運送業許可とは?取得条件・費用・許認可の流れを行政書士がわかりやすく解説

運送業許可とは

運送業許可とは、他人の荷物や人を有料で運ぶ事業を始める際に、国から受けなければならない営業許可です。単に車を持っているだけでは営業できず、国土交通省や地方運輸局による審査を通過する必要があります。また、事業内容や使用する車両によって必要な許可や届出は異なりますが、各々の要件を満たす必要があります。

許可が不要なケース

一部には、営業許可が不要な運送形態もあります。たとえば、軽自動車を使う軽貨物運送(黒ナンバー)は、許可制ではなく届出制で、基準を満たせば届出だけで営業できます。

また、自社の荷物だけを運ぶ自家用運送や、無償で行う親切運送も許可は不要です。ただし、形式的にこうした形を装って実際には有償運送をしている場合は、いわゆる「白ナンバー営業」として違法となりますので注意が必要です。

 

運送業許可の種類は大きく3つ

運送業といっても、運ぶ対象や使う車両の種類によって必要な許可や届出は異なります。大きく分けると、「一般貨物自動車運送事業」「軽貨物運送事業」「貸切バス事業」の3つが代表的です。

それぞれの特徴をご紹介します。

一般貨物自動車運送事業許可(トラック運送)

中型・大型トラックなどを使い、他人から預かった荷物を有償で運ぶ場合に必要な許可です。複数台の車両を前提とした事業で、営業所や車庫の確保、資金力、運行管理体制などの条件を満たす必要があります。宅配業者や物流会社、下請けの運送会社など多くがこの許可を取得して事業をしております。

軽貨物運送業の届出(黒ナンバー)

軽自動車(総重量3,500kg未満)を使って荷物を運ぶ場合は、許可ではなく届出で営業可能です。届出が受理されると「黒ナンバー」が交付されます。個人でも始めやすい一方で、運べる荷物の大きさや量には制限があり、副業や小規模配送に向いています。

貸切バス事業の許可(旅客運送)

人を有償で輸送する事業のうち、観光や団体輸送に使う貸切バスは、貨物運送とは別の旅客運送事業の許可が必要です。貨物運送とは制度や審査が異なるため、詳細は行政書士に依頼したり、所轄の運輸支局で確認するのがおすすめです。

 

運送業許可の取得条件(許可要件)とは

運送業の許可は、「やりたい」と思っただけでは取れません。国が定める一定の基準(許可要件)をすべて満たすことが前提です。ここをクリアできなければ、どれほど事業計画が立派でも申請は通りません。

主な4つの条件をご紹介します。

1. 営業所・車庫の条件

事業を行う拠点となる営業所と車庫が必要です。営業所は都市計画法や建築基準法、消防法に適合していることが求められ、自宅の一部を使う場合も事業用として明確に区分されていなければなりません。

車庫は営業所から直線距離で10km以内が原則で、必要な面積や接道条件(道路に出入りできること)を満たす必要があります。賃貸の場合は使用許可を証明する書類が必要です。

2. 資金要件(運転資金・自己資金)

車両購入、人件費、燃料費など運送業は初期費用がかかるため、事業開始に必要な資金を十分に確保しているかが審査されます。

全国一律の金額基準はありませんが、車両台数や人員体制に応じた必要額を自己資金で用意していることを、残高証明や資金計画書で示します。

3. 人員要件(運行管理者・整備管理者)

人員要件を満たすためには、運行管理者と整備管理の選任が必要です。運行管理者は運行計画や労務管理を担い、「運行管理者資格者証」を持つ人を配置する必要があります。整備管理者は車両の点検・整備記録を管理し、整備士資格や実務経験が求められます。兼務は可能ですが、常勤性や管理可能な体制が整っていることが条件です。

4. 欠格事由がないこと

過去に重大な法令違反や行政処分を受けた者、禁固以上の刑を受けた者、暴力団関係者などは許可が下りません。また、法人の場合は役員全員が対象です。事業の信頼性を確保するため、構成メンバーにはしっかりとバックグラウンドチェック等の確認をしましょう。

 

運送業許可取得の流れと手続き

運送業の許可を取るには、要件を満たしているだけでは不十分で、決められた手順に沿って申請を進める必要があります。

ここでは、初めての方でも迷わないよう、一般貨物自動車運送事業を例に、申請から営業開始までの流れを順番に説明いたします

STEP1:取得条件の確認

まずは、営業所や車庫、資金、管理者の配置など、すべての許可要件を満たしているかを事前に確認しましょう。面談時にもこれらの準備状況が詳しく確認され、不備があれば許可が下りない可能性があります。

STEP2:事前相談と必要書類の準備

申請前に、所轄の地方運輸局で事前相談を行います。その際に営業所・車庫の所在地や使用車両、資金計画などを確認し、必要書類のリストを受け取りましょう。

代表的な必要書類には、事業計画書、営業所や車庫の使用権原を示す書類、預金残高証明書、役員や従業員の履歴書などがあります。書類の量は多く内容も専門的なので、正確に揃えることが重要です。

STEP3:申請書の提出

書類が揃ったら、営業所所在地を管轄する地方運輸局へ申請します。このとき、営業所・車庫は実際に使用できる状態でなければなりません(契約済み・利用可能な状態が必須)。併せて、許可の種類に応じた申請手数料(収入印紙)を納付します。

STEP4:運輸局での審査・面談

提出後は、要件を満たしているか、不備や虚偽がないかを審査されます。審査の過程で、申請者本人(法人は代表者)への面談が行われるのが一般的です。

STEP5:許可証の受領と営業開始準備

審査に通ると「一般貨物自動車運送事業の許可証」が交付されます。ただし、これだけでは営業開始はできません。営業前に運輸開始届や、運行管理者・整備管理者の選任届、車両登録、社会保険加入などを済ませる必要があります。

また、許可証の交付後は、運輸開始届や管理者の選任届のほか、必要な法定設備を整えましょう(点呼設備やタコグラフの装着など)。

 

運送業許可取得にかかる費用

運送業の許可を取るには、申請料だけでなく、車両や設備の準備費用、専門家への依頼料など、さまざまな費用が発生します。「実際に始めるにはいくら必要なの?」という疑問を持つ方のために、ここでは申請手数料・行政書士報酬・その他の実費の3つに分けて目安をご紹介します。

1. 許可申請手数料

許可申請手数料は国に支払う法定手数料です。

代表的な「一般貨物自動車運送事業」の場合は12万円(収入印紙)が必要になります。なお、不許可になった場合でも返金はされません。

一方で「軽貨物運送業(黒ナンバー)」は届出制のため、こうした許可申請料は不要ですが、ナンバー取得や車両登録の費用は別途かかります。

2. 行政書士への依頼費用

申請書作成や添付書類の整備、運輸支局とのやり取りなど、慣れない手続きをスムーズに進めるために行政書士へ依頼する方も多くいます。

相場は30万〜50万円前後で、事務所によっては20万円台からのプランもあります。サポート範囲(書類作成のみか、面談準備や全体サポートまで含むか)によって料金が変動します。

3. その他の実費

申請や依頼費用以外にも、証明書取得費用がかかります。住民票・登記簿謄本・納税証明など、1通あたり300〜500円程度です。
このほか、車両の購入・登録費用や車庫の賃貸費用も必要になります。

運送業許可取得にかかる費用の合計イメージ

車両の購入・登録費用や車庫の賃貸費用を除いた場合でも、合計20万〜60万円程度の初期費用がかかるのが一般的です。事業規模や必要書類の内容によっては、それ以上になることもあります。

 

運送業許可の更新と注意点

運送業の許可は、一度取得すれば永久に有効というわけではありません。将来的に有効期限付きの更新制度が導入される予定があり、期限切れや更新漏れは事業停止や許可取消しのリスクに直結します。ここでは、更新の仕組みや注意点、万が一忘れてしまった場合の対応についてご説明します。

1. 更新の時期と手続き

2025年6月の法改正により5年ごとの更新制が決まり、公布日(2025年6月11日)から3年以内に施行されます。なお、2025年8月1日現在はまだ施行されておらず、有効期限や更新手続きは必要ありません。

更新時には、更新申請書のほか、営業所や車庫の使用状況、運行管理者の配置状況、財務諸表などの提出が求められます。また、収入印紙代も発生します(額は制度開始時に確認が必要)。

2. 更新時の注意点

更新のタイミングでは「現在も許可要件を満たしているか」が再度チェックされます。以下のような状況では、更新が認められない可能性があります。

  • 営業所や車庫の契約が切れている
  • 運行管理者や整備管理者が不在
  • 長期間運行実績がない
  • 決算で著しい債務超過がある

このため、日頃から帳簿や管理体制を整え、役員変更や事業所移転などがあった場合は、事前に変更届を提出しておくことが必須です。

3. 更新を忘れた場合のリスク

期限を過ぎても更新をしないと、許可は失効します。失効後に運送を続ければ、無許可営業として行政処分や罰則の対象となり、取引先からの信用も大きく失います。一度失効すると「再申請」が必要で、時間も費用も余計にかかります。復活制度は原則ないため、更新期限は必ずカレンダーや管理システムで把握しておきましょう。

 

まとめ

運送業を始めるためには、事業の内容や使う車両に応じて正しい許可や届出を選び、国が定める要件を満たすことが欠かせません。営業所や車庫の確保、運行管理者や整備管理者の配置、十分な資金の用意など、準備段階で整えるべき条件は多岐にわたります。

申請は決められた手順に沿って行い、書類や証明書も正確にそろえる必要があります。加えて、開業時には申請料や設備費用など、一定の初期費用がかかることも念頭に置いておきましょう。

また、今後は更新制度の導入も予定されており、取得後も要件を満たし続ける体制づくりが求められます。更新忘れや法令違反は事業停止や信用失墜につながるため、日頃からの管理が重要です。手続きや要件の確認に不安がある場合は、行政書士など専門家に相談することで、スムーズかつ確実な許可取得・事業運営が可能になります。

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