目次
はじめに
事業を営むうえで、売上や経費を記録し、お金の流れを把握する「会計業務」は避けて通れないものです。個人事業主であっても法人であっても、日々の取引を帳簿に記録し、一定期間ごとにその内容を整理・確認することは、経営の基本といえます。しかし実際には、「会計や経理は苦手」「本業が忙しくて記帳まで手が回らない」「何をどこまでやればいいのか分からない」と感じている方も少なくありません。
本記事では、まず「会計業務とは何か」という基本的な考え方から整理したうえで、会計業務の中でどのような帳簿が使われているのかを解説していきます。そのうえで、行政書士による会計記帳代行とはどのようなサービスなのか、利用することでどのようなメリットがあるのかをお伝えします。さらに、専門家に会計記帳を依頼する場合の費用感についても触れ、これから記帳代行の利用を検討している方が全体像をつかめる内容を目指します。この記事が、会計記帳代行を上手に活用するための判断材料となれば幸いです。
会計業務とは
会計業務とは、日々の取引を金額や内容ごとに記録し、それを一定のルールに基づいて整理・集計する一連の作業を指します。売上や経費を帳簿に記帳するだけでなく、その結果をもとに事業の状況を把握し、税務申告や経営判断につなげていく点に大きな意味があります。個人事業主・法人を問わず、会計業務は事業活動を行う以上、必ず発生する基礎的な業務のひとつです。
会計業務の目的
会計業務の大きな目的の一つが、確定申告です。個人事業主であれば所得税の確定申告、法人であれば法人税等の申告を行う必要があり、その前提として、1年間の売上や経費を正確に集計しておくことが求められます。日々の記帳が適切に行われていなければ、申告期限が近づいてから慌てて資料を集めることになり、申告漏れや計算ミスにつながるおそれもあります。会計業務は、こうしたリスクを防ぎ、正確な申告を行うための土台となるものです。
また、会計業務は資金調達の場面でも重要な役割を果たします。金融機関から融資を受ける際や、補助金・助成金を申請する際には、試算表や決算書など、事業の実績を示す資料の提出を求められることが一般的です。日頃から会計業務を通じて数字を整理しておくことで、事業の信頼性を客観的に示すことができ、資金調達を円滑に進めやすくなります。
さらに、会計業務は経営状況の把握という点でも欠かせません。売上が伸びているのか、どの費用がどれくらいかかっているのか、利益がきちんと残っているのかといった点は、感覚だけでは正確に把握することができません。帳簿や数字を通じて現状を確認することで、無駄な支出の見直しや、次の経営戦略を考えるための判断材料を得ることができます。
主に使用される帳簿
会計業務では、取引の内容やお金の動きを正確に把握するため、複数の帳簿を使い分けて管理します。ここでは、特によく使用される代表的な帳簿について、その役割や特徴を表で整理します。
| 帳簿名 | 主な内容・役割 | 特徴・ポイント |
| 仕訳帳 | 日々の取引を発生順に記録する帳簿 | すべての会計処理の出発点となる帳簿。取引日付、借方・貸方の勘定科目、金額、取引内容の摘要などを記載し、「いつ・どのような取引があったか」を時系列で把握できる。会計ソフトを使用する場合も、入力内容は仕訳帳データとして管理される。 |
| 総勘定元帳 | 勘定科目ごとに取引金額を集計する帳簿 | 仕訳帳の内容をもとに、勘定科目ごとに日付、相手科目、金額、残高を整理・集計する帳簿。売上、経費、資産、負債の増減や期末残高を把握でき、決算書や試算表作成の基礎となる。 |
| 現金出納帳 | 現金の入出金を管理する帳簿 | 日付、入金額、出金額、取引内容、差引残高を記載し、手元現金の動きを管理する帳簿。帳簿残高と実際の現金残高が一致しているかを確認するために用いられ、現金取引が多い事業では特に重要。 |
| 預金出納帳 | 銀行口座の入出金を管理する帳簿 | 口座別に日付、入金額、出金額、取引内容、残高を記録する帳簿。通帳やインターネットバンキングの残高と照合し、入出金の管理や記帳漏れの防止に役立つ。 |
| 売掛金台帳 | 売掛金(未回収の売上)を管理する帳簿 | 取引先名、請求日、請求金額、入金期日、入金日、残高などを記載し、取引先ごとの回収状況を把握するための帳簿。入金漏れや回収遅延の防止に直結する。 |
| 買掛金台帳 | 買掛金(未払いの仕入・経費)を管理する帳簿 | 取引先名、請求日、支払期限、支払金額、支払日、残高などを管理し、支払い予定を可視化する帳簿。支払漏れや資金繰りトラブルを防ぐ役割を持つ。 |
行政書士による会計記帳代行とは
会計記帳代行とは、日々の取引内容をもとに帳簿を作成し、会計業務の一部を専門家が代わって行うサービスです。行政書士が行う会計記帳は、行政書士法に規定されている「事実証明に関する書類の作成」に該当すると解される業務の一つとされています。特に、創業間もない会社や小規模な事業者の場合、経理専任の担当者を雇うほどの余裕がなかったり、代表者自身が本業と経理を兼ねているケースも少なくありません。そのような場面で、会計記帳代行を利用することで、経理業務の負担を大きく軽減することができます。
行政書士による会計記帳代行では、多くのケースでは月に1回程度、必要な資料をまとめて提出する形が採られています。具体的には、現金出納帳や預金出納帳のコピー、請求書、領収書、買掛金管理票、支払予定表、売掛金管理票、預金通帳のコピー、給与明細書などが提出資料として想定されます。行政書士はこれらの資料を確認し、仕訳帳や総勘定元帳をはじめとする各種帳簿を作成していきます。
また、決算期においては、日々の記帳データをもとに貸借対照表や損益計算書といった決算書類の作成に対応している行政書士もいます。数字として事業の成果を整理することで、経営状況の把握や、今後の事業計画を検討するための資料として活用することができます。
一方で、注意しておきたいのが行政書士の業務範囲です。行政書士は会計記帳や決算書類の作成は行えますが、所得税や法人税の確定申告書類の作成・提出は、原則として税理士法に基づき税理士のみが行える業務とされています。確定申告まで含めて一括で依頼したい場合には、税理士と連携している行政書士に相談することで、記帳から申告までを一括で依頼することが可能になります。
行政書士の記帳代行を利用するメリット
行政書士に会計記帳代行を依頼する最大のメリットの一つは、人件費や会計ソフト導入費用を抑えられる点です。経理担当者を新たに雇用する場合には、給与や社会保険料といった固定費が発生しますが、記帳代行であれば必要な分だけ外部に業務を委託することができます。また、高機能な会計ソフトを導入・運用する負担を軽減できる点も、特に小規模事業者にとっては大きな利点です。
さらに、行政書士は官公署に提出する書類作成を本業とする専門家であるため、会計記帳だけでなく、補助金申請や各種許認可に関する相談を同時に行えるという強みがあります。事業の数字を把握したうえで、制度活用や手続き面のアドバイスを受けられるため、単なる記帳代行にとどまらない実務的なサポートが期待できます。
専門家に会計記帳を依頼する場合の費用
会計記帳代行を専門家に依頼する場合、費用は「誰に」「どこまでの業務を」依頼するかによって大きく異なります。ここでは、行政書士・税理士それぞれに依頼した場合の一般的な費用感を整理します。なお、実際の金額は業務量や事業規模などによって幅があるため、あくまで参考としてご覧ください。
まず、行政書士に会計記帳代行を依頼する場合、月額顧問料として契約するケースが多く見られます。小規模事業者や取引件数が比較的少ない事業であれば、月額1~3万円程度が一つの目安です。月に1回程度、日々の取引内容に関する資料を提出し、それをもとに仕訳帳・総勘定元帳・各種補助簿を整理する形が一般的です。
これに加えて、決算期に貸借対照表や損益計算書などの決算書類の作成を行政書士に依頼する場合には、別途費用が発生するのが一般的です。決算書類作成のみを追加で依頼する場合の費用感としては、3~10万円程度が目安となります。日常の記帳を継続して依頼している場合には、比較的低い金額で対応してもらえるケースもあります。
また、行政書士は会計記帳とあわせて、各種許認可申請や補助金・助成金の申請代行を行える点が特徴です。これらを追加で依頼する場合の費用は業務内容によって大きく異なりますが、例えば、許認可申請であれば数万円~十数万円程度、補助金・助成金の申請代行についても、制度の内容や書類量に応じて数万円から設定されることが一般的です。会計記帳を通じて事業内容や数字を把握してもらっている行政書士であれば、これらの手続きをスムーズに進めやすいというメリットもあります。
一方、税理士に会計記帳代行や税務を含めて依頼する場合には、月額顧問料として契約するのが一般的です。税理士との顧問契約では、記帳代行に加えて税務相談や確定申告、決算申告まで含まれることが多く、その分、費用は月額2~5万円程度、事業規模によってはそれ以上となるケースもあります。年に一度の決算・申告のみをスポットで依頼する場合でも、10~30万円程度が目安とされるケースが多いです。
まとめ
会計記帳代行は、日々の取引を正確に帳簿へ反映し、会計業務の負担を軽減するためのサービスです。特に、創業間もない事業者や小規模な会社にとっては、経理担当者を置くことが難しいケースも多く、本業に集中するための手段として記帳代行を活用する意義は大きいといえるでしょう。
行政書士による会計記帳代行は、行政書士法に基づく「事実証明に関する書類の作成」として位置づけられる業務です。記帳や決算書類の作成までを任せつつ、許認可申請や補助金・助成金の相談もあわせて行えるため、会計と行政手続きを一体的にサポートしてもらいたい事業者にとっては、有力な選択肢の一つといえるでしょう。
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特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)