建設業許可の取り方ガイド!建設業許可をスムーズに取得するための準備と手順

建設業許可は、事業拡大や信頼性向上のために欠かせません。本記事では、許可の種類や取得条件、申請の流れ、注意点を詳しく解説。スムーズな取得を目指し、安心して建設業を営むためのポイントを押さえましょう!

 

建設業許可とは?

建設工事を請け負う事業者が一定規模以上の工事を行うために、国または都道府県から取得しなければならない公的な許可です。この許可を取得しておかないと、請け負える工事の範囲に大きな制限が出てきてしまいます。まずは建設業許可とは何か、どんな種類があるのか、対象となる業種や有効期限など、基本的なポイントを押さえていきましょう。

 

建設業許可の種類

建設業許可は、大きく「許可を出す行政機関の違い」と「工事の規模や内容」によって分類されます。

知事許可と大臣許可

  • 知事許可

知事許可は、1つの都道府県内だけに営業所を構えて事業を行う場合に必要となる許可です。たとえば、東京都内だけで建設業を営む場合には、東京都知事の許可を受ける必要があります。比較的事業の規模が小さく、地域密着型の企業に多く見られる形態です。

  • 大臣許可

大臣許可は、2つ以上の都道府県に営業所を設けて事業を行う場合に必要となる許可です。たとえば、東京と埼玉に営業所がある場合には、国土交通大臣の許可を取得しなければなりません。広域に事業を展開している企業や、支店・営業所を複数地域に持つケースでは、この大臣許可が必要です。

 

一般建設業と特定建設業

  • 一般建設業

元請業者として工事を受注する場合でも、下請に出す工事代金が比較的小規模(1件あたり4,000万円未満、建築一式工事では6,000万円未満)である場合には、一般建設業の許可で対応できます。比較的軽微な工事を中心に行う場合は、この一般建設業許可で十分です。

  • 特定建設業

元請業者として受注した工事のうち、下請業者に発注する金額が大きくなるケース(1件あたり4,000万円以上、建築一式工事であれば6,000万円以上)の場合には、特定建設業の許可が必要になります。特定建設業では、下請業者に対する指導力や資金力など、より高い経営能力が求められるため審査も厳格になります。

 

建設業許可の対象となる業種(29業種)

建設業許可の対象となる業種は、国土交通省によって29業種(一式工事:2業種+専門工事:27業種)に分類されています。以下に、それぞれの業種と代表的な工事内容を簡単にまとめた一覧表を掲載します。

業種名 工事内容
土木一式工事 道路・橋梁・トンネル・河川などの土木構造物の建設
建築一式工事 住宅やビルなどの建築物全体の工事
大工工事 木造の構造体の組立てや取付けなど
左官工事 壁や床にモルタルなどを塗る工事
とび・土工・コンクリート工事 足場組立、掘削、基礎、コンクリート打設など
石工事 石材を使った積み工事や貼り付け工事
屋根工事 屋根の葺き替えや修理など
電気工事 屋内外の電気設備や送電線などの工事
管工事 給排水・空調・ガス配管などの工事
タイル・れんが・ブロック工事 タイル・レンガ・ブロックの施工工事
鋼構造物工事 鉄骨・鉄塔など鋼材を使用した工事
鉄筋工事 鉄筋の加工・組立・設置など
舗装工事 道路・駐車場などの舗装作業
しゅんせつ工事 河川・港湾などの底をさらう工事
板金工事 金属板を使用した屋根・外壁等の工事
ガラス工事 ガラスの取付け・交換など
塗装工事 建築物や構造物への塗装
防水工事 建物の雨漏り防止のための工事
内装仕上工事 壁紙貼り、床張り、天井仕上げなど
機械器具設置工事 工場設備・装置などの据付工事
熱絶縁工事 配管やダクトなどの断熱工事
電気通信工事 通信回線・LAN・放送設備などの工事
造園工事 庭園・公園・緑地の造成や植栽
さく井工事 井戸の掘削や温泉掘削など
建具工事 ドア・窓・ふすまなどの取付け工事
水道施設工事 上水道の配管・施設の設置工事
消防施設工事 スプリンクラー・消火栓などの設置
清掃施設工事 ゴミ処理施設・汚水処理施設の建設
解体工事 建物・構造物の解体工事

 

建設業許可の有効期限

建設業許可には有効期限があり、5年ごとに更新が必要です。具体的には、有効期限が満了する日の30日前までに更新手続きを行う必要があります。期限を過ぎてしまうと、たとえ一時的であっても無許可業者として扱われる可能性があり、業務の継続が難しくなってしまいます。更新時には、経営業務管理責任者や専任技術者の条件、財務状況などが再度チェックされます。必要書類も提出しなければならないため、早めの準備が安心です。

 

建設業許可が不要なケース

「建設業を始めるには許可が絶対に必要」と思っている方も多いのですが、実はすべてのケースで建設業許可が求められるわけではありません。

 

許可が不要な工事の例

  • 建築一式工事
    • 1件の請負金額が1,500万円未満(税込)
    • かつ木造住宅で延床面積が150㎡未満の工事
  • 建築一式工事以外の工事
    • 1件の請負金額が500万円未満(税込)

この金額の基準を下回る工事であれば、建設業許可がなくても事業を行うことができます。たとえば、リフォーム業者や個人の内装業者など、小規模な工事を請け負っている場合は、この「軽微な工事」に該当するケースも多いです。

 

許可不要の工事における注意点

  • 工事を分割契約しても、実質的に1件の工事で総額が500万円(税込)を超える場合には、許可が必要です。
  • 民間工事であっても、元請や発注者から建設業許可を求められるケースがあります。
  • 公共工事への入札や契約には、許可の有無が大きく関わるため、無許可では参加できないことが一般的です。

 

建設業許可を取得するための要件

建設業許可を取得するためには、5つの基本的な条件をクリアする必要があります。

 

1. 経営業務の管理責任者がいること

申請する会社や個人事業者には、一定の経験と実績を持つ「経営業務の管理責任者(略して”経管”とも呼ばれます)」が必要です。以下のいずれかの要件を満たす人材が任命対象となります。

  • 建設業の経営業務に関して、法人の役員等として5年以上の経験がある者
  • 建設業を個人で営んでいた期間が5年以上ある者
  • 上記に準ずる地位・職務において5年以上の経営業務経験がある者(例:支店長や営業所長など)
  • 建設業以外の事業における経営経験がある者で、補佐者を置くことにより経営業務の管理が可能と認められるケース

法人の場合は常勤の役員が該当し、個人事業主の場合は本人自身がその対象となります。

 

2. 専任技術者がいること

営業所ごとに、各業種に応じた資格や経験を持つ「専任技術者」を配置することが求められます。工事の規模や責任の大きさにより、一般建設業と特定建設業で要件が異なります。

一般建設業の場合

以下のいずれかを満たすことで、専任技術者として認められます:

  • 2級施工管理技士などの資格を保有している
  • 指定学科を卒業し、3~5年以上の実務経験がある(学歴により異なる)
  • 実務経験が10年以上ある

資格がなくても、長年の実務経験で代替できる柔軟性が特徴です。

特定建設業の場合

以下のいずれかを満たすことで、専任技術者として認められます:

  • 1級施工管理技士などの国家資格を保有している
  • 発注者から直接請け負った4,500万円以上の工事で、 2年以上指導監督的立場での実務経験がある
  • 大臣特別認定を受けた者

 

3. 誠実性があること

過去に重大な法令違反や不正行為がないことが求められます。破産歴や刑罰歴、反社会的勢力との関係がある場合は許可が下りません。対象は申請者本人だけでなく、役員や支店長なども含まれます。

 

4. 財産的基礎または金銭的信用があること

建設業を継続的に行うためには、一定の資金力や信用が求められます。

一般建設業の場合

いずれかに該当する必要があります:

  • 自己資本が500万円以上ある
  • 500万円以上の資金を調達できる証明(預金残高証明など)がある

特定建設業の場合

以下のすべてを満たす必要があります:

  • 自己資本が2,000万円以上ある
  • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 上記を裏付ける財務諸表や証明書類の提出が必要

 

5. 欠格要件に該当しないこと

反社会的勢力との関わりがないこと、刑事罰歴が一定期間内にないこと、成年被後見人などの法的制限に該当しないことが条件です。申請者本人だけでなく、役員や使用人も対象となるため、社内体制の整備も大切です。

 

建設業許可申請の流れ

1. 申請先を確認する

まず最初に、自社がどの行政機関に申請すべきかを確認します。

  • 知事許可:各都道府県庁の建設業担当窓口(例:東京都は都市整備局 建設業課、大阪府は都市整備部 建築振興課など)で受け付けられています。窓口の名称や場所は自治体ごとに異なります。
  • 大臣許可:各地方整備局の建設業担当窓口(例:関東地方整備局 建政部 建設業課など)に提出します。申請者の主たる営業所の所在地により管轄する地方整備局が異なるため、事前に国土交通省または各整備局の公式サイトで確認が必要です。

 

2. 許可申請区分を確認する

次に、申請したい業種や許可の種類を明確にします。また、新規申請なのか、業種追加・更新なのかといった区分も重要な確認ポイントです。間違った区分で申請してしまうと、手続きがやり直しになることもあるため注意が必要です。

 

3. 必要書類を準備・作成する

申請には多くの書類が必要です。代表的なものは以下のとおりです:

  • 建設業許可申請書(各様式)
  • 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 財務諸表や納税証明書などの経理書類
  • 専任技術者の資格証明や実務経験証明書
  • 経営業務の管理責任者に関する証明書類

提出前には、都道府県の窓口で事前相談を活用するのもおすすめです。不備の指摘を事前に受けられるため、スムーズに進めることができます。

 

4. 申請書の提出・手数料を支払う

必要書類と手数料の準備が整ったら、申請書を知事または大臣の管轄窓口へ提出します。郵送や持参、電子申請(対応自治体のみ)など提出方法はいくつかあります。

提出時に納める手数料は、新規申請の場合、知事許可で9万円程度、大臣許可で15万円程度が一般的です(都道府県によって異なります)。支払い方法は、現金、収入印紙、振込など自治体ごとに異なるため、事前の確認が大切です。

申請書を提出してから許可が下りるまでの期間は、通常30日〜45日(営業日ベース)が目安です。都道府県や申請内容によって前後することもあります。また、審査中に追加資料を求められることもあるため、スケジュールには余裕を持っておきましょう。

 

許可取得後の対応にも注意

許可が下りると「許可通知書」が交付され、同時に官報や自治体のホームページ等で許可内容が公示されます。その後、建設業法に基づき「建設業の許可票(看板)」を営業所などに掲示する義務がありますので、忘れずに対応しましょう。

 

まとめ

建設業許可を取得するには、工事金額や業種に応じて許可の要否を見極めたうえで要件を満たし、正しく申請手続きを行うことが重要です。特に「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」などの人的要件、自己資本や誠実性といった組織的要件は事前に確認しておきましょう。

はじめての申請でも、丁寧に準備を進めれば取得は可能です。不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談するのもおすすめです。

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