遺言書保管事実証明書とは?制度の概要から取得方法、費用まで行政書士が徹底解説

はじめに

相続が発生したとき、まず確認しておきたいことの一つが、亡くなった方が遺言書を作成していたかどうかです。遺言書がある場合には、誰がどの財産を引き継ぐのか、相続手続きをどのように進めるべきかが大きく変わることがあります。遺産分割協議を始めた後に遺言書が見つかると、それまで進めてきた手続きを見直さなければならないケースもあるため、相続開始後の早い段階で遺言書の有無を確認することが重要です。

遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言などの種類があります。このうち、自筆証書遺言は、遺言者本人が自書で作成する遺言書で、公証役場へ出向かずに作成できるため、比較的取り組みやすい方法といえます。一方で、自宅や貸金庫などで保管している場合には、相続人が保管場所を把握できない、遺品整理の際に誤って処分してしまう、紛失や改ざんをめぐって疑問が生じるといった問題も起こり得ます。

こうした自筆証書遺言の保管に関する不安を軽減するために設けられているのが、自筆証書遺言書保管制度です。この制度を利用すると、遺言者が作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができます。法務局で保管された遺言書は、相続開始後に家庭裁判所で検認を受ける必要がないため、相続人等の負担を抑え手続きを進めやすくなります。

もっとも、法務局に遺言書が保管されていることがわかっても、相続手続きを進めるためには、遺言書にどのような内容が記載されているのかを確認しなければなりません。たとえば、特定の不動産を誰に相続させるのか、預貯金をどのように分けるのか、遺言執行者が指定されているのかによって、必要となる手続きは異なります。

そのような場面で重要になるのが、「遺言書情報証明書」です。遺言書情報証明書は、法務局に保管された自筆証書遺言の内容を確認し、相続手続きを進める際に利用される書類です。

この記事では、自筆証書遺言書保管制度の基本的な仕組みを押さえたうえで、遺言書情報証明書でわかる情報、利用場面、請求できる人、取得方法、注意点、費用などについて順番に解説します。法務局に保管された遺言書の内容を確認したい方や、相続手続きを円滑に進めたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

自筆証書遺言の法務局保管制度とは

自筆証書遺言書保管制度は、遺言者が作成した自筆証書遺言を、法務局内の遺言書保管所で保管してもらえる制度です。2020年に始まり、自筆証書遺言の作成しやすさを活かしながら、自宅などで保管する場合に生じやすい問題を抑える仕組みとして設けられました。

ただし、法務局に遺言書を預ければ、その内容や法的な有効性まで保証されるわけではありません。保管申請時には、職員が自筆証書遺言の形式に適合しているかを外形的に確認しますが、財産の分け方が適切か、遺留分への配慮が十分か、遺言者の希望どおりの効果が生じるかといった点まで判断してもらえるわけではないため、注意が必要です。

 

主な役割

法務局保管制度の主な役割としては、自筆証書遺言を安全に保管することと、一定の場合に相続人等へ遺言書の存在を知らせることが挙げられます。ここでは、それぞれの仕組みを確認していきましょう。

自筆証書遺言の安全な保管

自筆証書遺言を自宅などで保管していると、作成から相続開始までの間に紛失してしまうことがあります。また、相続人が保管場所を把握していなければ、遺言者が亡くなった後も発見されない可能性があります。

法務局保管制度を利用すると、遺言書の原本と画像データが適正に管理され、原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは死亡後150年間保管されます。公的な機関に預けることで、紛失、破棄、隠匿、改ざんなどのリスクを抑えられる点が大きなメリットです。

相続人への遺言の存在の通知

遺言書は、安全に保管するだけでなく、相続開始後にその存在を把握してもらうことも重要です。せっかく法務局に預けていても、相続人等が遺言書の存在に気づかなければ、遺言内容に沿った手続きを円滑に進めることができません。

そこで、法務局保管制度には、遺言書が保管されていることを知らせる通知の仕組みがあります。主な通知は、「関係遺言書保管通知」と「指定者通知」の2種類です。

関係遺言書保管通知」は、遺言者の死亡後に、相続人等のうち誰か一人が遺言書の閲覧を行った場合や、遺言書情報証明書の交付を受けた場合に、その他の関係相続人等へ遺言書が保管されていることを知らせるものです。これにより、一部の関係者だけが遺言書の存在を把握している状態を避けやすくなります。

一方、指定者通知は、遺言者が生前に通知を受け取る人をあらかじめ指定しておくことで利用できる仕組みです。法務局が戸籍担当部局との連携によって遺言者の死亡を確認すると、相続人等による閲覧や証明書の取得を待たずに、指定された人へ通知が送付されます。通知を受け取る人は、遺言者一人につき3人まで指定できます。

これらの通知制度等によって法務局に遺言書が保管されていることがわかった場合、相続手続きを進めるためには、その内容を確認する必要があります。その際に利用される書類が、次に解説する「遺言書情報証明書」です。

 

遺言書情報証明書とは

遺言書情報証明書とは、法務局の遺言書保管所に保管されている自筆証書遺言について、遺言書の内容を確認するために交付される証明書です。

ここでは、証明書に記載される情報の概要から他の制度との違いなどについて解説します。

 

遺言書情報証明書でわかる情報

遺言書情報証明書には、法務局に保管された自筆証書遺言に関する情報が記載されます。主な内容は、次のとおりです。

  • 遺言者の氏名
  • 遺言者の出生年月日
  • 遺言者の住所
  • 遺言者の本籍または国籍等
  • 遺言書の作成年月日
  • 遺言書が保管された年月日
  • 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称および保管番号
  • 受遺者等の氏名または名称および住所(遺言書に記載がある場合に限る)
  • 遺言執行者等の氏名または名称および住所(遺言書に記載がある場合に限る)
  • 財産目録を含む遺言書の画像情報

書面には遺言書の画像情報が表示されるため、誰にどの財産を相続させるのか、誰に遺贈するのか、遺言執行者が指定されているのかなど、遺言内容を具体的に確認できます。ただし、遺言書情報証明書は、法務局に保管された自筆証書遺言の内容を証明する書類であり、遺言書の解釈や法的な有効性を保証するものではありません

 

遺言書情報証明書の利用場面と請求できる人

遺言書情報証明書は、主に相続開始後に、法務局に保管された自筆証書遺言の内容を確認し、遺言に沿った手続きを進める場面で利用されます。

たとえば、遺言書によって特定の相続人が不動産を取得する場合には、相続登記の手続きで遺言内容を示す必要があります。また、預貯金の払戻し、証券口座の名義変更、各種財産の承継手続きなどでも、遺言書情報証明書を証明資料として使用できます。

遺言書情報証明書を請求できるのは、遺言者の死亡後における相続人、受遺者等、遺言執行者等です。なお、受遺者とは、相続人以外に遺言によって財産を受け取る人、遺言執行者とは、遺言内容を実現するために必要な手続きを行う人です。その他にも、家庭裁判所が選任した遺言執行者、相続財産清算人、相続財産管理人などが請求できる場合もあります。請求人が未成年者や成年被後見人である場合には、親権者や成年後見人等の法定代理人が手続きを行うこともできます。

一方、遺言者が存命中は、本人や家族、推定相続人であっても、遺言書情報証明書を請求することはできません。遺言者本人は、生前に自分が保管を申請した遺言書を閲覧することができますが、これは遺言書情報証明書の交付請求とは異なる手続きです。

 

遺言書保管事実証明書との違い

遺言書情報証明書と遺言書保管事実証明書は、いずれも法務局の自筆証書遺言書保管制度に関する書類ですが、役割が異なります。

遺言書保管事実証明書は、特定の遺言者について、請求人自身に関係する遺言書が法務局に保管されているかどうかを確認するための書類です。遺言書の本文や財産の分け方など、具体的な内容までは確認できません。

これに対して、遺言書情報証明書は、法務局に保管された遺言書の画像情報等を確認し、遺言内容に沿って相続手続きを進めるための書類です。

両者の違いを簡単に整理すると、次のとおりです。

証明書の種類 主な役割 遺言書の内容を確認できるか 請求した場合の通知
遺言書保管事実証明書 法務局に遺言書が保管されているかを確認する 確認できない 交付請求だけでは通知されない
遺言書情報証明書 法務局に保管された遺言書の内容を確認する 確認できる 他の関係相続人等に通知される

たとえば、法務局に遺言書が保管されているかどうかわからない場合には、まず遺言書保管事実証明書を請求します。その結果、遺言書が保管されていることがわかった場合には、遺言書情報証明書を請求して具体的な内容を確認するとよいでしょう。ただし、すでに法務局から指定者通知を受け取っている場合など、遺言書が保管されていることが明らかな場合には、遺言書情報証明書を直接請求することも考えられます。

 

遺言書の閲覧請求との違い

遺言書情報証明書の交付請求と、遺言書の閲覧請求は、いずれも遺言書の内容を確認するための手続きですが、確認方法や利用場面が異なります。

閲覧請求は、法務局で遺言書の内容を確認するための手続きです。閲覧には、遺言書の画像情報をモニターで確認する方法と、遺言書の原本を確認する方法があります。モニターによる閲覧は、全国の遺言書保管所で請求できます。これに対して、原本の閲覧は、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所を訪れる必要があります。

なお、遺言者の死亡後に相続人等が遺言書の閲覧を行った場合にも、遺言書情報証明書の交付請求行った場合と同様に、その他の関係相続人等に関係遺言書保管通知が送付されます。

これらの違いを簡単に整理すると、次のとおりです。

手続き 主な目的 確認方法 相続手続きで提出書類として利用できるか
遺言書情報証明書の交付請求 遺言内容を確認し、相続手続きで利用する 証明書の交付を受ける 利用できる
モニターによる閲覧 遺言内容を画面上で確認する 法務局のモニターで確認する 閲覧しただけでは提出書類にならない
原本の閲覧 遺言書の原本を直接確認する 原本を保管する法務局で確認する 閲覧しただけでは提出書類にならない

 

遺言書情報証明書の取得方法

遺言書情報証明書を取得するためには、必要書類を準備したうえで、法務局の遺言書保管所に交付請求を行います。

請求方法には、法務局の窓口で手続きを行う方法と、必要書類を郵送する方法があります。遺言書情報証明書は、相続登記、預貯金の払戻し、各種名義変更などで必要になることがあるため、相続手続きの予定に合わせて、余裕を持って請求するとよいでしょう。

遺言書情報証明書は、遺言書の原本が実際に保管されている法務局に限らず、全国の遺言書保管所で請求できます。たとえば、遺言者が遠方の法務局に自筆証書遺言を預けていた場合でも、請求人の自宅や勤務先から利用しやすい遺言書保管所で手続きを行うことが可能です。

まず、遺言書情報証明書の交付請求に必要となる主な書類等は、次のとおりです。必要書類は、請求人の立場によって異なります。相続関係が複雑な場合や、どの書類を準備すればよいかわからない場合には、手続きを行う予定の遺言書保管所に事前に確認しておくと安心です。

  • 交付請求書法務省のホームページでダウンロード可
  • 遺言者が亡くなったことを確認できる書類:死亡の記載がある戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票の写しなど
  • 請求人と遺言者との関係を確認できる書類:戸籍謄本など
  • 請求人の氏名および住所を確認できる書類:住民票の写し、住所が記載された法定相続情報一覧図の写しなど
  • 本人確認書類(窓口で請求する場合):運転免許証、マイナンバーカードなど
  • 返信用封筒および切手(郵送で請求する場合)
  • 所定の手数料

また、窓口で交付請求を行う場合には、事前に予約が必要です。インターネット上の法務局手続案内予約サービスを利用する方法や、手続きを行う遺言書保管所に電話で申し込む方法があります。一方、郵送で交付請求を行う場合には、予約は必要ありません。交付請求書、添付書類、返信用封筒、切手、手数料分の収入印紙などを同封し、遺言書保管所へ送付します。

なお、遺言書情報証明書の交付には手数料がかかります。手数料の金額や、戸籍謄本等を収集するために必要となる費用については、次の章で詳しく解説します。

 

遺言書情報証明書の取得にかかる費用

遺言書情報証明書を取得する際には、法務局に支払う手数料のほか、戸籍謄本や住民票の写しなど、必要書類を集めるための費用がかかります。

必要書類を自分でそろえて請求する場合には、比較的安価に抑えることができます。一方で、相続人の人数が多い場合や、遺言者が転籍を繰り返している場合には、複数の市区町村から戸籍を取り寄せなければならず、書類収集だけでも相当な手間と時間がかかることがあります。

ここでは、遺言書情報証明書を取得する際に必要となる費用と、行政書士に書類収集などを依頼する場合の費用について確認していきましょう。

 

手数料など

遺言書情報証明書の交付手数料は、1通につき1,400円です。交付請求の際には、所定の収入印紙を用意して納付します。

また、遺言書情報証明書を請求するためには、遺言者が亡くなったことや、請求人と遺言者との関係などを確認できる書類を準備する必要があります。請求人の立場や相続関係によって必要書類は異なりますが、一般的には、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票の除票の写し、請求人の住民票の写しなどを取得します。郵送で書類を取り寄せる場合には、自治体に支払う発行手数料だけでなく、郵送料なども見込んでおきましょう。

必要書類の取得にかかる主な費用の目安は、次のとおりです。

  • 戸籍謄本1通450円
  • 除籍謄本・改製原戸籍謄本1通750円
  • 住民票の写し1通300円程度(自治体により異なる)

 

行政書士に依頼する場合の費用

遺言書情報証明書の交付請求に必要となる戸籍謄本等は、自分で集めることもできます。ただし、相続関係によっては、複数の市区町村から戸籍を取り寄せ、内容を読み解きながら必要な書類を確認しなければならず、相当な時間と労力を応する場合があります。

このような場合には、行政書士に戸籍の収集や相続人調査を依頼する方法があります。行政書士は、相続手続きに必要となる戸籍謄本等を収集し、法定相続人を確認したうえで、相続関係説明図や法定相続情報一覧図を作成することができます。また、法定相続情報証明制度については、委任を受けて法務局への申出を行うこともできます。

一方で、行政書士が対応できる業務には範囲があります。たとえば、行政書士は、不動産の相続登記の申請を代理することはできません。相続登記が必要な場合には、司法書士等へ相談します。また、相続税の申告については税理士、相続人間で争いがある場合の交渉や法的対応については弁護士への相談が必要です。

行政書士に依頼する場合の報酬は、事務所ごとに料金体系が異なり、相続人の人数、戸籍を取り寄せる市区町村の数、転籍の回数、代襲相続や数次相続の有無などによっても費用は変わりますが、一般的な費用の目安は、次のとおりです。行政書士報酬とは別に、戸籍謄本等の発行手数料、郵送料などの実費がかかることにも注意が必要です。

  • 戸籍謄本等の収集、相続人調査3~8万円程度
  • 相続関係説明図の作成1~3万円程度
  • 法定相続情報一覧図の作成、法務局への申出2~5万円程度

 

まとめ

遺言書情報証明書は、法務局の遺言書保管所に保管されている自筆証書遺言について、遺言書の画像情報等を確認するための書類です。相続が発生した後に、遺言内容に沿って手続きを進めるために利用されます。

遺言書情報証明書は、全国の遺言書保管所で請求できます。請求の際には、交付申請書のほかに、戸籍謄本や住民票の写しなどの添付書類を準備しなければなりません。相続関係が複雑な場合には、必要な戸籍の範囲を判断し、複数の市区町村から書類を取り寄せるだけでも相当な手間と時間がかかることがあります。そのような場合には、行政書士に戸籍謄本等の収集、相続人調査、相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成などを依頼する方法もあります。

遺言書の内容は、その後の相続手続きに大きく影響します。法務局に自筆証書遺言が保管されていることがわかった場合には、必要に応じて遺言書情報証明書を取得し、内容を丁寧に確認したうえで手続きを進めましょう。

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