議事録作成は行政書士におまかせ!法的要件を満たす記録のポイント

議事録とは

議事録とは、会議や打ち合わせなどで話し合われた内容や決定事項を文書として記録するもので、企業活動や法人運営において非常に重要な役割を果たします。特に法人格を持つ組織では、法律によって一定の会議について議事録の作成が義務付けられており、適切な形式で保管しておかなければ、法令違反と見なされるリスクもあります。

ここでは、議事録の作成が法律で義務付けられている会議の例と、任意で作成されるケースについてご紹介します。

 

議事録の作成が法律で義務付けられている会議

以下のような会議体では、法律により議事録の作成が義務付けられています。それぞれの会議について簡単にご紹介します。

株主総会

株主総会は、株式会社の最高意思決定機関です。会社の基本方針や重要事項(定款変更、取締役選任、剰余金配当など)を決定する場で、原則としてすべての株主が参加できる会議です。通常、定時株主総会は毎事業年度終了後に1回の開催が義務付けられています。

取締役会

取締役会は、会社の業務執行の意思決定を行う機関です。複数の取締役が経営方針や重要な業務執行に関する決議を行う場で、一定以上の規模の会社では設置が必須となります。法律上の開催頻度は定められていませんが、実務では月1回以上の開催が一般的です。

監査役会

監査役会は、監査役が3名以上設置されている会社において設置が必要とされる会議体で、会社の業務や会計に関する監査方針や報告内容を議論・決定します。会社法により、原則として毎事業年度に4回以上の開催が求められています(四半期ごとに1回)。

安全衛生委員会

安全衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使用する事業場において労働者の安全と健康を守るために設置が義務付けられた委員会で、労働災害の防止策や職場環境の改善を話し合う役割を持ちます。労働安全衛生法により、毎月1回以上の開催が義務付けられています。

一般社団法人・NPO法人の社員総会

社員総会は、一般社団法人やNPO法人における最高意思決定機関です。会計報告の承認、理事の選任、定款変更などを議題とし、法人運営の方向性を決定します。法律上、通常は毎事業年度に1回以上、定時社員総会を開催する必要があります。

 

任意で作成される議事録

法的に作成が義務付けられていない会議でも、議事録を残すことには多くのメリットがあります。

たとえば、プロジェクトの進行会議や部署間の調整会議などでは、後から議論内容や決定事項を確認するための記録として役立ちます。特に契約交渉やクレーム対応などを議題とする場合には、任意の会議でも議事録を作成しておくことが推奨されます。

 

議事録を作成する目的

議事録の作成は、単なる記録業務にとどまらず、企業や法人の運営において多くの実務的・法的な意味を持っています。会議で決定した事項を明確に文書として残すことは、後のトラブル回避や説明責任の履行に直結する重要なプロセスです。ここでは、議事録を作成する主な目的について、3つの観点から詳しく解説します。

 

会議内容の確認

まず第一に、議事録は会議で話し合われた内容や決定事項を正確に振り返るための重要な記録資料です。会議当日は複数の意見が交わされ、議題が多岐にわたることもあります。そのため、口頭での記憶だけに頼ってしまうと、後日内容を誤って解釈したり、確認作業に時間を取られたりするリスクがあります。

議事録を残しておくことで、「どのような議題があり、誰が何を発言し、どのような結論に至ったか」を客観的に把握できます。特に経営判断や予算執行に関わる議題では、議事録を基に正確な進捗管理や社内報告が可能になる点が大きなメリットです。

 

欠席者への会議内容の周知

議事録は、会議に参加できなかったメンバーへの情報共有にも活用されます。特に部署横断的なプロジェクトや定例会議では、全員が必ずしも出席できるとは限りません。そのため、議事録を通じて欠席者にも平等に情報を伝えることが、組織全体の意思統一や業務の円滑化に貢献します。

また、議事録があることで「言った・言わない」のトラブルも避けやすくなります。誰がどのような提案をしたのか、どの意見が採用されたのかなどを明文化することで、後の誤解や認識のズレを最小限に抑えることが可能です。

 

紛争の予防

議事録には、会議での合意内容を明確にすることで、将来的なトラブルや法的リスクを回避するという役割もあります。たとえば、株主総会や取締役会での決議に関して訴訟などの法的トラブルが発生した場合、議事録は当時の事実を証明する公的な文書として機能します。

さらに、業務委託や契約内容の決定など、外部との関係性を含む重要事項が議論された場合にも、議事録があれば事実関係の裏付けが可能となり、証拠資料としても有効です。

 

議事録に記載すべき事項

議事録は、単なる会議の要約ではなく、法律上の要件や実務上の必要性に応じて、記載すべき項目が明確に定められています。議事録に何を記録するかによって、法的効力や証拠力に大きな違いが生じることもあるため、正確かつ漏れのない記載が求められます。

ここでは、法律により記載が義務付けられている事項と、実務上の観点から任意で記載されることが望ましい事項について詳しく解説します。

 

法律により記載が義務付けられている事項

会社法や労働安全衛生法などの法令では、特定の会議体において、議事録に記載すべき事項が明文化されています。以下は代表的な例です。

  • 会議の開催日時および場所:テレビ会議などで参加した出席者がいる場合はその出席方法についても記載が必要です。
  • 出席者の氏名および役職:株主、取締役、監査役など、会議に出席した者の氏名とその立場を明記します。
  • 会議の議題:何について話し合われたかを明確に記載します。
  • 発言の要旨または概要:重要な発言は記録の対象となります。すべてを逐語的に記載する必要はありませんが、決定に影響する発言は要約して記録します。
  • 議決の内容および結果:決議事項については、賛否の数や採決方法も含めて記載します。
  • 作成者・署名者の氏名:議事録の作成者および署名者(取締役会ならば出席取締役の署名など)を明記する必要があります。

 

任意で記載する事項

一方で、法的な義務はないものの、実務上記録しておくと有用な情報も多数あります。以下のような内容は、議事録の信頼性や実効性を高めるために積極的に記載することが推奨されます。

  • 配布資料の有無や添付ファイルの一覧:会議資料が後日確認できるよう、配布資料の名称や添付の有無を記録。
  • 次回会議の開催予定:定例会議やフォローアップが必要な場合は、次回の予定日も記載しておくと便利です。
  • 補足意見や反対意見の要旨:全会一致ではなかった場合、反対意見の存在や理由を記録することで、後日のトラブルを回避できます。
  • 業務上のタスク・アクション項目:議事録がタスク管理の役割を果たす場合には、誰が何をいつまでに行うか(いわゆるToDoリスト)も記載すると、実務での活用度が高まります。

 

議事録に関するその他の知識

議事録は作成するだけでなく、その後の保管や閲覧、提出対応に至るまでが法的・実務的に非常に重要です。特に株主総会や取締役会のような法定会議体に関しては、法律で定められた運用ルールを正しく理解し、対応することが求められます。

ここでは、議事録を扱ううえで知っておきたい「閲覧請求」「保管義務」「作成期限」「作成方法」の4つのポイントについて解説します。

 

議事録の閲覧請求

会社法などの法令では、一定の条件を満たす者に対して議事録の閲覧・謄写を請求する権利が認められています。たとえば、株主や債権者は、株主総会の議事録の閲覧請求を行うことができ、会社は正当な理由がない限りこれを拒むことはできません。

一方で、債権者が取締役会や監査役会の議事録を閲覧するためには、役員などの責任を追及する等の正当な目的を裁判所へ説明し、裁判所の許可を得る必要があります。

 

議事録の保管義務

議事録には、法律で保管期間が定められているケースが多数あります。たとえば、株主総会・取締役会の議事録は10年間の保管が会社法で義務付けられており、会社の本店に備え置くことが求められます。

一方、労働安全衛生法に基づく安全衛生委員会の議事録は3年間の保存義務があります。このように、それぞれの会議体ごとに保管期間や保管場所が異なるため注意が必要です。

 

議事録の作成期限

議事録は会議の終了後、できる限り速やかに作成することが望ましいとされています。たとえば、取締役会や監査役会の議事録は、会議終了後概ね1週間以内に作成し、関係者の署名または押印を受けることが通例とされています。

さらに、会議で決定された事項に基づいて変更登記を行う場合には注意が必要です。会社法では、登記事項に変更が生じたときは変更後2週間以内に登記を行う義務があります。変更登記の手続きの際には議事録を提出する必要があるため、遅くとも変更登記を行うまでには作成されていなければなりません。

 

議事録の作成方法

議事録の作成方法には、「書面での作成」と「電子データでの作成」があります。近年では、テレワークやペーパーレス化の流れを背景に、電子的な作成方法が増加しています。それぞれの特徴と留意点について解説します。

書面での作成

従来の方法であり、紙に印刷した議事録に関係者が署名または押印する形式です。法務局への登記申請書類などでは、紙の原本が求められるケースが今でも多くあります。

書面で作成された議事録は、バインダーやファイルで保管されることが一般的です。

電子データでの作成

パソコン上でWordやPDFファイルとして作成し、クラウドや社内サーバーなどに保管する方法です。電子帳簿保存法や会社法の運用により、一定の要件を満たせば、電子データでの保存も可能です。

また、電子データの場合は、物理的な押印に代えて電子署名を用いることが可能です。署名の真正性を担保するためには、電子署名を付与できる認証機能や署名済ファイルの改ざん検知機能を備えたツールやシステムを利用する必要があります。なお、会社法上も電子署名は有効とされており、法的効力も認められています。

 

議事録作成を依頼する際の相談先

議事録は正確性・網羅性・法的要件の充足が求められる重要な文書であり、特に会社法や関連法令に基づく法定会議の議事録では、些細な記載ミスが後々大きなトラブルにつながることもあります。

そのため、議事録の作成を以下のような専門家等へ依頼するケースも多くあります。

 

行政書士

まず代表的な相談先として挙げられるのが行政書士です。

議事録の作成は、行政書士法で定められた業務のひとつである「事実証明に関する書類の作成」に該当します。これは、一定の事実を証明するための文書を公的に整える業務であり、会議内容を正確かつ法的に有効な形で記録する議事録もその対象となります。

行政書士は、会社法や法人関連手続きに精通しており、要件を満たした議事録の作成代行が可能です。特に、登記申請に必要な議事録(役員変更、目的変更など)の作成において、記載内容の正確さと法的整合性が求められる場合には、行政書士によるサポートが非常に有効です。

また、一般社団法人やNPO法人など、特殊法人の運営に関する議事録についても、定款の記載事項との整合性や法的根拠を踏まえて作成できるのが行政書士の強みです。さらに、電子保存への対応や、取締役・理事の電子署名の有無に応じた体裁の調整も含めて柔軟に対応できます。

 

司法書士・弁護士

登記そのものを含めた手続きを一括して依頼したい場合には、司法書士に相談するケースもあります。特に会社設立や役員変更登記を行う際、登記添付書類としての議事録作成をパッケージで提供している司法書士事務所も少なくありません。

また、訴訟リスクや紛争性がある会議内容が含まれる場合には、弁護士への相談が望ましいです。特に株主間の対立がある株主総会や、労務トラブルが議題となる安全衛生委員会などでは、法的紛争に発展するリスクを見据えた議事録作成が必要になるため、弁護士の関与が推奨されます。

 

社内担当者や外部の記録専門業者

比較的形式的な定例会議や、重要性の高くない社内会議であれば、社内の総務担当者や秘書が議事録を作成するケースも一般的です。テンプレートを用いながら簡潔にまとめることで業務負担の軽減にもつながります。

また、会議録音データをもとに議事録を作成する外注型の記録サービスも普及しています。専門のライターや記録士が文字起こし・要約・構成を行い、見やすく整った文書を納品してくれるため、社内リソースの不足を補いたい企業には有効な手段となっています。

 

まとめ

議事録は、単なる会議の記録にとどまらず、企業や法人の運営における法的証拠・説明責任・トラブル回避の要となる重要文書です。特に株主総会や取締役会といった法定会議体では、会社法をはじめとする関連法令に基づいて、明確な記載事項や保管義務が定められており、その作成と管理の正確性が経営の信頼性に直結します。

作成や運用に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することも視野に入れて、確実な対応を心がけましょう。

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