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塗装工事では、請負金額が税込500万円以上になると建設業許可が必要です。500万円未満であれば原則として軽微な建設工事にあたりますが、塗装と防水などの工事区分や、許可要件の確認が必要になる場面もあります。この記事では、塗装工事業で建設業許可が必要になる基準、取得要件、申請の流れ、注意点をわかりやすく整理してご紹介します。
建設業法における塗装の仕事とは?
塗装と聞くと「外壁の塗り替え」や「屋根の塗装」を思い浮かべる方が多いですが、実際の塗装工事はそれだけにとどまりません。塗装は、建物の見た目を美しく整えるだけでなく、外壁や鉄部を雨や紫外線から守り、劣化を防ぐことで耐久性を高める重要な役割を果たしています。
こうした役割の大きさから、塗装は建設業法においてもしっかりと位置づけられています。事業として塗装工事を行う場合は、法律に基づいたルールを理解しておくことが欠かせません。
塗装工事業とは?
塗装工事業は、建設業法で定められた29業種のひとつです。住宅やビル、工場、橋梁など幅広い建築物に用いられ、近年は防水・遮熱・断熱などの機能性塗装の需要も高まっています。
具体的な工事例としては、住宅の外壁や屋根の塗り替え、ビルの内外装塗装、工場の防塵塗装、橋梁の鉄骨塗装、防水・遮熱・断熱を目的とした機能性塗装などがあります。近年は、省エネや環境対策につながる塗装の需要も増えており、塗装工事はますます重要な役割を担っていきます。
塗装工事で建設業許可が必要になるのはいつ?
塗装工事を仕事として行ううえで、まず確認しておきたいのが、どのような場合に建設業許可が必要になるのかという点です。すべての塗装工事に許可が必要なわけではありませんが、請け負う工事の金額が一定の基準を超える場合には、建設業許可が必要になります。
許可が必要になる工事金額の基準
塗装工事では、請負金額が税込500万円以上となる場合、建設業許可が必要です。この金額には、塗料代だけでなく、材料費、足場代、高圧洗浄、下地補修、付帯部塗装、下請けへの支払いなど、契約に含まれる工事全体の費用が含まれます。
一方、塗装工事は建築一式工事ではないため、税込500万円未満であれば、原則として「軽微な建設工事」にあたり、許可がなくても請け負うことができます。ただし、税込500万円以上になる場合は、民間工事・公共工事を問わず、建設業許可を取得していなければなりません。
たとえば、外壁塗装本体に足場設置や高圧洗浄、下地補修、付帯部塗装などを含めた結果、契約金額の総額が520万円になる場合は、許可なしで請け負うことはできません。住宅の塗り替え工事でも、工事内容によっては500万円を超えることがあるため、契約前に総額をしっかり確認することが大切です。
塗装工事業で建設業許可を取るための条件
建設業許可は、希望すればすぐに取得できるものではなく、法律で定められた要件を満たす必要があります。塗装工事業でも、経営業務管理体制、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件などの主要な要件が確認されます。
ここでは、塗装工事業で建設業許可を取得する際に押さえておきたい主な条件をご紹介します。
① 経営業務の管理責任者(経管)がいること
まず必要となるのが、「経営業務の管理責任者(経管)」です。これは、建設業の経営について一定の経験を持つ人が、営業所に常勤していることを求める要件です。
一般的には、法人であれば役員として、個人事業であれば事業主として、一定年数以上の建設業の経営経験があることが必要になります。個別の経歴によって判断が分かれることもあるため、該当するか迷う場合は早めに確認しておくと安心です。
② 営業所技術者等がいること
次に必要なのが、「営業所技術者等」の配置です。これは、許可を受けて建設業を営む営業所ごとに、塗装工事業に関する資格や実務経験を備えた技術者を置く必要があるという要件です。
営業所技術者等として認められるためには、主に次のいずれかを満たす必要があります。
- 塗装工事業で認められる国家資格を持っている
- 所定の学歴に加えて、定められた年数の実務経験がある
- 資格や学歴がなくても、塗装工事について一定年数以上の実務経験がある
資格がない場合でも、実務経験によって要件を満たせる可能性があります。ただし、経験年数だけでなく、その内容を資料で証明できるかも重要です。
③ 誠実性があること
建設業許可では、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないことも確認されます。たとえば、契約内容を守らない、虚偽の説明をするといった行為があると、許可の取得や維持に影響する可能性があります。
建設業は取引先や施主との信頼関係のうえに成り立つため、技術力や資金力だけでなく、適正に事業を行う姿勢も重要です。
④ 資金力があること(財産的基礎)
建設業を継続して行うためには、一定の資金力も必要です。一般建設業の許可では、主に次のいずれかを満たすことが求められます。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金を調達できる能力があること
法人であれば決算書の純資産額、新設法人であれば資本金、必要に応じて金融機関の残高証明などによって確認されます。
⑤ 欠格要件に該当しないこと
最後に、欠格要件に該当しないことも必要です。これは、社会的信用に問題がある人が許可取得に関与していないかを確認するための要件です。
たとえば、次のような事情がある場合は、許可を受けられないことがあります。
- 暴力団関係者であること
- 建設業法違反などにより一定の処分を受けていること
- 禁錮以上の刑に処せられ、一定期間を経過していないこと
欠格要件は、許可申請時だけでなく、許可取得後も継続して確認されるため注意が必要です。
許可を取るときに知っておきたいポイント
建設業許可は、取得すれば終わりというものではありません。塗装工事業では、許可の種類や受注形態、施工内容によって注意すべき点が異なります。ここでは、許可取得前後に確認しておきたい実務上のポイントを整理してご紹介します。
一般建設業と特定建設業の違い
塗装工事業の建設業許可には、「一般建設業」と「特定建設業」の2つの区分があります。現在の基準では、元請として下請契約の総額が税込5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となる工事を施工する場合には、特定建設業の許可が必要です。
多くの塗装業者は一般建設業の許可で対応できますが、大規模修繕や商業施設の案件など、下請への発注額が大きくなる工事を想定している場合は、特定建設業の要否も検討しておくことが大切です。
元請と下請で異なる注意点
許可取得後は、自社が元請として受注するのか、下請として工事に入るのかによっても実務上の注意点が変わります。元請の場合は、施主や発注者から建設業許可の有無を確認されることが多く、特に公共工事や法人案件では許可が前提となる場面も少なくありません。
一方、下請の場合でも、元請から許可の有無を確認されることがあります。許可を取得していることが、受注先に対する信用や継続的な取引につながるケースもあります。
業種区分の確認も忘れずに
塗装工事以外の工事をあわせて請け負う場合は、塗装工事業だけで足りるのかを事前に確認しておくことが重要です。たとえば、防水工事や内装仕上工事などを行う場合は、施工内容によって別業種の許可を検討すべきことがあります。
特に、塗装工事とあわせて防水やシーリング補修を行うケースでは、見積書上は一式工事のように見えても、実際の施工内容によって必要となる業種区分が変わることがあります。受注後に問題が生じないよう、契約前の段階で工事内容と必要な許可を整理しておくと安心です。
塗装工事業で建設業許可を取る流れ
塗装工事業で建設業許可を取得するには、要件の確認から必要書類の準備、申請後の管理までを順番に進めることが大切です。とくに、実務経験の整理や提出書類の組み立ては判断が分かれやすいため、早い段階で全体の流れを把握しておくとスムーズです。ここでは、許可取得までの流れを3つのステップに分けてご紹介します。
ステップ1:条件確認と必要書類の準備
まずは、自社や本人が許可要件を満たしているかを確認します。塗装工事業では、経営業務管理体制、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件などが主な確認ポイントです。
要件を確認したら、次は申請に必要な書類を揃えます。代表的な書類は以下のとおりです。
- 会社の登記事項証明書(法人の場合)
- 経営業務管理体制に関する確認資料
- 営業所技術者等の資格証明書や実務経験を示す資料
- 営業所の所在地を確認できる書類(賃貸借契約書など)
- 決算書や残高証明書など、財産的基礎を確認する書類
建設業許可では、単に書類を集めるだけでなく、経歴や実務経験の内容が制度上の要件に合っているかを整理することが重要です。特に、資格ではなく実務経験で申請する場合や、個人事業から法人成りした場合は、事前確認を丁寧に行うことで申請を進めやすくなります。
ステップ2:申請から許可取得まで
必要書類が整ったら、申請先へ提出します。申請先は、営業所の所在地によって異なります。
- 1つの都道府県のみに営業所がある場合 → 都道府県知事許可
- 複数の都道府県に営業所がある場合 → 国土交通大臣許可
申請後は審査が行われ、標準的には30〜45日程度で許可の可否が決まります。不備がある場合は補正を求められることがあり、その分、許可までの期間が延びることもあります。
申請では、記載内容の整合性や添付資料の不足がないかが細かく見られます。受注予定の工事がある場合は、補正による遅れが契約や着工時期に影響することもあるため、余裕を持って準備を進めることが大切です。
ステップ3:取得後の更新と変更手続き
建設業許可は、取得後の維持管理も重要です。許可の有効期間は5年間で、継続して営業するには更新手続きが必要になります。また、毎事業年度終了後には事業年度終了届の提出が必要です。
さらに、役員、営業所技術者等、営業所所在地などに変更があった場合は、所定の期限内に変更届を提出しなければなりません。許可を維持するためには、取得後も継続的にスケジュールと届出状況を管理することが大切です。
塗装工事業では、許可を取ること自体が目的ではなく、取得後も安定して受注を続けられる状態を維持することが重要です。申請時だけでなく、更新や各種変更届まで見据えて準備しておくことで、許可取得後の運用もスムーズになります。
要件の確認に不安がある場合や、実務経験の整理、必要書類の収集に時間がかかりそうな場合は、申請実務に慣れた行政書士へ早めに相談しておくと安心です。
塗装工事業の建設業許可を行政書士に依頼するメリット
塗装工事業の建設業許可は、自社で申請することも可能です。ただし、実際には要件の確認や必要書類の収集、実務経験の整理、申請書類の作成などに時間と手間がかかるため、行政書士へ相談することで進めやすくなるケースがあります。
要件に当てはまるかを事前に確認しやすい
建設業許可では、経営業務管理体制や営業所技術者等、財産的基礎など、複数の要件を満たしている必要があります。特に、資格ではなく実務経験で申請する場合や、個人事業から法人成りした場合は、制度上どのように整理できるかを事前に確認することが重要です。
必要書類の整理や作成を進めやすい
申請では、会社関係書類だけでなく、経歴や資格、実務経験、営業所の実体などを示す資料も必要になります。行政書士に依頼することで、どの書類をどのように揃えるべきか整理しやすくなり、書類不備による補正のリスクも抑えやすくなります。
本業に集中しながら許可取得を進めやすい
塗装業者の方にとって、現場対応や見積作成、顧客対応をしながら申請準備を進めるのは大きな負担になりがちです。許可申請を行政書士に相談することで、本業への影響を抑えながら、必要な準備を計画的に進めやすくなります。
特に、受注予定の工事がある場合や、早めに許可取得を進めたい場合は、申請準備に入る前の段階で相談しておくと安心です。
まとめ
塗装工事業では、請負金額が税込500万円以上になる場合、建設業許可が必要です。外壁塗装や屋根塗装などの住宅工事でも、足場設置や下地補修、付帯部塗装を含めると基準を超えることがあるため、契約前に総額を確認することが大切です。
また、許可取得には、経営業務管理体制、営業所技術者等、財産的基礎、誠実性、欠格要件などの要件を満たす必要があります。塗装と防水など、施工内容によって必要な業種区分が変わることもあるため、自社の事業内容に合った形で早めに準備を進めましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)