第一種貨物利用運送事業の始め方とは?費用・要件・手続きをご紹介!

物流業界への参入を検討中の方必見。第一種貨物利用運送事業の特徴や開業に必要な条件、登録手続きの流れを一から解説します。個人でもスタート可能です。

 

利用運送事業とは

利用運送事業とは、他社の輸送手段(たとえばトラックや船、飛行機など)を使って貨物を運ぶ事業のことを指します。荷主(顧客)から依頼を受け、実際の輸送は自社では行わず、外部の運送事業者に委託し、輸送全体の手配や管理を行うのが特徴です。

ここでは、特に検索されることの多い「第一種貨物利用運送事業」を中心に解説しますが、もう一つの形である「第二種」についても簡単に触れておきましょう。

 

第一種貨物利用運送事業とは

第一種貨物利用運送事業とは、荷主(依頼者)から貨物の運送を受託し、自らは輸送手段を保有せずに、実際の運送を他の運送事業者に委託して行う事業形態です。この制度では、船舶・航空・鉄道・自動車(トラック)など、いずれか1つの輸送手段を用いて運送サービスを提供します。

たとえば、EC事業者や商社が荷物の出荷を委託したい場合、その調整や契約、管理を担うのが利用運送事業者となります。このとき、実際に貨物を運ぶのは別の運送会社であり、利用運送事業者はその橋渡し役を担うイメージです。

第一種は「登録制」となっており、国(地方運輸局)への申請によって、必要な要件を満たせば誰でも事業を始めることが可能です。

 

第二種貨物利用運送事業とは

第二種貨物利用運送事業とは、船舶・航空・鉄道による幹線輸送と、その前後に行われるトラックによる集荷・配達を一体的に取り扱い、利用者にドア・ツー・ドアの輸送サービスを提供する事業です。輸送の全体を利用運送事業者が一括で管理・契約する形態であり、輸送の責任主体も利用運送事業者となります。

特徴的なのは、集荷や配達部分のトラック輸送を自社で行う場合でも、他社に委託する場合でも、いずれも第二種貨物利用運送事業に該当するという点です。つまり、輸送の一部を実運送会社に委託しながらも、全体の物流設計・契約・管理を自社が担う事業といえます。

なお、第一種貨物利用運送事業が登録制であるのに対し、第二種は許可制となっており、より厳格な審査や事業規模・信用力が求められます。申請には、財務基盤や運営能力、適正な運送契約の実施体制が確立されていることが条件となります。

 

第一種貨物利用運送事業の登録をするためには

第一種貨物利用運送事業を始めるには、地方運輸局に対して「登録申請」を行い、一定の要件を満たしていることが認められる必要があります。ここでは、登録を受けるための具体的な要件や申請の流れ、必要な費用、そして登録までにかかる期間の目安を分かりやすく解説します。

 

許可取得のための要件

人の要件

申請者本人(法人の場合は役員を含む)が、以下のいずれにも該当していないことが必要です。

  • 過去1年を超える懲役または禁錮の刑を受け、その刑の執行を終えてから2年が経過していない者
  • 第一種または第二種貨物利用運送事業の登録や許可を取り消された日から、2年を過ぎていない者
  • 申請日より過去2年以内に、貨物利用運送事業に関連して不正な行為を行ったことがある者

営業所の要件

業務を行うためには以下の要件を満たす必要があります。

  • 自宅を営業所として使用することも可能(業務スペースとして体裁が整っていること)
  • 電話、机、帳簿、パソコンなど、業務に必要な備品を備えていること
  • 賃貸物件の場合:申請者自身が借主となっている契約書があること
  • 自己所有物件の場合:名義が申請者本人であること
  • 営業所の所在地が、市街化調整区域や住居専用地域でないこと(例外あり)

資金要件

事業の開始・継続に必要な資金があることが求められます。

  • 300万円以上の自己資金を持っていること

※資金証明のためには、銀行通帳の写し、残高証明書、資金計画書などの書類が必要です。 また、法人で申請する場合には、直近の貸借対照表や財務諸表の提出を求められることがあります。

 

登録の流れ

第一種貨物利用運送事業の登録までの基本的な流れは、以下の通りです。各ステップで必要となる書類や注意点を事前に把握しておくことが、スムーズな申請につながります。

① 必要書類の準備

  • 第一種貨物利用運送事業登録申請書
  • 事業計画書
  • 運送委託契約書の写し(または予定契約書)
  • 営業所の使用権限を証する書類(賃貸借契約書など)
  • 営業所および保管施設の平面図・写真
  • 資金の裏付け資料(通帳写し・残高証明書など)
  • 欠格事由に該当しない旨の宣誓書

※申請者の形態によって必要な書類は異なります。

申請書類は複数ページにわたるため、準備にはある程度の時間がかかります。不備があると審査が遅れる原因になるため、提出前のチェックが重要です。

② 登録申請書の作成と提出

必要書類をそろえたら、所定の様式に従って申請書を作成し、営業所所在地を管轄する地方運輸局に提出します。あわせて登録手数料(9万円)の納付も行います。

③ 審査期間

提出後は、通常1〜2か月で書類審査が行われます。不備がある場合は、補足資料の提出や追加説明を求められることがあります。

④ 登録通知の受領

審査を通過すると、登録通知書が交付され、登録番号が付与されます。これにより正式に事業者として認可されます。

⑤ 営業開始

登録完了後、事業を開始できます。あわせて、取引先との契約や帳簿・記録の整備も進めておきましょう。

 

必要な費用

第一種貨物利用運送事業の登録に必要な主な費用は、次のとおりです。

項目 費用目安 補足
登録手数料 9万円 国へ支払う法定費用
行政書士報酬 10〜20万円程度 依頼する事務所やサポート内容により異なります

 

許可取得までにかかる期間の目安

登録申請から営業開始までの期間は、通常1〜2か月程度が目安です。ただし、書類の準備期間を含めると、全体では3か月近くかかることもあります。開業を希望する時期が決まっている場合は、余裕を持って準備を始めることが重要です。

このように、第一種貨物利用運送事業の登録は、要点を押さえてしっかり準備すれば決して難しいものではありません。不安な点がある場合は、行政書士などの専門家に相談しながら進めていきましょう。

 

第一種貨物利用運送事業は個人でも開業できるのか?

第一種貨物利用運送事業は、個人でも開業が可能です。法人格がなければ取得できないという誤解もありますが、実際には個人事業主として登録を行い、事業を始める方も多くいます。以下では、個人開業におけるメリット、デメリット、注意点について整理してご紹介します。

 

個人開業の特徴とメリット

  • 登記や定款認証が不要
  • 初期の開業費用も比較的安く済み、負担が少ない
  • 開業届を税務署に提出するだけで事業開始可能
  • スモールスタートに向いており、副業や小規模事業にも最適

 

個人開業のデメリット

  • 社会的信用力が法人よりも低いため、大手企業との取引で不利になる可能性がある
  • 融資や資金調達の選択肢が限られ、資金面での制約が生じやすい

 

個人開業時の注意点

個人で開業する場合でも、法人と同様に法令上の登録要件をすべて満たす必要があります。営業所の整備や資金の裏付け、本人確認書類の準備など、申請には一定の手続きが伴います。内容の一部は法人申請と共通しており、事前にしっかりと準備を整えることがスムーズな開業の鍵となります。

個人での開業は、スタートしやすい反面、信用や資金面での制約があるため、自身の事業計画に合わせて慎重に判断しましょう。

 

第一種貨物利用運送事業と他制度との違い

第一種貨物利用運送事業と似たような役割を担う制度として、「貨物自動車運送事業」や「運送取次」があります。これらはそれぞれ仕組みや責任の範囲が異なりますので、ここでその違いを見てみましょう。

 

貨物自動車運送事業とは

貨物自動車運送事業とは、荷主から依頼を受けた貨物を、自社で保有するトラックなどの車両を使って運ぶ事業のことです。運送会社や配送業者がこれに該当し、実際の輸送業務を自ら行う点が特徴です。運送に関する契約の主体も、運送業者自身となり、輸送に伴う責任やリスクをすべて自社で負う必要があります。事業を開始するには、車両や運転手の確保に加え、運輸局からの「許可」が必要となるため、一定の設備要件や人員体制が求められます。

 

運送取次とは

運送取次とは、荷主と運送業者の間に立って、運送契約の仲介や受付を行う業務のことを指します。荷主と直接契約を結ぶのは実際の運送業者であり、取次業者は運送契約の手続きをサポートするのみで、輸送そのものやそれに伴う責任は負いません。代表的な例として、旅行代理店が行う荷物の発送受付や、店舗での宅配便取次サービスなどが挙げられます。第一種貨物利用運送事業とは異なり、運送契約の主体にはならず、あくまで「取次」に徹する点が特徴です。

 

まとめ

第一種貨物利用運送事業は、比較的参入しやすく、多様なビジネスモデルに対応できる制度です。登録制であることから、小規模事業者や個人でも取り組みやすく、柔軟に事業展開が可能です。

制度の理解不足や書類不備による遅延を防ぐためにも、専門家のサポートを受けることで、より安心・確実なスタートが期待できます。

自社の目的や事業方針に合った制度を選び、持続可能な物流ビジネスを構築していきましょう。

 

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