行政書士の費用が安いって本当?業務内容や他士業との比較、知っておきたい知識まで徹底解説!

行政書士とは

行政書士とは、主に役所に提出する書類などの作成を専門に行う国家資格者です。書類の作成に必要な様々な法律に精通していることから「身近な街の法律家」と呼ばれることもあり、ビジネスから日常生活まで幅広い場面で必要とされる存在です。

行政書士は、他の士業(弁護士・司法書士・税理士など)と比較しても取り扱う書類の種類が非常に多く、10,000種類以上の書類を扱えるともいわれています。ここでは、行政書士の主な業務内容、行政書士になるための方法、そして気になる平均年収について詳しく解説していきます。

 

行政書士の業務

行政書士の代表的な仕事は、 官公署に提出する書類の作成と申請手続の代理 です。たとえば、建設業許可申請、飲食店営業許可申請、産業廃棄物収集運搬業許可、自動車登録・車庫証明、農地転用、国際業務(在留資格申請・永住・帰化)など、扱う手続きは多岐にわたります。

加えて、行政書士は権利義務に関する書類の作成と事実証明に関する書類の作成という2つの分野でも専門性を発揮します。

まず「権利義務に関する書類の作成」とは、当事者間の権利や義務を新たに発生させたり、変更したりする性質を持つ文書を作成する業務です。具体的には、 契約書、示談書、離婚協議書、遺言書案、内容証明郵便、法人設立時の定款の作成などが該当します。これらは文言のわずかな違いで法的効果が大きく変わるため、法律知識に基づいた慎重な文書作成が求められます。

一方、「事実証明に関する書類の作成」とは、ある事実の存在や状態を第三者に証明するための文書を作成する業務です。たとえば、 議事録、実地調査に基づく図面(位置図、案内図、現況測量図等)、各種申述書、財務諸表の作成などがこれに当たります。行政機関や法人が提出を求めるケースも多く、正確性や客観性が非常に重要となります。

 

行政書士のなり方

行政書士になるには、行政書士試験に合格することが一般的なルート です。行政書士試験は毎年11月に実施され、法律(行政法・民法など)や一般知識を中心に幅広い範囲から出題されます。合格率は概ね 10%前後で、その他の士業(弁護士・弁理士・司法書士・公認会計士・税理士など)と比較するとそれほど難易度の高くない資格とされています。資格取得後は、都道府県の行政書士会に登録することで正式に行政書士として活動できます。

なお、行政書士試験に合格する以外にも資格取得の方法はあり、次のいずれかに該当することで資格を得ることができます。

  • 行政書士試験に合格する
  • 弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格を有する(試験免除)
  • 国または地方自治体の公務員等で行政事務を担当した期間が通算で20年以上ある(試験免除)

 

行政書士の平均年収

行政書士の年収は 働き方によって大きく幅がある のが特徴です。独立開業する方が多い資格のため、仕事量や得意分野、営業力などで収入は大きく変わります。

一般的にいわれる行政書士の平均年収は、統計や調査によって異なりますが、おおむね 300〜600万円程度とされています。ただし、建設業許可や入管業務などの、ノウハウを要する高付加価値業務を中心に扱う行政書士は、年収1,000万円以上を達成するケースも珍しくありません。

最近では、SNSやWebマーケティングを活用して顧客獲得を行う行政書士も増えており、働き方の自由度が高い点も魅力の一つです。行政書士は、努力や専門分野の設定次第で収入を伸ばすことができる「実力型」の資格といえるでしょう。

 

行政書士と他士業の業務比較

行政書士・弁護士・司法書士・税理士の4士業について、代表的な業務と対応可否を一覧表にまとめました。

行政書士は許認可手続や契約書作成など 書類作成・手続の専門家 であり、弁護士は交渉・紛争解決の専門家、司法書士は登記の専門家、税理士は税務の専門家 という明確な分野の違いがあります。どの士業に依頼すべきか迷う場合は、「何をしてほしいのか」「紛争性があるのか」「独占業務に該当するのか」を判断基準にすると良いでしょう。

業務内容 行政書士 弁護士 司法書士 税理士
許認可書類の作成・提出代理
(建設業、飲食店、産業廃棄物関係、風俗営業等)

(可能ではあるがまれ)
× ×
契約書の作成(紛争性なし) ×
離婚協議書の作成
(不動産登記に関連するもののみ)
×
示談書の作成
(簡易代理権の及ぶ範囲のみ)
×
紛争の相手方との交渉
(示談・慰謝料等の交渉)
×
(簡易代理権の及ぶ範囲のみ)
×
裁判手続の代理(民事・刑事) ×
(簡裁代理権のみ)
×
内容証明郵便の作成
(紛争性なし)

(税務関連のみ)
会社設立時の定款作成・認証手続の代理 ×
商業登記(会社設立・役員変更) × ×
不動産登記
(所有権移転・抵当権設定等)
× ×
税務相談・税務申告・決算業務 × × ×
入管業務
(帰化申請・在留資格申請等)
× ×
遺言書案の作成
遺産分割協議書の作成
(紛争性なし)

(相続税の申告に必要な場合のみ)
交通事故の賠償交渉 × × ×

 

行政書士の費用は「安い」?

行政書士の費用(報酬)は、他士業と比較すると「安い」と言われることが多いのが特徴です。ただし、この「安い」という評価は単純に金額が低いという意味ではなく、業務の性質・独占業務の範囲・必要となる専門性の違いから生じるものです。まずは、その理由を整理してみましょう。

行政書士の費用が一般的に安いといわれる理由として、まず裁判代理や交渉代理といった“紛争事案”を扱わないことが挙げられます。紛争解決は高度な専門性とリスクを伴うため、弁護士報酬は高額になりやすい傾向があります。一方、行政書士のメイン業務である許認可手続や契約書作成は、手続きの難易度や作業量に応じた費用設定となるため、手続きの種類によっては比較的利用しやすい価格帯として認識されやすいのです。

また行政書士は独立開業する人が多く、事務所によって料金設定が自由であるため、市場競争が働きやすい構造にあります。そのため、同じ手続きでも事務所ごとに費用差が生まれ、「安い」と言われる背景にもなっています。

しかし、実際に行政書士に依頼する際、提示された見積もり金額が高いのか安いのか判断に困ることもあるでしょう。その場合に参考になるのが、日本行政書士会連合会が公開している「行政書士報酬の統計」 です。これは、全国の行政書士を対象にした5年に1度の報酬統計調査の結果がまとめられたもので、代表的な業務ごとの報酬額(中央値・平均値など)が確認できます。見積もりの妥当性を判断する際には、ぜひ参考にしてみてください。

 

代表的な業務と費用の目安

行政書士に依頼できる代表的な業務と費用相場を以下の表にまとめました。行政書士への依頼を検討されている方のために、おおよその金額感の参考になれば幸いです。

業務内容 費用の目安
建設業許可申請(新規・都道府県知事許可) 120,000〜200,000円程度
産業廃棄物収集運搬業許可申請(積み替え・保管なし) 100,000〜180,000円程度
飲食店営業許可申請 30,000〜60,000円程度
内容証明郵便の作成 10,000〜40,000円程度
契約書作成 10,000〜50,000円程度
会社設立サポート(定款作成含む) 50,000〜150,000円程度
遺言書文案作成 20,000〜200,000円程度
※相続人の数や財産規模等によって大きく変動
遺産分割協議書作成(紛争性なし) 30,000〜80,000円程度
在留資格申請(ビザ申請) 50,000〜250,000円程度
※在留資格の種類や手続きの難易度によって大きく変動
帰化申請サポート 150,000〜300,000円程度
※本人の雇用状況(被雇用・個人事業主・法人経営等)や手続きの難易度によって大きく変動

 

行政書士に依頼する際に知っておきたいポイント

行政書士へ業務を依頼する際には、行政書士ごとの専門性や業務範囲を正しく理解しておくことが大切です。ここでは「特定行政書士」「職務上請求」「非弁行為」の3つについて、詳しく解説していきます。

 

「特定行政書士」とは

特定行政書士とは、一般の行政書士に追加して「行政不服申立て(審査請求)」に関する手続代理権を持つ行政書士のことです。行政書士法改正(平成26年)により創設された制度で、専門研修(特定行政書士研修)と考査に合格した行政書士のみが付与されます。

通常の行政書士は、許認可申請などを代理できますが、不許可処分などに対して行う「行政不服審査法に基づく審査請求の代理」はできません。一方、特定行政書士は、一定の範囲内で審査請求書の作成や手続の代理が可能です。ここでいう審査請求とは、行政処分(例:許可申請に対する不許可、営業停止処分など)に対して、別の上級行政庁に対し「その処分を見直してほしい」と申し立てる制度のことです。特定行政書士は、この申し立てに必要な主張整理、理由書の作成、手続の進行管理などを代理できるため、不服申立てに不慣れな依頼者にとって大きな助けとなります。

 

行政書士の「職務上請求」とは

行政書士は、業務に必要な場合に「住民票」「戸籍」「除票」「身分証明書」などを職務上請求書によって取得できます。これは行政書士の重要な権限の一つで、行政書士法第10条および関連規程に基づいて認められています。

ただし、職務上請求が認められるのは、あくまで依頼を受けた業務の遂行に必要な場合のみです。不正取得は厳しく処罰され、行政処分の対象にもなります。過去には不正利用により資格停止・業務禁止などの処分を受けた例もあり、行政書士にとって非常に重い責任を伴う制度といえます。

依頼者が理解しておくべき重要ポイントは、行政書士は本人確認と業務目的の適法性を必ず確認する義務があるということです。目的が曖昧な場合や、第三者情報を不当に取得する恐れがある場合には、行政書士は職務上請求に応じることはできません。

実際の職務上請求の利用例としては、以下のようなものがあります。

  • 相続手続に必要な戸籍収集:相続人を確定するために、被相続人や相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を収集する場合。
  • 許認可申請に必要な本人確認資料の取得:建設業許可や産業廃棄物許可申請などで、代表者・役員の身分証明書や登記されていないことの証明書を取得する場合。
  • 帰化申請・在留資格申請における家族関係の確認:家族の戸籍や住民票を取得し、法律上の身分関係を証明する必要がある場合。
  • 遺言書作成サポートのための身分関係調査:遺言者の家族構成(推定相続人)を確認するための戸籍収集。

 

「非弁行為」とは

行政書士に依頼する際に最も注意すべきポイントが、この非弁行為(ひべんこうい)です。非弁行為とは、弁護士でない者が、本来弁護士のみが行える法律相談・交渉・訴訟代理等を行うことを指し、弁護士法72条で禁止されています。

行政書士は法律の専門家ではありますが、扱えるのは主に書類作成と行政手続きの代理に限定されており、紛争性・交渉性のある案件には対応できません。たとえば、次のようなケースは行政書士が行うと非弁行為になります。

  • 相手方との示談交渉(慰謝料、損害賠償など)
  • 相手方との金銭トラブルについて代理で話し合うこと
  • 裁判所に提出する訴状・準備書面の作成
  • 労働トラブルの交渉や代理

 

まとめ

行政書士は、官公署に提出する書類作成や行政手続の専門家として、ビジネス・日常生活のあらゆる場面で活動しています。行政書士の費用は「安い」と言われることもありますが、依頼する業務の種類や複雑さによって大きく差が出る場合もあります。見積が妥当か判断しづらい場合は、日本行政書士会連合会が公表している「行政書士報酬の統計」を参考にすると良いでしょう。

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