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建設業「とび・土工・コンクリート工事業」とは
「とび・土工・コンクリート工事業」は、建設現場で足場や鉄骨の組立て、くい打ち、掘削・盛土などを行い、建物や構造物の土台づくりを担う重要な工事業種です。現場の安全性や精度に直結するため、高い技術力と正確な施工管理が求められます。そのため、一定規模以上(500万円以上)の工事を請け負う場合には建設業許可が必要となります。
とび・土工・コンクリート工事の具体例
具体的には以下のような工事が「とび・土工・コンクリート工事業」に該当します。
- ビル建設に伴う足場の組立て・解体
- コンクリート杭・鋼管杭のくい打ち・くい抜き
- 重機を使用した土地の掘削や整地
- 盛土、埋戻し、土砂の運搬
- 土留め工事や山留め工事
これらの工事は、建設業許可を持つ「とび・土工・コンクリート工事業者」が請け負える業務です。
他工事業種との違い
似ている業種として「土木一式工事業」や「解体工事業」がありますが、扱う範囲や許可区分は異なります。
- 土木一式工事業:道路・橋梁などの大規模インフラ工事が中心
- 解体工事業:建物の解体に特化した業種
一方、「とび・土工・コンクリート工事業」は、足場組立てや簡易な造成、くい打ちなどに特化しており、工事の種類ごとに許可範囲と請負可能な業務が明確に区分されています。
とび・土工・コンクリート工事業で建設業許可が必要なケース
とび・土工・コンクリート工事業で建設業許可が必要となる条件や、無許可営業によるリスクについてご紹介します。
許可が必要となる金額・工事規模
建設業法では、請負金額(材料費を含む)が500万円以上(税込)の工事を請け負う場合、原則として建設業許可が必要です。これは足場の組立てや解体、くい打ち、掘削などの工事でも同様で、金額が基準を超える場合は必ず許可を取得しなければなりません。
また、500万円未満の工事でも、元請が「許可業者であること」を条件とする場合があります。事業拡大や安定的な受注、取引先からの信頼確保のためにも、建設業許可を取得することがおすすめです。
無許可営業によるリスクと罰則
「発覚しなければ問題ない」と考えるのは非常に危険です。建設業法違反が確認されると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)といった刑事罰が科され、法人の場合は1億円以下の罰金となることもありますので必ず無許可営業を知らず知らずのうちにしないようにいたしましょう。
とび・土工・コンクリートの建設業許可取得要件とは
とび・土工・コンクリート工事で建設業許可を取得するには、法律で定められた複数の条件を満たす必要があります。ここでは、申請前に必ず確認すべき「経営業務管理責任者」「専任技術者」「財産的基礎」「欠格要件」の4つのポイントを解説します。
経営業務管理責任者(経管)の要件
2020年の法改正により、許可要件は「経営業務の管理責任体制を備えていること」へと変更されました。経営業務管理責任者は、役員などとして5年以上の建設業経営経験がある人物を配置する必要があります。旧来の「業種ごとに5年/6年」という区分は現行制度では適用されません。
専任技術者の要件
営業所ごとに、該当工事に関する資格または実務経験を持つ専任技術者を配置します。例として、
- 1級・2級土木施工管理技士
- 建設機械施工管理技士
- 1級とび技能士(2級は合格後3年以上の実務経験が必要)
他にも型枠施工、コンクリート圧送、ウェルポイント等の技能士資格が該当する場合があります。専任技術者は原則としてその営業所に常勤し、他社との兼任はできません。
財産的基礎の要件
財産的基礎は、自己資本500万円以上、または同額以上の資金調達能力、もしくは直近5年間の継続的な営業実績のいずれかを満たす必要があります。証明書類の不備や赤字決算などで基準を下回る場合は不許可となります。
欠格要件の確認
役員や主要株主、支店長などが建設業法で定める欠格事由に該当していないかを確認します。欠格要件として、過去の建設業法違反による処分や禁錮以上の刑歴、重大な納税義務違反などがある場合は許可が下りません。更新時にも同様の確認が行われます。申請前に関係者全員の経歴や状況をチェックしておくことが大切です。
とび・土工・コンクリートの建設業許可申請方法
とび・土工・コンクリート工事で建設業許可を取得するには、事前準備から申請、審査、許可証交付まで、一定の流れに沿って手続きを進める必要があります。ここでは、行政書士の視点から、申請のステップや必要書類、提出方法、審査期間までをわかりやすく解説します。
申請の基本的な流れ
- 事前確認:経営業務管理責任者・専任技術者・財産要件・欠格要件を満たしているか確認する
- 必要書類の収集・作成:決算書、登記簿謄本、住民票、身分証明書、資格証明書などを準備する
- 申請書類の作成・提出:事業所所在地を管轄する都道府県の建設業担当窓口へ申請する
- 審査・補正対応:提出後、不備があれば修正・補正を行う
- 許可証の交付:審査通過後に許可証が交付され、正式に営業可能となる
必要書類の例
- 登記簿謄本(法人)または住民票(個人)
- 決算報告書や残高証明(財産的基礎の証明)
- 身分証明書、登記されていないことの証明書(欠格要件の確認)
- 経営業務管理責任者の経験証明資料
- 専任技術者の資格証または実務経験証明資料
提出書類の不足や記載ミスは審査遅延や不許可の原因になるため、事前のチェックが重要です。
申請先と提出方法
申請先は、事業所所在地を管轄する都道府県の建設業担当課です。窓口提出が基本ですが、一部自治体では予約制や郵送申請に対応している場合もあります。必要部数、印紙代、製本方法などは事前確認を行いましょう。
審査期間と許可証交付
審査期間は通常1〜2か月程度ですが、不備や補正があれば延びる可能性があります。許可証が交付されたら、許可番号を記載した看板の掲示や建設業者名簿への登録を行い、正式に営業を開始します。
更新も必須!とび・土工・コンクリートの建設業許可更新方法
建設業許可は一度取得すれば永久に有効ではなく、5年ごとに更新手続きが必要です。更新を怠ると無許可状態となり、工事を請け負えなくなるため、継続して事業を行う場合は計画的な準備が欠かせません。ここでは、更新時期、必要書類、注意すべきポイントを整理します。
更新時期と必要書類
有効期限満了日の30日前までに更新申請を提出します。ギリギリでは不備対応が間に合わない恐れがあるため、余裕をもって着手しましょう。
更新時に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 更新申請書(都道府県指定様式)
- 直近の決算変更届(未提出の場合は同時提出)
- 役員・経営業務管理責任者の身分証明書、登記されていないことの証明書
- 専任技術者の資格証明書または実務経験証明
- 法人税・消費税などの納税証明書
手数料は知事許可・大臣許可ともに1区分5万円です(複数区分の場合は区分ごとに必要)。
更新手続きの注意点
- 決算変更届が未提出だと更新できないため、必ず事前に提出する。
- 役員構成や住所など許可内容に変更があった場合は、更新前に変更届を済ませる。
- 更新申請中であっても有効期限を過ぎれば許可は失効するため、期限管理を徹底する。
期限切れで許可が失効すると、再取得には大きな手間と費用がかかります。更新手続きは少なくとも期限の半年前から準備を始めることが安全です。
建設業許可が下りない主な理由とは(とび・土工・コンクリート)
「書類も揃えたし、条件も確認したはずなのに許可が下りなかった…」というご相談は少なくありません。実際、建設業許可が不許可になる原因はある程度パターン化されており、事前対策で回避できるケースも多いです。ここでは、とび・土工・コンクリート工事業の許可申請でよくある不許可理由と、そのポイントをお伝えいたします。
① 書類不備や要件未達
最も多いのは、提出書類の不備や要件を満たしていないケースです。 添付資料の不足、記載漏れ、誤記、押印漏れなど、わずかなミスでも補正対象となり、訂正が間に合わなければ不許可につながります。 また、経営業務管理責任者の経験年数不足や、実務経験証明の内容が不明確な場合も要件未達と判断されます。申請前にチェックリストを活用し、要件に合った証拠資料を確実に用意しましょう。
② 経営業務管理責任者・専任技術者の条件不足
この業種で許可を取るには、経営業務管理責任者(経管)と専任技術者の配置が必須です。 不許可となる主な例は以下の通りです。
- 経験証明が客観的資料として認められない
- 専任技術者の資格証や実務経験証明が不足している
- 専任技術者が他社と兼務しており常勤要件を満たさない
③ 財務基準・事業所要件の未達
財産的基礎(自己資本500万円以上など)や事務所環境も審査対象です。以下のような場合は不許可となる可能性があります。
- 資金調達能力を示す書類が提出できない
- 事務所が存在しない、または他業種と混在して専用スペースと認められない
こうした理由で不許可になると、改善や再申請に時間と費用がかかります。そのため、申請前に要件を丁寧に確認し、必要な証拠資料を揃えるのをおすすめします。
まとめ
とび・土工・コンクリート工事で500万円以上の工事を請け負うなら建設業許可が必要です。許可取得には経管・専任技術者・財務基準などの条件を満たし、正確な申請が重要です。更新も忘れず行い、無許可営業を防ぐことが事業継続には必須です。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)