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産業廃棄物処理業に関する許認可の概要
産業廃棄物の処理に関する法律的な枠組みは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称:廃棄物処理法)」に基づいています。この法律は、昭和45年に制定されて以降、度重なる改正がなされ、より厳格な廃棄物管理が求められるようになってきました。
廃棄物処理法の制定前は、ルールが十分に整備されておらず、不法投棄や不適切な保管による環境汚染、火災・爆発事故などが多発していました。こうした社会問題に対応するために導入されたのが、産業廃棄物処理業に関する許可制度です。
本記事は、これらの許可制度について体系的に整理し、初めて許可取得を目指す方にもわかりやすい内容となるよう心がけて作成しています。
法律上の産業廃棄物とは
産業廃棄物とは、その名のとおり事業活動に伴って排出される廃棄物のうち、政令で定められた20種類の廃棄物を指します。これは、一般家庭から出るごみとは区別され、主に製造業、建設業などの事業者から発生するものです。
また、これらのうち特に取り扱いに高度な管理を要するものは「特別管理産業廃棄物」に分類され、より厳格な規制の対象となります。さらに、その中でも人体に影響を及ぼすような有害な物質を含むものを、「特定有害産業廃棄物」と定めています。
以下の表に、産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の分類とその具体例を示します。
産業廃棄物の分類 | ||
分類 | 具体例 | |
1 | 燃え殻 | 焼却炉の灰、石炭がらなど |
2 | 汚泥 | 排水処理汚泥、メッキ汚泥など |
3 | 廃油 | 機械油、潤滑油、シンナー等の溶剤など |
4 | 廃酸 | 硫酸、塩酸、硝酸など |
5 | 廃アルカリ | 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、アルカリ性現像液など |
6 | 廃プラスチック類 | 発泡スチロール、廃タイヤ、ビニール類など |
7 | ゴムくず | ゴムの切断くず、ゴム手袋などのうち天然ゴムを主原料とするもの |
8 | 金属くず | 空き缶、研磨・切削くずなど |
9 | ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず | 窓ガラス、石膏ボード、コンクリートブロック、タイル、ガラス瓶、蛍光灯、陶磁器など |
10 | 鉱さい | 鉄鋼スラグ、不良石炭、鋳物砂など |
11 | がれき類 | コンクリート、レンガ、アスファルトなどのうち建設工事で発生したもの |
12 | ばいじん(煤塵) | 煙突のススなどのばい煙発生施設で生じたもの |
13 | 紙くず | 製紙工場・製本業・印刷業等で発生した紙の切断くず、建設現場における壁紙のくずなど |
14 | 木くず | 建設現場・家具工場等の木の切断くず、木製パレットなど |
15 | 繊維くず | 繊維工業で生じる繊維くず、建設現場で生じる絨毯、畳などのうち天然繊維のもの |
16 | 動植物性残さ | 肉・魚の骨や内臓、卵の殻、貝殻、野菜のくず、茶かす、コーヒーかすなどのうち、食品・医薬品・香料製造業により生じたもの |
17 | 動物系固形不要物 | と畜場で生じる皮、骨、内臓、羽など |
18 | 動物のふん尿 | 畜産業から生じる家畜のふん尿 |
19 | 動物の死体 | 畜産業から生じる家畜の死体 |
20 | 政令第13号廃棄物 | 産業廃棄物を処分するために中間処理を行い、形質が変化したもの(例:汚泥をコンクリート固型化したもの)など |
特別管理産業廃棄物の分類 | |||
分類 | 具体例 | ||
1 | 廃油 | ガソリン・軽油・シンナーなどの引火性油 | |
2 | 廃酸 | pH2.0以下の酸性の液体 | |
3 | 廃アルカリ | pH12.5以上のアルカリ性の液体 | |
4 | 感染性産業廃棄物 | 医療機関から生じる注射器、血液付着のガーゼなど | |
特定有害産業廃棄物 | 5 | 廃PCB等又はPCB汚染物 | PCBを含む廃油、PCBが付着した紙くず・木くず・繊維くず・廃プラスチック類・金属くずなど |
6 | PCB処理物 | 廃PCB等又はPCB汚染物を処分するために処理したもののうち、基準に適合しないもの | |
7 | 廃石綿等 | 建物から除去した石綿、石綿を含む保温材・壁紙・床材、除去作業で使用した防塵服・防塵マスクなど | |
8 | その他の有害産業廃棄物 | 水銀、下水汚泥、鉱さい、燃え殻、ばいじん、廃油などのうち、特定の施設から生じたものや、指定の有害物質が一定以上の濃度で含まれるものなど |
許認可の種類
産業廃棄物処理業を営むには、廃棄物処理法に基づき、都道府県(または市)許可が必要です。許可の種類は「収集・運搬業」と「処分業」の2つに分類でき、これらを合わせて「産業廃棄物処理業」と呼んでいます。
以下の表に、許可の種類とその手続きの難易度をまとめました。
分類 | 許可の種類 | 手続きの難易度 | |
産業廃棄物処理業 | 収集・運搬業 | 産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管なし) | ★★☆☆☆ |
産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管あり) | ★★★☆☆ | ||
特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管なし) | ★★☆☆☆ | ||
特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管あり) | ★★★☆☆ | ||
処分業 | 産業廃棄物処分業許可 | ★★★★☆ | |
特別管理産業廃棄物処分業許可 | ★★★★★ | ||
産業廃棄物処理施設設置許可 | ★★★★★ |
ここからは、各許可の概要をご説明します。
産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)収集運搬業許可とは
産業廃棄物を発生場所から最終処分場や中間処理施設、または中間処理施設から最終処分場まで運ぶために必要な許可です。この収集運搬業許可は、「積替・保管なし」と「積替・保管あり」の2つに分かれます。
「積替え」とは、廃棄物を別の車両へ載せ替える行為を指し、「保管」とは、一時的に廃棄物を保管施設に留め置く行為を指します。「積替・保管あり」の許可を取得すれば、廃棄物を一時的に保管し、大型車両へまとめて積み替えて輸送することが可能になり、業務の効率化につながります。ただし、この許可を得るためには、積み替えや保管の作業を行うための専用の施設が必要で、施設の設置に際しては条例に基づく説明会の実施などの手続きが求められます。
一方、「積替・保管なし」の許可では、積む場所から降ろす場所までの廃棄物の移動のみが許可されています。ただし、廃棄物を積載したままの車両を日をまたいで長時間止めておくことは、無許可の保管行為とみなされる可能性があるため、注意が必要です。
また、収集運搬業許可を取得する際には、実際に廃棄物を「積む場所」と「下ろす場所」がある都道府県それぞれの許可が必要となります。たとえば、神奈川県で積んで、東京都を通過して千葉県で下ろす場合、神奈川県と千葉県の両方で収集運搬業の許可を取得しなければなりません。この場合、東京都で積み替えや保管を行わず、通過するだけであれば東京都の許可は不要です。
さらに、この許可は有効期限が5年間と定められており、継続して事業を行うには、期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。なお、有効期限は、「優良認定」を受けた事業者は7年間に延長されます。優良認定についての詳細は後述していますので、ぜひ参考にしてください。
産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)処分業許可とは
処分業許可は、産業廃棄物の中間処理または最終処分を行うために必要な許可です。
中間処理とは、廃棄物をリサイクルまたは最終処分しやすくするために行う処理で、代表的なものには焼却・破砕・脱水・選別などがあります。中間処理によって、廃棄物の容量や有害性を減少させたり、再資源化が可能になるなどのメリットが得られます。たとえば、プラスチック廃棄物を破砕機で細かく砕く、金属屑を磁力で選別する、汚泥を脱水して水分を取り除くといった工程が該当します。
最終処分は、中間処理を経た廃棄物や、処理不能な廃棄物を処分するプロセスで、現在では埋立処分が主に用いられています。「埋立処分」では、中間処理によって廃棄物の有害性をできる限り取り除いた上で、環境への影響を最小限に抑えるために設計された施設に埋め立てます。かつては最終処分の一環として「海洋投入」が行われていましたが、現在では海洋汚染防止の観点から原則として禁止されています。
処分業許可の取得には、処理内容や対象廃棄物の種類に応じた施設の性能や財務基盤などの審査が行われ、非常に高い水準の適格性が求められます。また、特別管理産業廃棄物の処分を行う場合は、さらに厳格な基準を満たす必要があり、許可取得のハードルが一段と高くなります。
なお、こちらの許可も収集・運搬業と同様に有効期限が5年(優良認定を受けた事業者は7年)となっています。
産業廃棄物処理施設設置許可とは
上記の「産業廃棄物処分業」を行うにあたり、処理能力が一定以上の規模の施設や、特定の有害物質を処分するような場合には、別途「産業廃棄物処理施設設置許可」を得る必要があります。逆に、条件に当てはまらない小規模の施設などは設置許可は不要で、「産業廃棄物処分業許可」のみで事業を行うことができます。
例えば、以下のような処理施設は設置の許可を受けなければなりません。
- 焼却施設:廃プラスチック類や廃油の焼却施設で、処理能力が100㎏ を超えるもの、または火格子面積 2㎡以上のもの
- 焼却施設:廃PCB 等、PCB汚染物又はPCB処理物の焼却を行うもの
- 脱水施設:汚泥の脱水施設で、処理能が10㎥/日を超えるもの
- 破砕施設:廃プラスチック類や木くず、がれき類の破砕施設で、処理能力が5t/日 を超えるもの
- 溶融施設:廃石綿等又は石綿を含む産業廃棄物の溶融を行うもの
- 最終処分場:すべての最終処分場
なお、このような許可対象施設を設置しようとする場合、各施設に技術管理者を配置する必要があります。技術管理者は、大学(理学、薬学、工学、農学などの課程)を卒業してから一定の実務経験を有する者や、技術士の資格を有する者などの条件を満たす人でなければいけません。ただし、資格要件を満たす人材がいない場合には、講習を受講して試験に合格すれば基準を満たすことも可能です。
許可を受けるための要件
産業廃棄物処理業の許可を受けるためには、単に申請書を提出すればよいというわけではなく、一定の基準を満たしていることが求められます。
ここでは、許可を取得するために満たすべき5つの要件を解説します。
1. 講習会を受講し、修了証の交付を受けていること
まず、産業廃棄物処理業の許可を申請するためには、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習を受講し、修了証を取得している必要があります。講習は、取得しようとする許可の種類に応じて6つの課程が用意されており、いずれもオンラインまたは対面で受講することができます。
講習会は、各課程ごとに「新規」「更新」「変更」の3種類があり、産業廃棄物処理業の許可申請に利用する際には、適切なタイミングで受講する必要があります。具体的には、許可を新規で取得する際には、5年以内に受講した「新規講習」の終了証の提出が求められます。また、許可を更新する際には許可更新日から2年以内に「更新講習」を受講した終了証を提出しなければなりません。
許可申請の際に求められる終了証は、許可申請者が個人の場合は申請者本人、法人の場合は、法人の代表者や役員のものであることが多いですが、自治体によって扱いが異なりますので、事前に誰が受講すべきが確認しておくと良いでしょう。
なお、講習の所要日数や費用は課程によって異なりますが、新規許可の場合で2~5日程度、費用は2.5~10万円程度かかります。
2. 施設・設備の基準を満たしていること
収集・運搬業、処分業のそれぞれの許可において、施設や設備に関して満たすべき基準が設けられています。ここでは、それらの基準を業種ごとにご紹介します。
なお、ここで紹介する基準は全体の一部であり、これら意外にも細かなルールが定められています。許可の取得を目指す際には、都道府県(または市)のホームページや担当部署(「廃棄物指導課」など)での確認を行いましょう。
収集運搬基準
- 廃棄物が飛散、流出しないように収集運搬の作業を行うこと
- 収集運搬の作業に伴う悪臭、騒音、振動によって生活環境の保全上支障が生じないよう必要な措置を講じること
- 収集運搬に使用する運搬車、運搬容器等は、廃棄物が飛散、流出、悪臭発散等しないものであること
- 産業廃棄物運搬車両の両側面には、産業廃棄物を収集運搬している旨の表示に加え、事業者名や許可番号を表示すること
- 産業廃棄物運搬車両には、マニフェスト(詳細は後述します)を備え付けておくこと
処分基準
- 廃棄物が飛散、流出しないように処分の作業を行うこと
- 処分の作業に伴う悪臭、騒音、振動によって生活環境の保全上支障が生じないよう必要な措置を講じること
- 処分のために設置する施設は、生活環境の保全上支障を生ずるおそれがないよう必要な措置を講じること
- 廃棄物を焼却・熱分解する場合には、構造基準を満たす焼却施設を用い、環境大臣が定める方法により処分すること
- 法令等で定める施設を用いて処分を行う場合には、あらかじめ施設設置について所定の手続きを行うこと
保管基準(収集運搬業で積替・保管を行う、または処分業で保管を行う場合)
- 周囲に囲いが設けられ、積替・保管の場所であることの表示がされている場所で行うこと
- 廃棄物が飛散、流出、地下浸透及び悪臭発散のしないように必要な措置を講じること
- 保管場所が屋外にある場合、制限高さを超えて廃棄物を積み上げないこと
- ねずみ、蚊、はえ、その他の害虫が発生しないようにすること
- 産業廃棄物の保管を行う場合、1日当たりの平均的な搬出量の7倍(処分業の場合は1日当たりの処理能力の28倍)の数量を越えないこと
3. 十分な財務基盤を有していること
申請者には、事業を安定して継続するための十分な資金力が求められます。たとえば、自己資本比率、直前3年間の純利益、債務超過でないことや、税金の滞納がないことなどが審査の対象となります。
4. 適切な事業計画を有していること
処理する廃棄物の種類や量、処理方法、処理能力などを盛り込んだ事業計画を策定し、提出する必要があります。事業計画は、具体性があり、かつ整合性の取れたものでなければなりません。
たとえば、収集・運搬業の場合は、主にどこから出た廃棄物を運搬するのかをある程度具体的に表記しなければなりません(例:「〇〇県内の建設現場」など)。さらに、運搬予定先の処分場が、運搬する廃棄物の種類に対応している必要があります。また、運搬予定量が、保有する車両の運搬能力に対して著しく多いような場合には、訂正を指導される可能性があります。
5. 欠格事由に該当しないこと
個人事業の場合は申請者と事業所の代表者、法人事業の場合は法人の代表者と役員等および事業所の代表者が、以下のような欠格事由に該当しないことが求められます。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 過去に廃棄物処理法違反などの罪で罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 過去に廃棄物処理法違反などの罪で許可を取り消され、その取り消しの日から5年を経過しない者
- 廃棄物処理業務に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認められる相当の理由がある者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
申請手続きの流れ
ここでは、産業廃棄物処理業の許可を得るための一般的な申請手続きの流れをご紹介します。
1. 自治体での事前相談
まず行うべきは、許可申請先である都道府県や政令市の担当窓口への事前相談です。「収集運搬業(積替・保管あり)」や「処分業」などの施設を設置する業種では、各自治体の条例や要綱に基づく事前協議が必要です。「収集運搬業(積替・保管なし)」の場合は、事前協議は不要ですが、審査基準や必要書類、申請様式などは自治体ごとに若干異なる場合があるため、個別事情を踏まえて相談しておくと安心です。
なお、申請先の自治体を許可ごとに整理すると、以下のようになります。県をまたいで収集運搬および保管を行うようなケースでは、すべての自治体で許可を得る必要があるので注意しましょう。
許可の種類 | 申請先 |
収集運搬業(積替・保管なし) | 廃棄物を積む場所の自治体と下ろす場所の自治体 |
収集運搬業(積替・保管あり) | 廃棄物を積む場所の自治体と下ろす場所の自治体、積替・保管を行う施設のある自治体 |
処分業 | 処分施設のある自治体 |
2. 必要書類の準備・講習の受講
事前相談の内容をもとに、必要書類を整えていきます。併せて、JWセンターの講習会を受講し、修了証を取得しておく必要があります。
3. 許可申請書の提出
書類が揃ったら、自治体の担当窓口へ許可申請書を正式に提出します。この段階で法定手数料も支払うことになります。提出先は、都道府県知事または政令市の「廃棄物指導課」などの担当窓口です。
4. 審査・現地確認
提出書類に基づいて、自治体による書類審査が行われます。さらに、運搬車両や施設の実態について確認するための現地調査やヒアリングが行われることもあります。審査では、事業計画の適切性や財務状況などが重点的にチェックされます。
5. 許可証の交付
審査をクリアすると、産業廃棄物処理業の許可証が交付されます。許可の有効期間は原則として5年間であり、継続的に業務を行う場合は、期限内に更新手続きを行う必要があります。
「収集運搬業(積替・保管なし)」の場合は、申請書の提出から許可証の交付まで、2か月程度かかるのが一般的です。「収集運搬業(積替・保管あり)」や「処分業」の場合は、数年単位で時間がかかるケースも珍しくありません。
許可を受けるための必要書類
産業廃棄物処理業の許可を取得するためには、数多くの書類を提出する必要があります。
ここでは、すべての許可に共通する必要書類と、許可の種類ごとに求められる書類の例をご紹介します。ただし、必要書類は自治体によって異なるため、事前に申請先の自治体のホームページや担当窓口で確認を行うようにしてください。
全ての許可で共通の必要書類の例
許可の種類にかかわらず必要になる書類は、以下のようなものがあります。
- 産業廃棄物処理業許可申請書
- 講習会修了証の写し
- 定款および登記事項証明書(法人事業の場合)
- 住民票(個人事業の場合:本人、法人事業の場合:役員全員)
- 登記されていないことの証明書(個人事業の場合:本人、法人事業の場合:役員全員)
- 直近3年分の財務諸表(法人事業の場合)
- 資産に関する資料(個人事業の場合)
- 直近3年分の納税証明書(所得税・法人税など)
- 事業計画書
- 誓約書
各許可ごとに求められる書類の例
収集運搬業許可
- 運搬施設の概要
- 駐車場の案内図
- 環境保全措置の概要
- 運搬車両・運搬容器の写真
- 車両の所有権を証明する資料
- 駐車場の使用権を証明する資料
積替・保管ありの許可を得る場合、これらに加え、以下のような書類も必要になります。
- 積替・保管系統図(フローチャート)
- 積替・保管施設の土地及び建物の使用権を証明する書類
- 積替・保管施設の図面(平面図、立面図、求積図、断面図、構造図など)
- 物理的保管量の計算書及び1日あたりの平均搬出量の7日分を求める計算書
処分業許可
- 処分施設の土地及び建物の使用権を証明する書類
- 処分施設の図面(平面図、立面図、求積図、断面図、構造図など)
- 処分系統図(フローチャート)
- 従業員数の内訳
- 物理的保管量の計算書及び処理施設の1日あたりの処理能力の14日分を求める計算書
- 施設能力計算書
処理施設設置許可
- 処理施設の図面(平面図、立面図、求積図、断面図、構造図など)
- 処理工程系統図(フローチャート)
- 技術管理者の講習修了証
- 周辺環境への影響評価書類(騒音・振動・悪臭・景観等)
- 地元説明会の開催記録や合意書(自治体の条例で求められる場合)
- 工事施工計画書および工程表
産業廃棄物処理業に関して知っておきたい知識
産業廃棄物処理業の継続・発展には、法令や制度に対する正確な理解と遵守が求められます。ここでは、産業廃棄物処理業に携わるうえで最低限知っておきたい知識を紹介します。
マニフェスト制度
マニフェスト制度とは、排出事業者が産業廃棄物の収集運搬から最終処分までの流れを適切に管理・把握するために導入された制度です。1990年(平成2年)の廃棄物処理法改正により導入され、不法投棄や不適正処理の防止を目的としています。現在は、マニフェストは紙と電子の2種類があります。
一般的な紙マニフェストの運用の流れは以下のとおりです。
- 排出事業者が産業廃棄物を収集運搬業者に引き渡す際、マニフェスト(7枚つづりの複写式伝票)を記入し、1枚を手元に残して収集運搬業者に交付します。
- 収集運搬業者は、マニフェストを添えて廃棄物を処分場まで運搬し、処分業者に引き渡します。この際、マニフェストのうち手元保管用の1枚と、排出事業者へ返送するための1枚を抜き取り、残りを処分業者へ渡します。収集運搬業者は、抜き取ったマニフェストの1枚を排出事業者へ返送し、無事に運搬が終了したことを知らせます。
- 処分業者は、廃棄物の処理が完了した後に、マニフェストの手元保管用の1枚を抜き取り、残りを排出事業者へ返送することで処理が完了したことを報告します。
この一連のプロセスを通じて、排出事業者は「誰が」「どこで」「どのように」廃棄物を扱ったかを確認でき、適正な処理が行われたことを証明できます。
また、電子マニフェスト(JWNET)を利用する場合、紙のやり取りは不要となり、インターネット上で交付・受領・確認を行います。電子マニフェストの場合、排出事業者は、専用システムにデータを入力することでマニフェストを交付します。交付を受けた収集運搬業者や処分業者は、リアルタイムで処理状況を入力・確認することができます。
電子マニフェストを使用する場合も、収集運搬車両には、マニフェストの内容を記載した紙の書面か、もしくは書面のデータを保存したタブレット等の電子端末を備え付けておくことが義務付けられています(緊急時の対応や立入検査に備えるため)。
優良産廃処理業者認定制度
優良産廃処理業者認定制度は、通常よりも厳しい基準に適合した産業廃棄物処理業者を、都道府県や政令指定都市が認定する制度です。認定を受けるためには、遵法性、事業の透明性、環境配慮の取組、電子マニフェストの利用、財務体質の健全性などの基準を満たすことが必要です。
なお、優良認定を受けることで、以下のようなメリットが得られます。
- 優良認定業者であることを営業活動でアピールできる
- 産業廃棄物処理業の許可の有効期間が7年に延長(通常は5年)
- 財政投融資制度(国からの資金の貸付・投資の制度)において、低金利融資や補助制度の対象になるなどの優遇措置を受けられることがある
- 公共事業の入札参加において有利に取り扱われることがある
廃棄物処理法違反の罰則
廃棄物処理法に違反した場合、事業者や関係者には厳しい刑事罰や行政処分が科される可能性があります。
以下に、主な違反内容とそれに対する刑事罰を示します。
- 無許可営業(収集運搬業や処分業の許可を取得せずに事業を行った場合)
→ 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、またはその併科(法人に対しては3億円以下の罰金) - 不法投棄(廃棄物を許可のない場所に捨てる、埋める、放置する行為)
→ 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、またはその併科(法人に対しては3億円以下の罰金) - マニフェストの返送義務違反(収集運搬業者や処分業者が、マニフェストを返送しない)
→ 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
なお、これらの違反行為が発覚した場合、刑事罰に加えて、行政処分としての業務停止命令や許可取消処分が行われる可能性もあります。
許可の取得にかかる費用
産業廃棄物処理業において必要な許可を取得する際には、主に「法定費用」と「専門家(行政書士)への報酬」の2つが発生します。ここでは、それぞれの費用の目安についてご説明します。
法定費用
産業廃棄物処理業に関する許可を新たに取得する際の法定手数料は、以下の通りです。
- 収集運搬業許可(新規):81,000円
- 処分業許可(新規):100,000円
- 処理施設設置許可(新規):120,000~140,000円(施設の形態により異なる)
その他にも、必要書類の収集の際に、以下のような手数料がかかります。
- 住民票:200~500円程度/1通(自治体によって異なる)
- 登記されていないことの証明書:300円/1通
- 登記事項証明書(法人のみ):600円/1通
行政書士に依頼する場合の費用
行政書士に申請書類の作成や添付書類の整備、官公庁との折衝業務を依頼するメリットとしては、書類の不備による再提出リスクの軽減や、煩雑な手続きをスムーズに進められる点が挙げられます。
行政書士に依頼する際は、報酬として以下の表に示すような費用がかかります。ただし、行政書士費用は業務の複雑さによって変動しますので、依頼を検討する際には、個別の事情に合わせて見積もりを取って確認するのが良いでしょう。
分類 | 手続きの種類 | 行政書士報酬の目安 |
収集・運搬業 | 産業廃棄物収集運搬業許可申請(積替・保管なし) | 10~15万円 |
産業廃棄物収集運搬業許可申請(積替・保管あり) | 30~80万円 (※各自治体条例に基づく手続きの難易度により変動) |
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特別管理産業廃棄物収集運搬業許可申請(積替・保管なし | 10~15万円 | |
特別管理産業廃棄物収集運搬業許可申請(積替・保管あり) | 30~80万円 (※各自治体条例に基づく手続きの難易度により変動) |
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処分業 | 産業廃棄物処分業許可申請 | 中間処理:20万円~ 最終処分:80万円~ (※各自治体条例に基づく手続きの難易度により変動) |
特別管理産業廃棄物処分業許可申請 | 中間処理:50万円~ 最終処分:80万円~ (※各自治体条例に基づく手続きの難易度により変動) |
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産業廃棄物処理施設設置許可申請 | 中間処理:80万円~ 最終処分:80万円~ (※各自治体条例に基づく手続きの難易度により変動) |
まとめ
産業廃棄物処理業を営むには、法令に基づいた各種許可の取得が欠かせません。許可の種類には主に「収集運搬業許可」「処分業許可」があり、それぞれに必要な要件や申請書類、審査基準が定められています。
申請にあたっては、講習会の修了、財務状況の健全性、設備の整備、適切な事業計画など、複合的な要件を満たす必要があります。
必要に応じて行政書士などの専門家のサポートを受けながら、計画的かつ着実に準備を進めていきましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)