目次
リーガルチェックとは
リーガルチェックとは、契約書や利用規約、各種合意書などの内容が法的に問題ないかを専門家が確認する手続きのことをいいます。単に誤字脱字を修正するものではなく、法令に違反していないか、不利な条項が含まれていないか、将来のトラブルにつながるリスクがないかといった点を総合的に検証する点に大きな特徴があります。
近年では、インターネット上のテンプレートを使って契約書を作成するケースも増えていますが、そのまま利用すると自社の実態に合っていなかったり、思わぬリスクを抱えてしまうことも少なくありません。そのため、契約締結前の段階でリーガルチェックを行うことは、事業者にとって非常に重要なリスク管理の一つといえるでしょう。
また、リーガルチェックはトラブルが発生してからではなく、「予防」の観点で行うものです。後から修正するよりも、事前に問題点を洗い出しておくことで、無用な紛争や損害を回避できる可能性が高まります。特に中小企業や個人事業主にとっては、一度の契約トラブルが経営に大きな影響を及ぼすこともあるため、慎重な対応が求められます。
リーガルチェックの利用場面
リーガルチェックが必要となる場面は多岐にわたりますが、代表的なケースとしては、契約書を新たに作成したときや、相手方から提示された契約書に署名・押印する前のタイミングが挙げられます。
また、サービスを提供する側であれば、利用規約やプライバシーポリシーを作成する際にもリーガルチェックは欠かせません。これらは不特定多数のユーザーに適用されるため、表現の曖昧さや法令との不整合があると、クレームや法的責任に発展するおそれがあります。
さらに、既存の契約書を見直す場面でもリーガルチェックは有効です。法改正への対応や事業内容の変化に伴い、以前は問題なかった条項が現在の実務に合わなくなっているケースも少なくありません。定期的に見直すことで、リスクの早期発見につながります。
リーガルチェックで確認すべき内容
リーガルチェックでは、主に「適法性」「リスク」「明確性」の3つの観点から内容を確認していきます。
まず適法性の観点では、契約内容が民法や各種業法などの法令に違反していないかを確認します。例えば、消費者契約において一方的に事業者に有利な条項がある場合、無効と判断される可能性があります。
次にリスクの観点では、損害賠償の範囲や責任の所在、契約解除の条件などをチェックします。これらの条項が不明確であったり、一方に過度な負担がかかる内容になっていると、後のトラブルの原因となります。
さらに明確性の観点では、条文の表現が曖昧でないか、解釈に幅が生じないかを確認します。契約書は「後から見たときにどう解釈されるか」が重要であるため、誰が読んでも同じ意味に理解できるように整理することが求められます。
行政書士によるリーガルチェックでできること
行政書士は、「官公署に提出する書類の作成」や「権利義務・事実証明に関する書類の作成」を業務とする国家資格者であり、許認可関連の書類をはじめとして、契約書や各種合意書などの作成を専門としています。
特に契約書の作成業務では、単に文章を整えるだけではなく、取引の実態やリスクを踏まえた条項設計が求められます。例えば、報酬の支払時期や損害賠償の範囲、契約解除の条件などについて、後の紛争を防ぐために明確かつ適切に定めることが重要です。
このように行政書士は「書類作成の専門家」として、ゼロから契約書を作成するだけでなく、既に作成された契約書についても内容を確認し、必要に応じて修正案を提示する形でリーガルチェックを行うことがあります。特に、インターネットのテンプレートをベースにした契約書や、取引先から提示された契約書については、自社に不利な条項が含まれていないかを確認するために、専門家によるチェックを受ける意義は大きいといえるでしょう。
ただし、行政書士は紛争性のある案件における交渉や代理行為を行うことはできません。すでにトラブルが発生している場合や、相手方との交渉が必要なケースでは、弁護士への相談が必要となる点には注意が必要です。
取り扱える書類の例
行政書士がリーガルチェックの対象として取り扱うことが多い書類には、以下のようなものがあります。
これらの書類は一見すると形式的なものに見えるかもしれませんが、実際には事業運営や取引の安全性を左右する重要な役割を持っています。行政書士によるリーガルチェックを活用することで、契約内容の不備やリスクを事前に把握し、安心して取引を進めることが可能となるでしょう。
| 書類の種類 | 概要 | 利用場面 |
| 業務委託契約書 | 業務の内容や報酬、責任範囲を定める契約書 | フリーランスとの取引、外注時 |
| 売買契約書 | 商品やサービスの売買条件を定める契約書 | 商品販売、設備購入など |
| 秘密保持契約書(NDA) | 機密情報の取り扱いを定める契約書 | 取引開始前、情報開示時 |
| 利用規約 | サービス利用時のルールを定める文書 | Webサービス、アプリ運営 |
| プライバシーポリシー | 個人情報の取り扱いを定める文書 | 個人情報を扱う事業全般 |
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 労働条件を明示する書類 | 従業員の雇用時 |
| 金銭消費貸借契約書 | お金の貸し借りに関する契約書 | 個人間・法人間の貸付 |
| 示談書・和解契約書 | 当事者間の合意内容を整理する書類 | 紛争の初期段階の解決 |
| 内容証明郵便 | 意思表示を証拠として残す文書 | 債権回収、契約解除通知 |
| フランチャイズ契約書 | 加盟条件やロイヤリティを定める契約書 | 事業拡大、加盟店募集 |
| 共同事業契約書 | 複数人で事業を行う際の取り決め | スタートアップ、共同経営 |
| 離婚合意書 | 離婚に伴う財産分与や養育費等の条件を定める書類 | 協議離婚時の取り決め |
| 遺言書 | 財産の分配や相続内容を定める文書 | 相続対策、生前準備 |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員で遺産の分け方を合意した内容をまとめる書類 | 相続手続、遺産分割時 |
| 任意後見契約書 | 将来の判断能力低下に備え、後見人と支援内容を定める契約書 | 高齢期の備え、認知症対策 |
| 死後事務委任契約書 | 死後の各種手続(葬儀、解約、清算等)を委任する契約書 | おひとりさま対策、終活 |
リーガルチェックを依頼できるその他の専門家
リーガルチェックは行政書士のほかにも、弁護士や司法書士といった専門家に依頼することが可能です。
まず弁護士は、すべての法律事務を取り扱うことができる資格であり、契約書のチェックに加えて、交渉や紛争対応まで一貫して対応できる点が大きな特徴です。すでにトラブルが発生している場合や、将来的に紛争に発展する可能性が高い契約については、弁護士への依頼が適しているといえるでしょう。一方で、費用は比較的高額になる傾向があるため、予防的なチェックのみを目的とする場合にはその他の士業を検討しても良いでしょう。
司法書士は、不動産や会社に関する手続に強みを持つ専門家であり、特に登記に関連する契約書や書類のチェックにおいて力を発揮します。例えば、不動産売買契約や担保設定に関する書類など、登記手続と密接に関わる場面では、実務に即した観点からの確認が期待できます。また、紛争性のある案件については原則として弁護士の対応領域となる一方で、認定司法書士であれば簡易裁判所において140万円以下の民事事件に限り代理業務を行うことができます。このように、司法書士にも取り扱える範囲が法律上定められているため、その点を理解したうえで依頼することが重要です。
このほかにも、社会保険労務士や税理士といった専門家が関与するケースもあります。例えば、雇用契約書や就業規則など労務に関する書類については社会保険労務士が専門性を発揮し、税務に関連する契約内容、例えば役員報酬の取り決めや業務委託契約における報酬設計などについては、税理士がチェックを行うことがあります。
このように、リーガルチェックは一つの資格者に限らず、案件の内容やリスクの程度に応じて依頼先を選択することが重要です。予防的な観点で契約書の内容を整えたい場合には行政書士、紛争対応まで見据える場合には弁護士、特定分野に特化した確認が必要な場合には他士業といったように、それぞれの専門性を理解したうえで使い分けることが、適切なリスク管理につながります。
リーガルチェックを専門家に依頼する場合の費用
リーガルチェックの費用は、依頼する専門家の種類や契約書の内容、分量、修正の有無などによって大きく変動します。そのため「いくらくらいかかるのか」がイメージしづらい分野ではありますが、目安としては数千円程度の簡易チェックから、数十万円以上の本格的なレビューまで幅広い価格帯が存在します。
まず、比較的簡易なリーガルチェックとして、既に完成している契約書を確認するだけのケースでは、行政書士であればおおむね5,000〜3万円程度が一つの目安となります。内容がシンプルな業務委託契約や売買契約などで、軽微な修正提案にとどまる場合は、この範囲に収まることが多いでしょう。
一方で、条項の修正やリスクに応じた具体的な文案の提案まで含める場合には、3〜10万円程度になることもあります。特に、インターネットのテンプレートをベースに実態に合わせて調整するようなケースでは、単なるチェックではなく実質的な「作り直し」に近くなるため、費用もそれに応じて上がる傾向があります。
さらに、契約内容が複雑な場合や、複数の契約書が関連する案件、あるいはフランチャイズ契約や事業提携契約などリスクの高い取引については、10万円以上となることも珍しくありません。内容によっては20〜30万円程度の費用がかかるケースもありますが、継続的な顧問契約の中で対応する場合には、月額顧問料(1〜5万円程度)に含まれる形でリーガルチェックが行われることもあります。
弁護士に依頼する場合は、行政書士よりも高額になる傾向があり、簡易なチェックでも3〜10万円程度、本格的なレビューや交渉を見据えた契約設計を含む場合には10万〜数十万円程度となることが一般的です。紛争リスクが高い契約や重要な取引については、その分専門的な検討が必要となるため、費用も上がりやすい傾向があります。
司法書士については、登記に関連する契約書など特定分野においてリーガルチェックを行うケースがあり、費用としては1〜5万円程度が目安となることが多いですが、案件の性質によってはこれを超えることもあります。
このように、リーガルチェックの費用は「数千円〜数十万円以上」と非常に幅がありますが、重要なのは金額の多寡だけで判断するのではなく、契約の重要性やリスクの大きさに応じて適切な専門家に依頼することです。事業の根幹に関わる契約については、将来のトラブル回避のためにも、ある程度のコストをかけてしっかりとチェックを行うことが結果的に合理的といえるでしょう。
まとめ
リーガルチェックとは、契約書や利用規約などの内容を法的な観点から確認し、将来のトラブルを未然に防ぐための手続きです。特に、契約は一度締結すると簡単には修正できないため、事前に内容を精査しておくことが、リスク管理の観点から非常に大切といえるでしょう。
また、リーガルチェックは「どの専門家に依頼するか」によって対応できる範囲や費用が大きく異なります。行政書士は書類作成の専門家として、契約書の作成やチェックを比較的リーズナブルに行える一方で、紛争対応は弁護士の領域となります。このような業務範囲を正しく理解したうえで、自身の状況に合った専門家を選ぶことが重要です。
重要な契約を締結する際には、一度立ち止まって専門家の視点を取り入れることを検討してみるとよいでしょう。
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特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)