入管とは
日本における外国人の出入国や在留に関する制度は、法務省の下にある「出入国在留管理庁(いわゆる『入管』)」が管轄しています。外国人が日本に入国し、滞在し、または退去するまでのあらゆる手続きを担うこの機関は、日本の治安や社会秩序を守る重要な役割を担っています。一方で、留学・就労・国際結婚などで来日する外国人にとっては、入管手続きが日本での生活のスタートラインでもあります。
ここでは、そんな入管の主な役割について、3つの機関に分けて解説します。
入管の主な役割
地方出入国在留管理局
地方出入国在留管理局は、全国にある地域単位の入管業務を担当する機関です。
東京、大阪、名古屋、福岡など全国主要都市に設置されており、在留資格の認定や変更、更新、永住許可の申請など、外国人の滞在に関するほとんどの手続きを扱っています。個別の事情に応じて面接が行われる場合もあり、外国人本人とのコミュニケーションの場にもなります。また、行政書士が代理人として申請書類を提出するのもこの窓口が中心です。
なお、手続きを行う場所は申請者である外国人の居住地を管轄する地方出入国在留管理局または支局となります。それぞれの所在地は出入国在留管理庁のHP(https://www.moj.go.jp/isa/about/region/index.html)で確認することができます。
空港・海港
空港や海港にある「イミグレーション(通称イミグレ)」と呼ばれる入国審査も、入管の重要な役割の1つです。
ここでは、入国審査官によってビザの有効性、旅券、所持品の確認などが行われます。入国拒否や特別審理が行われるのもこの現場です。観光や短期商用など、短期滞在の目的で日本に来る外国人にとっては、この審査が入国の可否を左右する重要なプロセスとなります。
入国管理センター
入国管理センターは、不法滞在や退去強制の対象となる外国人を収容する施設で、全国に複数箇所あります。この施設では、外国人の人権に配慮しつつも、適正な出入国管理を実現するための措置がとられています。
また、近年は施設に収容せず、一定の要件を満たす外国人については「監理措置」として、保証人の管理下で生活しながら退去手続きを進める制度も導入されています。監理措置制度は、収容の長期化問題や人権への配慮といった観点から注目されており、監理人による報告義務などを通じて適正な在宅管理が図られています。
さらに、「仮放免(かりほうめん)」という制度も存在します。これは、収容されている外国人が健康上の理由や家庭の事情、人道的な観点などにより、一時的に施設外で生活することを認める措置です。仮放免の申請について、詳しくは後述しますので、興味がある方はご参照ください。
行政書士による入管業務とは
行政書士は、外国人の在留資格に関する各種申請をサポートする専門家として活躍しています。中でも法務大臣の認定を受けた「申請取次行政書士」であれば、本人が入管に出頭せずに申請を行える制度(申請取次制度)のもとで代理人として活動できます。なお、申請取次の認定を受けていない行政書士でも、申請書類の作成を代理することは可能です。
この制度を利用することで、外国人本人は仕事や学業の合間に時間を取られることなく、行政書士に手続きを一任することが可能になります。申請書類の作成だけでなく、必要書類の収集、理由書の作成、申請書の提出、補正対応なども含め、総合的に支援を受けられるのが特徴です。
外国人の在留資格に関する手続きは、申請理由や証拠資料の構成が重要であるため、専門的な知識と経験が求められます。正確で迅速な手続きを希望する方や、申請の見通しに不安がある場合には、行政書士への依頼が大きな助けとなるでしょう。
入管で行う手続きの例
在留資格認定証明書(COE)交付申請
在留資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibility)は、現在は外国に住んでいて日本に中長期滞在を希望する外国人がビザを取得するために必要な書類です。これは日本国内の受け入れ側(雇用主、配偶者、教育機関など)が出入国在留管理局に申請し、交付されるものです。
COEの交付を受けることで、外国人本人は日本国外の大使館や領事館で査証(ビザ)の発給を受けられるようになります。特に、就労ビザや家族滞在ビザ、留学ビザなど、長期滞在を前提とした在留資格の取得には不可欠な手続きです。
申請には、申請人と受け入れ機関の関係を示す書類や、活動の詳細、必要な経済的基盤の証明など、多岐にわたる書類の提出が必要です。
在留資格変更許可申請
すでに在留資格を持って日本に滞在している外国人が、別の目的での滞在に変更したい場合に必要となるのが、在留資格変更許可申請です。たとえば、「留学」から就労資格の1つである「技術・人文知識・国際業務」への変更や、「短期滞在」から「日本人の配偶者等」などへの変更が該当します。
変更申請は、単に申請するだけで許可されるものではなく、活動の継続性や在留目的の妥当性が審査されます。また、就労資格への変更を希望する場合には、雇用先との雇用契約書や会社の業務内容に関する資料などの提出が求められるため、手続きは非常に煩雑です。
在留期間更新許可申請
現在持っている在留資格のままで日本に引き続き滞在したい場合には、在留期間更新許可申請を行う必要があります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で1年の期間が与えられていた場合、その満了前に引き続き同じ職場で勤務する意思があるなら、期間の更新が求められます。
更新申請は、原則として在留期限の3か月前から受付可能で、申請の結果が出るまでは仮滞在の制度により合法的に滞在を継続できます。ただし、更新が必ず認められるわけではなく、過去の在留実績や収入、納税状況などが審査の対象になります。
永住許可申請
日本に長期間安定的に居住している外国人が、より制限の少ない在留資格である「永住者」の取得を希望する場合に必要なのが、永住許可申請です。永住許可が下りると、在留期間の更新や在留資格の変更が不要になり、社会生活上の自由度が大きく広がります。
申請には、原則として10年以上の継続的な在留歴が必要ですが、配偶者ビザや高度人材ビザを有する方など、一定の条件を満たす場合には短縮されることもあります。また、安定した収入や納税履歴、日本社会への適応状況などが重要な審査項目となります。
資格外活動許可申請
「資格外活動許可申請」は、日本に在留する外国人が、本来の在留資格で認められていない活動を行いたい場合に必要となる手続きです。たとえば、「留学」の在留資格を持つ外国人が学業の傍らでコンビニや飲食店でアルバイトをする場合、この許可がなければ違法就労となってしまいます。
この許可は、あくまで本来の活動に支障がない範囲で認められるものであり、許可される労働時間や職種には制限があります(例:週28時間以内など)。申請の際には、在留カード、パスポート、申請理由書などを提出する必要があり、学校や所属機関の協力書類が求められる場合もあります。
資格外活動許可を取得することで、生活の補助となる収入源を確保できるため、特に留学生や家族滞在者にとっては大きなメリットがあります。
仮放免の申請
「仮放免の申請」は、退去強制手続き中の外国人が、入国管理センター等の収容施設から一時的に解放されるための制度です。退去命令や強制送還の決定が下された場合でも、本人の健康状態、家族状況、人道的理由などを踏まえ、入管当局の判断で仮放免が認められることがあります。
仮放免が認められると、被収容者は一時的に社会生活へ戻ることができ、家族との再会や医療機関での治療が可能になります。ただし、仮放免中は就労が禁止され、居住地や行動範囲の制限が設けられる場合もあります。また、定期的な出頭が義務付けられており、違反した場合には再収容されるリスクもあります。
仮放免の申請には、申請書の提出に加え、身元保証人の確保や保証金の支払いが必要となることもあります。
難民・補完的保護対象者認定申請
「難民・補完的保護対象者認定申請」は、母国での迫害や危険から逃れてきた外国人が、日本で保護を求めるための制度です。1951年の難民条約および1967年の議定書に基づき、日本も国際的な義務として難民の受け入れを行っています。
難民申請が認められるには、「人種、宗教、国籍、政治的意見などを理由に迫害を受けるおそれがあること」が必要です。一方、これらの要件に該当しないが、生命や身体に重大な危険が及ぶ恐れがある場合には、補完的保護対象者としての認定を受けることもあります。
申請には、申請書、事情説明書、証拠資料(写真、報告書、証言など)を提出する必要があり、審査期間は数年の長期に及ぶこともあります。
2024年にこれらの申請を行った外国人はおよそ13,600人で、そのうち何らかの形で在留が認められたのは約2,200人となっています。
在留資格の種類
外国人が日本に滞在するには、目的に応じた適切な在留資格(ビザ)を取得する必要があります。ここでは代表的な在留資格について詳しく解説します。
就労
「就労ビザ」は、日本で働くことを目的とする外国人に与えられる在留資格です。就労ビザにはさまざまな種類があり、職業内容や雇用形態によって区分されています。
代表的な就労ビザの例としては、次のようなものがあります。
- 技術・人文知識・国際業務:企業での翻訳、通訳、エンジニア、マーケティングなどの職種が対象。
- 技能実習:発展途上国の人材が日本で技術を学ぶことを目的とした制度。
- 特定技能:介護、建設、農業など人手不足分野で即戦力となる外国人向けの資格。
- 経営・管理:日本で会社を設立し、経営や管理に従事する人向け。
- 高度専門職:高度な学歴や職歴、年収などの要件を満たすことでポイント制により優遇される制度。
いずれの就労ビザも、活動内容や勤務先が在留資格に適合していなければならず、変更や更新には厳格な審査があります。
留学
「留学ビザ」は、日本の大学、専門学校、日本語学校などの教育機関に在籍して学ぶことを目的とする外国人に与えられる在留資格です。
このビザを取得するには、入学許可証、学費支払い能力の証明、滞在中の生活費の支弁方法などを示す必要があります。申請者が日本語学校に通う場合でも、在籍証明書や出席率、学業成績などが定期的に確認され、不適切な在留活動があった場合は更新が拒否されることもあります。
また、留学ビザを持つ人がアルバイトをしたい場合には、「資格外活動許可」を取得すれば、週28時間以内の範囲で就労することが認められます。
なお、学業終了後に日本で就職したい場合には、留学ビザから「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへの変更申請を行う必要があります。
日本人の配偶者等・家族滞在
「配偶者ビザ」および「家族滞在ビザ」は、日本人または在留外国人の配偶者や子どもが日本に一緒に滞在するための在留資格です。
- 日本人の配偶者等:日本人の配偶者や実子、特別養子などが対象で、比較的自由度の高い在留資格です。就労制限がなく、フルタイムの仕事も可能です。
- 家族滞在:就労ビザや留学ビザなどを持つ外国人の配偶者や子どもに適用される資格です。原則として就労はできませんが、資格外活動許可を取得することで一定の範囲でアルバイトが可能になります。
これらの在留資格を申請する際には、婚姻関係や親子関係の証明、経済的支援体制などを示す資料が必要です。虚偽申請や偽装結婚の疑いがある場合には厳しく審査されるため、信頼性の高い資料の提出が求められます。
永住者
「永住者」は、在留期間や活動内容に制限されず、日本で安定して長く生活することを希望する外国人に与えられる在留資格です。一度永住許可を得ると、在留期間の更新が不要となり、就労活動にも制限がありません。
永住申請には通常、以下のような条件を満たす必要があります。
- 原則として10年以上の継続的な在留(配偶者や高度人材等は短縮可)
- 安定した収入と生活基盤の証明
- 過去の納税実績と法令遵守の履歴
申請には、在留資格に応じた活動の継続状況を示す書類や、納税証明書、所得証明書、住民票など多くの書類が必要になります。審査には時間がかかることが多く、事前の準備が重要です。
ちなみに、永住申請と混同されやすい「帰化申請」は、日本国籍の取得を目的とする制度であり、入管ではなく法務局の管轄となっています。
在留資格申請の手続きの流れ
日本での在留を希望する外国人が在留資格を取得・変更・更新するには、所定の手続きを適切に行うことが求められます。ここでは、一般的な申請の流れについて、分かりやすく解説します。
1. 在留資格の選定
最初に、自身の活動内容や目的に合った在留資格を選定します。例えば、日本で働くなら就労系のビザ、家族と暮らすなら家族滞在や日本人配偶者ビザなど、正確な区分を確認することが重要です。
2. 必要書類の準備
申請する在留資格ごとに様々な添付書類が求められるため、これらの収集を行います。なお、必要書類の例については後述します。
3. 入管への申請
申請は、原則として居住地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。郵送では受け付けないケースもあるため、窓口への持参が基本です。申請取次行政書士に依頼することで、本人の同行なしに提出が可能になるケースもあります。
4. 審査と結果通知
申請内容と提出書類をもとに、出入国在留管理局による審査が行われます。審査期間は申請の種類や混雑状況によって異なり、1週間から数か月に及ぶこともあります。結果は郵送または窓口で通知されます。
5. 在留資格認定証明書、在留カードの受領
申請が許可されると、在留資格認定証明書(COE)の交付(新規入国の場合)や、新しい在留カードの交付(変更・更新の場合)が行われます。許可証やカードの交付を受けた後は、内容に誤りがないかを確認し、適切に保管・携帯するようにしましょう。
在留資格申請に必要な書類
在留資格の申請を行う際には、申請内容に応じて多くの書類を準備する必要があります。これらの書類は、申請の正当性や信頼性を裏付けるものであり、不備があると審査の遅延や不許可につながるおそれもあるため、正確かつ丁寧な準備が求められます。
基本的な提出書類
以下は、多くの在留資格申請で共通して求められる基本的な書類です。
- 申請書:在留資格ごとに様式が異なるため、最新の書式を使用します。申請書は出入国在留管理局のHP(https://www.moj.go.jp/isa/index.html)からダウンロードすることも可能です。
- 写真(縦4cm×横3cm):申請者本人の顔写真で、6か月以内に撮影したものが必要です。
- パスポートまたは在留カードの写し:申請時に原本提示を求められることもあります。
在留資格別の追加書類
申請する在留資格によっては、以下のような書類が追加で必要となります。
就労系ビザ(技術・人文知識・国際業務など)
就労系のビザの場合は、勤務先の会社の規模によって提出する書類が細かく定められていますので、事前に確認が必要です。必要書類の例としては以下のようなものが挙げられます。
- 雇用契約書や内定通知書
- 会社案内などの事業内容を明らかにする資料
- 本人の学歴または職歴を証明する資料
留学ビザ
入学先の学校が入管によって「適性校(留学生の在籍管理が適正に行われていると認められる教育機関)」に選定されている場合、添付書類が大幅に簡略化されます。一方、適正校でない場合には以下のような書類の提出が求められます。
- 日本語能力を証明する資料
- 経費支弁書(学費や生活費をどのように工面するのかを明らかにする資料)
- 預金残高証明書
配偶者・家族滞在ビザ
- 戸籍謄本、婚姻届受理証明書などの身分関係証明書
- 同居証明書や住民票(世帯全員分)
- 扶養者の経済的支援能力を示す在職証明書や課税証明書
永住者
- 納税証明書(過去数年分)
- 在職証明書や雇用契約書
- 身元保証書
- 居住状況を示す資料(住民票、住宅賃貸契約書など)
まとめ
入管業務は、外国人の在留に関する極めて重要な分野であり、申請の内容や目的に応じて非常に多様な制度と手続きが存在します。在留資格の取得や変更、更新など、どの手続きも適切な判断と書類の整備が求められるため、十分な準備と正確な情報の収集が欠かせません。
そのため、日本語の理解に不安のある外国人や、結婚や雇用等で外国人を日本に呼びたいと考えている方々にとっては、専門家のサポートを受けることも大きな安心材料となります。特に「申請取次行政書士」は、本人に代わって入管に申請できる制度上の資格を持っており、入管とのやりとりをスムーズに進めるうえで心強い存在です。入管における手続きにお困りの際は、ぜひ行政書士へのご相談をご検討ください。
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特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)