酒類販売業免許とは?許認可の種類・取得の要件・申請手続きまで徹底解説

「お酒を売りたいけど、どんな許可が必要?」という疑問にお答えします。酒類販売業免許の種類や要件、取得の流れまで、初めてでもわかりやすく丁寧に解説します。

 

お酒の販売に必要な許認可とは?

お酒を販売するには、ただ商品を仕入れて並べればいいというわけではなく、「酒類販売業免許」という国税庁管轄の許認可を取得する必要があります。たとえ小さな飲食店やネットショップであっても、この免許なしに酒類を販売することは法律違反となり、罰則の対象になるので注意が必要です。

ここでいう「販売」とは、あくまで”対価を得て継続的にお酒を提供すること”を指します。友人にお酒をあげたり、パーティでふるまったりする程度では問題になりませんが、ビジネスとして継続的に酒類を取り扱う場合は、必ず免許が必要になります。

この酒類販売業免許は大きく分けて「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」の2種類があります。

 

酒類小売業免許

酒類小売業免許とは、一般消費者に向けてお酒を販売するための免許です。スーパーマーケットやコンビニ、飲食店などが対象となります。また、店舗での販売に限らず、インターネットを通じた通信販売や、期間限定イベントでの販売にも適用される免許もあります。

小売業免許にはさらに細かい区分があり、販売方法や対象に応じた種類を選ぶ必要があります。この点については次の章で詳しく説明します。

 

酒類卸売業免許

一方、酒類卸売業免許は、主に業者間の取引を目的とした免許です。メーカーや輸入業者、他の小売店などに酒類を卸す場合に必要となります。こちらも販売の形態や対象に応じて複数の区分があり、事業計画や過去の取引実績など、審査もやや厳しくなる傾向があります。

 

酒類販売業免許の種類

酒類販売業免許にはさまざまな種類があり、販売方法や販売対象に応じて適切な免許を選ぶ必要があります。ここでは、一般の消費者向けに酒類を販売する際に必要となる「酒類小売業免許」と、小売店や飲食店、他の卸売業者などに対して酒類を販売する際に必要となる「酒類卸売業免許」に分けて解説します。

 

酒類小売業免許

一般酒類小売業免許

店舗などを構えて、消費者に対してお酒を対面販売するための免許です。スーパーマーケットやコンビニ、酒屋などがこの免許を利用しています。酒類の種類や銘柄に関係なく、幅広い品目を扱うことが可能で、多くの事業者が取得を目指す基本的な小売免許です。取得にあたっては、販売場所の確保や人的要件の充足、経営の安定性などが求められます。

通信販売酒類小売業免許

インターネット通販やカタログ販売など、非対面での販売を行う場合に必要な免許です。ECサイトの普及により需要が高まっており、全国の顧客に向けて酒類を販売するビジネスモデルに適しています。ただし、未成年者への販売防止措置や、地域による配送制限への配慮が求められる点には注意が必要です。

期限付酒類小売業免許

期間限定のイベントや催事などで一時的に酒類を販売したい場合に使われる免許です。例えば、地域の夏祭りや物産展などでの出店時に活用されます。一定の販売期間と場所が限定されるため、通常の小売業免許よりも要件が緩和されているのが特徴です。過去にこの免許を取得して酒類の販売を行ったことがある場合でも、別の機会に再度販売するためには新たに免許の交付を受けることが必要になるため、注意しましょう。

特殊酒類小売業免許

特殊酒類小売業免許とは、自社の役員や従業員に対して継続的に酒類を販売するための免許です。販売は、不特定多数の一般消費者に対してではなく、あらかじめ届け出た施設において、社内関係者に限定して行うことが条件となっています。

具体的には、国会の議員会館内、自衛隊の駐屯地、山小屋など、一般の人が自由に立ち入ることのできない施設や場所が対象です。このような場所で働く役員や従業員が、日常的に酒類を購入できるようにすることを目的としています。

 

酒類卸売業免許

全酒類卸売業免許

すべての種類の酒類を全国の酒類販売業者などに卸すことができる、最も汎用性の高い免許です。ただし、その分取得難易度も高く、販売実績や取引先との関係性、事業計画の妥当性など、厳格な審査が行われます。安定した取引ルートと継続的な需要があることを示せる事業者が対象となります。

店頭販売酒類卸売業免許

主に、免許を持たない業者(飲食店などの酒類を取り扱うが販売免許が不要な業態)や最終消費者に近い形態の相手に対して、店舗で少量の酒類を販売するための免許です。たとえば、簡易な販売所で業務用として少量の注文に応じる業態が該当します。

ビール卸売業免許

ビールおよび発泡酒に特化した卸売業免許です。ビールメーカーやクラフトビール専門の事業者などがこの免許を活用し、他の事業者に対して取引を行います。取扱品目が限定されている分、全酒類卸売業免許よりもハードルが低めといえます。

洋酒卸売業免許

ウイスキー、ブランデー、リキュールなどの洋酒を業務用として卸売するための免許です。バーやレストランなど、洋酒を扱う業態との取引を想定しており、取り扱い製品の説明や市場との整合性(販売計画が市場規模に即しているかなど)も審査対象となることがあります。

輸入酒類卸売業免許

輸入した酒類を国内で販売するための免許で、主にインポーターや貿易会社が対象です。関税手続きや輸入元との契約内容、品質管理体制なども含めた審査が行われるため、国際取引に関する知識と体制が求められます。

なお、他社が輸入した酒類を国内で仕入れて販売する場合は、国内流通を前提とした取引にあたるため、「輸入酒類卸売業免許」ではなく「洋酒卸売業免許」が必要となる点にご注意ください。

輸出酒類卸売業免許

国内で製造された酒類を海外に向けて輸出するための免許です。輸出先の法規制や貿易実務に対応できる体制が整っていることが前提となり、対象国のニーズに応じた販売戦略も求められます。

自己商標卸売業免許

自社ブランド(自己の商標)の酒類を、他の事業者に卸売するための免許です。他社製造のOEM商品でも、自社の商標が付けられていれば対象となります。ブランド戦略や商品管理体制が重視される免許です。

なお、自己商標卸売業免許では、取り扱いが自社の商標に限定されている点で、すべての種類の酒類を取り扱える全酒類卸売業免許とは異なります。より幅広い流通を目指す場合は、全酒類卸売業免許の取得が必要です。

協同組合員間酒類卸売業免許

協同組合が、その組合員に対して酒類を卸売する場合に必要な免許です。対象が組合員に限定されていることが特徴で、地域振興や業界支援の一環として活用されるケースが多いです。

酒類販売媒介業免許

酒類販売媒介業免許は、酒類の売り手と買い手を仲介する「媒介業者」として活動するための免許です。実際に酒類の在庫を持ったり販売したりするのではなく、取引の成立を仲介することが主な業務になります。

この免許を取得すれば、自らは酒類を仕入れずに、取引先同士を結びつけるビジネスが可能となります。たとえば、酒類製造者と小売業者をマッチングし、成立した取引に対して手数料を得るといった形です。

近年ではオンラインプラットフォームやBtoBマッチングサービスの登場により、需要が高まっている業態の一つです。

 

酒類販売業免許を取得するための要件

酒類販売業免許を取得するには、申請者が一定の要件を満たしていることが前提となります。これは、適正な流通と課税を確保するために税務署が厳格に審査するポイントです。ここでは、小売業・卸売業共通で押さえておくべき代表的な要件について解説します。

 

1. 人的要件

まず重要なのが「人的要件」です。申請者本人(または法人の場合は役員等)が、過去に税法違反や酒税法違反などの問題を起こしていないかが確認されます。具体的には、過去に酒税法違反で処罰を受けた者や、暴力団関係者、破産手続中の者などは免許取得が認められません。

また、申請者自身だけでなく、経営に関与する役員や重要な従業員についても調査対象となるため、法人での申請では役員全員がこの基準をクリアしていることが必要です。

 

2. 場所的要件

酒類を販売する営業所や倉庫が、法令に適合していることも求められます。具体的には、販売場所が明確であり、酒類を保管するスペースが確保されていること、販売方法に応じた設備があることが必要です。

また、賃貸物件で営業する場合は、賃貸契約書などで営業目的に酒類販売が含まれていることが確認されます。マンションの一室など、業種に制限がある場所では許可が下りないこともありますので、事前の確認が重要です。

 

3. 経営基礎要件

申請者に酒類販売業を継続的・安定的に行うための経営基盤があるかも審査対象です。過去の経営実績、事業計画、財務状況などが評価され、自己資金が十分にあるかどうか、無理のない収支計画が立てられているかがチェックされます。

とくに卸売業免許の場合は、取引予定先との契約書や商談記録など、具体的な販売ルートが示せることが重視されます。

 

4. 需給調整要件(小売業のみ)

一般酒類小売業免許などの一部では、「需給調整要件」が適用されることがあります。これは、すでに多くの酒類販売業者が存在している地域において、新たな免許を出すことで供給過剰にならないようにするための調整基準です。

ただし現在は、この要件が緩和されている地域も多く、実際の運用状況は税務署ごとに異なるため、事前に確認することをおすすめします。

 

免許の交付を受けることで生じる義務

酒類販売業免許の交付後には法律に基づいたさまざまな義務が発生します。ここでは主要な3つの義務について解説します。

 

1. 記帳義務(帳簿の作成と保存)

酒類を販売する事業者は、販売に関する帳簿を作成し、一定期間保存する義務があります。この帳簿には、販売した酒類の品目・数量・単価・取引先などを正確に記録しなければなりません。

帳簿は税務署からの調査対象になることもあるため、日々の取引を漏れなく記録しておくことが重要です。帳簿の保存期間は原則として7年間とされており、紙媒体でもデータ形式でも構いませんが、すぐに確認できる状態で保管しておく必要があります。

 

2. 申告義務(報告・届出)

免許を取得した事業者には、税務署への定期的な報告義務があります。たとえば、酒類の販売実績報告書などを所定の時期に提出する必要があります。

また、事業内容に変更があった場合(役員の変更、所在地の移転、事業の廃止など)にも、変更届出を提出する義務があります。これを怠ると罰則の対象となることがあるため、変更があった場合は速やかに手続きを行いましょう。

3. 酒類の詰替え届出書の提出義務

酒類販売業者が酒類を他の容器に詰め替えて販売する場合には、事前に「酒類の詰替え届出書」を税務署に提出する必要があります。たとえば、大容量の酒類を小分けして販売したいといったケースが該当します。

この届出は、酒類の品質管理や課税の適正化を目的としており、届出を行わずに詰替えを行うと違法とみなされることがあります。届出内容には、詰替えの方法や使用する容器の仕様、販売方法などが含まれ、あらかじめ所轄の税務署に承認を受けることが必要です。

 

許認可申請の流れと必要書類

酒類販売業免許の取得には、段階的な手続きと複数の書類準備が必要です。ここでは、一般的な申請の流れと必要書類について解説します。

 

申請の流れ

1.事前相談(任意)

最寄りの税務署へ出向き、免許取得に関する事前相談を行うことができます。相談は義務ではありませんが、提出書類の確認や申請内容の適否を確認できるため、申請の精度を高めるうえで非常に有効です。

2.必要書類の準備

申請書のほか、法人の登記事項証明書や定款、住民票、役員全員の経歴書、事業計画書など、多岐にわたる書類が求められます。内容に不備があると受理されないため、早めに準備を始めましょう。

3.税務署への申請書提出

書類が整ったら、所轄の税務署へ提出します。提出時にその場で軽い内容確認が行われることがあり、明らかに不足書類がある場合は受理されません。

4.審査期間(概ね2ヶ月前後)

書類提出後は、税務署で形式要件や人的要件、経営基礎、販売場所の適否などの審査が行われます。必要に応じて、追加資料の提出やヒアリングが求められることもあります。

5.免許の交付と事業開始

審査に問題がなければ、免許証が交付されます。交付日から酒類の販売が可能になります。

 

 

必要書類の例

  • 酒類販売業免許申請書
  • 申請者の住民票(個人)または登記事項証明書(法人)
  • 役員全員の経歴書
  • 定款の写し(法人の場合)
  • 販売場の賃貸契約書や使用承諾書
  • 事業計画書(販売方法や予想売上など)
  • 納税証明書(個人・法人)
  • 酒類の取扱予定品目一覧

 

まとめ

ここまで、酒類販売業免許について、種類や取得要件、申請手続きの流れ、免許取得後の義務などを詳しく解説してきました。酒類の販売を始めるには、単に商品を仕入れて売るだけではなく、法律に基づいた「免許」が必要不可欠です。

そしてその免許には、販売方法や販売先に応じて細かく分かれているため、自分のビジネスに合った免許を選ぶことがとても重要です。不安や疑問がある場合は、税務署への相談や、行政書士など専門家のアドバイスを活用しながら進めていくと安心です。

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