外国人の就労ビザを申請するには?手続きの流れや必要書類、代行サービスの利用方法を解説

日本で働くために必要な「就労ビザ」。その取得手続きは種類によって異なり、準備も複雑です。本記事では、ケース別の申請方法や必要書類、代行依頼のポイントまでを丁寧に解説します。

 

就労ビザとは

就労ビザとは、外国人が日本で合法的に働くために必要な在留資格のことを指します。正式には「就労可能な在留資格」と呼ばれ、日本国内で職業に従事することを目的として入国・在留するために付与される資格です。

法務省の統計によると、2024年時点で日本に在留している外国人およそ360万人のうち、就労ビザを持つ者は約125万人で全体の34%に上り、就労ビザは外国人の在留資格の中でも非常に重要な位置を占めています。

日本では外国人の就労ビザは厳格に分類されており、「どのような仕事をするのか」「どの業種・職種で働くのか」によって許可される在留資格の種類が異なります。ここでは、就労ビザの種類や有効期限について説明します。

 

就労ビザの種類

日本での就労ビザの種類と職種の例を以下の表に示します。これらのビザごとに許可される職務内容や申請要件、更新条件が異なるため、外国人本人の経歴と就業内容に合った在留資格を選ぶことが重要です。

なお、就労ビザを持つ外国人約125万人のうち、「技術・人文知識・国際業務」の資格が約40万人で、全体の31%を占めています。

 

在留資格 主な対象職業・活動内容
外交 大使、公使、総領事、大使館勤務の外交官など
公用 外国政府職員(非外交官)、国際機関の職員など
教授 大学の教授、准教授、講師
芸術 作曲家、画家、彫刻家、著述家など
宗教 宣教師、僧侶、牧師など
報道 新聞記者、報道カメラマンなど
高度専門職 高度な学歴・年収・実務経験などを持つ高度人材
経営・管理 企業の経営者、会社役員など
法律・会計業務 弁護士、公認会計士、司法書士など(日本の資格の保持者)
医療 医師、歯科医師、看護師、薬剤師など(日本の資格の保持者)
研究 政府・民間研究機関の研究者
教育 小学校・中学校・高校などの語学教師
技術・人文知識・国際業務 企業の事務職、マーケティング、通訳、翻訳、ITエンジニアなど
企業内転勤 外国本社から日本支社へ転勤する社員
介護 介護福祉士(日本の資格の保持者)
興行 歌手、俳優、ダンサー、スポーツ選手など
技能 外国料理の調理師、建築職人、自動車整備士など
特定技能 介護、建設、農業、宿泊など14分野で即戦力が求められる人材
技能実習 技術習得を目的とした研修・実習生(技能実習制度に基づく)

 

就労ビザの在留期間

就労ビザの在留期間(有効期限)は、通常以下のいずれかの期間が許可されます。

  • 3か月
  • 1年
  • 3年
  • 5年

初回の申請時には1年または3年の在留期間が与えられることが多く、その後、更新の際に5年の許可が出ることもあります。

在留期間が終了する前に更新手続きを行わなければ、不法滞在の状態となってしまうため、十分な注意が必要です。また、ビザ更新にあたっては引き続き安定した雇用関係にあることや、適切な職務に従事していることが求められます。

 

就労ビザの取得手続きとは

外国人が日本で働くためには、適切な在留資格(就労ビザ)を取得する必要があります。就労ビザの取得にはいくつかのパターンがあり、申請者の現在の居住地や在留資格の有無によって必要な準備や対応が異なります。以下では、代表的な3つのケースについて概要を紹介します。

 

就労ビザを申請する3つのパターン

外国に住む方が日本の企業に採用され、新たにビザを取得する場合

このケースでは、採用企業が外国に住む外国人を新たに雇用し、日本に呼び寄せるための「在留資格認定証明書交付申請」を行います。本人が外国にいるため、手続きは企業側が主導することとなります。申請の際には、雇用契約書や事業内容説明書など企業が準備すべき書類が多数あるため、企業側の対応が不可欠です。

発行された「在留資格認定証明書」は企業側に送付され、企業はこれを外国に住む本人に送付します。本人がその証明書を在外公館に持参すると、ビザの交付を受けることができます。日本に入国後、空港で新しい在留カードを受け取るのが一般的な流れです。

日本に住む留学生が就職する場合

日本で学んでいる外国人留学生が卒業後に日本国内で就職する場合、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ在留資格を変更するための「在留資格変更許可申請」を行います。この際、専攻内容と職務内容との関連性が重視されるほか、卒業証明や雇用先の情報を適切に準備することが求められます。

この場合は本人が主体となって手続きを行うのが一般的ですが、勤務先に関する書類を提出する必要があるため、企業側のサポートが必要です。

すでに就労ビザを持つ外国人が在留資格を変更せずに転職する場合

同じ在留資格の範囲内で職場を変更する場合は、在留資格の変更手続きは不要ですが、転職後14日以内に「所属機関等に関する届出」を行う必要があります。ただし、新たな職務内容が現行の在留資格の範囲内にあることが前提となります。条件に合わない場合は、資格外活動許可や在留資格変更許可の取得が必要になることもあります。

なお、新たな職務内容が現在の在留資格に適合しているかどうかを確認するため、「就労資格証明書」の交付申請も行っておくと安心です。この証明書を発行する際には入管で新たな職場や職務内容に関する審査が行われるので、無事に交付されれば在留資格の更新で不許可となる可能性は低いと考えて良いでしょう。

なお、こちらのケースでも、本人が主体となって手続きを行うのが一般的です。

 

就労ビザの取得に必要な書類の例

就労ビザ申請時に求められる書類は、申請者の現在の居住地(海外・日本国内)や就労ビザの種類、就職先の企業の経営規模等によって細かく指定されていますが、一般的には以下のような書類が必要です。

  • 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm、6か月以内に撮影されたもの)
  • 在留カード(日本国内に住んでいる場合)
  • パスポートの写し
  • 履歴書・職務経歴書
  • 最終学歴の卒業証明書
  • 雇用契約書(条件明記のもの)
  • 会社案内(パンフレットやホームページ資料など)
  • 登記事項証明書(法人登記簿謄本)
  • 決算書類(直近の損益計算書や貸借対照表)

その他、職種によっては実務経験証明書や資格証明書なども必要になる場合があります。

 

就労ビザ取得の流れ

就労ビザの申請は、主に「海外から外国人を呼び寄せる場合」と「日本国内で資格変更を行う場合」に分けられます。

  1. 雇用が決定:受入企業と外国人との間で雇用契約が成立
  2. 必要書類の準備:外国人本人と企業がそれぞれ必要書類を用意
  3. 入管へ申請:地方出入国在留管理局にて「在留資格認定証明書交付申請」または「在留資格変更許可申請」を行う
  4. 審査・許可:審査期間は平均1〜3か月程度。内容によっては追加書類の提出を求められることも
  5. ビザ発給・入国または在留資格変更:海外在住者は在留資格認定証明書でビザを取得して入国、国内居住者は資格変更後に就労開始

 

就労ビザの申請代行とは

外国人を雇用する企業や就労を希望する外国人にとって、就労ビザの申請は書類の多さや法的要件の複雑さから負担が大きくなりがちです。そこで活用されているのが、行政書士などの専門家による「申請取次(申請代行)サービス」です。ここでは、その内容や利用の流れ、費用について詳しくご紹介します。

 

申請代行サービスを利用する方法

申請代行を行えるのは、出入国在留管理庁に「申請取次届出済」として登録された行政書士や弁護士、認定された企業の担当者などに限られます。これらの申請取次者は、依頼者本人に代わって在留資格に関する申請書類の提出を行うことができます。

申請取次が可能な専門家を探すには、「日本行政書士会連合会」の公式サイトや、各都道府県の行政書士会の検索機能を利用するのが有効です。また、「入管申請取次行政書士」の表示がある事務所や、外国人雇用支援に実績のある専門家を選ぶと安心です。

 

申請代行サービス利用の流れ

外国に住む方が日本の企業に採用され、新たにビザを取得する場合

  1. 雇用契約の締結と相談開始
  2. 行政書士による必要書類の案内と確認
  3. 「在留資格認定証明書交付申請」を行政書士が代理提出
  4. 在留資格認定証明書交付後、現地大使館でのビザ取得
  5. ビザを持って入国し、空港で在留カードを受け取る(後日郵送の場合もあり)

相談からビザ取得までは2~3か月程度かかるのが一般的です。

日本に住む留学生が就職する場合

  1. 相談および本人・企業情報のヒアリング
  2. 行政書士による必要書類の案内と確認
  3. 「在留資格変更許可申請」を行政書士が代理提出
  4. 審査完了後、結果通知と新たな在留カードの交付

こちらも、相談からビザ取得まで2~3か月程度かかるのが一般的です。

すでに就労ビザを持つ外国人が在留資格を変更せずに転職する場合

  1. 転職の確認と現行在留資格の適合確認
  2. 所属機関変更届の提出支援
  3. 必要に応じて在留資格変更や資格外活動許可の対応も実施

 

申請代行サービスの費用

費用は行政書士事務所や申請内容によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

サービス内容 費用の目安(税別)
在留資格認定証明書交付申請(COE)代行 80,000〜150,000円
在留資格変更許可申請代行 70,000〜150,000円
所属機関変更・資格外活動届出など 30,000〜50,000円

※報酬額とは別に印紙代や交通費、翻訳費などが別途必要になる場合があります。

 

まとめ

外国人の就労ビザの申請は、日本で働くうえで欠かせない大切な手続きです。ビザの種類は20種類以上に分かれており、それぞれに対応する職業や要件が異なるため、「どの在留資格が自分の状況に適しているのか」を正しく見極めることが第一歩になります。

また、制度の変更や審査の厳格化により、就労ビザ取得の難易度は年々高くなっているのが現状です。そうした背景から、申請をスムーズに進めたい場合は、申請取次の資格を持つ行政書士などの専門家に相談することも選択肢のひとつです。専門家に依頼することで、書類の整備から提出、審査対応までを一括で任せることができ、手続きのミスや申請の遅れを防ぐことができます。

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