行政書士の料金はどうやって決まるの?
行政書士に依頼したいけど、費用の仕組みがわからなくて不安…」そんな声をよくいただきます。実は、行政書士の費用は「報酬」と「法定費用(実費)」の2つで構成されており、手続きの内容や難易度によって金額が変わるのが一般的です。
ここでは、行政書士の費用がどのように決まるのか、その基本をわかりやすくご説明します。
行政書士費用の基本は「自由報酬制」
行政書士の料金は、法律で一律に決められているわけではありません。多くの事務所では、それぞれの運営方針や地域の相場などをもとに、自由に報酬額を設定しています。つまり、「この申請は必ず○円」と決まっているものではなく、あくまで各事務所ごとに異なるということです。
ただし、極端に安すぎる・高すぎる料金には注意が必要です。料金の差には、対応の丁寧さやトラブルへのフォロー体制など、サービス内容の違いが反映されていることが多いからですが一般的な相場を把握しておくのがおすすめです。
報酬と法定費用の違いを知っておこう
行政書士に支払う金額は、大きく次の2つに分けて考える必要があります。
- 報酬:行政書士に支払う、書類作成・申請手続き・相談対応などの対価
- 法定費用(実費):行政機関に納める印紙代や証紙代などの費用(行政書士に払うものではありません)
法定費用は手続きの種類によって決まっており、全国共通の金額が多いです。
「すべて込み」ではない点にご注意を
よくある誤解ですが、「行政書士費用はすべて込みの金額」と思ってしまう方も少なくありません。
実際には、
- 行政書士への報酬
- 行政機関へ納める法定費用(印紙代・証紙代など)
- その他の実費(交通費や郵送料など)
この3つを合わせたものが、最終的な支払い総額になります。依頼する前に、何が含まれていて何が別途かかるのか、しっかり確認しておくことが安心につながります。
行政書士にかかる主な費用項目とその特徴
行政書士への依頼には、さまざまな費用が関わってきます。費用の全体像が「報酬+法定費用+実費」で構成されていることは前述の通りですが、ここでは具体的にどんな種類の費用があるのか、その内訳と特徴をわかりやすく整理してご紹介します。
それぞれの内容を知っておくことで、見積書の確認や他事務所との比較もしやすくなり、費用に対する不安や誤解を減らすことができます。
相談料(初回・継続)
行政書士に初めて相談する際にかかる費用が「相談料」です。事務所によっては初回相談を無料にしているケースもあれば、30分あたり5,000円前後で有料に設定しているところもあります。
簡単なアドバイスで済む場合はこの相談料のみで完結することもありますが、継続して正式に依頼する場合には、別途「業務報酬」が発生します。
また、相談料が有料でも、正式依頼時にその分を報酬から差し引く形をとっている事務所も多いため、事前に確認しておくと安心です。
業務報酬(手数料)
実際に行政書士へ業務を依頼する場合に発生するのが「業務報酬」です。これは、書類の作成や申請手続き、役所との折衝・補正対応など、行政書士が行う実務に対して支払う費用になります。
内容によっては、数千円〜数十万円と幅があります。対応範囲が広かったり、特急で対応が必要だったりすると、追加料金がかかることもあるため、事前にどこまでの業務が含まれるかを確認することが大切です。
法定費用(印紙代・証紙代など)
法定費用とは、行政機関に納める手数料で、行政書士に支払う報酬とは別のものです。
たとえば以下のような費用が該当します:
- 建設業許可申請:印紙代 90,000円
- 古物商許可申請:証紙代 19,000円(全国共通)
- 車庫証明(東京都):証紙代 2,700円
これらの費用は、申請の種類ごとに定められており、全国一律の金額であることが多いです。見積書では「実費」として明確に区別されて記載されます。
顧問契約を結ぶ場合
法人運営や継続的な法務支援が必要な場合、月額制の顧問契約を結ぶこともあります。報酬額は月額数万円程度が相場で、以下のような対応が含まれることが一般的です
- 日常的な法務・行政相談
- 書類の確認・チェック
- 法令アップデート
- 軽微な届出や変更手続きの対応
頻繁に行政手続きが発生する業種や、法改正への対応が必要な事業者にとって、コストを抑えつつ安心感を得られる仕組みとして活用されています。
依頼内容ごとの費用相場を知っておこう
ここまで、行政書士にかかる費用の基本的な仕組みや内訳についてご紹介してきました。
では実際に、「どのような業務を依頼した場合に、どれくらいの費用がかかるのか?」について、代表的な業務ごとの報酬相場をお伝えします。
報酬額はあくまで目安であり、地域・事務所・業務範囲によって変動がありますが、相場感を把握しておくことで、見積もりの妥当性を判断する材料になります。
* 業務範囲や難易度によっては相場感を大きく上回る(下回る)場合もございますので参考としてお考え下さい。
開業・許認可申請(古物商・ペット・民泊など)
- 古物商許可申請:30,000〜80,000円
- 第一種動物取扱業の登録(ペット関連):50,000〜80,000円
- 民泊(住宅宿泊事業)の届出:50,000〜100,000円
※別途、印紙代や証紙代などの法定費用が発生します。
建設業関連(建設業許可・経審・各種届出)
- 新規の建設業許可申請:150,000〜250,000円
- 許可更新:50,000〜100,000円
- 決算変更届:30,000〜50,000円
- 経営事項審査(経審):150,000〜250,000円(サポート内容により変動)
※経審対策を含む場合は別途サポート料金が必要なケースもあります。
国際業務(在留資格・ビザ・帰化など)
- 在留資格認定証明書交付申請(いわゆるビザ申請):100,000〜200,000円
- 帰化申請サポート:150,000〜300,000円
※翻訳対応や面接対策、追加資料の収集の有無によって変動します。
飲食・風俗営業関連
- 飲食店営業許可:30,000〜70,000円
- 深夜酒類提供飲食店の届出:50,000〜100,000円
- 風俗営業許可申請:150,000〜300,000円
※風俗営業許可は業種によって要件が複雑で、図面作成等に追加費用が発生する場合もあります。
相続・遺言関連
- 遺言書作成支援:50,000〜100,000円
- 遺産分割協議書の作成:50,000〜150,000円
- 相続人調査・戸籍収集:30,000〜80,000円
※公正証書遺言の場合は、公証役場への手数料が別途必要です。
離婚協議・公正証書作成など
- 離婚協議書の作成:50,000〜120,000円
- 養育費合意書の作成:40,000〜80,000円
- 公正証書作成支援:50,000〜100,000円
※感情的な配慮や面談回数の増加により、費用が増加することもあります。
農地・土地関連(農地転用・開発許可など)
- 農地転用許可申請(4条・5条):80,000〜150,000円
- 農地法3条許可申請:60,000〜120,000円
- 開発許可申請:200,000〜500,000円以上(案件規模・立地条件により大きく異なる)
※農地関係は現地調査や役所との協議が多いため、追加費用の発生も想定しておくと安心です。
まとめ
行政書士に支払う費用は、「報酬」「法定費用」「その他の実費」の3つで構成されており、手続きの内容や難易度、地域の相場などによって大きく変わってきます。
「すべて込みの金額」ではないことや、事務所ごとに料金体系が異なる点を正しく理解しておくことが、安心して依頼する第一歩です。
依頼前には、報酬額だけでなく「どこまで対応してもらえるのか」「法定費用や実費が別途かかるのか」など、具体的な見積もりやサービス内容をしっかり確認しましょう。
行政手続きに不慣れな方や、申請ミスを避けたい方にとって、行政書士は心強いパートナーです。費用の仕組みを理解し、ご自身に合った依頼先を見つけてください。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)