目次
クーリングオフとは
クーリングオフとは、いったん契約を結んだ後でも、一定期間内であれば消費者が契約を無条件で解除できる制度のことをいいます。簡単に言えば、「勢いで契約してしまった」「しつこく勧誘されて断れなかった」という状況から消費者を守るための仕組みです。
現代では、単純な商品の売買だけでなく、サービス契約などの様々な形態の取引が存在します。その中には、強引な勧誘や誤解を招く説明によって契約が行われてしまうケースもあります。クーリングオフ制度は、こうした不意打ち的な取引から消費者を保護するために設けられたものであり、一定の条件を満たすことで契約を理由なく解除できる点に大きな特徴があります。また、クーリングオフは法律に基づく制度であるため、事業者側が拒否した場合でも、条件を満たしていれば消費者は正当に権利を行使できます。
なお、クーリングオフの根拠となる法律は、金融商品取引法や保険業法、特定商取引法など複数存在し、それぞれの分野で制度設計が異なります。そこで本記事では、消費者トラブルと密接に関わりやすく、日常生活で最も多く利用されている「特定商取引法に基づくクーリングオフ」を中心に解説していきます。
特定商取引法とは
クーリングオフ制度を正しく理解するために、まずは「特定商取引法(特商法)」の目的や成立背景を知っておきましょう。
この法律は、消費者トラブルが生じやすい取引形態を対象に、事業者の不当な勧誘行為を防止し、消費者を守るために制定された法律です。たとえば、訪問販売や電話勧誘販売などは、消費者が冷静に判断しにくい場面で契約が行われるため、トラブルが発生しやすい特徴があります。そこで特商法は、こうした不意打ち的な契約や過度な勧誘から消費者を保護するために、事業者に対して厳しいルールを課しています。
特商法の目的は、消費者の利益を守り、適正な取引環境を確保することです。事業者に対しては、契約書面の交付義務や虚偽・誇大な説明の禁止、誤認を招く勧誘行為の禁止など、さまざまな規制を設けています。また、消費者が不利益を被らないよう、一定の条件を満たした取引についてはクーリングオフ制度が認められています。なお、クーリングオフが可能な具体的な取引類型については後述しますので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
クーリングオフが「できる」ケース
クーリングオフができるケースは、「特定商取引法で認められる取引に該当する場合」、「書面不備や妨害によって期間が始まらない場合」、そして「クーリングオフが適用外であっても契約を取り消せる場合」の3つに分類することができます。ここでは、3つのケースについてそれぞれ解説します。
特定商取引法でクーリングオフが認められる取引
特商法では、消費者が不意打ち的に契約させられやすい、または事業者側の優位性が非常に強い取引について規制しています。そのため、法律が特別に“契約を無条件で解除できる権利”を認めており、事業者側がクーリングオフを拒否することはできません。
また、クーリングオフの期間内であれば、消費者は理由を説明する必要もなく、違約金や返品にかかる送料等を支払う義務もありません。通知の方法や必要な記載事項については後述しますが、「まずはクーリングオフの対象となる取引なのか」を判断することが最初のステップとなります。
以下の表に、各契約の概要やクーリングオフ期間をまとめました。
| 取引類型 | 概要 | 取引の具体例 | 期間 |
| 訪問販売(キャッチセールス含む) | 事業者が営業所等以外の場所で、売買・役務提供契約等の申込み又は締結を勧誘する取引 | 住宅訪問での布団や浄水器等の物品販売・リフォーム工事等の契約、路上で声をかけられて店舗へ誘導される契約(キャッチセールス)など | 8日間 |
| 電話勧誘販売 | 事業者が電話(映像を伴う場合を含む)をかけ、売買・役務提供契約等の申込み又は締結を勧誘する取引 | 電話・テレビ電話・オンライン会議システム等での教材・サプリメント・健康食品等の勧誘など | 8日間 |
| 連鎖販売取引(マルチ商法・ネットワークビジネス等) | 個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・権利・役務の取引 | 「入会金・登録料等を支払って組織に加入し、他者を勧誘することで紹介料等を得られる取引」や「自身が勧誘した会員が商品を売ったら手数料が貰える取引」など | 20日間 |
| 特定継続的役務提供 | 一定期間・一定対価以上で提供される7つの特定の役務についての契約 | 「エステ・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相談所」のうち、2か月(エステ・美容医療は1か月)以上の期間の契約で、5万円を超えるもの | 8日間 |
| 業務提供誘引販売取引 | 収入が得られる業務提供を誘引しつつ、業務用商品等の購入を伴わせる取引 | 「在宅ワークのためにパソコンやソフトを購入させる」「チラシ配りの仕事のためにチラシを購入させる」「接客の仕事のために着物を購入させる」など | 20日間 |
| 訪問購入 | 事業者が消費者の自宅等を訪問し、物品を買い取る取引 | 自宅での貴金属・ブランド品・着物等の買取 | 8日間 |
※クーリングオフ期間は、原則として契約書面を正式に受け取った日から起算します。ただし、「連鎖販売取引」では、契約書面の受領日より後に商品を受け取った場合は、商品を受け取った日が起算日となります。
書面不備・妨害等があった場合のクーリングオフ
特定商取引法では、事業者が守るべき書面の交付義務や説明義務が細かく定められており、これらに違反する場合はクーリングオフ期間そのものが始まりません。たとえば、クーリングオフができる旨の記載が欠けている、事業者名・住所・契約内容が不十分であるなど、法律で定められた記載事項に不備がある書面が交付された場合、期間は進行せず、適切な書面が交付されるまではいつでも契約解除が可能です。
また、事業者が「クーリングオフはできない」と虚偽の説明をしたり、「違約金がかかる」などと威圧して権利行使を妨害した場合にも、期間は開始しません。これは、消費者の正当な権利行使を阻害する行為を防ぎ、事業者との力関係の不均衡を是正するための仕組みです。妨害が続く限りクーリングオフ期間は進行しないため、消費者は後日気づいた場合でも契約を取り消すことができます。
このように、書面不備や妨害行為があった場合は、通常のクーリングオフ期間の枠にとらわれずに契約を解除できる可能性があります。不審な点があると感じた場合は、期間の経過だけであきらめず、まずは書面の内容や事業者の対応に違法な点はなかったかを確認することが大切です。
クーリングオフ以外に契約を取り消しできるケース
先述したクーリングオフが適用できない場合でも、消費者が契約を取り消せる法律上の仕組みを利用できる可能性があります。ここでは、代表的な「消費者契約法に基づく取消し」と「錯誤・詐欺による取消し」についてご紹介します。
いずれもクーリングオフとは異なり、取引類型を限定せずに広く契約全般に適用される点が特徴で、事業者の不当な勧誘行為や、契約時の重大な誤解などを防止するための制度として機能しています。
消費者契約法に基づく契約取り消し・無効の主張
消費者契約法は、消費者と事業者の情報量・交渉力の差を前提に、消費者を不当な勧誘から保護するための法律です。たとえば、事業者が「この契約をしないと不利益が生じる」などと不安をあおった場合や、将来の利益を過度に保証するような断定的判断の提供を行った場合、また、重要事項を故意に告げなかった場合などで、特商法のクーリングオフ適用外の契約であっても取り消しが認められることがあります。
さらに、消費者契約法では「取り消し」だけでなく、契約が最初から無効と扱われるケースも存在します。典型例として、消費者の利益を一方的に害する条項(たとえば、解約を不当に制限する条項など)は、法律の規定により無効とされています。無効となる条項は、たとえ契約書に記載があっても効力を持たず、消費者はその規定に拘束されることはありません。
このように、消費者契約法は、契約そのものを取り消せる場面だけでなく、契約書の中に含まれる不当条項を無効とすることで、消費者を幅広く保護する仕組みを整えています。なお、契約取り消しや無効の対象となるケースについては、消費者庁のホームページで詳しく解説されています。
錯誤・詐欺による契約取り消し
民法上の錯誤や詐欺による取り消しは、契約そのものが「そもそも適切に成立していなかった」と評価される場面で用いられる制度です。
錯誤とは、契約の重要な要素について事実を誤認していた場合を指し、たとえば商品の性能を誤解して購入したようなケースが該当します。一方、詐欺による取消しは、事業者が虚偽の説明をして契約させた場合などに認められます。これらの取消しは、クーリングオフが適用されない取引類型であっても、一定の期間内であれば契約の無効を主張することができます。
クーリングオフが「できない」ケース
特定商取引法に基づくクーリングオフは便利な制度ですが、すべての取引が対象となるわけではありません。特定商取引法が想定する「不意打ち性の高い取引」や「事業者との力関係の不均衡が大きい取引」に該当しない契約については、原則としてクーリングオフを利用することはできません。
ここでは、代表的な「クーリングオフができないケース」を解説します。
実店舗での買い物
一般的な店舗での商品購入はクーリングオフの対象外です。実店舗では消費者自身が商品を手に取り、比較検討しながら自らの意思で購入を決めることができるため、「不意打ち的な勧誘」に該当しないと解釈されるからです。
また、実店舗で購入した商品について、不良品や商品の取り違えなどの場合を除き、店側には返品や交換に応じる義務はありません。購入者の都合による返品に応じてもらえる場合もありますが、それはあくまでも店舗が独自のサービスとして提供しているものであり、いわば“店側の善意”による対応と言えます。
通信販売
インターネットショッピングやカタログ販売などの通信販売も、原則としてクーリングオフの対象外です。通信販売は消費者が自ら商品を探し、比較し、注文するという自主的な行動で契約に至るため、特商法上の「不意打ち性」がないと考えられています。
しかしながら、通信販売の場合、クーリングオフ制度とは別に、商品を受け取った日から8日以内であれば、購入者が送料を負担することで返品できると特商法で規定されています。これは、事業者が特約を明示していない限り適用される一般的な返品制度で、消費者が商品を実際に手に取れない通信販売ならではの救済措置といえます。
ただし、この返品制度はあくまでも「特約がなければ」適用されるものであり、事業者が返品不可や短期の返品期限を明示している場合には、その特約が優先されます。そのため、通信販売で商品を購入する際には、返品条件や特約の有無を確認しておくことが重要です。
営業用・仕事用の契約
一般に、事業として行う取引や仕事に用いる契約では、特定商取引法が保護対象とする「消費者」に該当しないため、クーリングオフの対象外とされています。しかし、「営業用」に該当するかどうかは単に“お金を稼ぐつもりで購入したかどうか”だけで判断されるものではありません。
特商法では、契約の目的物やサービスの内容、購入者が実際に行っている(または行おうとしている)利益活動との関連性、業務として利用するための設備等の準備状況など、複数の事情を総合的に見て、「その人が当該分野の事業者として取引に習熟しているかどうか」で判断します。例えば、電話で情報商材を勧誘され「簡単に稼げるようになる」と言われて購入した場合でも、購入者がその分野で事業を営む準備をしていない、経験がない、設備もないといった状況であれば、通常は「営業用の契約」とは扱われません。
つまり、「稼ぐ目的で買った=営業用だからクーリングオフ不可」と短絡的に判断されるわけではなく、実態として事業者とみなせるだけの活動を行っているかどうかが重要なのです。よって、購入者が当該分野の事業に習熟しておらず、単に利益を得たいという漠然とした思いだけで契約した場合には、消費者として扱われ、特商法の保護対象になるというのが一般的な解釈です。
不動産の賃貸契約
住居用・事業用を問わず、通常の不動産賃貸契約はクーリングオフの対象ではありません。これは、特定商取引法が規制対象とする“勧誘形態に起因するトラブル”とは性質が異なり、不動産賃貸借が独自の法律関係(民法・借地借家法など)によって安定的に運用されるべき契約と位置づけられているためです。特商法のクーリングオフ制度は、訪問販売や電話勧誘販売のような「不意打ち性」や「勧誘の強制性」を理由とした救済手段であるのに対し、賃貸借契約は、物件の内見・条件交渉・契約書確認などの過程を経て締結されるのが通常で、消費者が冷静に判断する機会が十分に確保されています。
また、不動産賃貸借は、賃借人と賃貸人の双方が長期間の継続的関係を築く契約であり、法令もその継続性を前提として制度設計されています。そのため、契約後に一方的に無条件で解除できるクーリングオフ制度を導入すると、賃貸人(大家さん)の権利が著しく不安定になるという問題が生じます。こうした理由から、一般の賃貸借契約には特商法のクーリングオフ制度は適用されません。
自動車・二輪車の購入契約
自動車や二輪車の購入契約は、たとえ高額であっても、特定商取引法におけるクーリングオフの対象には含まれません。これは、自動車の売買が「不意打ち的に契約を迫られる取引」ではなく、消費者が展示車両の確認、見積もり内容の比較、試乗、契約条件の説明などを十分に受けられる性質のものと考えられているためです。新車だけでなく、中古車やいわゆる新古車であっても、この点は変わりません。また、同様の理由で、訪問販売・電話勧誘販売・訪問買取のような取引形態であっても、特商法のクーリングオフ制度は適用されません。
もっとも、自動車(二輪車)の購入後に重大な欠陥が判明した場合には、特商法ではなく民法の「契約不適合責任」「錯誤」「詐欺」や、消費者契約法の「不当な勧誘」に基づき修補請求や代金減額、契約解除を求められる可能性があります。したがって、自動車(二輪車)の購入契約はクーリングオフの対象外ではあるものの、他の法的手段によって救済を受けられる余地は十分にあると言えるでしょう。
開封・使用済みの消耗品
健康食品、化粧品、日用品などの政令で指定されている消耗品は、開封済みまたは使用済みの場合、クーリングオフが認められません。以下のような物品が政令で指定されており、これらは使用済み(または一部消費済み)となった場合に再販売ができず、事業者側に過度の負担が生じることが理由とされています。
- 動物・植物の加工品(いわゆる健康食品等、ただし医薬品を除く)
- 不織布・織物(幅13センチ以上)
- コンドーム・生理用品
- 防虫剤・殺虫剤・防臭剤・脱臭剤(医薬品を除く)
- 化粧品・毛髪用剤・石けん(医薬品を除く)・浴用剤・合成洗剤・洗浄剤・つや出し剤・ワックス・靴クリーム・歯ブラシ
- 履物
- 壁紙
- 配置薬
ただし例外として、販売業者が積極的に使用を促した場合や、試供を事実上強制したような勧誘があった場合には、購入者側に責任がないため、クーリングオフが認められることがあります。たとえば、「一度使ってみないと効果が分からない」と業者が指示して使用させた場合などが該当します。
なお、上記の物品を開封・使用してしまった場合でも、契約書の内容や勧誘の方法によっては、消費者契約法や民法の規定に基づき契約の取消しが認められる可能性もあります。契約に疑問を感じた際は、クーリングオフの可否だけで判断せず、他の救済制度も含めて検討することが大切です。
クーリングオフの通知方法と記載事項
クーリングオフを確実に成立させるためには、期限内に適切な方法で「書面または電磁的記録」によって通知することが求められます。
ここでは、代表的な通知手段と、クーリングオフ通知書に記載すべき基本事項について解説します。
通知方法
クーリングオフの通知方法には複数ありますが、最も重要なのは「証拠が残る形で発送すること」です。事業者側とトラブルになった際に、こちらが期限内に通知したことを立証できるかどうかが大きなポイントとなります。
ハガキ
ハガキは最も気軽に利用できる方法で、国民生活センターなどの公的機関でも有効なクーリングオフ通知手段として紹介されています。ただし、そのままポストに投函してしまうと、相手方に「届いていない」と主張された場合に、クーリングオフを通知した事実の証明が難しくなります。そのため、ハガキの両面のコピーを取った上で、「簡易書留」または「特定記録郵便」で送付することが推奨されます。
費用は、ハガキ1枚83円に加えて簡易書留料金350円を加えて合計433円で利用することができます。特定郵便の場合は、手渡しではなく相手方の郵便受けへの配達となりますが、ハガキ1枚83円に加えて特定記録郵便料金210円を加えて、合計293円となります(2025年時点)。
内容証明郵便
確実性を重視する場合には、内容証明郵便が最も安心できる手段です。郵便局が「どんな内容を」「いつ差し出したか」を公的に証明してくれるため、事業者との間で認識の相違が生じた場合でも、強い証拠として機能します。特に高額契約のクーリングオフや、相手方が強気な態度を示している場合には、有効性が高い方法といえるでしょう。クーリングオフ通知を行政書士や弁護士が作成する場合でも、より確実性を高めるために内容証明郵便を利用するのが一般的です。
内容証明郵便郵便の送付方法は、紙の文書を郵便局に持ち込む方法と、オンラインで手続きができるe内容証明の2種類があります。紙の場合、郵便局が指定する文字数や行数のルールに従って、同じ内容の文書を3通作成(相手方・郵便局・送付者控え用)する必要があります。一方、e内容証明はパソコンから24時間いつでも作成・送信ができ、文字数制限も柔軟になっているため、急ぎの手続きにも向いています。
費用は、基本料に加えて書留料金やオプションを含めると、紙の内容証明で1,000~1,600円前後、e内容証明は1,000円台半ば~2,000円程度が一般的な目安です(ページ数等によって変動)。
メール
メールによるクーリングオフ通知は、2022年の特定商取引法改正により正式に認められた方法です(書面に加え「電磁的記録」による通知が可能となったため)。スマートフォンやパソコンからすぐに送信でき、時間や場所を選ばず対応できる点が大きな利点です。
ただし、メールの場合は「送ったつもりだったのに証拠が残っていなかった」というトラブルが起こりがちです。たとえば、以下のようなケースでは送信記録の確認が困難になります。このようなリスクを避けるため、送信直後にスクリーンショットを取り、日時が確認できる形で保存しておくことを強くおすすめします。
- メールアプリの自動削除設定により、送信済みフォルダが一定期間後に消えてしまう
- 機種変更・端末故障などにより送信履歴が失われる
- メールアドレスの入力を誤って送信エラーとなっていた
- Webメールのアカウントがロックされた・削除されたことで履歴にアクセスできなくなる
記載事項
クーリングオフ通知には、最低限押さえておくべきポイントがあります。多少書き漏れがあってもクーリングオフ自体は成立しますが、後々のトラブルを防ぐため、以下の項目をできるだけ明確に抜け漏れなく記載することをおすすめします。
- タイトル(「クーリングオフ通知」「契約解除通知」など)
- 契約年月日と契約場所
- 契約の対象(商品名・サービス名など)と金額
- 事業者名と担当者名
- クーリングオフを行う旨(「上記日時に締結した契約について、クーリングオフを行います。」など)
- 通知を送付した日時
- 契約者本人の住所・氏名・連絡先
また、宛名欄は事業者の所在地と事業者名に加え、代表者名(代表者名がわからない場合は、「代表者様」など)を記載するのが良いでしょう。
クーリングオフに関する相談先
クーリングオフが可能かどうか、また通知方法が適切かどうかは、契約内容や勧誘の状況によって判断が分かれることがあります。迷ったまま期限を過ぎてしまうと取り返しがつかないため、早めに相談先へアクセスすることが大切です。
ここでは、公的な相談窓口と専門家への相談について、それぞれ特徴を踏まえて紹介します。
消費生活センター
まず頼りになるのが、全国各地に設置されている「消費生活センター」です。クーリングオフ制度についての一般的な相談はもちろん、契約内容や勧誘の状況を丁寧にヒアリングし、具体的にどう行動すればよいかアドバイスしてくれます。
なお、全国の消費生活センターの窓口は、国民生活センターのホームページで確認することができ、各窓口で電話や面談での相談が可能です。また、「188(いやや!)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながる仕組みになっているため、緊急時でも利用しやすい点が特徴です。
専門家
行政書士
クーリングオフ通知書の作成は、行政書士の業務の1つである「権利義務に関する書類の作成」に該当します。クーリングオフ通知は、契約の解除という重要な法律効果を生じさせる書類であるため、専門家が内容を整理し、法的に有効な書面を準備することで、より確実性の高い通知が可能になります。
一方で、クーリングオフを巡って事業者と明確な対立が生じている場合、あるいは争いに発展しそうな段階にある場合には注意が必要です。相手方との直接交渉や、訴訟を前提としたアドバイスを行うことは行政書士には認められておらず、これらを行ってしまうと非弁行為に該当するおそれがあります。このようなケースでは、速やかに弁護士へ相談することが適切です。
なお、行政書士にクーリングオフ通知(内容証明郵便)の作成・送付を依頼する場合の費用は、1〜3万円前後が一般的な目安です。これに加えて郵便局での内容証明料・書留料などとして1,000〜1,600円程度が追加でかかります。
弁護士
事業者との対立が深刻化している場合や、すでに返金交渉・損害賠償請求などの法的争いが発生しているケースでは、弁護士への相談が最も適切です。クーリングオフ通知そのものは自分で行えますが、相手方が応じない、事実関係を否認する、あるいは逆に請求をしてくるなど“紛争性が高い状況”にある場合、弁護士は相手方との交渉や訴訟代理までを一貫して行えるため、問題が複雑化している場面では非常に頼りになる存在です。
また、クーリングオフの可否判断だけでなく、消費者契約法による取消し、民法上の錯誤・詐欺、契約不適合責任など、クーリングオフ以外の手段が取れるかどうかも総合的に検討してもらえる点も強みです。契約書の内容や勧誘経緯が複雑な場合には、弁護士が事実関係を整理し、最も効果的な法的手段を選択するサポートをしてくれます。
費用については、弁護士にクーリングオフを依頼した場合、通常は着手金5〜15万円前後が目安となります。さらに、事業者が応じず訴訟に発展した場合には、着手金とは別に報酬金(回収額の10〜20%程度が一般的)が発生します。
まとめ
クーリングオフは、消費者が不意打ち的な勧誘や冷静な判断が難しい状況で契約してしまった場合に、一定期間内であれば無条件で契約を解消できる、非常に強力な救済制度です。一方で、クーリングオフの適用可否は、契約がどの類型に当てはまるかによって左右されるため、制度を正しく理解することがとても重要です。
万一、クーリングオフが適用されないケースであっても、消費者契約法に基づく取消し、民法の錯誤・詐欺、契約不適合責任など、ほかにも利用できる法的手段は複数あります。焦って判断する前に、契約書や勧誘時の状況を整理し、どの制度が使えるかを冷静に検討することが大切です。
不安や疑問がある場合には、消費生活センターや専門家に早めに相談することで、トラブルの深刻化を防ぎやすくなります。行政書士は内容証明郵便の作成サポートを行うことができますし、紛争に発展しているような場合には弁護士が力強い味方になります。困ったときには一人で悩まず、専門的な支援も積極的に活用しながら対応していきましょう。
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特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)