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行政書士と司法書士は、どちらも法務の専門家ですが、得意分野や業務内容には大きな違いがあります。本記事では、この違いをわかりやすく解説し、それぞれに依頼すべきケースや費用感を具体例を交えて紹介します!
行政書士の役割とは
行政書士は、行政機関に提出する書類の作成や申請代行を専門とする国家資格者です。「行政」に関わる幅広い手続きを専門的にサポートし、依頼者が抱える「複雑でわかりにくい」という不安を解消します。
行政書士が担当する主な業務には以下のようなものがあります。
- 許認可申請:飲食店の営業許可、建設業許可、古物商許可など。。
- 相続関連業務:遺産分割協議書や遺言書作成の補助。
- 契約書作成:ビジネスや個人間の契約書を作成・チェック。
- 外国人関連業務:在留資格の取得・変更、帰化申請手続きの代行。
許認可申請業務
たとえば、飲食店を開業する際には「飲食店営業許可」が必須です。この許可を取得するためには、店舗の図面や衛生管理計画書などの専門的な書類が求められますが、行政書士が一括してサポートすることで、スムーズに手続きを進められます。開業準備に忙しい中、これらの書類を用意するのは大変です。行政書士に依頼すれば、必要書類の作成から提出まで一括してサポートしてもらえるため、安心して開業準備に集中できます。
例)建設業許可の申請
建設業を始める際、行政書士が必要な書類を作成し、役所とのやり取りを代行することでスムーズに許可を取得する流れがあります。
相続関連業務
相続が発生した際、遺産分割協議書の作成を行うことができます。たとえば、親族間で話し合いがまとまったものの、「書類の形式や内容に不備があると後々トラブルになる」といった心配があります。行政書士は法的に有効な形で書類を整え、スムーズな相続手続きをサポートします。
例)遺言書作成の補助
遺言書を作成したい依頼者の希望を聞き取り、公正証書遺言の準備を手伝うことで安心感を提供します。
外国人関連業務
外国人労働者を雇いたい企業や、日本で生活する外国人が在留資格を取得・変更する際には、行政書士が書類作成から提出までをサポートします。特に「理由書」や「補足資料」といった審査の鍵となる書類を適切に準備する点で頼りになります。たとえば、在留資格の変更手続きでは、入管に提出する理由書や補足資料が重要になります。これらを行政書士が的確にサポートすることで、審査がスムーズに進むケースが多くあります。
例)技能実習生のサポート
企業が外国人実習生を雇う際、行政書士が在留資格の申請をサポートし、雇用がスムーズに進むよう手続きを進める。
契約書の作成
契約書の作成や内容のチェックも重要な業務です。たとえば、中小企業の経営者が取引先と契約を結ぶ際、「不利な条件がないか心配だ」という場面があります。行政書士は、契約書のリスクを見極めながら、依頼者が安心して契約できるようサポートします。
例)取引先との契約書チェック
契約書を確認し、不利な条件を削除することで依頼者にとって有利な契約を実現するサポートを行います。
このように行政書士の業務は、想像以上に日常生活やビジネスに密接に関わっております。
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行政書士ができることとは?対応できる業務内容を徹底解説
司法書士の役割とは
司法書士は、不動産登記や会社設立の商業登記、さらには小規模な法律トラブルの代理業務などを専門とする法務のプロです。特に、法的効力を伴う手続きや簡易裁判所での代理権を持つ点が行政書士との大きな違いです。
司法書士が担当する主な業務は以下の通りです。
- 不動産登記:土地や建物の売買、相続による名義変更。
- 商業登記:会社設立、役員変更、増資手続きなど。
- 借金問題の解決:債務整理や自己破産手続きの支援。
- 法律トラブルの代理:140万円以下の民事事件の代理業務。
不動産登記業務
不動産を購入した際に必要な「所有権移転登記」の手続きがあります。司法書士は、必要書類の作成から提出まで代行し、不動産取引がスムーズに進むようサポートします。
例)土地の相続登記
親から相続した土地の名義を子どもに変更する際、司法書士が遺産分割協議書を基に登記手続きを行い、相続人全員が納得の上で名義変更を完了させる流れがあります。
商業登記業務
会社設立や役員変更、増資手続きなどの商業登記を行います。司法書士は、会社運営に必要な法的手続きを確実にサポートします。
例)会社設立のサポート
新たに会社を設立する際、司法書士が定款の作成と認証、登記申請書類を準備して役所に提出することで、設立手続きを迅速に完了させます。
借金問題の解決
債務整理や自己破産手続きなど、借金問題の解決に向けた法的手続きをサポートします。
例)任意整理の支援
多重債務を抱えた依頼者に対し、司法書士が貸金業者と交渉し、利息の減免や返済計画の見直しを行うことで生活を立て直す支援を行った事例があります。
法律トラブルの代理
簡易裁判所での140万円以下の民事事件に関する代理業務を行います。司法書士は法的手続きの専門家として解決に導きます。
例)未払い金請求の代理
取引先からの代金未払いに困っていた事業者が、司法書士に依頼し、簡易裁判所に未払い金請求の手続きを行うことで迅速に回収できたケースがあります。
行政書士と司法書士の共通点
行政書士と司法書士には、いくつかの共通点があります。どちらも「書類作成のプロフェッショナル」であり、依頼者が手続きを円滑に進められるようサポートする役割を担っています。
特に、法律に関する知識を活かして業務を行う点では共通しています。例えば、遺産分割協議書の作成は行政書士の得意分野ですが、その後の不動産登記については司法書士が担当するなど、連携が必要な場面もあります。
ただし、行政書士は「行政手続き」のプロフェッショナル、司法書士は「登記と法的代理」の専門家という違いがあります。そのため、業務範囲に重なる部分があっても、両者の役割は明確に区別されています。
依頼する専門家を選ぶポイントとは?
依頼内容によって、行政書士と司法書士を使い分けることが重要です。具体的には以下のように考えると良いでしょう。
- 行政書士が適しているケース:
- 飲食店や建設業などの営業許可が必要な場合
- 遺産分割協議書や遺言書を作成したい場合
- 外国人の在留資格申請や帰化手続きが必要な場合
- 司法書士が適しているケース:
- 不動産を購入した際の名義変更登記
- 会社設立や商業登記が必要な場合
- 借金問題で債務整理や自己破産を検討している場合
- 少額の民事紛争やトラブル解決が必要な場合
たとえば、飲食店を開業する際には、営業許可取得を行政書士に依頼し、その後に必要な店舗不動産の所有権移転登記を司法書士に相談する、といった形で両者を使い分けるのが一般的です。
会社設立を検討している方は、こちらの記事『会社設立の悩みを解決!行政書士ができることと注意点を徹底解説』も参考になります。
このように、具体的な業務内容に応じて適切な専門家を選ぶことが、スムーズな解決への近道です。依頼内容に応じて専門家を選ぶことが、迅速かつ適切な対応を得る鍵となります。
行政書士と司法書士の依頼費用の違いについて
行政書士と司法書士では、業務内容だけでなく報酬の相場にも違いがあります。
行政書士が提供するサービスの費用例
行政書士の報酬は、許認可申請が数万円〜十数万円、相続関連書類の作成が5万円〜10万円程度です。業務の内容や地域によっても異なります。
司法書士の報酬額はどのくらいか
司法書士は、不動産登記で5万円〜10万円、商業登記で10万円〜20万円程度が一般的です。債務整理や自己破産手続きではさらに高額になることがあります。
まとめ
行政書士と司法書士はどちらも法律手続きのサポートを行いますが、業務範囲と専門性には明確な違いがあります。行政手続きや許認可申請には行政書士、登記や法律トラブルの解決には司法書士が適任です。依頼する専門家を選ぶ際は、自分が直面している問題や必要な手続きに応じて、どちらに依頼すべきかを慎重に判断することが重要です。以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 行政書士は、行政手続きのスムーズな進行をサポートします。複雑な書類作成や申請が必要な場合は、まず行政書士に相談するのが基本です。
- 司法書士は、法的効力を持つ登記やトラブル解決に特化しています。不動産や会社の手続き、法律トラブルに関する問題がある場合は、司法書士が適任です。
また、ケースによっては行政書士と司法書士が連携して対応することもあります。たとえば、会社を設立する場合、行政書士が定款の作成を担当し、その後司法書士が商業登記を行うという流れが一般的です。このように、両者の役割分担を理解しておくと、適切な依頼ができるようになります。
最後に、依頼する際の費用や見積もりを事前に確認し、納得した上で手続きを進めることが大切です。行政書士や司法書士は、依頼者の負担を軽減し、手続きをスムーズに進めるための頼れるパートナーです。困ったときには遠慮せず、専門家に相談してみてください。
この記事が、行政書士と司法書士の違いを理解し、自分に合った専門家を選ぶ際の参考になれば幸いです。
行政書士として、幅広い業界での法務支援やビジネスサポートに従事する一方で、執筆および監修者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識をわかりやすく伝える記事作成を得意とし、実務に直結する情報提供を通じて、読者が安心してビジネスを進められるようサポートしています。行政書士登録以来、信頼性の高い情報を提供する「ツナガル行政書士」の執筆および監修を担当し、多くの読者に支持されています。(登録番号:03312913)