電気工事業の登録・通知・建設業許可の違いを行政書士がわかりやすく解説

電気工事業とは?

電気工事業とは、私たちの生活や仕事に欠かせない「電気」を安全に使えるようにするための工事を行う仕事です。具体的には、家庭の照明やコンセントの取り付けから、工場やビルの大規模な配線工事、高圧電気を扱う受電設備の設置まで幅広く含まれます。

こうした工事は「建設業法」で定められた業種のひとつであり、内容や規模に応じて国や自治体からの登録や許可を受ける必要があります。

電気工事業で行う主な工事

電気工事業の仕事には、次のような工事が含まれます。

  • 一般住宅の照明やコンセントの設置
  • ビルや工場の電気配線工事
  • 太陽光発電システムの設置
  • 高圧受電設備やキュービクルの設置
  • 公共施設や店舗の電気設備工事

これらはすべて「電気工事業」として建設業法に位置づけられています。電気工事を行う際には、工事の規模や内容に応じて国や自治体への登録や許可が必要となる場合があります。そのため、最初にどの制度が必要かをきちんと確認しておくことが欠かせません。

電気通信工事業との違い

似ているようでよく混同されるのが「電気通信工事業」です。電気工事業が電力の供給や配線、つまり「電気の流れ」を扱うのに対し、電気通信工事業はインターネットや電話、LANなど「情報の流れ」を扱う工事が中心です。

例えば、照明の取り付けや分電盤の工事は電気工事業、光回線の引込みや社内LANの工事は電気通信工事業に該当します。実際の現場では両者の工事が重なることもありますが、建設業法上は別々の業種とされ、取得すべき許可も異なります。

 

電気工事業で建設業許可が必要になるのはどんなとき?

電気工事業を始めるとき、多くの方が迷うのが「建設業許可が必要なのか、それとも登録だけでよいのか」という点です。実は、工事の規模や内容によって必要となる手続きが変わります。大きな金額の工事には【建設業許可】が必要となり、小規模工事であっても【登録電気工事業者】としての登録が求められる場合があります。さらに、両方の手続きが必要となるケースもあるため、最初に制度を正しく理解しておくことがとても大切です。ここでは「どんなときに建設業許可が必要になるのか」をわかりやすく解説します。

建設業許可が必要になる工事金額の基準

建設業法では、工事の請負金額が一定額を超えると必ず「建設業許可」を取得しなければならないと定められています。電気工事業の場合、その目安は次のとおりです。

  • 工事金額(税込・材料費込み)が500万円以上 → 建設業許可が必要
  • 工事金額が500万円未満 → 許可は不要

例えば、一般住宅のエアコン配線や照明の取り付けといった小規模工事では許可は不要です。しかし、ビルの大規模な電気工事や工場の受電設備工事などは金額が500万円を超えるケースが多く、その場合には建設業許可が必須となります。

建設業許可が不要でも登録が必要な場合

一方で、金額が500万円未満だからといって、まったく手続きが不要というわけではありません。電気工事士法に基づき、次のような工事を行う場合には「登録電気工事業者」としての登録が必要です。

  • 一般用電気工作物の工事(例:住宅の照明・コンセント・エアコン配線など)
  • 自家用電気工作物の工事(例:高圧受電設備やキュービクルの設置など)

このように、500万円未満の工事でも内容によっては登録が必要です。金額だけで判断せず、対象工事かどうかを確認することが大切です。

許可と登録の両方が必要になるケース

実務上は、建設業許可と登録電気工事業者の両方が必要となる場合があります。整理すると次のとおりです。

  • 500万円以上の電気工事 → 建設業許可+登録電気工事業者
  • 500万円未満で電気工事士法の対象工事 → 登録電気工事業者のみ

特に法人で大規模工事を受注する場合は、許可と登録を両方備えておくことが一般的です。

 

電気工事業の「登録」「通知」「建設業許可」の3つの違いとは?

電気工事業を始めるとき、多くの方が疑問に思うのが「登録と通知と建設業許可の違い」です。名前が似ているため混同しがちですが、実はそれぞれ別の法律に基づく制度で、必要となる条件や場面が異なります。「うちは登録だけでいいのか」「許可まで必要なのか」と迷うことも多いので、まずは3つの制度の特徴を整理して理解しておくことが大切です。

① 登録電気工事業者制度(電気工事士法)

「登録電気工事業者制度」は電気工事士法に基づく仕組みで、工事金額に関わらず一定の電気工事を行う際には必ず登録が求められます。対象となるのは以下のような工事です。

  • 一般用電気工作物の工事(住宅の照明・コンセント工事など)
  • 自家用電気工作物の工事(ビルや工場の受電設備など)

登録は事業所単位で行い、5年ごとの更新が義務づけられています。また、登録時には「専任技術者」(電気工事士など)の配置が必要で、安全な施工体制を整えることが条件となります。小規模工事でも登録は必要になるため注意が必要です。

② 通知電気工事業者制度(みなし登録)

「通知電気工事業者制度」は、すでに建設業許可を持っている事業者向けの仕組みです。通常の登録手続きを簡略化できる制度で、「みなし登録」とも呼ばれます。更新手続きは不要ですが、専任技術者の要件は満たす必要があります。また、事業内容や体制に変更があったときは、必ず届出を行わなければなりません。

③ 建設業許可(建設業法)

一方、建設業許可は建設業法に基づく制度です。請負金額が税込500万円以上の工事を行う場合には、この許可が必須となります。登録制度が「電気工事の専門性・安全性を担保するための仕組み」であるのに対し、建設業許可は「契約金額の規模」に応じて営業を認める許可という点が大きな違いです。

制度の使い分けのまとめ

3つの制度を整理すると、次のように使い分けられます。

  • 小規模工事でも必須 → 登録電気工事業者
  • 建設業許可を持っていれば → 通知(みなし登録)で簡略化可能
  • 500万円以上の工事を請け負う → 建設業許可+登録が必要

このように、工事の「内容」と「金額」の両方で必要な制度が変わります。間違った手続きをすると行政から指導を受ける可能性もあるため、最初にしっかり確認しておくことが安心につながります。

 

建設業許可を取るための4つの条件(電気工事業)

電気工事業で建設業許可を取得するには、誰でもすぐに取れるわけではありません。建設業法では、許可を受けるために満たすべき「4つの条件」が決められています。これは、適切な体制や資金力を備えた事業者だけが安全に工事を請け負えるようにするための仕組みです。
特に初めて申請する方にとっては、「誰が責任者になれるのか」「資金はどの程度必要か」など、不安に思う部分が多いかもしれません。ここでは、その4つの条件をわかりやすく解説します。

1. 経営業務の管理責任者(経管)がいること

まず必要なのが「経営業務の管理責任者」(経管)です。会社に常勤し、電気工事業の経営経験を持つ人がいることが求められます。具体的には次のような条件です。

  • 法人の場合:役員として5年以上、電気工事業の経営に携わった経験
  • 個人事業主の場合:5年以上の経営経験
  • 一部のケースでは、補助的な役職での経験を通算できる場合あり

経管は、経営の実務経験を持つ人が責任を担うことで、会社の安定した運営を保証する役割を果たします。

2. 専任技術者(センギ)がいること

次に必要なのが「専任技術者」(センギ)です。営業所ごとに1人以上配置する必要があり、工事の技術面をしっかり管理する役割を担います。センギとなれる条件は以下のいずれかです。

資格で満たす場合

  • 第一種電気工事士
  • 一級・二級電気工事施工管理技士
  • 建築設備士 など

学歴+実務経験で満たす場合

  • 大卒(電気系学科)+3年以上の実務経験
  • 高卒(電気系学科)+5年以上の実務経験

実務経験のみで満たす場合

  • 資格や学歴がなくても、10年以上の実務経験があれば認められる

小規模事業者でも、長年の経験があれば要件を満たせる可能性があります。

3. 資金力(財産的基礎)があること

3つ目は資金面の条件です。工事を安定して続けられる体制を整えるため、次のいずれかを満たす必要があります。

  • 自己資本が500万円以上あること
  • 500万円以上の資金を調達できる能力があること

証明には決算書や預金残高証明書などを提出します。法人・個人に関わらず、資金力は必須です。

4. 欠格要件に当てはまらないこと

最後に、社会的信用に関わる「欠格要件」があります。以下に該当する場合は許可を取得できません。

  • 暴力団関係者が経営に関与している
  • 過去に建設業法違反で行政処分を受けたことがある
  • 禁錮刑以上の一定の犯罪歴がある

この条件は、法人の役員や個人事業主だけでなく、重要な従業員にも適用されます。

 

建設業許可取得の流れ(電気工事業)

「電気工事業で建設業許可を取るには、まず何から始めればいいの?」といったご相談をよくいただきます。初めて申請する方にとっては、必要な書類や手続きの流れがわかりにくいものです。ですが、大まかな流れを押さえておけば、スムーズに進めることができます。ここでは、許可取得までの手順を3つのステップに分けて解説します。

STEP1:事前確認と書類の準備

まずは「自社が許可要件を満たしているか」を確認しましょう。具体的には次の点をチェックします。

  • 経営業務の管理責任者(経管)の経歴
  • 専任技術者(センギ)の資格や実務経験
  • 自己資本や資金調達力(500万円以上)
  • 欠格要件に該当しないか

条件を満たしていることが確認できたら、必要な書類をそろえます。代表的な書類には以下があります。

  • 会社の登記簿謄本
  • 直近の決算書
  • 経管・センギの経歴証明書や資格証明書
  • 事務所の賃貸契約書や写真 など

書類の内容は法人か個人か、営業所の所在地などによっても変わるため、早めに確認して準備を進めるのが安心です。わからない点があれば行政書士に相談するのも有効です。

STEP2:申請と審査

書類が整ったら、管轄の役所に申請します。許可の種類は営業範囲によって異なります。

  • 一つの都道府県内で営業する → 都道府県知事許可
  • 複数の都道府県に営業所を持つ → 国土交通大臣許可

審査の標準期間はおおよそ30〜45日程度ですが、書類に不備があると補正が必要になり、さらに時間がかかる場合があります。余裕を持ってスケジュールを組んでおきましょう。

STEP3:許可取得後の管理と更新

許可が下りた後も継続的な管理が必要です。建設業許可は取得して終わりではなく、維持のために次の手続きが求められます。

  • 毎年:決算終了後に「事業年度終了届」を提出
  •  随時:役員・専任技術者・営業所の変更があった場合は「変更届」を提出
  • 5年ごと:更新申請

また、500万円以上の電気工事を受注する際は、契約書や広告に許可番号を必ず記載しなければなりません。日常の事務手続きも含め、許可をきちんと維持していくことが大切です。

 

まとめ

電気工事業を行うには、工事の内容や金額に応じて「登録」「通知」「建設業許可」のいずれか、あるいは複数の手続きが必要になります。

  • 小規模な工事でも → 登録電気工事業者としての登録が必要
  • 建設業許可を持っている場合 → 通知(みなし登録)で手続きを簡略化できる
  • 工事金額が500万円以上の場合 → 建設業許可が必須

特に500万円以上の工事を請け負うには、建設業許可を取得しなければなりません。その際は「経管」「専任技術者」「資金力」「欠格要件」の4つの条件を満たす必要があります。

また、許可は一度取って終わりではなく、毎年の届出や5年ごとの更新も欠かせません。正しい制度を理解し、事前に準備を進めておくことで、安心して電気工事業を継続・発展させることができます。

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