内容証明郵便とは?書き方や送付方法から知っておくべきポイントまで行政書士が徹底解説

内容証明とは

一般に「内容証明」と言われる制度は、正式名称を「内容証明郵便」と言います。内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるものです。一般の郵便と異なり、送った内容そのものを郵便局が保管・証明してくれる点が特徴で、証拠として非常に重要な役割を果たします。

ここでは、内容証明郵便に関する基礎知識を解説します。

 

普通郵便との違い

普通郵便は通常、郵便ポストに投函したものが相手方の郵便受けに配達されるため、「送った・届いた」という記録が残りません。そのため、例えば支払い請求などの法的に重要な意味を持つ書類を送付したとしても、相手方に「受け取っていない」と言われればそれを覆すことが難しくなってしまうのです。

一方、内容証明郵便では、送付する文書と全く同じ内容のものを郵便局が保管します。郵便局は5年間、その文書を保管するため、「この内容の文書をこの日に確かに送った」という事実を後から証明することができます。さらに、後述する「配達証明」と組み合わせることにより、「相手が文書を受け取った」ということまで証明することが可能となります。

つまり、内容証明郵便は「送付内容そのものの公的証明」が可能である点が普通郵便との大きな違いです。このため、法的な通知や請求の場面では、内容証明郵便が広く用いられています。

 

内容証明郵便の効果

内容証明郵便そのものに法的強制力(支払いなどを強制する力)はありません。しかし、主に次のような効果が期待できます。

  • 証拠保全:裁判などの場面では「いつ、どんな内容を相手に伝えたか」を示す有力な証拠として機能する。
  • 心理的圧力:郵便局の証明付き文書が届くことで、受取人に「法的手段を検討している」という強い印象を与え、支払いなどの行動を促す効果がある。

法的強制力はないものの、この2つ目の心理的圧力の効果は意外に大きいと言えるでしょう。内容証明郵便は実際に訴訟などの法的手続きに進む前の手段として用いられることも多いことから、「無視していたら訴えられるのではないか」というプレッシャーを相手に与え、さらに、相手に自身の本気度を伝えることも期待できます。

実際に訴訟を提起するとなると弁護士費用や裁判費用などの金銭的負担が大きいため、まずは内容証明郵便を通じて解決を図るのが費用対効果の高い策であると言えます。

 

「配達証明」との違い

「配達証明」は、郵便物が確実に相手に届いたことを証明する制度です。配達員が受取人に直接郵便物を手渡しした日時を記録し、後日、配達年月日が記載された「配達証明書」というハガキが差出人に届きます。つまり、配達証明は「届いた」ことを証明するものに対し、内容証明は「どんな内容を送ったか」まで証明するものです。

なお、両方を併用することも可能で、実務上は「配達証明付き内容証明」という形で利用することがほとんどです。これにより、「いつ・どんな内容を・誰に届けたか」をすべて証明でき、法的トラブルに備えるうえで最も確実な方法となります。

 

内容証明郵便の利用場面

内容証明郵便は、単なる郵送手段ではなく、法律的な効果を伴う証拠手段として多くの場面で利用されます。特に、トラブルを未然に防ぎたい場合や、相手方に正式な意思表示をしたいときに非常に有効です。相手方が無視や不誠実な対応を取っている場合にも、内容証明郵便を送ることで事態の進展を促すきっかけとなることが多くあります。

ここでは、主な利用場面を表にまとめて紹介します。

利用場面 文書の内容・目的 概要
債権の催告(支払い請求) 売掛金・貸金などの支払いを催促する 「支払わない場合は法的措置をとる」などの意思を明確に伝えることができ、民法に基づく『催告による時効の完成猶予(6か月)』の効果が得られる場合があります。猶予期間内に訴訟や支払督促などを行えば時効は更新され、新たな時効期間が開始します。猶予期間内に手続きをしない場合は、猶予が切れ、時効完成に向けて進みます。そのため、内容証明で催告を行った後は、速やかに裁判手続きを検討することが重要です。
契約解除の通知 契約違反に対して解除を通知する 契約上の義務を履行しない相手に対し、契約を解除する意思を正式に伝える場面で利用されます。たとえば、工事請負契約で施工遅延や品質不良が続く場合、または売買契約で代金未払いが続く場合など、相手の債務不履行を理由に契約を解除する旨を通知する際に使用します。解除の根拠条項(例:契約書第○条違反など)や、解除の効力発生日を明記することで、損害賠償請求や契約精算の際の重要な証拠となります。
クーリングオフの通知 特定商取引法に基づく契約撤回 クーリングオフ制度は、訪問販売や電話勧誘販売など特定の取引について、一定期間内であれば理由を問わず契約を解除できる制度です。一般的には契約書面受領日から8日以内(マルチ商法などは20日以内)が原則とされています。期間内に内容証明郵便で通知することで、確実に撤回の意思を伝えた証拠を残せます。郵便局の受付日が通知日として扱われるため、締切日に郵便局へ提出しても効力が認められる点も重要です。
損害賠償請求 不法行為や契約違反によって被った損害の賠償を請求する 契約違反や不注意による損害について、相手方に賠償を求める際に使用されます。例えば、リフォーム工事で施工ミスにより修繕費が発生した場合や、納期遅延によって発注者が損害を被ったケースなどが挙げられます。内容証明では、損害の内容・金額・発生原因・支払期限などを明確に記載し、支払いを求めることが重要です。また、訴訟に発展した際に「損害を請求した事実」を立証する有力な証拠となるため、請求根拠(契約書や写真など)を整理しておくことが推奨されます。
慰謝料請求 不倫・交通事故・名誉毀損などによる精神的損害の賠償を請求する 相手の行為によって精神的な苦痛を受けた場合に、その慰謝料を求める際に利用されます。例えば、配偶者と不倫関係にある相手方に対して関係の解消と慰謝料の支払いを求めるケース、交通事故の加害者に対して精神的損害の補償を求めるケース、またはSNS上での誹謗中傷により名誉を傷つけられた場合などが挙げられます。内容証明郵便を用いることで、感情的にならず冷静に意思表示を行うことができ、その後の示談交渉や訴訟に備えた証拠としても有効です。
時効援用の通知 消滅時効の完成を主張し、支払義務を否定する 借金や請求を長期間放置していた場合に、民法に基づき「消滅時効が完成した」と主張するために用いられます。たとえば、クレジットカードや消費者ローンの返済請求が5年以上なかった場合に、債権者に時効を迎えた旨を通知することで、以降の支払い請求を拒絶できるようになります。口頭や電話ではなく、内容証明郵便で通知することで、時効援用の事実を確実に証明でき、後の紛争防止につながります。
退職関連の意思表示 退職届・雇用契約解除の通知 会社に退職意思を正式に伝えた記録として利用でき、後日のトラブル防止に役立ちます。特に、上司が退職届を受け取らない場合や退職日をめぐる争いを避けたい場合に有効です。
解雇予告の通知 従業員の解雇を正式に通知する 使用者が労働基準法に基づき、解雇を予告する場合に利用されます。例えば、経営悪化による整理解雇や業務不適格による懲戒解雇を行う場合などに、通知の日時・理由・解雇日を明記し、法的トラブルを回避するための証拠として残すことができます。
遺産分割協議の通知 相続人間で協議を行いたい旨の通知 他の相続人に対し、協議への参加や意思表示を促す正式な手段として用いられます。たとえば、相続人の数が多く、会ったこともないような人が含まれている場合などに、連絡の行き違いや不参加を防ぐことができます。さらに、内容証明郵便で通知することで「協議を申し入れた事実」を確実に証明でき、後に「協議の存在自体を知らなかった」などと主張されることを防止します。
迷惑行為に対する警告 ストーカー・嫌がらせ行為などに対する警告 内容証明で警告文を送ることで、行為の差止めや被害防止を図るとともに、警察や裁判所への相談時に有効な証拠として活用できます。たとえば、元交際相手や近隣住民によるつきまといや嫌がらせ行為などに対して使用されます。
権利侵害に対する警告 商標・著作権・肖像権などの侵害行為や誹謗中傷への警告 権利侵害を行っている相手に対し、行為の中止や削除、損害賠償請求の意向を正式に伝えることができます。特に、無断転載・画像利用・SNSでの名誉毀損・商標の不正使用などに対し、訴訟前の段階で是正を求めるための警告として活用され、交渉材料や証拠として有効です。

 

内容証明郵便の書き方のルール

内容証明郵便を作成する際には、日本郵便が定める書式や形式上のルールを守る必要があります。

ここでは、使用する用紙や封筒、文書構成、文字数制限など、作成時に押さえておくべきポイントを詳しく解説します。

 

使用する用紙・封筒

内容証明郵便は、同一の文書を3通(差出人用・受取人用・郵便局保管用)作成する必要があります。これらは特定の用紙である必要はなく、コピー用紙・便箋・メモ用紙・原稿用紙など、どのような用紙を使用しても問題ありません。罫線の有無も自由ですが、文字が明瞭に読み取れることが重要です。文房具店などで内容証明郵便専用の用紙が販売されていますので、手書きの場合はそちらを利用するのも良いでしょう。また、インターネット上で、手書きで内容証明を作成するための用紙のテンプレートが入手できますので、印刷して使用することも可能です。

筆記具の指定は特にありませんが、トラブル防止のために鉛筆や消せるボールペンなどの使用は避けた方が良いでしょう。もちろん、パソコンを使って作成しても差し支えありません。パソコンの場合も、インターネット上で入手できるテンプレートを利用すると簡単に作成することができるでしょう。

封筒についても特別な制限はなく、市販の「長3号」などの封筒を使用するのが一般的です。封筒の表には受取人の住所・氏名、裏には差出人の住所・氏名を明記します。なお、郵便局で職員の方が3通すべての内容が完全に一致していることを確認しますので、封筒には封をせずに持っていく必要があります。

内容の確認後、1通を郵便局が保管、1通を受取人に送付し、1通を差出人に返却します。これにより、送付内容と日付が証明されます。

 

文書の構成

内容証明郵便の文書には、「誰が」「誰に」「どんな内容を」「いつ伝えるか」が明確に示されていることが重要です。基本的な構成例は次のとおりです。

  1. 宛名:はじめに、受取人の住所・氏名(法人の場合は会社所在地・会社名・代表者名)を記載します。
  2. タイトル:本文の前に、「通知書」「請求書」「警告書」「催告書」のように、文書のタイトルを記載します。
  3. 本文:意思表示・法的根拠・期限などを明記し、自身の主張を相手方に伝えます。感情的な表現や脅迫的な文言は避け、冷静かつ事実に基づいた内容とするよう心がけましょう。具体的には、以下のような内容を記載します。
    • 事実関係(例:「私は、令和〇年〇月〇日、貴殿に金〇〇万円を、年利〇%、返還時期を令和〇年〇月〇日と定めてお貸ししました。」など)
    • 法的根拠(例:契約書第〇条、民法第〇条など)
    • 期限(例:「〇月〇日までに支払いがない場合は法的措置を取ります。」など)
  4. 日付:本文の後に、「令和〇年〇月〇日」のような形式で明確に記載します(西暦・和暦どちらでも可)。この部分の日付は郵便局に提出する日に一致させる必要はなく、文書を作成した日を記載するのが一般的です。
  5. 差出人情報:最後に、住所・電話番号・氏名(法人の場合は会社所在地・電話(FAX)番号・会社名・代表者名)などの情報を記載します。この場所への押印は必須ではありませんが、本人の意思で作成したことを相手方に示したい場合には押印すると良いでしょう。

 

書式と文字数制限

内容証明郵便は、郵便局で定める以下のいずれかの行数・文字数の制限に従って作成する必要があります。

書式 1行の文字数・1枚の行数
横書き 1行20文字以内・1枚26行以内
1行13文字以内・1枚40行以内
1行26文字以内・1枚20行以内
縦書き 1行20文字以内・1枚26行以内

上記の行数を超える場合は、複数枚に分けて作成します。複数ページにわたる場合にはホチキスで綴じ、全てのページのつなぎ目に「契印(けいいん)」をして提出します。ページ番号を記載すると行数制限を超えてしまう場合があるので、記載しない方がベターです。

また、文字数の数え方にも細かいルールが定められています。具体的には、記号は「%」は1字、「㎡」は2字、「kg」は2字のように数えます。「()」のような括弧は1セットで1字となります。文字を丸や四角での枠で囲んだものは、囲まれる文字数に枠の1字を足して、「⑩」であれば3字といった数え方をします。

さらに、使える文字は漢字・ひらがな・カタカナ・数字・記号(一般的なもの)で、アルファベットは会社名や名前などの固有名詞に限って使用が認められています。詳細は郵便局のホームページで解説されていますので、文書を作成する前に確認しておくと良いでしょう。

なお、電子内容証明(e内容証明)を利用する場合には別のルールが適用されますので、興味のある方は後述の「電子内容証明(e内容証明)とは」の項目をご参照ください。

 

電子内容証明(e内容証明)とは

電子内容証明(e内容証明)とは、日本郵便が提供するオンライン上で完結する内容証明郵便サービスです。従来の紙による内容証明郵便と異なり、パソコンを使ってインターネット経由で送信できるのが特徴です。郵便局に行く必要がなく、24時間いつでも手続きを行えるため、ビジネスシーンや緊急時の通知手段として非常に便利です。

 

電子内容証明の仕組みと特徴

電子内容証明は、日本郵便ホームページの「e内容証明」にアクセスし、Wordファイル形式(.docx)で作成した文書をオンライン上にアップロードするだけで手続きが完了します。データの送信後、日本郵便が電子的に内容を確認・保管し、相手方には紙面で内容証明郵便が送付されます。また、差出人用の控え(謄本)についても、後日郵送で紙面が送られてきます。

電子内容証明の主な特徴は以下のとおりです。

  • 24時間365日利用可能:郵便局の営業時間外でも作成・送付が可能で、郵便局へ行く手間や待ち時間もかかりません。
  • 手書きや印刷が不要:パソコンで作成した文書のデータを送付するだけなので、印刷や手書きでの作成は不要です。
  • 封筒の準備が不要:郵便局の方で封筒に入れて送付するまでの手続きを行ってもらえます。
  • 証明力は紙の内容証明と同等:暗号化処理された電子データを日本郵便が5年間保管し、文書の内容を保証します。
  • 紙の内容証明より料金が安くなることも:e内容証明では1枚当たりの文字数制限がないため、文字数が多いほど料金が安くなる傾向があります。

 

電子内容証明(e内容証明)の文字数制限と形式

電子内容証明は、紙の内容証明と異なり、1枚あたりの文字数や行数の制限がありません。最大枚数は1つの文書で5枚で、Wordの標準的な文字サイズで作成した場合は最大約8000文字程度の文書を送れることになります。使用できる用紙サイズはA4のみで、「縦置き・横書き」もしくは「横置き・縦書き」のどちらかが選択できます。なお、上下左右の余白についても細かく規定されているため、日本郵便のホームページで公開されているWordファイルのひな型を使用することが必須となっています。

また、利用可能な文字はJIS第一水準、第二水準範囲の漢字・ひらがな・カタカナ・数字・記号(一般的なもの)・アルファベット(固有名詞にのみ使用可)などで、文字の装飾は太字・斜体のみ利用可能です。文字のサイズは10.5~145ポイントの範囲で選択できます。

 

内容証明郵便の送り方と費用の目安

内容証明郵便を送るには、紙の文書を郵便局から差し出す方法と、インターネットを利用する電子内容証明(e内容証明)の2つの方法があります。どちらも郵便局が内容を証明するという点では同じですが、手続き方法や費用体系が異なります。

ここでは、それぞれの送り方と費用の目安について解説します。

 

郵便局から差し出す場合

紙の文書を内容証明郵便として送付する際の流れは次の通りです。

  1. 同じ内容の文書を3通作成し、封筒には宛名・差出人を記入しておきます(封はしない)
  2. 郵便局(集配局など、内容証明を扱う局)に文書3通と封筒を持参し、提出します。万が一訂正があった場合に備え、印鑑を持参するのがおすすめです。
  3. 職員が3通すべての文書の内容が同じであることを確認し、送付用の1通を封筒に入れて封をします。
  4. 料金を支払い、3通のうち1通を控え(謄本)として受け取ります。配達証明はオプション扱いとなるため、希望する場合は申し出ることを忘れないように気を付けてください。

また、紙の内容証明郵便を送付する際は、以下の料金がかかります(2025年時点)。例えば、文書の枚数が3枚(1500文字)の場合、配達証明付きで合計2,000円となります。

区分 費用
郵便料金(定形50g以内) 110円
内容証明の加算料金 480円
※2枚目以降は1枚につき290円追加
一般書留料金 480円
配達証明料金(任意) 350円

 

電子内容証明(e内容証明)の場合

一方、電子内容証明の場合は、インターネット上で以下のような手順で手続きを行います。

  1. 日本郵便の公式サイト「e内容証明」にアクセスします。
  2. 利用者登録を行います。住所・氏名などの情報の他、支払い方法を「クレジットカード」か「料金後納」から選択し、登録します。料金後納は毎月大量の文書を送付する法人等を想定したもののため、個人の方はクレジットカードの利用がおすすめです。
  3. 公式サイトからダウンロードしたWordファイルのひな型を使用して、文書を作成します。
  4. 本登録完了後、トップページからID・パスワードを入力して会員専用メニューに進み、作成したWordファイル(.docx)をアップロードします。
  5. 差出人と受取人の住所・氏名を入力し、配達証明の有無を選択します。
  6. その後、画面の指示に従って登録した文書の画像確認やクレジットカード決済を行い、手続き完了となります。

e内容証明の費用は、1枚当たりに記載できる文字数が紙ものより多いため、文字数が多いほど費用が安くなる傾向があります。具体的には、以下のような費用がかかります(2025年時点)。例えば1500文字の文書1枚を送る場合、配達証明付きで1,645円となります。

区分 費用
郵便料金(定形50g以内) 110円
電子内容証明料金 401円
※※2枚目以降は1枚につき366円追加(最大5枚)
謄本送付料金 304円
一般書留料金 480円
配達証明料金(任意) 350円

 

内容証明郵便を自分で作成することはできる?

結論として、内容証明郵便は一般の方が自分で作成・送付することも可能です。ただし、文面や形式に誤りがあると、意図した法的効果を十分に発揮できなかったりするおそれがあり、目的や内容によって作成の難易度が異なります。

たとえば、支払い請求やクーリングオフの通知など、明確な意思表示を行うだけであれば、比較的容易に作成することが可能です。インターネット上には多くのひな形(テンプレート)が公開されており、これらを参考にすることで、適切な文書を作成できるでしょう。ただし、テンプレートを利用する際は、事案の内容や契約関係などの実情に合わせて修正を加えることが大切です。定型文をそのまま使用すると、状況に合わず逆にトラブルを招くことがあります。

一方で、法的根拠を明示する必要がある場合や、事案そのものが複雑なケースでは専門家への依頼が望ましいといえます。たとえば、債権回収や契約解除、慰謝料請求、損害賠償請求など、文面の一言一句が法的判断に影響を与える可能性のあるものは、弁護士など専門家の助言を受けるのが安全です。専門家が作成する内容証明郵便は、事実関係や法的根拠を正確に示し、感情的な表現を避けながらも強い意思を伝えることができます。そのため、将来的に裁判や交渉の証拠として用いることを想定している場合には、専門家への相談をおすすめします。

 

居場所のわからない相手に内容証明郵便を送るには?

内容証明郵便は、相手の住所が正確でなければ送付できません。ところが、トラブルの相手が転居していたり、意図的に連絡を絶っている場合など、居場所が分からないことも少なくありません。

ここでは、士業の職権による住所調査と、探偵(興信所)による住所調査の2つの代表的な方法を紹介します。

 

士業の権限による住所調査

行政書士などの一部の士業は、「職務上請求」と呼ばれる制度を利用して、住民票や戸籍の附票などから相手の現住所を特定できる場合があります。これは、正当な業務目的がある場合に限り、住民基本台帳法や戸籍法に基づいて自治体に住所や本籍地の情報の開示を請求できる仕組みです。

たとえば、次のようなケースで職務上請求が認められることがあります。

  • 遺産分割協議の通知を送る必要があるが、他の相続人が所在不明な場合
  • 債権回収や契約解除など、法的通知を行う必要がある場合
  • 慰謝料請求や損害賠償請求の通知を行う必要がある場合

ただし、職務上請求はあくまで「職務遂行上必要な場合」に限定され、単なる住所調査のみを目的とする利用は禁止されています。行政書士が請求を行う際には、契約書や宛先不明で返送された郵便物などの客観的な証拠から依頼内容の正当性を確認したうえで、市区町村役場等に開示を請求します。得られた情報は厳重に管理され、依頼人に対しても安易に調査結果を開示することはできません。

また、弁護士は「弁護士法第23条の2」に基づき、官公庁や企業などに対して情報の照会を行うことができます。これはいわゆる「23条照会」と呼ばれ、訴訟準備や権利行使のために必要な範囲で、住民票情報や勤務先情報などを照会できる仕組みです。行政書士の職務上請求と異なり、弁護士会を通じて行われ、民間企業まで対象となるためより広範な調査が可能です。ただし、目的外利用や濫用が厳しく制限されている点は行政書士と同様です。

 

探偵による住所調査

もう一つの方法として、探偵(興信所)に依頼して相手の現住所を調査する手段があります。探偵業は「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」に基づいて営業しており、所在調査を請け負うことができます。

探偵による住所調査は、住民票などの請求ではなく、公開情報の調査・聞き込み・現地確認・SNSなどの調査技術を組み合わせて行われるのが一般的です。士業の職権による住所調査の対象にならないようなケースでも、独自の情報網を使って居場所を特定できることがあります。

 

内容証明郵便に関して知っておきたい知識

内容証明郵便を利用する際には、知っておくべきルールや注意点がいくつかあります。ここでは、4つのポイントについて解説します。

 

内容証明郵便は全ての郵便局から送れる?

内容証明郵便は、すべての郵便局で取り扱っているわけではありません。取り扱いが可能なのは、内容証明業務を行う「集配郵便局」や「特定の郵便局」に限られます。小規模な郵便局では対応していない場合が多いため、事前に日本郵便の公式サイトや電話で確認するのが確実です。

なお、先述の電子内容証明(e内容証明)を利用すれば、インターネット上で24時間365日手続きが可能なため、郵便局に出向く手間を省くことができます。

 

内容証明郵便は代理人から送れる?

内容証明郵便は、本人以外の代理人が差し出すことが可能です。代理人が郵便局窓口に持参する場合には、差出人本人の委任状を提出する必要があります。代理人になれるのは、家族や知人の他、弁護士や行政書士など、委任状さえあれば誰にでも依頼することができます。

代理人が送付手続きを行う場合、内容証明郵便の「差出人欄」には実際の権利者(本人)の氏名・住所を記載するのが一般的です。これは、代理人が実務を代行するのは構いませんが、あくまで通知や請求の法的効果は依頼者本人に帰属するためです。この時、郵便局で訂正が必要になった場合は、代理人ではなく本人の印鑑が必要になる点に注意しましょう。なお、弁護士等が事案そのものの代理人となるケースでは、「代理人弁護士 〇〇」のように代理人名義で送付する場合もあります。

 

内容証明郵便に添付資料を同封できる?

内容証明郵便には資料や写真、契約書の写しなどを同封することはできません。内容証明制度は「本文の内容を郵便局が証明する」ものであり、添付資料までを証明するものではないためです。封筒に同封できるのは、あくまで文章が書かれた紙面のみです。また、内容証明の文書中に文章以外の図表を挿入することも認められていません。

もし証拠資料を相手に送付したい場合は、内容証明郵便とは別に書留郵便や特定記録郵便などで送付し、発送記録を残す方法が推奨されます。また、内容証明文中で「別便にて資料を送付した」旨を明記しておくと、後の証拠としても有効です。

 

内容証明郵便を海外へ送付できる?

日本国内の郵便局から内容証明郵便を海外へ送付することはできません。内容証明郵便は国内専用の制度であり、外国の住所宛てには適用されません。ただし、相手方が日本国内に代理人や事務所を有している場合は、その国内住所宛に送付することが可能です。トラブルが国際的な範囲に及ぶ場合は、国際法や各国の郵便法規に詳しい専門家へ相談することが重要です。

 

内容証明郵便の作成や送付を専門家に依頼する場合の費用

内容証明郵便は自分で作成・送付することも可能ですが、文面の体裁を整え法的効果を最大限発揮するために、専門家へ依頼するケースも少なくありません。

ここでは、行政書士・司法書士・弁護士に依頼する場合の費用の目安を紹介します。

 

行政書士

行政書士が行う内容証明の作成は、行政書士の業務の1つである「権利義務に関する書類の作成」の一環として行われ、弁護士などと比較すると費用がリーズナブルである点が特徴です。ただし、すでに争いが発生している案件や、将来的に紛争が予想される案件については、弁護士法違反(非弁行為)となるおそれがあるため対応できない場合があります。そのため、あくまでトラブルを未然に防ぐ目的や、意思表示・請求・契約解除などの通知に関する内容に限定されるのが一般的です。

行政書士に依頼する場合の費用は、次のような項目に分かれます。合計で15,000〜30,000円程度が一般的な相場です。

項目 内容 費用の目安
文案の作成 内容証明郵便に記載する文章を、事実関係や法的根拠に基づいて作成 10,000〜20,000円程度
郵送手続き代行 相手方への送付手続きを代行 3,000〜5,000円程度
相談料 事前相談(30分〜1時間) 無料〜5,000円前後

 

司法書士

司法書士は、不動産・会社登記などを専門とする法律専門職ですが、内容証明郵便の作成や送付代行を行うことも可能です。特に、認定を受けた司法書士であれば、140万円以下の請求額に限り訴訟代理や和解交渉まで対応できるため、金銭の支払い請求や契約解除など、将来的に裁判手続に発展する可能性がある案件で依頼されるケースが多いです。

費用の目安は以下の通りで、合計で25,000〜50,000円程度が相場です。

項目 内容 費用の目安
内容証明文書の作成 内容証明郵便に記載する文章を、事実関係や法的根拠に基づいて作成 20,000〜40,000円程度
郵送手続き代行 相手方への送付手続きを代行 3,000〜5,000円程度
相談料 事前相談(30分〜1時間) 無料〜5,000円前後

 

弁護士

弁護士は、内容証明郵便の作成・送付だけでなく、相手方との交渉・訴訟対応までを一括で行える点が特徴です。請求や警告の内容が重大で、相手側の反応によって訴訟に発展する可能性がある場合には、弁護士への依頼が適しています。弁護士に依頼する最大の利点は、「心理的圧力」を持たせられる点です。相手方が弁護士名義の内容証明を受け取ると、法的措置の可能性を強く意識し、早期解決につながることもあります。その一方で、費用は他の士業に比べて高めであり、内容や案件の複雑さによっても変動します。

項目 内容 費用の目安
内容証明文書の作成・送付 交渉・訴訟等を見据えて内容証明郵便に記載する文章を作成 30,000〜60,000円程度
相談料 初回相談(30分〜1時間) 無料〜5,000円前後
追加対応 交渉・訴訟など継続対応費用 案件により変動

 

まとめ

内容証明郵便は、法的なトラブルを防止したり、重要な意思表示を記録に残したりするための非常に有効な手段です。郵便局が文書の内容と差出日を公的に証明することで、後に「言った・言わない」という争いを防ぎ、確かな証拠として活用することができます。

ただし、文章の書き方によっては法的効力を最大限発揮できない恐れもあるため、法律知識を要する通知や複雑な案件では、行政書士・司法書士・弁護士などの専門家に相談することが推奨されます。行政書士は文書作成の専門家として、法令に則った正確かつ適切な表現で通知文を作成し、トラブルを未然に防ぐためのお役に立つことができるでしょう。

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