契約書チェックを行政書士に依頼する際の費用とは?料金相場とサービス内容を解説

契約書のリーガルチェックとは

契約書のリーガルチェックとは、契約内容や条項が法律に適合しているか、また当事者に不利益な内容が含まれていないかを確認する作業のことです。契約書は、ビジネスや日常生活においてトラブルを未然に防ぐための最も重要な書類の一つですが、専門的な用語が多く、さらに法令に関する知識が必要になるケースもあり、一般の方がすべてを正確に理解するのは難しい場合があります。

そのため、契約締結前に専門家がリーガルチェックを行うことで、契約上のリスクを最小限に抑え、安心して契約を結ぶことができるようになります。リーガルチェックは、単に「誤字脱字を直す作業」ではなく、契約書に記載された内容を総合的に点検するリスク診断といえるでしょう。近年では、ChatGPTなどのAIツールを活用して契約書のドラフトを作成するケースも増えており、AIが作成した文書の法的妥当性を確認するためにリーガルチェックを行うニーズも高まっています。

 

リーガルチェックを実施する目的

リーガルチェックの目的は、契約当事者が安心して契約を締結し、将来のトラブルを未然に防ぐことにあります。ここでは、具体的にどのような目的で行われるのかを4つの観点から解説します。

法令違反の回避

契約書の内容が、関係する法律や業界規制に違反していないかを確認することが、リーガルチェックの基本です。特に、独占禁止法や下請法、労働基準法などは、取引の性質によって適用されるルールが異なります。法令違反のある契約は無効となるおそれがあり、行政指導や罰則の対象になることもあります。そのため、法的整合性を確保することは、企業や個人事業主にとって最も重要なリスクマネジメントの一つです。

契約の無効・取り消しの回避

契約書が形式的に整っていても、法的要件を満たしていなければ効力を失うことがあります。

例えば、会社の社員や担当者が実際には代表権を持っていないにもかかわらず契約を締結した場合、その契約は原則として無効になります。代表取締役や理事など、正式に権限を有する者が署名押印していなければ、後から「会社としては同意していない」と主張され、契約の履行を拒まれるおそれがあります。代表取締役以外の方が署名する場合は、署名者が正当な代理権・代表権を持っているかを委任状などで確認することが重要です。

もう一つの典型例が、公序良俗に反する内容を含む契約です。例えば、法外な利息を定めた金銭消費貸借契約や、労働基準法に反して過度な拘束や罰金を課す「強制労働契約」などは、公序良俗に反するため無効となります。表面的には当事者間の合意が成立していても、社会的妥当性を欠く条項は法的効力を持ちません。リーガルチェックでは、契約の自由の範囲を超えた過剰な条件が含まれていないかを確認し、必要に応じて修正や削除を提案します。

このように、契約の無効・取り消しを防ぐためには、契約内容の適法性の確認を行うことが非常に重要です。

自身に不利な内容の是正

契約書は、双方の利害を調整するための文書ですが、特に相手方が作成した雛形を提示された場合、自身に不利な条項が含まれていることがあります。

例えば、解除権や損害賠償の範囲、支払い条件、契約不適合責任などに偏りがあると、トラブル発生時に大きな不利益を被るおそれがあります。リーガルチェックは、不公平な条項を見抜き、修正や交渉の提案を行うことも重要な目的の1つです。

トラブル発生時のリスク低減

契約締結後に万が一トラブルが生じた場合でも、契約書の条項が明確であれば、解釈の余地が少なく、紛争を円滑に解決しやすくなります。逆に、曖昧な表現や抜け漏れがあると、裁判や交渉で自社に不利な判断が下されることもあります。

リーガルチェックは、契約の解釈が一義的で明確になるよう条文を整えることで、将来的な紛争リスクを軽減することも目的の1つです。結果として、トラブルが発生しても迅速に解決に繋げることができるでしょう。

 

リーガルチェックを行った方が良い契約書の例

リーガルチェックは、あらゆる契約書に対して実施することが望ましいですが、特に以下のような契約書は文言の選び方や条項の順序によって法的な効果が大きく異なる場合があるため、専門家のリーガルチェックを受けることをおすすめします。

契約書の種類 契約書の概要 チェックすべき主なポイント
業務委託契約書 業務の内容や報酬、責任の範囲を定める契約書。外注・フリーランス契約などに用いられる。 委託業務の範囲、成果物の定義、再委託の可否、損害賠償・秘密保持条項の有無、契約解除条件など
秘密保持契約書(NDA) 取引や共同事業に際し、知り得た機密情報を外部に漏らさないことを定める契約書。 秘密情報の定義範囲、開示方法、第三者提供の可否、存続期間、違反時の損害賠償規定など
売買契約書 物品やサービスの売買条件を定める契約書。 代金・支払時期、引渡条件、所有権移転時期、契約不適合責任、契約解除条件など
賃貸借契約書 不動産や動産の貸し借りに関する契約書。 使用目的、契約期間、原状回復義務、更新条件、保証金・敷金の扱い、解除条件など
請負契約書 成果物を完成させて報酬を受け取るための契約書(建設工事、システム開発など)。 成果物の定義、検収方法、契約不適合責任、報酬支払時期、契約解除要件など
事業譲渡契約書 企業の一部または全部の事業を他社に譲渡するための契約書。 譲渡資産・負債の範囲、譲渡価格、従業員・取引先の承継、競業避止義務の有無など
金銭消費貸借契約書 お金の貸し借りを明確にする契約書。 金額、利息、返済方法、期限の利益喪失条項、遅延損害金、保証人の有無など
雇用契約書 労働条件を定める契約書。 労働時間、給与、試用期間、解雇条件、競業避止義務、就業規則との整合性など
訪問販売契約書 訪問販売や電話勧誘販売などで締結される契約書。 クーリングオフ制度の記載、商品の詳細、支払条件、解約手続き、特定商取引法の遵守など
著作権(出版)契約書 著作物の利用・出版に関する権利関係を定める契約書。 著作権の帰属、利用範囲・期間、印税率、二次利用の取扱い、著作者人格権の扱いなど
利用規約・プライバシーポリシー ウェブサイトやサービスの利用条件・個人情報取扱方針を定める文書。 利用者の権利・義務、禁止事項、免責条項、個人情報の収集・利用目的、法改正対応など
離婚協議書 離婚時の財産分与・養育費・親権などを定める契約書。 養育費の金額・支払期間、財産分与の方法、面会交流、清算条項、公正証書化の検討など
示談書 トラブルの解決内容を明文化した合意書。 示談金額・支払条件、清算条項、秘密保持条項、違約金、公正証書化の検討など
誓約書 特定の行為をしない(または行う)旨を約束する書面。 誓約内容の具体性、期間、違反時のペナルティ、守秘義務、雇用・契約関係との整合性など

 

契約書のリーガルチェックで確認すべきポイント

契約書のリーガルチェックを行う際は、全体の構成や条文の正確さだけでなく、法的効果を左右する細部にも注意が必要です。ここでは、特に確認しておくべき4つの基本ポイントを解説します。

 

契約書の内容は適切か

最も重要なのは、契約書の内容が当事者の合意を正確に反映しているかどうかです。契約書の条項に不備や曖昧な表現があると、後に「解釈の違い」による紛争が生じることがあります。

特に、契約期間、報酬・支払い条件、納期・成果物の定義、解除条件、損害賠償範囲などは慎重に確認しましょう。また、契約の目的や範囲に不明確さがあると、予期せぬ義務が発生する可能性もあるため、曖昧な条文は具体的な言葉に置き換えることが大切です。さらに、関連する法律(民法・下請法・労働法など)に抵触していないかも重要なポイントです。

 

タイトルは適切か

契約書のタイトルは単なる形式ではなく、契約の法的性質を示す重要な要素です。たとえば、「業務委託契約書」と「雇用契約書」では、適用される法律(民法または労働基準法)が異なり、当事者の義務や保護の内容も大きく変わります。

タイトルと契約書の内容が一致していない場合は、取引の実態によって契約の性質が判断されるため、混乱を避けるために契約の実態に即したタイトルを付けることが重要です。特に、雇用契約と業務委託や請負契約を混同しているケースは多く、税務や社会保険の取り扱いにも影響するため注意が必要です。

 

誤字・脱字や日付の記載誤りなどのミスはないか

契約書における誤字・脱字や記載漏れは、後にトラブルを引き起こすおそれがあります。たとえば、日付の誤りによって契約期間がずれたり、金額や数量の誤記によって支払い義務が変わってしまうこともあります。また、当事者名(特に法人の場合は正式名称や所在地)に誤りがあると、契約の有効性そのものに影響することもあります。

特に「年号」「金額」「契約当事者」「署名・押印」部分は二重確認が必要です。また、AIやテンプレートを利用した契約書作成では、定義語や文言の整合性に誤りが生じやすいため、生成後に必ず人の目で確認することが推奨されます。

 

収入印紙の有無・金額は適切か

印紙税法によって定められた契約書(例:請負契約書、金銭消費貸借契約書、不動産売買契約書など)は、「課税文書」に該当し、契約書に収入印紙(印紙税)の貼付が必要となります。印紙を貼らずに契約した場合、過怠税として本来の3倍の税金が課されるおそれがあるため、リーガルチェックの際に確認すべきポイントの1つです。印紙の要否や金額は、国税庁のホームページで確認することができます。

なお、電子契約書の場合は印紙税の課税対象外となるため、コストを抑えたい場合には検討すると良いでしょう。ただし、契約書の種類によっては、電子契約とするために相手方の許可を得なければならないものもあるので、注意が必要です。

 

契約を行う際に知っておきたい法律

契約書を作成・締結する際には、取引の種類によって民法以外にも様々な法令が関連します。ここでは、私たちが生活やビジネスの中で関わることの多い契約書に関連する主要な法律を5つ紹介し、それぞれの法律が契約書の内容にどのように関わるかを解説します。

 

特定商取引法

特定商取引法は、消費者が不意打ち的な勧誘や誇大広告などによって不利益を被ることを防ぐために定められた法律です。この法律が適用される取引形態には、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供(エステ・学習塾・語学教室など)、連鎖販売取引(マルチ商法)などがあります。いずれも、消費者が事業者に比べて情報・交渉力の点で弱い立場にあることを前提に、厳格なルールが設けられています。

この法律では、これらの取引を行う際に契約書(法定書面)の交付が義務付けられており、契約書に記載すべき事項も法律によって細かく定められています。たとえば、訪問販売の場合、販売業者の名称・住所・代表者名、商品の内容、価格・支払方法、契約解除(クーリング・オフ)の方法などが必須記載事項です。これらを欠くと、無期限で契約解除(クーリング・オフ)が可能となったり、販売業者が行政処分の対象となる可能性があるため、契約書を作成する事業者はリーガルチェックを受けることをおすすめします。また、法定の記載事項を欠いた契約書を提示された場合、消費者の側が契約を拒否することも大切です。

 

消費者契約法

消費者契約法は、事業者と消費者の間で結ばれる契約において、消費者の利益を守ることを目的として制定された法律です。消費者は、事業者に比べて情報量や交渉力で不利な立場にあるため、契約上の公平を保つためにこの法律が設けられています。

この法律では、契約書における消費者の権利を著しく制限するような条項や、事業者の責任を過度に免除する条項は「不当な契約条項」として無効になります。たとえば、次のような内容が典型的な「不当条項」として挙げられます。契約書を作成・確認する際には、不当な契約条項が含まれていないかをリーガルチェックで確認することが重要です。

  • 事業者が自らの過失で損害を与えても「一切責任を負わない」と定める条項
  • 商品に不具合があっても返品・交換を一切受け付けないなど、消費者にとって著しく不利な条項
  • 過大なキャンセル料や遅延損害金を課す条項
  • 成年後見制度を利用すると契約が解除される条項

 

労働基準法

労働基準法は、労働者の労働条件を保護するための法律で、雇用契約書や労働条件通知書の内容に直接関わります。労働基準法では、労働契約締結時に使用者が労働者に労働時間・賃金・休日・解雇条件などを明示することが義務づけられているため、雇用契約書や労働条件通知書のリーガルチェックを行う際はこれらの項目に抜け漏れがないかを確認することが必要です。

たとえ「業務委託契約」として締結していても、実態が雇用に近い場合は労働基準法が適用される可能性があり、契約書の内容が形式的なものにとどまらない点に注意が必要です。また、違法な長時間労働や未払い残業を許容するような内容は、当事者同士が一度合意したものでも無効と判断されます。

 

下請法

下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、元請業者と下請業者の間の取引を公正に保つことを目的とした法律で、特に中小企業を不当な取引から守るために重要な制度です。この法律が適用されるのは、元請企業の資本金が大きく、下請企業の資本金が一定規模以下で、以下のような委託を行う場合です。

  • 製造委託:部品や原材料、金型等の製造を他社に依頼する場合
  • 修理委託:製品の修理業務を委託する場合
  • 情報成果物作成委託:ソフトウェア開発、デザイン制作などを委託する場合
  • 役務提供委託:運送、清掃、保守、コールセンター業務などのサービス提供を委託する場合

これらの取引において、元請が支払遅延や一方的な値引き、受領拒否を行うことは法律で禁止されています。こうした不当行為を防ぐため、下請法第3条では、取引内容を明確に記載した「発注書」や「注文書」などの通称「3条書面」と呼ばれる書面の交付を元請に義務付けています。

3条書面には、以下のような法定記載事項を明確に記す必要があります。発注書や注文書を作成する際には、これらの情報がすべて記載されているかを確認することが重要です。

  • 元請・下請事業者の名称
  • 委託を行った日付
  • 委託の内容
  • 納期・納入場所
  • 支払金額・支払期日・支払い方法

 

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法(宅建業法)は、不動産の売買や賃貸に関する契約で、取引の安全性と消費者保護を図るための法律です。不動産取引では高額な金銭が動くため、契約書の内容をめぐるトラブルを防止する目的で、宅建業法では「35条書面」と「37条書面」という2種類の重要な書面の交付が義務付けられています。

35条書面(重要事項説明書)は、契約締結前に買主または借主に対して説明・交付する書面で、取引対象となる物件の内容や取引条件について、契約前に十分な情報提供を行うことを目的としています。法定記載事項は契約の種類(賃貸借・売買、宅地・建物)によって異なりますが、主に以下のような内容が含まれます。宅地建物取引士は、この書面の内容を説明し、署名を行う義務があります。説明を怠ったり、虚偽の内容が記載されていた場合、業者に対して行政処分が科されることもあるため、作成の際にはリーガルチェックが欠かせません。

  • 登記簿上の権利の種類・内容等(所有権、抵当権など)
  • 法令上の制限(用途地域・建築基準など)
  • 私道負担やライフラインの整備状況
  • 契約解除や違約金、手付金、敷金等に関する定め
  • 共有部分・専有部分に関する規約等の定め(マンションの場合)

一方、37条書面は、不動産(宅地・建物)の売買・賃貸借の契約成立後に交付される書面で、実際の契約内容を明確に示すものです。こちらにも宅建業法で定められた法定記載事項があり、具体的には次のような内容が含まれます。

  • 取引当事者の氏名・住所
  • 物件の所在地等の物件を特定する情報
  • 代金・賃料・支払時期および方法
  • 引渡し日や所有権移転の時期
  • 契約解除の条件・違約金・損害賠償の定め
  • ローンのあっせんに関する内容

 

契約書のリーガルチェックを依頼できる専門家と費用の目安

契約書のリーガルチェックは、契約内容の法的妥当性やリスクを精査するため、専門的な知識が必要です。

ここでは、行政書士・司法書士・弁護士がそれぞれどのような観点で契約書のチェックを行えるのか、また費用の目安について解説します。

 

行政書士

行政書士は、「権利義務」や「事実証明」に関する文書を作成する専門家で、契約書の作成やリーガルチェックを行うこともあります。行政書士によるリーガルチェックでは、条文の整合性や曖昧な表現の修正、当事者間の権利・義務関係が明確かどうかなどを中心に確認します。

ただし、すでに紛争が発生している案件や、今後紛争が予想される案件についての交渉・訴訟代理は非弁行為にあたる可能性があるため対応できません。費用の相場は契約書の内容や分量によって異なりますが、1件あたり数千~2万円程度が一般的です。顧問契約を結ぶ場合には、定期的な契約書レビューを含めて月額1~2万円前後で依頼できるケースもあります。

 

司法書士

司法書士は、登記手続の専門家でありつつ、法律文書の作成に関しても高い専門性を持っています。契約書のリーガルチェックに関しては、不動産取引・会社法関連(株主間契約、役員契約など)のチェックを得意とする傾向があり、法的根拠や契約当事者の表示方法など、実務上の形式要件の確認に強みがあります。

費用は契約書の内容によって幅がありますが、1件あたり2~5万円程度が一般的です。不動産売買契約書など登記を前提とした契約では、登記申請手続きとあわせて依頼されるケースが多く、その場合は総額5~10万円程度になることもあります。

 

弁護士

弁護士は、紛争の予防から解決までを包括的に扱える唯一の法律専門職です。契約書のリーガルチェックにおいても、将来的に訴訟や損害賠償請求に発展するリスクを見据えた実務的な助言が可能です。また、契約交渉の代理や契約条件の修正提案など、行政書士・司法書士では扱えない範囲まで対応できます。

弁護士に依頼する場合の費用は、契約書の性質やボリュームによって異なりますが、1件あたり3~10万円程度が相場です。企業の継続的な法務サポートを希望する場合は、月額5~10万円前後の顧問契約で契約書レビューや相談をに行えるケースもあります。コストは高めですが、紛争リスクを根本から回避したい場合や、重要な取引契約では弁護士のチェックを受けるのが望ましいでしょう。

 

まとめ

契約書のリーガルチェックは、単なる文書の確認作業ではなく、将来のトラブルを予防し、自社や自身の権利を守るための重要な手段です。契約書に誤りや不明確な表現があると、意図しない義務を負ったり、相手方との解釈の違いから紛争に発展したりするリスクがあります。また、最近ではAIツールを利用して契約書を作成・下書きするケースも増えていますが、最終的な法的有効性やリスク判断は、人によって行われなければなりません。

契約書チェックを行政書士・司法書士・弁護士などの専門家に依頼する場合は、それぞれの専門分野を理解した上で、契約の性質に応じて最適な専門家を選ぶように心がけましょう。

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