永住権を取得するには?要件や必要書類、他のビザとの違いについて解説

日本での将来を見据える外国人にとって、「永住権」は大きな転機となる制度です。この記事では、永住権のメリットや他のビザとの違い、取得に必要な条件や書類までをわかりやすく解説します。

 

永住権とは

日本に中長期的に住む外国人の多くが目指す在留資格のひとつが「永住者」です。永住権を取得すると、日本における生活・就労の安定性が格段に向上するため、多くの方が永住権の取得を目指しています。

法務省の統計によれば、2022年末時点で「永住者」として在留している外国人は約85万人に達しており、全在留外国人の約3人に1人が永住資格を取得しています。これは、安定的な生活基盤を日本で築こうとする外国人が年々増加していることを示しています。

ここでは、永住許可の主な利点について整理しておきましょう。

 

永住権を取得する利点

永住権を取得する最大のメリットは、在留期間の制限がなくなることです。これにより、更新の手間がなくなり、将来的な在留の不安も大きく軽減されます。また、活動内容の制限がなくなり、就労先の変更や独立・起業も自由に行えるようになります。

さらに、住宅ローンやクレジットカードの審査でも有利になることが多く、生活基盤の安定性が高まるという実務的なメリットも見逃せません。

 

永住権とその他の在留資格の違い

定住者との違い

「永住者」と混同されがちなのが「定住者」という在留資格です。定住者は、法務大臣によって特別な事情があると認められた場合に許可される在留資格で、日本人や永住者の配偶者との離婚後の在留継続、日系人やその家族、難民認定者などが主な対象です。

どちらも長期在留が可能で、就労制限がない点では似ていますが、定住者は1年・3年・5年のいずれかの在留期間が設定されており、引き続き滞在するためには更新が必要です。

また、永住者は在留カードの更新はあるものの、在留資格の更新申請そのものが不要である点が大きな違いです。さらに、永住者の方が他の行政手続きにおいて信頼度が高いとされる場面もあります。

 

特別永住者との違い

「特別永住者」も「永住者」と混同されやすい在留資格のひとつです。特別永住者とは、第二次世界大戦以前から日本に在留していた旧植民地出身者(主に韓国・朝鮮籍および台湾籍)の子孫で、日本の法律に基づき特別に永住が認められた方々を指します。

特別永住者は入管法ではなく、「特別永住者に関する法律」に基づいて在留が許可されており、在留資格の更新や再入国の要件が一般の永住者よりも緩やかです。また、退去強制事由に該当しても、法務大臣の特別な判断が必要とされるなど、より強い在留権が保障されている点も特徴です。

一方、通常の「永住者」は、一定の要件を満たしたうえで個別に申請し、法務大臣の許可を受けることで取得できる在留資格です。在留管理の面では、特別永住者の方が優遇措置が多く、制度的にも別枠で取り扱われています。

 

その他の在留資格との違い

就労ビザ

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)は、職種に応じて在留が認められる資格であり、業種が限定される点が特徴です。また、更新ごとに雇用契約や勤務実態を証明する書類が必要となります。

永住権を取得すれば、こうした職種や雇用条件に縛られず、自由に転職や独立が可能になります。

配偶者ビザ

「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」などの配偶者ビザは、結婚を前提とした在留資格ですが、離婚や死別により在留資格を失うリスクがあります。

永住権を取得していれば、たとえ婚姻関係が解消しても、在留資格が取り消されることは原則ありません。

家族滞在ビザ

家族滞在ビザは、就労ビザなどの本体資格を持つ外国人の扶養家族向けの在留資格です。就労制限があり、主たる扶養者の在留資格に依存しているため、扶養者の資格変更・失効に伴って在留継続が難しくなることもあります。

一方、永住者となれば、扶養関係の有無にかかわらず、本人の資格として日本に住み続けることが可能になります。

 

永住許可を受けるための要件

日本の永住権を取得するには、法務大臣の許可を受ける必要があり、一定の法的要件を満たしていることが条件です。申請者の在留状況や生活実態、納税義務の履行状況などが総合的に審査され、要件を満たしていない場合は不許可となることもあります。

ここでは、代表的な永住許可の取得要件についてわかりやすく整理して解説します。

 

1. 原則として10年以上の継続在留

まず基本となるのが「日本に10年以上継続して在留していること」です。このうち、直近5年以上は就労資格または居住資格を持っていることが求められます。単なる短期滞在や留学期間のみではカウントされません。

ただし、日本人配偶者や永住者の配偶者等の在留資格を持つ人など、特定の事情がある場合は、在留期間が短くても申請可能なケースがあります(例:結婚から3年以上かつ日本に1年以上在留しているなど)。

 

2. 素行が善良であること

永住許可を受けるには、法律を遵守し、社会的信用があることが求められます。たとえば、軽微であっても交通違反の累積、税金や公共料金の未納、虚偽申請歴などがあると、審査に不利となることがあります。

過去の違反歴がある場合でも、十分に反省の意を示して継続的に改善していることが評価される場合もあります。

 

3. 独立した生計を営んでいること

申請者本人または扶養者が安定した収入を得ており、日本で生活していける経済基盤があることも重要です。収入の目安は明確に定められていませんが、年収300万円以上が一つの基準とされています。

また、扶養人数や生活費のバランスも審査対象となるため、過度に扶養が多い場合や収入に大きな波がある場合は注意が必要です。

 

4. 納税義務を果たしていること

住民税や所得税、健康保険料、年金保険料など、公的義務を適切に履行しているかが厳しくチェックされます。未納や滞納があると、それだけで永住許可が不許可になるケースもあります。

直近の納税証明書や課税証明書の提出が求められるため、うっかりして支払いを忘れてしまった、ということがないように注意しましょう。

 

5. 原則として現在の在留資格が「最長の期間」であること

申請時点で、現在持っている在留資格の在留期間が「最長(通常は3年または5年)」であることも要件の一つです。1年更新の在留資格では、原則として永住許可の対象とはなりません。

ただし、特別な事情がある場合は例外が認められることもありますので、状況によっては専門家への相談が有効です。

 

他の在留資格から永住許可に切り替える際に準備する書類

永住権を申請するには、要件を満たすだけでなく、必要な書類を正確にそろえることが重要です。特に現在の在留資格によって提出する書類の内容や重点が異なるため、事前の確認と準備が欠かせません。

ここでは、すべての申請者に共通する「基本書類」と、在留資格ごとに必要となる「追加書類」について詳しく解説します。なお、必要書類は変更になる可能性があり、また現在の在留資格によって細かく分類されているので、常に法務省のホームページ等で最新の情報を確認するようにしてください。

 

基本書類

永住許可申請にあたって、どの在留資格から切り替える場合でも共通して必要となる基本的な書類は以下の通りです。これらは「生活の安定性」や「納税・社会保険の義務を果たしているか」を判断する上で非常に重要な資料となります。

  • 永住許可申請書(入管の定める様式)
  • パスポートと在留カード(両面のコピー含む)
  • 写真(縦4cm×横3cm、申請前6ヶ月以内に撮影)
  • 住民票(世帯全員分)
  • 身元保証書(日本人や永住者によるもの)
  • 住民税の納税証明書と課税証明書(過去1~5年分。現在の在留資格により異なる。)
  • 健康保険料の納付状況を証明する書類(2年分)
  • 年金保険料の納付状況を証明する書類(2年分)
  • 了解書(入管の定める様式)

 

条件に応じて用意する書類

以下に主な現在の在留資格別の追加書類をご紹介します。

就労ビザから切り替える場合

  • 永住許可を必要とする理由書
  • 雇用契約書の写し(在職中の企業が発行)
  • 在職証明書(勤務先企業が作成)
  • 源泉徴収票(過去1〜3年分)
  • 勤務先の会社概要(パンフレットや登記簿謄本など)

定住者ビザから切り替える場合

  • 永住許可を必要とする理由書
  • 身分関係書類(戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書など)
  • 在職証明書や課税証明書(フリーランスや自営業者の場合は営業実績がわかる資料)
  • 定住理由に関する説明書(離婚後の継続在留など)
  • 世帯の収支状況を示す家計簿や支出明細(必要に応じて)

配偶者ビザから切り替える場合

  • 婚姻関係継続の事実を示す資料(例:家族写真、SNSの履歴、メールなど)
  • 配偶者の戸籍謄本
  • 配偶者の課税証明書・納税証明書
  • 配偶者の在職証明書または雇用証明書
  • 世帯収支が安定していることを示す資料(通帳写しなど)

家族滞在ビザから切り替える場合

  • 永住許可を必要とする理由書
  • 身分関係書類(戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書など)
  • 主たる扶養者(親など)の在職証明書と収入証明書
  • 扶養の実態を示す書類(住民票での同居確認や生活費の振込履歴)
  • 本人が独立した生活を営めるようになったことを示す資料(就職内定書、アルバイト収入証明など)

 

永住許可申請の注意点

永住権の取得は、日本で安定した生活を築く上で大きなメリットがありますが、申請時や取得後にも注意しておきたいポイントがいくつかあります。以下では、見落とされがちな重要な注意点を3つご紹介します。

 

1. 永住者の在留資格には期限がないが、在留カードには期限がある

永住者の在留資格そのものには期限が設定されていませんので、一度取得すれば原則として無期限で日本に在留することができます。しかし、在留カードの有効期限は7年であり、カードの更新手続きは必須です。

在留カードの更新は有効期限の2か月前から手続きが可能で、更新の際に在留資格の審査を行うわけではありませんので、基本的にはその日のうちに新しいカードを受け取ることができます。更新を忘れたからと言って在留資格を失うわけではありませんが、在留カードの更新を怠ることは違法であるため、有効期限には十分注意しましょう。

 

2. 扶養している配偶者や子の「家族滞在」資格が失われる

扶養している本人が永住者になったとしても、家族滞在ビザで在留している配偶者や子どもは自動的に永住資格に切り替わるわけではありません。むしろ、家族滞在ビザは就労ビザの方が扶養する家族に与えられるものであるため、扶養する方が永住者になると家族は在留資格の根拠を失います。

このような場合は、配偶者や子どもも同時に永住許可の申請を行うか、それぞれの家族に適した在留資格(永住者の配偶者、定住者など)への変更を検討する必要があります。

 

3. 永住申請中の「特例期間」は設けられていない

在留資格の更新や変更申請中は、審査中であっても在留が認められる「特例期間」が付与されるのが通常ですが、永住許可申請にはこの特例が適用されません。

つまり、現在の在留資格の有効期限内に永住許可の審査が終わらない場合、そのままでは不法滞在になるリスクがあります。永住許可の審査には6か月以上かかる場合もあるため、申請中であっても並行して現在の在留資格の更新手続きを行う必要があることを忘れないようにしましょう。

 

まとめ

永住権の取得は、日本で長期的に安定した生活を送りたいと考える外国人にとって、大きなメリットがある選択肢です。特に在留期間の更新が不要になり、職業や活動内容の制限がなくなるという点は、就労ビザや配偶者ビザにはない大きな魅力です。

今後、永住権の取得を目指す方は、まずは自分が許可の対象となるかどうかを確認し、早めに準備を始めておくことをおすすめします。

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