電気工事業で独立するには?必要な許認可や開業資金について徹底解説

電気工事業で独立したい方必見。許認可の手続き、必要資格、設備投資や車両費用まで、実務に即したリアルな情報を行政書士の視点から詳しくお伝えします。

 

電気工事とは

電気工事は、社会インフラを支える重要な分野であり、日常生活や産業活動を円滑に行うために欠かせない役割を担っています。特に近年は、省エネ設備の普及やスマートホーム化の進展、さらには電気自動車(EV)の普及に伴う充電設備の設置など、新しいニーズが急増しています。国や自治体の補助金制度も充実しており、これから電気工事業を開業しようと考えている方にとっては、まさに追い風と言えるでしょう。

今後も、再生可能エネルギーの活用や省エネ対策が求められる中で、電気工事業のニーズはさらに広がることが予想されます。

 

電気工事の種類

電気工事にはさまざまな種類があり、それぞれで必要となる知識や技術が異なります。以下は代表的な電気工事の例です。

  • 配線工事:建物内の電気配線を整備する基本的な工事。新築時だけでなく、リフォームや増設の際にも行われます。
  • 照明設備の設置:室内外の照明器具を設置し、快適な照明環境をつくる工事です。LED化の需要も高まっています。
  • コンセントの増設:家庭やオフィスで電源が不足している場合に、追加でコンセントを設置する工事です。
  • 分電盤の交換:老朽化した分電盤の交換や、容量変更を伴うリニューアル工事。安全な電気供給のために欠かせません。
  • 高圧設備のメンテナンス:工場や商業施設で使用される高圧受電設備の保守・点検・修理を行います。
  • 省エネ設備の導入:省エネルギー対策として、最新設備の導入や最適化を図る工事です。
  • スマートホーム関連工事:IoT技術を活用し、家電や照明をスマートフォンで操作できるシステムを導入します。
  • EV充電設備の設置:電気自動車の普及に伴い、個人宅や商業施設に充電スタンドを設置する需要が増加しています。

 

「建設業許可の電気工事業」と「電気工事業登録」の違いとは

電気工事業を開業する際には、「建設業許可の電気工事業」と「電気工事業登録」という2つの制度があり、それぞれ目的が異なります。開業時には電気工事業登録は必須ですが、建設業許可は取り扱う予定の工事規模や事業計画に応じて必要になるかどうかを確認しておきましょう。

  • 建設業許可(電気工事業):建設業法に基づき、電気工事の請負金額が500万円(税込)以上となる場合には、建設業許可が必要です。規模の大きなプロジェクトを請け負う際には必須となります。
  • 電気工事業登録:一方で、工事規模に関わらず「電気工事業」を営む場合には、電気工事業法に基づく登録が必要です。住宅の配線工事や小規模な店舗の電気設備工事でも、この登録が求められます。

 

建設業許可の電気工事業の申請手続き

電気工事業で本格的に事業を展開するなら、「建設業許可」の取得が必要です。特に請負金額が税込500万円以上となる大規模な電気工事を手掛ける場合には、この許可がなければ仕事を請け負うことができません。取得することで、受注できる案件の幅が広がり、取引先からの信頼性向上にもつながります。

 

求められる要件

建設業許可を取得するには、主に以下の要件を満たす必要があります。

  • 経営業務の管理責任者がいること:電気工事業に関して一定の実務経験がある者を配置する必要があります。
  • 専任技術者がいること:第二種電気工事士または第一種電気工事士の資格者を専任で配置することが求められます。
  • 財産的要件を満たしていること:自己資本500万円以上、または直前5年間に電気工事業の実績があること。
  • 誠実性:過去に不正行為や重大な法令違反がないことが必要です。
  • 欠格事由に該当しないこと:役員や主要な使用人が禁錮以上の刑に処せられていないなどが求められます。

 

欠格事由

許可申請者や役員、主要な使用人が以下に該当する場合、許可が下りません。

  • 成年被後見人または被保佐人
  • 破産手続開始の決定を受けて復権していない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わらないか、執行を受けることがなくなってから5年を経過しない者
  • 不正の手段で許可を受け取り消された場合、その取り消しの日から5年を経過しない者

 

必要書類の例

建設業許可の申請には、次のような書類が必要です。

  • 建設業許可申請書
  • 定款および登記事項証明書(法人の場合)
  • 住民票(個人事業主や役員のもの)
  • 経営業務の管理責任者の証明書類
  • 専任技術者の資格証明書
  • 財産的基礎を証明する書類(決算報告書や残高証明書など)
  • 誓約書

 

手続きの流れ

  1. 要件の確認と書類収集:まずは自身の要件を確認し、不足がないように必要書類を準備します。
  2. 管轄の都道府県庁または大臣許可の申請:500万円以上の工事を全国で行う場合は国土交通大臣許可、1つの都道府県内で完結する場合は知事許可が必要です。
  3. 審査と補正対応:提出後、内容審査が行われ、必要に応じて書類の補正が求められます。
  4. 許可取得:問題がなければ申請から約30〜45日で許可証が交付されます。

許可取得後は、5年ごとの更新が必要です。また、変更が生じた場合には変更届の提出も求められますので、取得後の管理も忘れずに行いましょう。

 

電気工事業登録の手続き

電気工事業を営む際には、建設業許可とは別に「電気工事業登録」が必要になります。これは請負金額にかかわらず、電気工事業そのものを営む場合に求められる登録です。住宅や小規模な商業施設などの電気設備工事を行う場合でも該当しますので、開業を検討されている方は忘れずに準備を進めましょう。

 

求められる要件

電気工事業登録には、次のような基本的な要件があります。

  • 「電気工事士」が在籍していること:第二種電気工事士や第一種電気工事士の資格が求められます。自らが取得している場合はもちろんのこと、社員やパートナーの中に資格保有者がいることが必須です。
  • 適切な事業所の設置:電気工事に関する事務や管理が行える事務所を設置する必要があります。
  • 法令遵守の体制が整っていること:電気工事に必要な安全管理体制や法令遵守の方針を社内で整備しておくことが求められます。

 

欠格事由

登録申請にあたっては、次のような欠格事由がないことが条件です。

  • 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ていない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 電気工事業登録の取り消し処分を受け、その日から2年を経過しない者
  • 暴力団員や暴力団関係者である場合

 

必要書類の例

登録申請時には、以下のような書類が求められます。なお、都道府県によって若干の違いがある場合がありますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

  • 電気工事業登録申請書
  • 事務所の所在地を示す書類(賃貸契約書の写しなど)
  • 電気工事士の資格証明書(写し)
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合)
  • 住民票の写し(個人事業主の場合)
  • 定款または事業内容を示す書類

 

手続きの流れ

電気工事業登録の流れは以下のとおりです。手続きは通常1〜2か月程度かかります。

  1. 必要書類の準備:まずは必要書類を漏れなく準備します。
  2. 管轄の都道府県庁への提出:書類が揃ったら、事業所所在地を管轄する都道府県庁に提出します。
  3. 審査・確認:担当部署にて書類審査や要件確認が行われます。
  4. 登録通知書の交付:問題がなければ登録通知書が交付され、正式に電気工事業者として登録されます。

 

電気工事業を開業する際に必要なその他の手続き

電気工事業を開始するためには、許認可の取得以外にもいくつかの手続きが必要になります。ここでは、代表的な手続きをご紹介します。

 

法人設立または個人事業主としての開業届出

まず、事業形態を決める必要があります。法人(株式会社や合同会社など)を設立する場合は法務局で登記を行い、個人事業主としてスタートする場合は税務署への開業届出が必要です。法人化することで信用力が増し、大きな案件の受注にもつながりやすくなりますが、設立費用や維持コストがかかる点には注意が必要です。

 

税務関連の手続き

事業開始後は、税務署に「青色申告承認申請書」を提出することをおすすめします。青色申告を活用することで、最大65万円の控除が受けられ、節税につながります。また、消費税の課税事業者となる場合や、従業員を雇う場合は源泉所得税の手続きも必要になります。

 

労働保険・社会保険の手続き

従業員を雇用する場合には、労働基準監督署への労災保険の加入手続きと、公共職業安定所への雇用保険の届出が必要です。さらに、法人の場合は役員だけの会社でも社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が義務付けられています。

 

産業廃棄物収集運搬業の許可(必要に応じて)

電気工事では、古くなった設備や配線材などの産業廃棄物が発生することがあります。これらを適切に処分するためには「産業廃棄物収集運搬業」の許可が必要です。外部の処理業者に委託する場合でも、業者選定の際には許可の有無を確認し、適切な管理を行いましょう。

 

建設業退職金共済(建退共)への加入(必要に応じて)

将来的な従業員の福利厚生として、建退共制度への加入も検討すると良いでしょう。掛金を納めることで、従業員の退職時に退職金が支給される仕組みになっており、労働環境の向上につながります。

 

電気工事業の開業にかかる費用

電気工事業は専門性の高い分野であるため、必要な設備や手続き、さらには営業活動に向けた準備まで、幅広くコストがかかる点が特徴です。全体の初期費用としては、規模や選択する設備のグレードによりますが、おおよそ150万円〜300万円程度を見込んでおくと安心です。ここでは、電気工事業の開業に必要な費用を具体的にご紹介していきます。

 

設備投資

電気工事業を開業する際には、まず「設備投資」が大きな割合を占めます。開業時には、電動工具や測定機器、安全器具など、専門的な機材を一式揃える必要があります。これらの設備は、新品で揃えると数十万円から数百万円に達することもあり、中古品を活用してコストを抑える選択肢も検討すると良いでしょう。

 

登録や許可の取得にかかる費用

次に「登録や許可の取得にかかる費用」ですが、電気工事業登録の申請手数料として約2万円、建設業許可を取得する場合は登録免許税などで約9万円が必要です。さらに、行政書士などの専門家に手続きを依頼すると、その報酬が加算されます。

 

事務所の開設費用

「事務所の開設費用」も見逃せません。事務所を構える場合、賃貸契約にかかる敷金や礼金、内装工事費、備品購入費などが発生します。これらは場所や規模によりますが、最低でも数十万円程度は見込んでおきたいところです。また、自宅を事務所として活用する場合でも、名刺やウェブサイトの制作費用など、営業活動の準備費が必要になります。

 

車両の導入費用

さらに「車両の導入費用」も考慮すべきです。現場への移動や資材の運搬には軽トラックやバンが必要となる場合が多く、新車で購入すると100万円以上の費用がかかります。リースや中古車の活用によって、初期負担を軽減することも可能です。

 

まとめ

電気工事業は、今後ますます需要が見込まれる分野です。再生可能エネルギーやスマートホーム関連の設備導入など、新しい分野への挑戦も視野に入れながら、長く安定した経営を目指していきましょう。行政書士などの専門家のサポートを得ながら、確実にステップを踏んで開業を成功させてください。

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