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帰化申請とは?日本国籍を取得するための手続きとポイント
「帰化申請ってそもそも何の手続き?」と感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。帰化申請とは、外国籍の方が日本国籍を取得するための法的な申請手続きを指します。日本で長年生活している方や、お子さんの将来を考えて日本国籍を取りたいと考える方にとって、大きな人生の転機ともいえる申請です。
ただし、帰化申請は「書類を出せば終わり」という単純な手続きではありません。申請後は法務局での面談をはじめ、家庭訪問・職場訪問なども行われ、日本で安定して暮らしているか、素行が良好かなどを時間をかけて審査されます。そのため、書類の準備やスケジュール管理が非常に重要になります。
帰化申請に必要な主な条件
帰化申請を行うには、次のような要件を満たしている必要があります。
要件 | 詳細 |
住所要件 | 引き続き5年以上、日本に居住していること(就労資格・永住資格など) |
能力要件 | 18歳以上で、申請の意思決定ができること |
素行要件 | 犯罪歴がなく、日常生活において社会的信用があること |
生計要件 | 安定した収入や資産があり、生活に困窮していないこと |
国籍要件 | 帰化によって元の国籍を放棄できること(重国籍の回避) |
憲法遵守要件 | 日本国憲法を尊重し、守る意思があること |
また、税金や年金の未納、交通違反の累積がある場合は、素行や生計に関する審査で不利に働くことがあります。申請前にこれらの状況を一度整理しておくことが大切です。
自分で申請できる?専門家に頼るべき?
「自分で帰化申請できるのか不安…」という声も多く寄せられますが、多くの方はご自身で申請することが可能です。ただし、帰化申請は必要書類が多く、なかには出身国で取得・翻訳が必要なものもあります。また、理由書や履歴書は申請者自身が日本語で自筆作成する必要があるため、日本語の読み書きに不安がある方や、平日の手続き時間の確保が難しい方にとっては大きな負担になることも。
ご自身の状況をふまえ、「無理なく進められるか」を判断したうえで、行政書士への依頼も一つの選択肢として検討されると安心です。
帰化申請を自分で行う手続きの流れ
「帰化申請は自分でもできるの?」と迷われる方も多いですが、実際には多くの方がご自身で進めておられます。ただし、帰化申請は一度の申請で完了するものではなく、法務局への複数回の訪問や、膨大な書類の準備・実態調査への対応など、手続きは段階的かつ長期間にわたります。
あらかじめ全体の流れを把握しておくことで、書類の抜け漏れや準備不足を防ぎ、スムーズに進められますよ。
① 帰化の条件を確認する
まずは「自分が帰化申請の要件を満たしているか」を確認することからスタートします。住所要件・素行要件・生計要件など、基本的な条件を事前にチェックしておきましょう。特に収入状況や過去の生活履歴などは、事前の見直しが重要です。
② 法務局での事前相談(予約制)
帰化申請では、事前相談が必須となっており、いきなり書類を提出することはできません。まずはお住まいの地域を管轄する法務局へ電話予約を行い、指定された日程で面談に臨みます。
相談時には、必要書類の案内や現在の状況についての確認が行われるため、不明点はこの段階でしっかり解消しておきましょう。
③ 必要書類の収集・作成
帰化申請では、市区町村や出身国の役所で取得するもの、翻訳が必要なもの、自筆作成の書類など、多くの資料を準備する必要があります。書類の種類や必要数は申請者の状況によって異なるため、詳細は後述の「帰化申請に必要な書類と準備ポイント」で確認しておきましょう。
④ 法務局での書類点検と申請受付
書類が揃ったら再び法務局へ訪問し、提出書類に不備がないかの点検を受けます。ここで問題がなければ正式に「申請受理」となりますが、不備があると差し戻されてしまうため、提出前に十分な確認が必要です。
⑤ 法務局での面接(申請者本人・配偶者)
申請後には、本人確認や生活実態の確認を目的とした面接が行われます。配偶者がいる場合は、夫婦での同席を求められることもあります。日常会話程度の日本語能力もここで見られることがあります。
⑥ 家庭訪問・職場訪問(実態調査)
必要に応じて、家庭や職場に法務局の職員が訪問し、生活実態の確認を行うことがありますが、申請者の状況によっては訪問が省略されることもあります。
⑦ 法務省での審査
法務局での手続きが終わると、今度は法務省での本格的な審査に入ります。この期間は数か月〜1年以上かかることもあり、状況によっては長期戦になる可能性もあるため、気長に待つ心構えが必要です。
⑧ 許可・不許可の通知
審査が完了すると、許可の場合は官報に告示され、通知書が法務局から届きます。不許可の場合も書面で通知されますが、再申請も可能ですので、理由を確認し改善点を整理しておきましょう。
⑨ 帰化許可後の手続き
許可後は、日本国籍取得に伴う各種手続き(住民票の国籍変更、戸籍の作成、必要に応じたパスポートの返納など)を行い、ようやく帰化申請が完了となります。
帰化申請に必要な書類と準備ポイント
帰化申請を進めるうえで、もっとも時間と労力がかかるのが「必要書類の準備」です。ご自身で進める方の多くが、この書類準備でつまずきやすいため、最初に全体像を把握しておくことがとても大切です。
必要な書類は、市区町村で取得するものや、母国の役所で取り寄せるもの、日本語訳が必要なものなど多岐にわたります。事前にしっかり確認しておくことで、無駄な二度手間を防ぎ、スムーズに申請を進めることができますよ。
主な必要書類の例
帰化申請では、次のような書類が一般的に必要とされます。
- 住民票・除票(申請者および同居家族)
- 外国人登録原票記載事項証明書(旧外国人登録原票の写しなど。必要な方のみ)
- 出生証明書・婚姻証明書・戸籍謄本など(母国で発行されたもの+翻訳)
- 在職証明書、給与明細、課税・納税証明書
- 預金通帳のコピーや、不動産の登記簿謄本などの資産証明
- 運転記録証明書(無事故・違反歴の確認用)
- 在留カード、旅券(パスポート)のコピー
これらはあくまで一例であり、申請者の状況に応じて追加書類を求められる場合もあります。必ず、法務局での事前相談時に渡される「案内書・チェックリスト」に沿って、漏れなく準備しましょう。
帰化理由書作成のポイント
帰化理由書は、申請者本人が日本語で自筆する必要がある重要な書類です。「なぜ日本国籍を取得したいのか」「これまでの生活」「将来の目標」などを、本人の言葉で丁寧にまとめましょう。
また、この理由書や履歴書の内容は、日本語の読み書き能力を確認する参考にもされます。特別な試験はありませんが、面談では日常会話程度の日本語力も見られるため、普段から読み書きや会話の練習をしておくと安心です。
日本語能力・在留資格の確認も忘れずに
在留資格の期限が切れていないかも、申請前に必ず確認しておきましょう。とくに申請準備に時間がかかる方は、早めに在留カードの更新手続きを行うことをおすすめします。
自分で帰化申請を行う際の注意点
帰化申請はご自身で進めることも可能ですが、準備不足や思い違いがあると、申請のやり直しや長期化の原因になることも。スムーズに進めるためには、事前に注意すべきポイントを押さえておくことが大切です。
書類準備の負担とスケジュール管理
帰化申請の手続きは一度の提出で完了するものではなく、段階的に何度も対応が必要になります。特に書類の準備には時間がかかることが多く、母国で取得すべき書類や翻訳書類が必要になるケースも。また、市役所・法務局などの手続きは平日対応が基本となるため、スケジュール調整が重要です。
平日対応・複数回の法務局訪問が必要
帰化申請では、事前相談・書類提出・面談などで法務局に何度も足を運ぶ必要があります。最低でも3〜4回、状況によってはそれ以上になることもあり、都度平日の時間を確保できるかは確認しておきたいポイントです。また、提出後に追加資料の提出を求められることもあります。
書類不備・記載ミスによる再提出のリスク
提出書類にミスがあると、申請は受理されず再提出となってしまうことがあります。たとえば、記載漏れや日付の不一致、添付書類の不備などがよくあるケースです。
提出前にはコピーを保管し、第三者にチェックしてもらうなど、慎重な確認が成功へのカギとなります。
不許可になった場合の対応
帰化申請は、提出すれば必ず許可されるというものではありません。不許可となった場合でも、再申請は可能です。過去の申請での指摘内容を整理し、改善点を明確にしたうえで次の申請に備えましょう。
帰化申請にかかる費用と期間の目安
「帰化申請にはどれくらいの費用がかかるの?」「手続きにどれだけ時間が必要?」といった疑問をよくいただきます。申請自体に手数料はかかりませんが、書類取得や翻訳、交通費など、一定の実費がかかる点には注意が必要です。
また、申請から許可までの期間も長期にわたるため、あらかじめ全体像を把握しておくことが安心につながります。
自分で申請する場合の主な費用
帰化申請には明確な手数料はありませんが、実際には次のような費用が発生します。
- 住民票・戸籍謄本・課税証明書などの取得費用:数千円〜1万円程度
- 母国の証明書類の翻訳費用:数千円〜数万円程度(自分で翻訳する場合は無料)
- 交通費・郵送費:数千円〜
- 証明写真代:数百円程度
総額としては、5,000円〜30,000円程度が目安です。ただし、翻訳書類が多い場合や、遠方にお住まいで移動距離が長くなる方は、さらに費用がかかる可能性があります。少し余裕をもった予算を考えておくと安心ですね。
申請から許可までの期間の目安
帰化申請は、提出してすぐに許可が下りるものではありません。手続きは段階的に進められ、全体を通して1年以上かかるのが一般的です。
- 書類準備・事前相談などの準備期間:1〜3か月程度
- 法務局への申請受理後の審査期間:10か月〜1年半程度(内容により前後あり)
申請が許可されると「官報」で告示され、その後、法務局で日本国籍取得に伴う各種手続きを行います。申請からすべて完了するまでには時間がかかるため、在留資格の期限や納税状況などにも気を配りながら、計画的に進めることが大切です。
まとめ
帰化申請は自分で進めることもできますが、書類準備や面談対応などで一定の負担が伴います。詳細については「自分で申請できる?専門家に頼るべき?」の項目をご参照いただき、不安な方は行政書士への相談も検討してみてください。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)