風営法改正で何が変わる?2025年最新の変更点と影響を行政書士が徹底解説

「風営法」とは

「風営法(ふうえいほう)」(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)とは、別名で「風適法(ふうてきほう)」とも呼ばれ、風俗営業や深夜営業といった業種の健全な運営を目的に、営業内容や営業時間などを規制する法律です。昭和23年に制定されて以降、社会情勢の変化に合わせて何度も改正が行われており、近年ではホストクラブやコンカフェ、ガールズバーなど新しい業態にも対応する形で見直しが進められています。

本記事では、2025年の風営法改正の内容とその影響を中心に解説しますが、その前提として法律の全体像を理解することが重要です。ここでは、改正の内容をより深く理解するために、まずは「風営法」とはどのような法律なのかについて説明します。

 

風営法に基づく4種類の許認可

風営法の対象となる営業は大きく分けて次の4つです。これらの許可や届出の審査・監督は、いずれも都道府県公安委員会の管轄となります。

区分 概要 許認可の種類
風俗営業 キャバクラ、ホストクラブ、スナックなど、接待行為を伴う営業や、パチンコ店、マージャン店、ゲームセンターなどの客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業。 許可
特定遊興飲食店営業 ライブハウスやクラブなど、音楽やダンスなどの“遊興”を伴う飲食店で、午前0時以降に営業するもの。 許可
性風俗関連特殊営業 いわゆる「デリヘル」「ソープランド」など、性的サービスを提供する業態。 届出
深夜酒類提供飲食店営業 午前0時以降にお酒を提供するバー、ガールズバー、コンカフェなど。接待行為は禁止されている。 届出

 

風営法の規制対象となる営業形態

ここでは、先に述べた4種類の許認可のうち、今回の風営法改正に特に関係が深い「風俗営業」と「深夜酒類提供飲食店営業」について詳しく解説します。

 

風俗営業

「風俗営業」とは、キャバクラ、ホストクラブ、スナックなど、接待行為を伴う営業を行う業態の他、マージャン店やゲームセンターなどの幅広い業種が含まれます。業種ごとに1~5号の区分に分かれており、以下の表のように整理することができます。

区分 営業の種類 主な営業形態の例 営業可能時間
1号 料理店、社交飲食店 キャバクラ、ホストクラブなど客の接待をして客に遊興又は飲食させる営業 午前6時〜午前0時まで
※都道府県条例により午前1時まで可能な場合あり
2号 低照度飲食店 喫茶店、バーなどのうち、客席における照度を10ルクス以下として営むもの 午前6時〜午前0時まで
※都道府県条例により午前1時まで可能な場合あり
3号 区画席飲食店 喫茶店、バーなどのうち、広さが5平方メートル以下の他の人から見えづらい席を設けて営むもの 午前6時〜午前0時まで
※都道府県条例により午前1時まで可能な場合あり
4号 マージャン店・パチンコ店等 マージャン店、パチンコ店などの客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 ・パチンコ店:多くの地域で午前10時~午後11時
※都道府県条例により「午前8時~午前0時」「午前9時~午後11時」など様々
・マージャン店(雀荘):午前6時〜午前0時まで
※都道府県条例により午前1時まで可能な場合あり
5号 ゲームセンター等 ゲームセンター、アミューズメント施設(景品あり)などの客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
※ビリヤード、ボーリング、もぐらたたき、ドライブシミュレーションなどの射幸心を煽らない遊戯のみをさせる場合は規制の対象外
原則として午前6時から午前0時まで
※都道府県条例により「午前10時から午前0時」「午前9時から午前1時」など様々

上記「1号営業」における「接待」とは、客の隣に座って談笑する、飲酒を共にする、カラオケの相手をするなど、客をもてなす行為を指します。近年では、ガールズバーやコンカフェなど、接待の有無が曖昧な業態も増えており、警察による取り締まりや監視が強化されている分野です。また、今回の風営法改正で最も大きく影響を受けるのが1号営業です。なお、改正内容の詳細については後述します。

 

深夜酒類提供飲食店営業

「深夜酒類提供飲食店営業」は、居酒屋、バー、パブ、ガールズバー、コンカフェなど、午前0時以降にお酒を提供する飲食店営業が該当します。風俗営業と異なり、接待行為を伴わないことが前提であり、営業を行うためには「届出」を提出する必要があります。

この営業形態では、従業員の客に対する接待行為や過度なサービスが確認されると、風俗営業に該当すると判断され、無許可営業として摘発されるリスクがあります。「接待行為」に該当する行為について、詳しくは後述しますので、興味のある方は「ガールズバー・コンカフェ等の摘発の可能性」の項目をご覧下さい。

 

風営法改正の背景

今回の風営法改正は、単なる制度的な見直しではなく、社会的に大きな注目を集めた事件や問題をきっかけに進められたものです。特に、いわゆる「悪質ホスト」問題や、若年女性がホストに多額の金を貢ぐために詐欺事件を起こしたことなどが社会問題化し、改正の直接的な背景となりました。

2023年には、ホストクラブにおける客の恋愛感情を利用した高額な売掛金トラブルや、さらに売掛金を回収するために女性を性風俗店で働かせたり、アダルトビデオに出演させるなどの「悪質ホスト」問題が多発しました。また、SNS上で注目を集めた20代女性による詐欺事件では、複数の男性に恋愛感情を抱かせて合計で1億5千万円を超える金銭をだまし取った行為が社会的批判を浴び、さらに、詐欺によって得た金の大半がホストクラブでの飲食代に使われていたことから、批判はホスト業界全体にまで波及することとなりました。これらの事件を通じて、性的搾取や経済的搾取の温床となる風俗営業の一部業態をどう規制・監督するかが国の大きな課題として浮き彫りになったのです。

これらの事案を受け、政府および警察庁は「風営法の実効性を高め、現代の性産業構造に対応する必要がある」と判断しました。今回の改正では、ホストクラブを含む接待飲食業に対する営業管理・スカウト行為(客の女性を性風俗店等へ斡旋すること)の規制強化などが柱とされています。つまり今回の改正は、従来のように単に営業時間や店舗の構造基準を定めるだけでなく、若年層からの経済的・性的搾取防止や風俗・夜間産業の健全化を目的とした「社会問題対策型の改正」である点に特徴があります。

 

風営法改正のポイント

2025年の風営法改正では、これまでの構造基準や営業時間の制限といった「形式的な規制」だけでなく、営業の実態や事業者の倫理性を重視した内容に焦点が当てられています。ここでは、改正内容を詳しく解説していきます。

 

接待飲食営業に対する遵守事項・禁止行為の追加

ホストクラブやキャバクラなどの「接待飲食業」に対し、以下のような禁止行為・遵守事項が新たに設けられました。違反が発覚した場合は行政処分の対象となるため、店舗運営者には従業員教育や管理体制の徹底が求められます。

 

禁止事項

  • 威迫により注文や支払いを強要する行為
  • 料金の支払いのために威迫や誘惑を用いて売春(海外売春含む)・性風俗店勤務・AV出演等を要求する行為

 

遵守事項

  • 料金に関して虚偽の説明をしないこと
  • 客の恋愛感情や同情心につけ込んで飲食等を要求しないこと
  • 客が注文していない飲食物等を提供しないこと

 

性風俗店によるスカウトバックの禁止

今回の改正の中でも特に注目されているのが、「スカウトバック(紹介料・斡旋料)」の禁止です。「スカウト」と呼ばれる斡旋業者が性風俗関連業者に女性を紹介し、紹介料や報酬を得る行為が横行していたため、これを明確に違法とする規定が追加されました。

この改正により、スカウト業者や仲介者を介して女性を性風俗業界に誘導する仕組みが抑制され、性的搾取や人身被害の抑止が期待されています。また、違反した場合は6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が課されることが明記されました。

 

無許可営業等に対する罰則の強化

改正法では、許可を持たないまま風俗営業を行うことに対する罰則が大幅に強化されました。警察庁はこの改正を通じて、悪質業者の排除を目指しています。

改正後の主な罰則は以下の通りです。

  • 5年以下の拘禁刑(改正前:2年以下)もしくは1,000万円以下の罰金(改正前:200万円以下)、またはその両方
  • 法人に対する罰則は、3億円以下の罰金(改正前:200万円以下)

 

風俗営業からの不適格者の排除

営業許可の申請者や従業員に関して、欠格事由の範囲が拡大されました。新たに以下のような事由が追加されています。

  • 親会社などが風営法違反により許可を取り消された法人
  • 警察による立入調査後に許可証返納によって処分を逃れた者
  • 暴力的不法行為を行うおそれのある者が、事業活動に支配的な影響力を持つ場合

これにより、許可の取り消しを受けた事業者が、事業をグループ内の別法人に移して営業を続けたり、処分の直前に許可証を返納したりして処分逃れをした事業者を廃除できるようになりました。また、反社会的勢力による風俗営業の関与を排除することも可能となりました。

 

広告・宣伝に関する規制

今回の法改正に伴って2025年6月4日付で警察庁が発出した通達(「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて」)では、接待飲食営業の広告表現において、トラブルを誘発する恐れのあるものを排除するために新たな基準が示されました。

主な規制内容は以下の通りです。

 

禁止される広告・宣伝表現の例

以下のような表現は、歓楽的・享楽的な雰囲気を過度に醸し出すものや、従業者間の過度な競争を煽り、客の消費意欲を刺激して違法行為を誘発するおそれがあるものとして禁止されています。

  • 売上や指名数など、営業成績を直接的に誇示する表現
    例:「年間売上〇億円突破」「〇億円プレイヤー」「指名No.1」「億越え」など
  • 営業成績や地位を推認させる役職名・称号の表示
    例:「総支配人」「幹部補佐」「覇者」「レジェンド」「頂点」「神」など
  • ランキング制が存在することを示唆する文言や、従業者間の競争性を強調する表現
    例:「売上バトル開催中」「No.1決定戦」「SNS総フォロワー数〇万人」など
  • 客に対して、自身が好意を抱く従業員を応援することを過度に煽るような表現
    例:「○○を推せ」「○○に溺れろ」など

 

営業所内部の広告物も規制対象

上記の規制は、看板などの屋外広告だけでなく、店舗内部に設置されたポスター・デジタルサイネージ等の表示物も対象となります。これは、風営法施行規則第7条の「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと」という基準を根拠にしており、先述の禁止される表現に該当する広告物は店舗内であっても設置することはできません。

 

ガールズバー・コンカフェ等の摘発の可能性

深夜営業のバーやガールズバー、コンセプトカフェ(コンカフェ)などの中には、風俗営業許可を取得せず「深夜酒類提供飲食店営業」として届出のみで営業している店舗も少なくありません。しかし、実際の営業内容に「接待行為」が含まれる場合、風営法違反(無許可営業)として摘発される可能性が高い点に注意が必要です。

ここでは、今回の風営法改正に伴って発出された令和7年5月30日付の警察庁の通達(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」)を参考に、接待行為の判断基準を整理します。

 

接待行為の判断基準

以下の表は、行為の類型ごとに「接待にあたる行為の例」と「接待にあたらない行為の例」を比較したものです。

接待行為に当たるかどうかは、主に「特定の客を対象として歓楽的雰囲気を醸し出す行為」の有無を中心に判断されます。行為単体でなく、継続性・密接性・目的性の3要素を総合的に見て判断されるため、一つ一つは軽微な行為であっても、積み重ねにより接待と見なされるおそれがある点にも注意が必要です。

区分 接待にあたる行為の例 接待にあたらない行為の例
談笑・お酌等 特定の客の側で継続的に談笑したり、お酌をしたりする
カウンター越しであっても、特定の客の前で長時間にわたって談笑やお酌をしていれば接待に当たる可能性あり
注文に応じてお酌をしたりお酒を作ったりするが、速やかに立ち去る/社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をする程度の応対
ショー等 特定少数の客のために歌唱・ダンス等を披露する ホテルのディナーショーのように、不特定多数の客へ歌唱・ダンス等を披露する
歌唱(カラオケ) 特定少数の客の側で、客に対して歌うことを勧めたり、客の歌を手拍子や掛け声・拍手で盛り上げ、褒めはやす、もしくは客と一緒に歌う 客から離れた位置で、不特定多数の客に対して歌うことを勧めたり、不特定の客の歌を手拍子や掛け声・拍手で盛り上げ、褒めはやす/不特定の客から依頼を受けてカラオケの機械を操作したり、歌の伴奏のための楽器を演奏する
ダンス 特定の客の相手となって、客の体に接触しながらダンスをする/身体接触はないが、特定少数の客の側で継続して客と一緒に踊る ダンスの指導をするための十分な技能を有する者が、ダンスの指導のために客と一緒に踊る
遊戯(ゲームなど) 特定少数の客と一緒に遊戯・ゲーム・競技(ビリヤード、ダーツ、ボードゲーム、テレビゲーム等)を行う 客一人で、または客同士で遊戯・ゲーム・競技(ビリヤード、ダーツ、ボードゲーム、テレビゲーム等)を行う
その他 客と体を密着させる、手を握る/客の口元まで飲食物を運び、飲食させる 社交儀礼上の握手/酔客の介抱のための必要最低限の身体接触/飲食物の単なる運搬/食器を片付ける/客の荷物やコートを預かる

このように、ガールズバーやコンカフェでは、形式上は深夜酒類提供飲食店であっても、実態が「接待を伴う営業」と判断されれば摘発対象になる点を理解しておく必要があります。健全に営業するためには、従業員への教育やマニュアル整備が欠かせません。

 

風営法違反の罰則

風営法に違反した場合には、違反内容の重大性に応じて行政処分や刑事罰が科されます。特に2025年改正以降は、無許可営業やスカウト行為に対する罰則が大幅に強化されており、業界全体に対する監視体制も厳格化されています。

ここでは、主な違反内容とその罰則を整理して解説します。

違反行為 罰則内容
無許可営業 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方
※法人は3億円以下の罰金
名義貸し(他人名義での営業) 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方
※法人は3億円以下の罰金
スカウトバックの支払い 6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方
禁止行為の違反(客に対する売春行為の強要など) 6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方
遵守事項の違反(いわゆる「色恋営業」など) 行政指導、営業停止、許可取消などの行政処分
広告・宣伝に関する違反 行政指導、営業停止、許可取消などの行政処分
不適格者による営業・従事 行政指導、営業停止、許可取消などの行政処分
風俗営業所の構造・設備違反 行政指導、営業停止、許可取消などの行政処分

 

新たに風俗営業許可を取得する際の費用

風俗営業許可を取得するには、申請手数料などの法定費用のほか、行政書士などの専門家に依頼する場合には別途報酬を支払う必要があります。

ここでは、実際の申請に必要な費用の内訳を具体的に解説します。

 

法定費用など

風俗営業許可を申請する際には、都道府県公安委員会に対して申請手数料を納付します。その他、申請の際に添付する書類の収集にも以下のような費用がかかります。なお、添付書類は届出を行う地域によって異なる場合があるので、事前に確認するようにしてください。

  • 風俗営業許可申請手数料24,000円
  • 住民票:約300円/1通(自治体により異なる)
  • 身分証明書(市区町村長発行のもの):約300円/1通(自治体により異なる)
  • 登記事項証明書(法人の場合):600円/1通

これらに加えて、飲食店営業許可も同時に取得する場合は、以下のような手数料を保健所に支払う必要があります。

  • 飲食店営業許可申請手数料約16,000~18,000円程度(自治体により異なる)

 

行政書士に依頼する場合の費用

風俗営業許可の申請手続きは、添付図面・営業の概要説明書の作成などを伴うため、専門知識を持つ行政書士に依頼するケースが一般的です。

行政書士に依頼する場合の費用相場は次の通りです。なお、手続きの複雑さによって料金は変動するため、事前に見積もりを取って確認することをおすすめします。

  • 風俗営業許可申請書作成・代理申請15~30万円程度
  • 飲食店営業許可申請書作成・代理申請5~10万円程度(風俗営業許可と同時に依頼することで割引になる場合あり)

 

まとめ

2025年の風営法改正は、これまでの営業時間や構造・設備面に関する規制に加え、営業の実態や倫理面を重視する方向へ大きく転換した点に特徴があります。特に、ホストクラブなどの接待飲食営業に対して、料金説明や接客方法に関する禁止行為が新たに設けられ、スカウトバックの禁止、無許可営業への厳罰化、不適格者の排除、広告・宣伝に関する規制などが進められました。

これから風俗営業許可の新規取得を検討する場合は、構造基準や必要書類を事前に確認し、手続きに不安があれば行政書士などの専門家に相談することが重要です。

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