ペットカフェの開業には、飲食店営業許可や動物取扱業の登録など、多くの準備が必要です。本記事では、必要な資格や届出、店舗選びのポイント、初期費用や集客戦略まで詳しく解説。ペットと人が快適に過ごせるカフェを成功させるためのノウハウをお届けします。
ペットカフェとは
ペットカフェとは、カフェで飼育されている犬や猫、ウサギ、小鳥などの動物と触れ合ったり、自身が飼っているペットを連れて来て一緒に飲食を楽しめるカフェのことです。ペットを飼えない環境にいる人や、自身のペットと癒しの時間を過ごしたい人にとって人気のスポットとなっています。近年では、猫カフェや犬カフェに加え、爬虫類カフェ、フクロウカフェ、ハリネズミカフェなど、多様な業態のペットカフェが増えています。
ペットカフェの主な営業形態
ペットカフェには、主に以下のような営業形態があります。どちらの営業形態をとるかによって営業できる時間が異なる場合があるので、事前に自治体へ確認をしておきましょう。
- 店内で動物と触れ合えるタイプ(例:猫カフェ、豆柴カフェ、サモエドカフェ、フクロウカフェなど)
このタイプのペットカフェでは、動物の健康管理のために営業時間に制限が設けられることがあります。例えば、猫カフェでは深夜営業を避けるよう指導されることがあり、多くの店舗が10:00~20:00の間で営業しています。また、動物福祉の観点から、1日の労働時間(接客時間)は8時間以内とする規制がある自治体もあります。 - 飼い主がペット同伴で利用できるタイプ(ドッグカフェなど)
飲食店としての営業形態が主体となるため、一般的な飲食店の営業許可に準じた営業時間を設定することが可能です。ただし、住宅地で営業する場合、近隣住民への配慮として22:00以降の営業を制限されることがあります。また、テラス席を併設する場合、自治体によっては夜間の利用を制限される場合があります。
ペットカフェで主に提供されるサービス
ペットカフェでは、動物と触れ合うだけでなく、以下のようなサービスが提供されることが一般的です。
- カフェメニュー(コーヒー・紅茶・軽食など)
- 飼い主と同伴したペット用の食事の提供(栄養バランスの取れた特別メニューを用意)
- 動物との触れ合い体験(猫、犬、フクロウ、ハリネズミ、爬虫類など)
- ドッグランの設置・運営(屋内外に設置し、ペットが自由に遊べるスペースを提供)
- ペット用フードやおやつの販売
- トリミングやペットホテルサービス(併設店舗)
- イベントやワークショップの開催(動物と触れ合う体験会など)
ペットカフェの開業に必要な資格・届出
ペットカフェを開業するためには、一般的なカフェとは異なる許可や届出が必要になる場合があります。食品を提供するための許可に加え、動物と触れ合うカフェの場合は第一種動物取扱業の登録も必要になります。ここでは、ペットカフェを合法的に運営するために必要な資格・届出について詳しく解説します。
開業届
ペットカフェを個人事業として開業する場合、税務署に開業届を提出する必要があります。開業届を提出することで、正式に個人事業主として税務申告が可能になります。この時、青色申告承認申請書も一緒に提出しておくと税金の優遇が受けられるのでおすすめです。
- 提出先:事業所の所在地を管轄する税務署
- 提出期限:開業から1ヶ月以内
飲食店営業許可
カフェとして営業するには、保健所の飲食店営業許可が必要です。店内で飲食を提供する場合、この許可を取得しなければなりません。
- 提出先:事業所を管轄する保健所
- 必要書類:営業許可申請書、店舗の図面、水質検査結果(井戸水使用時)、食品衛生責任者の資格証明書 など
- 施設基準:厨房の広さ、手洗い設備、換気設備、食品の保管設備などが保健所の基準を満たしていること
食品衛生責任者の選任
飲食店を営業するには、食品衛生責任者を1名以上選任することが義務付けられています。この資格は、1日講習を受けることで取得可能です。
- 取得方法:各都道府県の食品衛生協会が実施する講習を受講
- 費用:1万円前後
- 講習内容:食品衛生管理の基本、食中毒予防、法律知識 など
消防署への届出
カフェとして営業する場合、防火管理者の設置義務が生じる場合があるため、消防署へ必要な届出を行う必要があります。
- 届出が必要なケース:店舗の収容人数が30名以上の場合、火を使う設備がある場合
- 提出先:店舗を管轄する消防署
- 届出内容:防火管理者選任届、防火対象物使用開始届 など
ペット用のフード(おやつ)を販売する場合
ペットカフェでペット用のフードやおやつを販売する場合、農林水産省への届出が必要になります。
- 届出が必要なケース:ペット向けの加工食品(おやつ・フード)を販売する場合
- 提出先:農林水産省の管轄機関
- 必要書類:販売する食品の詳細、原材料表記 など
カフェで飼育しているペットと触れ合える業態をとる場合
動物と触れ合えるペットカフェの場合、第一種動物取扱業(保管)の登録が必要です。また、動物取扱責任者を選任することも義務付けられています。
第一種動物取扱業(保管)の登録
- 提出先:管轄の自治体の動物愛護センターまたは保健所
- 必要書類:事業所の見取り図、管理規程、動物取扱責任者の資格証明書 など
- 登録手数料:自治体により異なり、15,000円~30,000円程度
動物取扱責任者の選任
- 必要資格:獣医師、動物関連の専門学校卒業者、動物取扱業の実務経験者 など
- 業務内容:動物の健康管理、施設の衛生管理、顧客対応など
ペット同伴で利用できるカフェにトリミングサロンやペットホテルを併設する場合
ペット同伴で利用できるカフェ(ドッグカフェなど)にトリミングサロンやペットホテルを併設する場合にも、それぞれ第一種動物取扱業の登録と動物取扱責任者の選任が必要になります。申請の提出先や必要書類などは先述の通りです。
- ペットホテルを併設する場合:第一種動物取扱業(保管)の登録が必要
- トリミングサロンを併設する場合:第一種動物取扱業(美容)の登録が必要
ペットカフェの開業準備でやるべきこと
ペットカフェを成功させるためには、開業前の準備が非常に重要です。飲食店と動物取扱業の両方の要素を含むため、法的要件の確認や設備の準備に加え、マーケティング戦略も考慮しなければなりません。ここでは、ペットカフェを開業する前にやるべきことを具体的に解説します。
1. 事業計画の作成
ペットカフェを安定して運営するためには、まず事業計画を立てることが不可欠です。具体的には、以下のポイントを整理しましょう。
- ターゲット層の明確化(ペット愛好者、観光客、ファミリー向けなど)
- 提供するサービスの決定(飲食、動物との触れ合い、物販、イベントなど)
- 競合調査と差別化(他のペットカフェとの差別化ポイントを考える)
- 収益モデルの設計(客単価、リピート率、イベント収益の計算)
2. 店舗の選定と設備の準備
ペットカフェの開業には、適切な立地と設備が重要です。以下の点に注意して店舗を選びましょう。
- 立地の選定(アクセスの良い場所、ペットの受け入れが可能な地域)
- 動物と人が快適に過ごせる空間の設計(適切な広さ、分煙対策、空調設備)
- カフェ営業に必要な厨房設備の整備
- ペット用の飼育スペースや遊び場の確保(ドッグランや休憩スペース)
- 防音・防臭対策(近隣住民への配慮)
3. 許認可の取得
ペットカフェを開業するには、複数の許認可が必要です。営業形態によって必要な手続きが変わるので、前項で解説した各種許認可について事前に情報収集しておきましょう。
4. メニューの開発と価格設定
ペットカフェでは、人間用のカフェメニューとペット用の食事の両方を提供するケースが多いため、メニューの開発が重要です。
- カフェメニューの開発(ドリンク、軽食、スイーツなど)
- ペット用メニューの考案(栄養バランスの取れたおやつや食事)
- 価格設定の検討(競合の価格帯と比較し、適正な価格を設定)
5. 集客戦略の策定
ペットカフェを成功させるためには、開業前から集客戦略を立てることが重要です。
- SNSやホームページの活用(インスタグラム、X、Facebookでの宣伝)
- 地域のペット関連施設との提携(動物病院やペットショップとの連携)
- オープン前イベントの開催(プレオープンを実施し、口コミを広める)
- リピーター獲得のための施策(ポイントカードや会員制度の導入)
ペットカフェの開業にかかる費用
ペットカフェの開業には、飲食店としての設備投資に加え、業態によっては動物の飼育環境を整えるための費用も必要です。開業にかかる初期費用は立地や業態にもよりますが、最低でも500万円~1000万円程度の資金が必要になることが一般的です。ここでは、ペットカフェ開業にかかる費用の主な内訳について解説します。
1. 物件取得費用
ペットカフェを開業するには、適切な立地に店舗を構えることが重要です。そのため、物件取得費用が大きな初期投資の一つとなります。
- 賃貸物件の敷金・礼金:20万円~100万円(地域や物件規模による)
- 保証金(賃貸の場合):家賃の6ヶ月分程度
- 不動産仲介手数料:家賃の1ヶ月分
2. 内装・設備工事費
ペットカフェは、一般的な飲食店よりも厳しい衛生管理が求められるため、内装工事や設備投資が必要になります。
- 飲食スペースの内装費:100万円~500万円
- 動物飼育スペースの整備費:50万円~200万円(ケージ、遊び場、空調設備など)
- 防臭・防音対策:30万円~100万円(空気清浄機や換気システムの導入)
- トイレ・排水設備の整備:20万円~50万円
- 厨房設備(シンク、冷蔵庫、調理機器など):50万円~200万円
3. 許認可取得費用
ペットカフェを開業するためには、複数の許認可を取得する必要があります。これには手数料や申請にかかる費用が発生します。
- 飲食店営業許可申請手数料:1万5千円~3万円
- 第一種動物取扱業登録費用:1万5千円~3万円
- 食品衛生責任者の講習費:1万円前後
- 防火管理者講習受講費:5千円~1万円
4. 備品・家具・ペット関連グッズ
店舗の雰囲気や動物の快適性を考慮し、適切な備品を揃える必要があります。
- テーブル・椅子・ソファ:10万円~50万円
- ペット用ケージ・遊具・クッション:10万円~30万円
- 食器・調理器具:5万円~20万円
- ペット用フード・おやつの仕入れ費:3万円~10万円
5. 広告・集客費用
開業時には、認知度を高めるための広告費用も必要です。
- ホームページ制作費用:10万円~50万円(自作なら無料)
- SNS広告・Google広告費:1万円~5万円/月
- チラシ・パンフレット作成費:5千円~2万円
6. 運転資金
開業後すぐに安定した利益を得るのは難しいため、運転資金を確保しておくことが重要です。
- 家賃(初期6ヶ月分):60万円~180万円
- 人件費(スタッフを雇う場合):1人あたり月15万円~25万円
- ペットの医療費・健康管理費:1万円~5万円/月
まとめ
ペットカフェは、動物好きな人々にとって魅力的なビジネスですが、適切な運営管理が求められる業態でもあります。法令を遵守し、ペットと利用者双方にとって快適な環境を提供することが、長期的な成功につながります。また、リピーターを増やすために、サービスの質を高め、顧客満足度を向上させる取り組みも欠かせません。
許認可の取得にお困りの際は行政書士などの専門家を活用し、スムーズな開業を目指しましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)