建設業の行政手続きとは?司法書士・行政書士の役割と費用も解説

建設業の行政手続きは、ミスや遅れが経営に大きく影響することも。本記事では、許可取得や更新、経審・入札までの流れとともに、行政書士・司法書士の活用ポイントと費用を解説します。

 

建設業における行政手続きの重要性

建設業を営むうえで、行政手続きの正確な遂行は避けて通れない重要な業務のひとつです。建設業は多くの人員・資材・予算を動かす産業であり、社会的な責任も大きいため、国や地方自治体による許認可制度や届出義務が厳格に設けられています。こうした法制度のもと、適切な行政手続きを行うことは、法令遵守の面だけでなく、信頼ある企業として事業を継続していくためにも不可欠です。

特に建設業法に基づく建設業許可は、一定規模以上の工事を請け負う際に必須となる許可であり、取得していないまま営業を行えば無許可営業となり、営業停止命令や罰則を受けるリスクもあります。また、許可取得後も事業年度終了届、変更届、更新申請など、継続的な行政対応が求められることを忘れてはなりません。

さらに、公共工事に入札するためには、経営事項審査や入札参加資格審査などの申請が必要となり、これらも期限を守って行う必要があります。手続きの不備や遅延は、取引先や発注者からの信頼を損なうだけでなく、事業機会の損失にもつながる可能性があるのです。

こうした行政手続きは、書類の準備や制度の理解が求められるため、日々の業務に追われる中小建設業者にとっては大きな負担になりがちです。だからこそ、制度に詳しい専門家の支援を得ながら、手続きを的確かつ効率的に進めることが、建設業経営におけるリスク管理の一環としてますます重要になってきています。

行政手続きを軽視せず、むしろ事業の基盤づくりとして前向きに取り組むことが、結果的に信頼される企業づくりへとつながっていくのです。

 

建設業の代表的な行政手続き

建設業を営むには、法令に基づいたさまざまな行政手続きが必要です。これらの手続きは、業務の開始時だけでなく、事業を継続・拡大するうえでも欠かせません。

ここでは代表的な行政手続きについて、それぞれの目的や難易度について解説します。

 

建設業許可申請

建設業を始める際にまず必要となるのが建設業許可申請です。許可には「知事許可」と「大臣許可」、「一般建設業」と「特定建設業」などの区分があり、工事の種類や請負金額、営業エリアに応じて適切な許可を取得する必要があります。

申請には、経営業務の管理責任者や専任技術者の在籍証明、事務所要件、財産的要件など、複数の法的要件を満たす必要があり、必要書類も多岐にわたります。手続きの難易度は高く、初めての方には専門家の支援が推奨されます。

 

決算変更届(事業年度終了届)

建設業許可を受けた後は、毎事業年度終了後に「決算変更届」を提出する義務があります。工事経歴書、財務諸表、納税証明書など、決算に関する情報を行政庁に報告します。

届出が提出されていないと更新や経営事項審査を受けることができなくなるため、期限内の対応が必須です。難易度は中程度で、帳簿や会計処理が正しくなされていれば自社対応も可能ですが、正確性と期限厳守が求められます。

 

建設業許可の更新申請

建設業許可は有効期限が5年と定められており、引き続き事業を継続するためには更新手続きが必要です。更新の際には、引き続き許可要件を満たしていること、過去の届出がきちんと提出されていることが前提となります。

難易度は中程度で、書類準備とスケジュール管理が重要です。特に許可失効を防ぐためにも、更新期限の管理には注意が必要です。

 

経営事項審査(経審)

公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査(経審)を受ける必要があります。これは、企業の財務内容や施工実績、社会保険の加入状況などを点数化して評価する仕組みです。

提出書類が多岐にわたり、評価の基礎となる指標も複雑であるため、手続きの難易度は高めです。特に公共工事への参入を目指す事業者にとっては、制度理解と適切な準備が不可欠となります。

 

入札参加資格審査申請

経審の結果を踏まえ、各自治体や官公庁に対して入札参加資格審査申請を行う必要があります。提出書類や申請期間、申請方法は自治体によって異なるため、個別の情報収集が不可欠です。

難易度は中〜やや高めであり、経審とあわせて準備する必要があることから、事前の計画とスケジュール調整も求められます。

 

建設業における士業の役割と費用の目安

建設業の各種行政手続きでは、制度の複雑さや書類の正確性が求められるため、士業のサポートが非常に有効です。ここでは、建設業に関与する代表的な士業である司法書士と行政書士の役割と、それぞれの費用の目安についてご紹介します。

 

司法書士の役割と費用

司法書士は、主に法人登記など法務局に関する手続きを扱う専門家です。建設業においては、特に法人設立や役員変更時に必要な登記事項の変更に関与します。

これらの登記手続きは、建設業許可申請にも密接に関係しており、登記の不備や遅れが許可取得に影響を及ぼすこともあります。

主な業務と費用の目安

  • 建設会社設立時の法人登記:約7万円〜12万円前後
  • 役員の就任・辞任・変更登記:約1万円〜3万円程度(内容により変動)
  • 商号・本店所在地変更登記:約1万円〜3万円前後

※別途、登録免許税などの実費が必要になります。

 

行政書士の役割と費用

行政書士は、許認可申請や官公署への書類作成を専門とする国家資格者であり、行政手続き全般に幅広く関与します。特に、建設業許可や経営事項審査(経審)、入札関連手続きなど、煩雑で専門性の高い分野で重要な役割を果たします。

主な業務と費用の目安

  • 建設業許可申請(新規・更新・変更):約10万円〜20万円(新規)、約5万円〜10万円(更新・変更)
  • 事業年度終了届(決算変更届):約3万円〜7万円
  • 経営事項審査(経審)申請:約7万円〜15万円
  • 入札参加資格審査申請:約5万円〜10万円
  • 産業廃棄物収集運搬業許可:約8万円〜15万円

※地域や手続きの内容、添付書類の数により費用は変動します。

 

まとめ

建設業を安定的かつ法令に則って運営するためには、さまざまな行政手続きが欠かせません。許可の取得から更新、入札の参加資格まで、対応すべき業務は多岐にわたり、それぞれに専門性と正確さが求められます。制度を正しく理解し、必要なときには専門家の力を借りながら、効率よく手続きを進める体制づくりが、持続可能な経営への近道と言えるでしょう。

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