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国際結婚が増える中で、文化や価値観の違いから離婚を選ぶケースも珍しくありません。本記事では、外国籍配偶者との離婚手続きや注意点、子ども・在留資格への影響までをわかりやすく解説します。
外国籍の配偶者との離婚手続きとは?
近年、日本では夫婦の一方が外国籍である婚姻も一定数みられます。厚生労働省の人口動態統計によれば、2023年の婚姻件数のうち、夫妻の一方が外国人である婚姻は18,475組で、全婚姻件数の3.9%を占めています。一方で、国際結婚は日本人同士の結婚に比べて離婚に至るリスクが高い傾向が指摘されています。
その一方で、外国人配偶者との離婚は、日本国籍の夫婦間の離婚とは異なる点が多く、注意が必要です。ここでは、まず日本における離婚手続きと、日本国内で手続きができるケースについて解説していきます。
日本における離婚手続き
日本国内で離婚手続きを行う場合、主な方法は「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つです。
| 離婚の方法 | 概要 | 特徴・注意点 |
| 協議離婚 | 夫婦の合意により、離婚届を提出して成立する方法です。 | 手続きは簡便ですが、条件は書面化しておくと安心です。 |
| 調停離婚 | 家庭裁判所で話し合いを行い、合意を目指す方法です。 | 当事者同士でまとまらない場合に利用されます。 |
| 裁判離婚 | 調停で解決しない場合に、裁判所が判断する方法です。 | 証拠提出が必要で、時間や負担が大きくなりやすいです。 |
日本国内で調停・裁判離婚が行えるケース
外国人配偶者との離婚でも、協議が整っていれば日本で離婚届を提出できる場合があります。一方、調停離婚や裁判離婚を行う場合は、日本の裁判所で手続きできるかどうかを確認する必要があります。
また、国際離婚では、相手方が海外に住んでいる場合の送達や、相手国で日本の離婚が有効と認められるかが問題になることもあります。そのため、協議で進めるべきか、調停や裁判を選ぶべきかは、相手国の制度も踏まえて検討することが重要です。
日本国籍×外国籍の夫婦
夫婦の一方が日本国籍で、日本国内に住所がある場合は、日本で離婚手続きを進められる可能性があります。たとえば、日本人の夫が日本国内に住んでいて、外国籍の妻が海外在住のような場合でも、日本の家庭裁判所で調停や裁判を行えます。ただし、夫婦ともに日本に住所がない場合は、日本の裁判所で手続きできないこともあり、その場合は相手国や居住国での手続きが必要になります。
外国籍×外国籍の夫婦
一方で、夫婦ともに外国籍であっても、日本国内に住所がある場合は日本で離婚手続きができます。たとえば、外国人同士の夫婦で日本で長く生活している場合などが該当します。しかし、夫婦ともに日本に住所がなく、かつ日本での婚姻届出もない場合は、日本の裁判所で調停や裁判を行うことは原則としてできません。この場合は、各自の本国や居住国の裁判所での手続きが必要となります。
国際離婚では「日本で離婚できた」で終わらない点に注意
国際離婚では、日本で離婚が成立したとしても、それだけで全ての手続きが完了するとは限りません。実務上は、「日本では離婚済みだが、相手国では婚姻が継続している扱いになる」という問題が生じることがあります。
特に、相手国が日本の協議離婚をそのまま有効な離婚として認めない場合には、相手国側で別途手続きが必要になることがあります。その結果、再婚手続きや戸籍・身分登録、相続、財産関係の処理に支障が出るおそれもあります。
国際離婚では、日本の離婚手続きだけを見るのではなく、相手国でどのように扱われるかまで含めて進めることが大切です。
離婚成立後の双方の母国での取り扱い
国際離婚で特に注意しなければならないのが、「離婚の効力がどこまで及ぶのか」という点です。ここでは、離婚成立後の双方の母国での取り扱いについて詳しく解説します。
日本で離婚が成立した場合の相手国での取り扱い
日本で離婚が成立しても、その効力が相手国で認められるかどうかは、相手国の法制度によって異なります。特に注意したいのは、日本の「協議離婚」が、相手国では正式な離婚として扱われないことがある点です。
日本の協議離婚は、夫婦の合意と離婚届の提出によって成立します。しかし、国によっては、裁判所や公的機関が関与した離婚でなければ効力を認めない場合があり、日本の協議離婚がそのまま有効とされないことがあります。
そのため、日本で協議離婚が成立しても、相手国では婚姻関係が継続しているものとして扱われるおそれがあります。こうした事態を避けるため、相手国の制度によっては、協議離婚ではなく、調停や裁判による離婚を検討した方がよい場合もあります。
また、日本で成立した離婚を相手国で反映させるには、離婚届受理証明書や戸籍謄本などの書類に翻訳文を添付し、必要に応じてアポスティーユや領事認証を受けたうえで、相手国の所定機関へ提出することがあります。必要書類や提出先は国ごとに異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
これらの手続きを行わないままだと、相手国では婚姻関係が続いているものとして扱われ、再婚や相続などに支障が生じる可能性があります。場合によっては、重婚とみなされるリスクにも注意が必要です。
日本で離婚が成立しただけで安心せず、相手国でどのように扱われるかまで確認しながら進めることが大切です。
相手国で離婚が成立した際の日本での取り扱い
次に、相手国で離婚が成立した場合に日本でどのように扱われるのかについて説明します。結論から言えば、日本は外国で成立した離婚を一定の条件のもとで認めています。具体的には、相手国での離婚が「その国の法制度に則って有効に成立していること」が必要です。
ただし、相手国の離婚手続きが日本の公序良俗に反する場合や、法的要件を満たさない場合は、日本で認められないこともあります。たとえば、夫婦の一方が無断で離婚手続きを進めた場合や、法定の離婚理由がないまま強制的に離婚が成立してしまったケースなどが該当します。
日本では、外国で成立した離婚を戸籍に反映させるため、在外公館や日本の市区町村役場に離婚の届出を行います。この時、相手国での離婚証明書、その日本語訳、公的機関による認証(アポスティーユや領事認証)が必要になる場合があるので、事前に大使館や役場へ確認しておきましょう。
この手続きを怠ると、日本では戸籍上「婚姻中」とされ続けるため、日本国内での再婚ができないという大きな支障が生じます。相手国で離婚が成立した場合は、速やかに日本大使館や領事館、または本籍地の市区町村役場へ離婚の届出を行いましょう。
国際離婚をする場合、子どもの親権はどうなる?
国際離婚を考える際に、多くの方が心配されるのが「子どもの親権」です。特に国際的な夫婦の場合は、日本の法律だけでなく相手国の法律や国際ルールも絡むため、親権問題はより複雑になります。ここでは、国際離婚における子どもの親権について、基本的な考え方や注意点をわかりやすく解説します。
日本における親権の基本ルール
これまで日本では、離婚後の親権は父母のいずれか一方が持つ「単独親権」のみが認められていました。しかし、2024年5月の民法改正により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できる制度が導入されることになりました。新制度は2026年4月1日に施行され、離婚時に単独親権と共同親権のいずれかを選べるようになります。
共同親権を選んだ場合、子どもの進学や医療など重要な事項は父母の合意により決め、日常生活に関することや緊急時の対応は、それぞれの親が単独で判断できる仕組みです。
協議離婚では、夫婦の話し合いにより親権について定め、その内容を離婚届に記載します。調停離婚や裁判離婚では、裁判所の手続の中で親権が判断されます。新制度の施行後は、これらの場面でも共同親権が選択肢の一つになります。
親権と監護権の違い
日本では「親権」と「監護権」を分けて考えることができます。親権とは、子どもの財産管理や法律行為に関する同意権、身分上の管理権を含む広範な権利義務を指します。一方、監護権は、子どもの生活面に密接に関わる権利であり、衣食住の提供や教育、日常的な世話を行う権利義務を意味します。
たとえば、親権者が子どもの財産管理や進学などの重要な判断を行う一方で、監護権者は実際に子どもと生活を共にし、育児や教育に直接関わります。離婚時に親権者と監護権者を分けて指定することも可能で、親権は一方の親が持ちながら、監護権はもう一方の親が担うという形も選択肢として存在します。
国際離婚における親権問題
国際離婚では、日本法だけでなく相手国の法律や国際条約も関わるため、より慎重な対応が求められます。たとえば、相手国が共同親権制度を採用している場合、日本で単独親権となっていても、相手国では異なる扱いがされることがあります。
また、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)に加盟している国との間では、子どもの無断連れ去りが問題になることがあります。ハーグ条約は、子どもの不法な連れ去りや留置があった場合に、子どもを元の常居所地国に返還するための国際的なルールです。
この条約は、子どもを急激な環境変化から守ることを目的としており、日本でも返還命令が出された事例があります。ただし、返還によって子どもに重大な危険が及ぶ場合などには、例外が認められることもあります。
なお、ハーグ条約は親権そのものを決める手続きではありません。国際離婚において子どもを国外に連れ出す場合は、相手国の法制度や条約の内容を確認したうえで、慎重に対応することが大切です。
離婚後は身分関係だけでなく在留関係の整理も必要
国際離婚では、離婚届を提出して終わりではなく、離婚後にどのような法的立場になるのかを整理しておく必要があります。特に外国人配偶者については、婚姻を前提とした在留資格で日本に滞在していることも多く、離婚後の生活設計に大きく影響します。
また、子どもの養育、住民票や戸籍の届出、各国での身分登録など、離婚後に対応すべき事項は少なくありません。離婚そのものだけでなく、離婚後の手続きまで見据えて準備しておくことが重要です。
日本人と離婚した外国籍者の在留資格はどうなる?
国際結婚が終わりを迎えるとき、外国人配偶者の「在留資格」がどうなるのかはとても重要なポイントです。離婚後も日本に滞在し続けることができるのか、あるいは在留資格を失ってしまうのか――ここでは、離婚後の外国人配偶者の在留資格について、制度の概要と注意すべき点を解説します。
離婚後に影響を受ける在留資格の種類
まず確認しておきたいのが、外国人配偶者が取得している在留資格の種類です。日本人と結婚している外国人の多くは「日本人の配偶者等」という在留資格で滞在しています。この資格は、日本人との婚姻関係を前提にしているため、離婚すると在留資格の根拠が失われることになります。
ただし、離婚したからといって即座に在留資格が取り消されるわけではありません。入管法では、在留資格の活動に「変更があった場合」には、14日以内に入管へ届け出ることとされています。離婚が成立した場合もこれに該当しますので、速やかな手続きが必要です。
離婚後の在留資格
離婚後も日本での滞在を希望する場合、他の在留資格への「変更申請」を行うことができますが、本人の状況によって大きく対応が異なります。特に、これまで専業主婦(夫)だった場合や、日本での就労経験が少ない場合などは、変更申請のハードルが上がることもあります。
在留資格の変更の選択肢には、具体的に次のようなものがあります。
- 定住者ビザ:日本で生まれ育った子どもを養育する必要がある場合や、日本で長期間生活してきた実績がある場合など、定住者としての在留資格が認められることがあります。
- 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など):離婚後に就労先が決まり、就労資格に該当する業務に従事する場合は、就労ビザへ変更ができる可能性があります。
- 留学ビザや家族滞在ビザ:就学のための留学ビザや、日本で生活する家族に帯同する家族滞在ビザなども選択肢となります。
諸外国の離婚手続きとは
国際離婚では、離婚の成立方法や必要な手続きが国によって大きく異なります。相手国の制度によっては、日本の協議離婚がそのまま認められないこともあるため、あらかじめ基本的な違いを把握しておくことが大切です。ここでは、国際離婚で関わることの多い国の制度を簡潔にまとめます。
| 国名 | 離婚手続きの特徴 | 注意点 |
| アメリカ | 州ごとに制度は異なりますが、一般に裁判所を通じた手続きが必要です。 | 夫婦が合意していても、日本の協議離婚のような簡易な手続きがそのまま通用しないことがあります。 |
| イギリス | 無過失離婚が導入されており、裁判所を通じて手続きを進めます。 | 申請から成立まで一定期間を要することがあり、養育計画や財産面の整理も重要です。 |
| フランス | 合意離婚が広く利用されており、弁護士を通じて合意書を作成し、公証人の関与で進める方法があります。 | 裁判所を経ない場合でも、一定の正式手続きが必要です。 |
| 中国 | 協議離婚と裁判離婚があり、合意があれば婚姻登録機関で手続きできます。 | 親権や財産分与で争いがある場合は、裁判手続きに移行します。 |
| 韓国 | 協議離婚が認められていますが、家庭裁判所での確認手続きが必要です。 | 熟慮期間が設けられるため、日本より手続きに時間がかかることがあります。 |
| フィリピン | 一般的な離婚制度はなく、婚姻無効や法的別居などの制度が中心です。 | 日本で離婚しても、フィリピン側での扱いは特に慎重な確認が必要です。 |
| ブラジル | 一定の条件を満たせば、公証人役場で協議離婚ができる場合があります。 | 子どもや財産分与に争いがある場合は、裁判所の関与が必要になります。 |
国際離婚は「どの国でどう扱われるか」の確認が重要です
国際離婚では、夫婦の国籍や居住地、子どもの生活拠点、相手国の制度によって、必要な手続きや注意点が大きく変わります。日本で離婚が成立しても、相手国で当然に同じように扱われるとは限りません。
そのため、協議離婚で進めてよいのか、調停や裁判を選ぶべきか、子どもの親権や在留資格にどのような影響があるのかを、個別事情に応じて確認することが大切です。国際離婚は一般的な離婚よりも検討すべき事項が多いため、早い段階で専門家に相談しながら進めると安心です。
まとめ
国際離婚は一筋縄ではいかないことも多いですが、正確な情報と専門的なサポートがあれば、スムーズに進めることは十分可能です。行政書士や弁護士などの専門家に相談しながら、今後の人生設計を見据えて準備を進めていくことが、何よりも安心への第一歩になります。
今後、国際結婚や国際離婚に関する法制度は変化していく可能性があります。常に最新の情報を確認しながら、後悔のない判断をしていきましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)