及びません。

 

それぞれの家族構成における相続人と相続割合

法定相続分は、配偶者の有無や子ども・父母・兄弟姉妹の存在によって変わります。まず前提として、配偶者は常に相続人となり、配偶者に加えて第1順位として子ども、第2順位として父母、第3順位として兄弟姉妹が相続人となります。

以下の表に家族構成ごとの法定相続人と法定相続割合を示します。

相続人となる人 解説 法定相続割合
1 配偶者+
子ども(直系卑属)
亡くなった方の父母・兄弟姉妹が存命の場合でも、配偶者と子のみが相続人となる。
すでに死亡した子に子(亡くなった方の孫)がいる場合は、孫が子に代わって相続人となる(代襲相続)。
配偶者:1/2

子ども:1/2を全員で均等に分割

2 配偶者+
父母(直系尊属)
亡くなった方に子や孫(直系卑属)がいない場合、配偶者と父母が相続人となる。
父母が死亡していて祖父母が存命の場合、祖父母が父母に代わって相続人となる。
配偶者:2/3

父母:1/3(父:1/6、母1/6)

3 配偶者+
兄弟姉妹
(傍系親族)
亡くなった方に子や孫(直系卑属)がおらず、父母や祖父母(直系尊属)もいない場合、兄弟姉妹が相続人となる。
すでに死亡した兄弟姉妹に子(亡くなった方の甥姪)がいる場合は、甥姪が兄弟姉妹に代わって相続人となる(代襲相続)。
配偶者:3/4

兄弟姉妹:1/4を全員で均等に分割

4 配偶者のみ 亡くなった方に子や孫(直系卑属)がおらず、父母や祖父母(直系尊属)、兄弟姉妹や甥姪もいない場合、配偶者のみが相続人となる。 配偶者が全て相続する
5 子ども(直系卑属)のみ 亡くなった方の配偶者が離婚や死別でいない場合、父母や兄弟姉妹が存命であっても、子どものみが相続人となる。
すでに死亡した子に子(亡くなった方の孫)がいる場合は、孫が子に代わって相続人となる(代襲相続)。
子ども全員で均等に分割
6 父母(直系尊属)のみ 亡くなった方が未婚もしくは死別や離婚などで配偶者がおらず、子や孫(直系卑属)もいない場合、父母のみが相続人となる。
父母が死亡していて祖父母が存命の場合、祖父母が父母に代わって相続人となる。
父母が全て相続する(父:1/2、母:1/2)
7 兄弟姉妹(傍系親族)のみ 亡くなった方が未婚もしくは死別や離婚などで配偶者がおらず、子や孫(直系卑属)・父母や祖父母(直系尊属)もいない場合、兄弟姉妹のみが相続人となる。
すでに死亡した兄弟姉妹に子(亡くなった方の甥姪)がいる場合は、甥姪が兄弟姉妹に代わって相続人となる(代襲相続)。
兄弟姉妹で均等に分割

 

法定相続人がいない場合

上記の表に該当するような法定相続人が全くいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。ただし、その前に特別縁故者への分与(家庭裁判所への申し立て)が認められる場合もあります。特別縁故者には、長年同居していた人や療養看護に尽くした人などが含まれます。

 

法定相続人以外に遺産を相続させたい場合

法定相続人以外に遺産を引き継がせたい場合は、遺言書の作成が必要ですが、ここで重要となるのが「遺留分(いりゅうぶん)」です。遺留分とは、配偶者や子ども、父母など一部の法定相続人に対して、必ず確保しなければならない最低限の相続分を指します。

例えば、内縁の配偶者や特別にお世話になった人に財産を残したい場合、遺言書で指定しなければ相続権は認められません。ただし、遺言によって法定相続人の遺留分を侵害することはできないため、誰にどれだけの遺産を残すのか、バランスに注意しながら内容を決める必要があります。

なお、法定相続人の遺留分は下記の表のように定められています。兄弟姉妹には遺留分は認められませんので、注意が必要です。

相続人の組み合わせ 遺留分を有する相続人 遺留分の割合
1 配偶者+子ども(直系卑属) 配偶者、子ども 配偶者:1/4
子ども:1/4を全員で均等に分割
2 配偶者+父母(直系尊属) 配偶者、父母 配偶者:1/3
父母:1/6(父:1/12、母:1/12)
3 配偶者+兄弟姉妹(傍系親族) 配偶者 配偶者:1/2
※兄弟姉妹に遺留分は認められない
4 配偶者のみ 配偶者 配偶者:1/2
5 子どものみ 子ども 子ども:1/2を全員で均等に分割
6 父母のみ 父母 父母:1/3(父:1/6、母:1/6)
7 兄弟姉妹のみ なし 遺留分は認められない

 

相続手続きで使用する相続人に関する書類

相続手続きを進める際には、相続人の範囲を明確に示すための書類を準備する必要があります。代表的なものが「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」です。両者はいずれも相続人の関係を整理して示すものですが、作成方法や証明力に違いがあります。

 

相続関係説明図

相続関係説明図は、被相続人を中心に家族関係を図式化し、相続人とのつながりを説明するための家系図のような書類です。戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍をもとに作成するもので、行政書士などの専門家だけでなく、相続人となった方や、遺言書を作製しようとする本人が作成するケースもあります。

実際の相続手続きの場面では、戸籍一式に加えてこの図を添付することで金融機関や法務局へ相続人の関係が伝わりやすくなります。ただし、相続関係説明図自体はあくまで「説明用の資料」であり、公的な証明力を持つものではありません。そのため、証明力を持つ戸籍謄本とセットで使用する必要があります。

 

法定相続情報一覧図

法定相続情報一覧図は、法務局に戸籍一式と申出書を提出し、登記官の確認を経て発行される公的な証明書です。登記官が戸籍の内容を確認したうえで作成されるため、金融機関や税務署など幅広い機関で正式な証明書として利用できます。

法定相続情報一覧図があれば、各機関で相続手続きを行う際に戸籍謄本一式の提出を省略できるため、財産が多岐にわたる場合(不動産や銀行口座が複数ある場合など)には作成しておくと便利です。なお、法定相続情報一覧図は無料で交付され、複数部を取得することも可能です。

先述の「相続関係説明図」があくまで自作の補助資料であるのに対し、法定相続情報一覧図は公的な証明として利用できる点が大きな違いです。

 

相続人調査にかかる費用

相続人調査には、戸籍謄本などの公的書類を取得するための費用と、専門家に依頼した場合の報酬がかかります。ここではそれぞれの目安を解説します。

 

法定手数料など

相続人調査に必要な戸籍謄本、除籍謄本などの交付には、市区町村役場で定められた手数料がかかります。戸籍謄本は1通あたり450円で、戸籍の附票や住民票の除票を取得する場合は、さらに1通あたり300円程度(自治体により異なる)がかかります。戸籍の附票や住民票の除票が必要になるのは、相続人の中に居場所が不明な人がいる場合などが挙げられます。

相続人調査の際は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍をそろえる必要があるため、転籍や分籍を繰り返している場合には10通以上の戸籍が必要になることもあり、総額で数千円から1万円程度になることが多いです。

 

行政書士に依頼する場合の費用

相続人調査を行政書士に依頼した場合、報酬は相続人の数や家族関係の複雑さなどによって変わりますが、3万円から5万円程度が相場です。相続関係説明図や財産目録の作成を含む場合には10万円から20万円程度になることもあります。行政書士に依頼することで、煩雑な戸籍収集を代行してもらい、正確かつ効率的に相続人を確定できる点が大きなメリットです。

ただし、行政書士は相続人調査や相続関係書類の作成をすることができますが、相続人同士で争いがあるケースや調停が必要な場合には弁護士の関与が必要になる点に注意しましょう。

 

まとめ

相続人調査は、相続手続きや遺言書作成にあたって欠かすことのできない最初のステップです。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を収集するには手間と時間がかかり、特に転籍や改製などを繰り返しているようなケースでは一般の方にとっては負担となることも少なくありません。

そのような場合に行政書士に依頼すれば、煩雑な戸籍収集や書類作成を代行してもらえるため、効率的かつ正確に相続人を確定できます。相続人調査を確実に行うことは、後のトラブル防止につながり、相続手続きをスムーズに進めるための基盤づくりでもあります。

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