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在留ビザ(在留資格)とは?
外国人が日本で生活するためには必ず「在留ビザ(在留資格)」が関わってきます。普段よく耳にする「ビザ」という言葉ですが、実際には「ビザ(査証)」と「在留資格」は別の意味を持っています。
この違いを理解していないと、就労の可否や在留期間の更新などで不利益を受けることもあるため、まずは基礎から押さえておきましょう。
そもそも在留資格とビザ(査証)の違い
「ビザ(査証)」は、日本に入国する前に必要な“入国のための許可証”です。海外の日本大使館や領事館で発給されるもので、例えるなら「日本に入るための切符」のような存在です。
これに対して「在留資格」は、日本に入国した後に「どんな目的で、どのくらいの期間滞在できるのか」を定める法的な資格です。与えられた在留資格によって、「就労ができるかどうか」「どのような活動が認められるか」が決まります。
つまり、「ビザ(査証)」は入国のための許可証、「在留資格」は日本での活動内容や就労可否を決めるステータスと考えるとわかりやすいでしょう。
在留資格は大きく3つのタイプに分けられる
外国人の在留資格は滞在目的ごとに細かく区分されており、「働けるかどうか」「どの範囲の仕事が可能か」が法律で定められています。大きく分けると、①就労制限のないもの、②特定の職種に限って働けるもの、③原則として就労できないものの3つです。
① 就労制限のない在留資格
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」など、身分や地位に基づく在留資格は、職種や働き方に制限がなく、自由に就労できます。日本人と結婚された方や日系人の方によく見られる資格で、企業側にとっても追加手続きなしで採用できるのが特徴です。
さらに「高度専門職2号」は、在留期間が無期限となり、幅広い分野での活動が可能な強力な資格です。
② 職種が限定される在留資格
「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」「高度専門職1号」などの、いわゆる“就労ビザ”は、認められた職種の範囲に限って働けます。たとえば「技術・人文知識・国際業務」はIT、経営、通訳・翻訳などが対象です。決められた範囲外で働くと不法就労となるため注意が必要です。企業側も仕事内容が在留資格の範囲に適合しているかを必ず確認する必要があります。
③ 原則として就労できない在留資格
「留学」「家族滞在」「文化活動」などは、基本的に就労が認められていません。許可を得ずに働くと資格取消しや退去強制の対象となる可能性があるため、特に注意が必要です。
ただし「資格外活動許可」を取得すれば、留学生のアルバイト(週28時間以内)など一定範囲での就労は可能です。一方で「短期滞在」は収入を伴う活動が一切認められず、資格外活動許可の対象にもなりません。
在留ビザの管理と更新で大切なポイント
在留ビザ(在留資格)を取得した後も、そのまま安心してよいわけではありません。更新期限をうっかり忘れたり、状況が変わったのに手続きをしなかったりすると、最悪の場合は在留資格の取消しや退去強制につながることもあります。ここでは、特に注意しておきたい3つのポイントをご紹介します。
在留期限の管理と更新
在留カードには必ず「在留期限」が記載されています。この期限内に更新手続きをしないと、不法滞在扱いになってしまいます。特に就労ビザは1年や3年の在留期間が多く、思っているより早く更新時期がやってきます。
更新申請は「満了日の約3か月前」から可能で、期限日までに申請すれば審査中も在留は適法とみなされます。余裕をもって早めに申請することが、トラブルを避けるための鉄則です。
更新時には「活動内容が適法か」「安定した収入があるか」といった点も審査されるため、日頃からルールを守った生活を心がけることが大切です。
在留資格変更が必要になるケース
就職、転職、結婚などで在留状況が大きく変わった場合は、「在留資格変更許可申請」が必要です。たとえば「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ切り替えて就職する場合や、「家族滞在」から「定住者」へ変更する場合が典型例です。
変更をせずに活動を続けると資格外活動にあたり、不法就労や資格取消しの対象となる危険があります。少しでも不安があるときは、早めに入管や行政書士等に相談するのがおすすめです。
在留ビザに関する基本的な申請手続き
外国人の方が日本で安心して生活や就労を続けるためには、在留資格に関する手続きを正しく行うことが欠かせません。新しく日本に来る場合、滞在中に活動内容が変わる場合、または現在の在留期間を延長する場合など、状況に応じて必要な申請があります。
手続きを怠ったり期限を過ぎてしまうと、不許可や不法滞在につながるおそれがあるため注意が必要です。ここでは代表的な3つの申請を紹介します。
在留資格認定証明書交付申請(COE申請)
日本にこれから入国する方は、まず「在留資格認定証明書交付申請(COE申請)」を行います。これは入国管理局に事前に申請して審査を受け、認定証明書を発行してもらう手続きです。
この証明書を使って海外の日本大使館や領事館でビザ申請を行い、入国許可を得ます。留学や就労、家族滞在など、中長期の滞在には原則としてこの証明書が必要です。審査期間はおおむね1〜3か月です。
在留資格変更許可申請
日本に滞在中に活動内容が変わるときには「在留資格変更許可申請」が必要です。たとえば「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に切り替えて就職する場合や、「家族滞在」から「定住者」へ変更する場合がこれにあたります。
手続きをせずに活動を始めると不法就労とみなされる可能性があるため、必ず許可が下りてから新しい活動を始めることが大切です。審査では活動内容の適法性や収入の安定、保証人の有無などが確認されます。
在留期間更新許可申請
現在の在留資格を維持したまま滞在を延長する場合は「在留期間更新許可申請」を行います。就労ビザや留学ビザの在留期間は1年〜5年と決まっており、期限が切れる前に必ず更新が必要です。申請は在留期限の3か月前から可能で、早めの準備が安心です。
審査では、継続的な活動が行われているか、収入や納税の状況に問題がないかなどが重視されます。無断欠勤や税金・年金の未納があると不許可になることもあるため、普段からの生活管理が重要です。
まとめ
外国人が日本で安心して暮らすためには、在留ビザ(在留資格)の正しい理解と手続きが欠かせません。新しく日本に来るときは「在留資格認定証明書交付申請」、滞在中に活動内容が変わるときは「在留資格変更申請」、そして長く滞在を続けるには「在留期間更新申請」が必要です。
いずれの手続きも、期限を守り正確に行うことが重要です。更新や変更を怠ると、不法滞在や在留資格の取消しにつながるおそれがあります。日頃から在留カードの期限を確認し、状況に応じて早めに準備しておくことが、日本での安定した生活には不可欠です。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)