住所調査とは?居場所がわからない相手の所在地を特定する方法や依頼先を徹底解説

住所調査とは

住所調査とは、現在の居住地が不明な相手の住所を特定するために行う調査のことです。とくに近年では、引っ越しや転職などにより相手の居所が短期間で変わることが多く、連絡が取れなくなるケースも珍しくありません。また、婚姻関係や親族関係の解消後に相手と疎遠になり、書類の送達や法的手続きが滞るといった事態もしばしば起こります。こうしたトラブルを回避するためにも、住所調査の知識を持っておくことは非常に重要です。

住所調査には、公的書類を用いる方法やインターネット上の情報をもとにする方法など、さまざまな手段があります。ただし、他人の個人情報に関わる調査である以上、正当な理由がない場合や不正な手段による取得は、個人情報保護法や住民基本台帳法などに抵触する可能性があるため注意が必要です。

 

住所調査が必要となる場面

住所調査が必要になる場面は、法的手続きやトラブル解決の場面を中心に多岐にわたります。代表的なケースとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 訴訟を提起したいが、被告の住所が不明な場合:民事訴訟では、後述する「公示送達」などの一部の例外を除いて、訴状を相手に送達するために住所が必要です。
  • 内容証明郵便などを送付して意思表示をしたいとき:契約解除や請求通知を法的に有効に伝えるためには、相手方の住所が必要です。
  • 養育費や慰謝料などの支払い請求を行いたい場合:離婚後に連絡が取れなくなった元配偶者などに対して請求を行う際に調査が必要です。
  • 遺産分割協議に必要な相続人の住所が不明な場合:相続手続きにおいて、全相続人の連絡先が判明していないと協議が進められません。
  • 貸金や売掛金などの債権を回収したい場合:連絡が取れない相手に対し、請求や法的手続きを行うために現住所の特定が必要です。

 

居場所がわからない相手の住所を調べる方法とは

ここでは、相手の居場所がわからないときに住所を調べるための、代表的な4つの方法についてご紹介します。

 

戸籍の附票

戸籍の附票(ふひょう)とは、本籍地で管理されている「転居履歴の記録」です。戸籍の附票には、戸籍に記載された人物の過去の住所や現住所が記載されています。この附票は、本人やその配偶者、直系血族(父母や子)であれば、特別な理由がなくても取得することが可能です。たとえば、転居履歴を確認したい場合や、家族の住所の経緯を調べたいときなどに用いられます。

一方で、配偶者または直系血族でない親族(兄弟姉妹や甥姪など)や第三者が戸籍の附票を取得するには、法律上の利害関係を証明する必要があります。具体的には、訴訟を提起するために訴状の送付先を調査したい、相続手続きを行いたいなどのケースが挙げられます。

また、本籍地がわかっていなければ戸籍の附票を取得することはできませんので、調査を始める前に本籍地を把握しているかがポイントとなります。

 

住民票の除票

住民票の除票とは、転出や死亡などで住民票が削除された際の記録で、相手の以前の住所がわかる場合には有効です。この除票には、住民票に記載されている事項に加え、転出の場合には転出先住所と異動年月日、死亡の場合には死亡年月日が記載されます。転居により住民票が複数回移されている場合でも、この除票をたどって現住所を特定できる場合があります。

住民票の除票は市区町村役場で取得でき、本人と同一世帯の家族であれば、特別な理由がなくても請求が可能です。

ただし、同一世帯でない親族や、住所が同じであっても同一世帯でない方などが請求する場合には、第三者による請求と同様に正当な理由を説明する必要があります。なお、ここで言う「正当な理由」とは、先述の戸籍の附票の請求の場合と同様に、訴状の送付先調査や相続手続きなどの法律上の利害関係がある場合に限られます。

 

外務省の所在調査(相手が海外在住の場合)

相手が海外に住んでいる場合には、外務省の「海外在留邦人の所在調査」制度(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/shozai/index.html)を利用する方法があります。これは、海外に住んでいて長く連絡が取れておらず、かつ生存が見込まれる方の所在確認を求める際に、外務省が現地の在外公館を通じて調査を行う制度です。

ただし、この制度を利用するためには、調査対象者が在外公館(日本大使館や領事館)に住所や連絡先の届出をしている必要があります。また、調査対象者が日本国籍を喪失している(外国に帰化している)場合には、この制度を利用することはできません。

制度を利用できるのは三親等以内の親族(曽祖父母、祖父母、父母、子、孫、ひ孫、兄弟姉妹、甥・姪、おじ・おば)に限られ、申請時には調査を行う国(または地域)を指定する必要があります。

こちらは遺産相続や訴訟提起の他、消息調査などの目的で利用でき、申請にあたっては、理由の説明とともに所定の書類提出が求められます。

 

インターネット・SNSの活用

近年では、インターネットやSNSを使った調査も有効な手段です。Facebook、Instagram、X(旧Twitter)などに投稿された情報やプロフィール欄から、おおまかな居住地域や勤務先、学校などを推測できる場合があります。また、名簿検索サービスや過去のニュース記事、登記情報なども合わせて調査対象になります。

ただし、ネット上の情報は信頼性に欠けるケースも多く、法的手続きに利用するには慎重な裏付けが必要です。

 

住所調査を依頼したい場合の相談先

相手の住所がどうしてもわからない場合、専門家に相談することで、適法かつ効率的に住所を特定できる可能性があります。ここでは主に「士業」と「興信所(探偵)」の2つの相談先についてご紹介します。

 

士業

国家資格である「弁護士、行政書士、司法書士、税理士、弁理士、土地家屋調査士、社会保険労務士、海事代理士」の8つの士業では、職務上必要であれば委任状がなくても戸籍や住民票を取り寄せて住所調査を行える「職務上請求」という権限を持ちます。

ただし、職務上請求には不正利用のリスクが指摘されており、情報取得の正当性や透明性が厳しく問われるようになっています。たとえば、業務とは無関係な私的目的(知人の所在確認や、個人的な興味など)で請求を行ったり、得た情報を無断で依頼人や第三者に提供したりすると、不正取得や個人情報漏洩に該当します。こうした行為は、職務上請求制度の信頼性を損なうものであり、過去には実際に懲戒処分や行政指導を受けた士業も存在します。

こうした背景を踏まえ、現在では住民票や戸籍の情報が第三者に請求された場合に、対象者本人にその事実を通知する「本人通知制度」という仕組みを導入している自治体も増えています。この制度により、個人情報の不正取得を抑制し、請求を行う士業に対しても、より一層の説明責任と慎重な対応が求められるようになっています。

ここでは、各士業がどのような業務の中で住所調査を行うことがあるのかを表にまとめました。

 

士業名 住所調査を行う主な場面
弁護士 訴訟や内容証明郵便の送付に際し、相手方の住所を特定する必要がある場合
行政書士 相続手続き、契約書の作成、内容証明郵便の作成、外国人の在留資格申請、許認可申請などにおいて戸籍の取り寄せや相手の住所を特定する必要がある場合
司法書士 不動産登記や相続登記手続きで、相続人の住所を調査する必要がある場合
税理士 相続税や贈与税申告のため、相続人の居所確認が必要となる場合
土地家屋調査士 所有者不明土地の調査で、登記名義人の住所を追跡調査する場合
弁理士 権利侵害の調査や特許出願手続きにおける関係者調査の一環(まれ)
社会保険労務士 労務トラブル対応などで関係者の所在を確認する必要がある場合(まれ)
海事代理士 船舶関係の行政手続きに関連し、利害関係人の住所を確認する場合(まれ)

 

行政書士による「職務上請求」とは

先述の通り、行政書士は職務の遂行上必要な場合に限り、「職務上請求書」を用いて住民票や戸籍関連の証明書を取得できる権限を持っています。たとえば、相続人調査や許認可の申請、在留資格の申請などの際に戸籍や住民票を取得する必要がある場合がこれに該当します。

一方で、行政書士が業務で行うことのある内容証明郵便の作成に際しての職務上請求については、特に慎重な判断が求められます。たとえば、内容証明郵便を用いて債権の督促や契約解除の通知を行う際には、職務上請求を行う行政書士が契約書の内容や実際に未払いなどの状況が発生していることを確認し、職務上請求が業務の遂行に不可欠であることを判断する必要があります。

つまり、職務上請求はあくまでも行政書士が業務として必要な場合に限り許されている手続きであり、一般の方の個人的な目的のために相手の戸籍や住民票を取得することはできません。行政書士は、請求の目的が妥当かどうか、法的根拠があるかを慎重に判断したうえで手続きを行います。そのため、住所調査を含む業務を行政書士に依頼する場合は、まず調査の目的が法的に正当であるかどうかを明確に伝えることが重要です。

 

興信所(探偵)

もうひとつの選択肢として、興信所や探偵事務所に依頼する方法があります。彼らは主に聞き込みや張り込み、インターネット調査などの方法で対象者の行動や居所を調査します。

興信所のメリットは、「知人の消息を知りたい」などといった士業の職務上請求では対応できないようなケースでも柔軟な手法で調査が可能な点です。たとえば、SNSの動向から居住地を特定したり、近隣住民への聞き取りから住所を突き止めるといった方法が用いられます。

ただし、調査方法の中には違法行為と紙一重のリスクがある場合もあるため、信頼できる業者を選ぶことが不可欠です。また、事前に契約内容や調査範囲、成果が得られなかった場合の対応について十分に確認しておくようにしましょう。

 

住所調査にかかる費用の目安

住所調査を検討する際に気になるのが、どのくらいの費用がかかるのかという点です。ここでは、行政書士などの士業に依頼する場合と、興信所(探偵)に依頼する場合とで、それぞれの費用の目安や特徴について解説します。

 

士業

行政書士などの士業は、先述の通り業務の遂行上必要不可欠な場合にのみ住民票や戸籍を取り寄せることができるため、住所調査だけを依頼することはできません。そのため、主たる目的である業務(相続人調査、許認可申請など)に対する報酬が基本料金となります。

これらの基本料金に加えて住民票や戸籍の取り寄せにかかる手数料が追加されるのが一般的で、行政書士の場合は事務所によって異なりますが、1件あたり5,000円〜20,000円程度が相場です。複数の書類を取得する必要がある場合や、相続などの複雑な案件ではもう少し高くなるケースもあります。

弁護士の場合も、弁護士会照会による情報取得を含む調査を行うことがありますが、こちらは調査書作成料や日当、弁護士報酬を含めて数万円〜10万円前後となることもあります。なお、弁護士に依頼する場合は、同時に訴訟などの手続きを含めて依頼する必要があるため、費用全体が高額になる傾向があります。

 

興信所(探偵)

興信所や探偵事務所に住所調査を依頼する場合、料金体系は士業と比べて自由度が高く、調査の手法や期間によって費用も大きく異なります。一般的な相場としては、1件あたり5万円〜20万円程度が中心ですが、難易度が高くなると100万円以上になることもあります。

料金には、事前調査費・人件費・交通費などが含まれるのが一般的です。また、「成功報酬型」の料金プランを採用している探偵社もあり、結果が出なければ報酬は発生しない代わりに、成功した場合の費用が割高になるという特徴もあります。

なお、興信所を選ぶ際は、調査方法が適法であるかどうか、契約書の内容に不明点がないかをしっかり確認することが大切です。費用が安いからといって飛びつくと、調査の質が低かったり、違法調査によってトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

 

住所がわからない相手に訴訟を提起する方法とは

相手の住所が不明な場合でも、法的手続きがまったく進められないわけではありません。一定の方法や制度を活用することで、住所不明の相手に対しても訴訟を提起することは可能です。ここでは、代表的な3つの方法をご紹介します。

 

弁護士照会

弁護士照会(23条照会)とは、弁護士が業務上必要と認めた場合に、関係機関や企業に対して情報開示を求めることができる制度です。この制度を利用すれば、居場所がわからない相手に対して訴訟を提起できる可能性があります。具体的には、携帯電話会社や銀行、クレジットカード会社などに対して、「この電話番号・口座番号に対応する住所を教えてほしい」といった照会を行います。

この制度を利用できるのは弁護士に限られ、開示するかどうかの最終判断は照会先(携帯電話会社や銀行、クレジットカード会社など)に委ねられます。また、開示に応じてもらうには、照会理由が具体的かつ妥当である必要があるため、事前に十分な準備が求められます。弁護士照会は非常に強力な情報収集手段であり、住所調査の最終手段として活用されることも少なくありません。

 

公示送達

公示送達とは、相手の住所が不明な場合に、裁判所の掲示板などで訴訟の告知を行い、それをもって送達とみなす制度です。民事訴訟法第110条に基づき、通常の郵送による送達ができない場合に、裁判所に申立てをして許可を得ることで利用可能となります。

ただし、公示送達はあくまで「手を尽くして調査したが住所が判明しなかった場合」のみ認められる手続きです。調査を怠っていたり、調査が不十分な場合には、裁判所に却下されることもあります。そのため、住民票や戸籍附票の取得、探偵への依頼など、あらゆる手段を尽くして調査を行った記録を残しておくことが重要です。

また、公示送達は形式的には有効な送達とみなされますが、実際に相手が訴訟の存在を知らないまま判決が確定してしまうこともあるため、後日「知らされていなかった」として異議を唱えられたり、再審請求や強制執行の段階でトラブルになることもあります。

 

調査嘱託申立

調査嘱託とは、裁判所が必要と認めた場合に、住民票や戸籍などを取得するために行政機関などに直接照会をかける手続きです。たとえば、裁判の当事者が相手の現住所を調べるために、裁判所に対して「住民票の取得を目的とした調査嘱託をお願いします」と申立てを行います。

調査嘱託は、住民票や本籍地のある役所などに対して行われます。本人やその代理人では住民票や戸籍の取得が難しい場合でも、裁判所のお墨付きがあれば取得可能な場合があるため、非常に有効な手段です。

ただし、調査嘱託もすべてのケースで認められるわけではなく、裁判所が「必要性あり」と判断した場合に限られます。申立書には、調査の目的や対象情報、過去の調査状況などを詳しく記載する必要があります。

 

まとめ

居場所がわからない相手の住所調査は、遺産相続や訴訟手続き、債権の回収などの様々な場面で必要となります。手続きの合法性やプライバシーに配慮しつつ、適法かつ慎重に進めていくことが求められます。必要に応じて専門家の力を借りながら、確実な対応を心がけましょう。

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