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在留資格「経営・管理」とは
在留資格「経営・管理」は、日本で会社を経営したり、事業の管理業務を行う外国人が取得できる在留資格です。通称「経営管理ビザ」とも呼ばれ、日本で新たに会社を設立する予定の方や、外国人経営者を受け入れたい企業にとって欠かせないビザといえます。
ただし、名称のとおりすべての事業活動が許可されるわけではありません。ここでは、このビザで認められる活動内容と対象事業についてお伝えいたします。
許可される活動とは?
経営管理ビザでは、会社の経営や経営者に代わって行う管理業務が認められます。
具体的には、会社の設立・運営、経営方針の決定、資金管理、業務改善、スタッフのマネジメントなどが該当します。一方で、自ら現場での作業や技術提供はできず、経営や管理に専念する必要があります。
対象となる事業の例
対象となる業種は幅広く、飲食店経営、輸出入、ITサービス、貿易、宿泊業など幅広い業種が対象です。ただし、名義貸しやペーパーカンパニーのように実態のない形態は不許可となり、実際に事業を行う拠点(事務所や店舗)が必要です。
また、事業計画の実現性や資本金の額も審査対象となります。特に新規設立の場合は、収益性や具体的な運営計画を説明できる準備を整えておくことが重要です。
経営管理ビザの在留期間と種類とは
経営管理ビザを取得した後は、「どのくらい日本に滞在できるのか」「更新の際にどんな点に注意すべきか」が重要なポイントになります。実務では、在留期間の種類によって更新審査の着眼点が変わるため、この仕組みを理解しておくことが大切です。ここでは、在留期間の種類と更新時の基本、そして近年利用が増えている「4ヶ月ビザ」の特徴について解説します。
在留期間の種類と更新について
経営管理ビザの在留期間は4ヶ月・1年・3年・5年の4種類です。初回は1年が多いですが、場合によっては4ヶ月の短期許可となることもあります。この4ヶ月許可は、事業開始の進捗を確認する暫定措置と考えるとよいでしょう。更新時に重視されるのは「事業の継続性と安定性」です。単に売上があるだけでは不十分で、オフィスの継続利用、従業員の適切な管理、事業計画通りの運営状況などを説明できる準備が必要です。
よくあるトラブルとして、事務所移転の未届出や売上・取引の不明確さが挙げられます。更新の際は、帳簿や契約書、雇用状況を証明する書類を整理しておくことが重要です。
4ヶ月ビザの特徴と活用ポイント
近年は「4ヶ月の経営管理ビザ」で短期許可を取得し、その間に事業の実態を整えて1年・3年への更新を目指す方法が増えています。特に、事務所契約や設備投資が間に合わない場合に有効です。4ヶ月からの更新時には、準備や改善の進捗を具体的に示す必要があるため、日々の記録を残しておくことをおすすめします。
経営管理ビザの取得要件とは
経営管理ビザは「会社を作れば必ず取れる」ものではなく、法務省・入管局が定める要件を満たす必要があります。実務の現場では「資本金は用意したのに事務所が基準を満たさず不許可になった」「事業計画が不十分で追加資料を求められた」といったケースも少なくありません。
ここでは、新規事業での取得要件、既存事業への参画(管理者)での取得要件、事業所確保の条件、資本金基準についてお伝えいたします。
新規事業での取得要件
新たに会社を立ち上げて申請する場合、最大のポイントは「日本で継続的かつ安定的に経営できる実態を伴った計画であること」です。具体的には、次の条件を満たす必要があります。
- 日本国内で事業所(オフィスや店舗)を確保していること
- 事業を継続的に運営できる具体的な事業計画があること
既存事業参画(管理者)での取得要件
すでにある会社に管理者として参画する場合は、その会社が健全に運営されていることが前提です。さらに以下の条件を示す必要があります。
- 過去の税務申告・納税を適切に行っていること
- 社会保険・雇用保険を適正に支払っていること
- 管理職としての報酬額が生活可能水準であること
代表取締役である必要はありませんが、経営判断に関わる立場であることが重要です。
事業所の確保と事業計画
申請で最もトラブルが多いのが事業所の確保です。来客対応が可能か、事務機器が設置されているか、賃貸契約書の使用目的に「事務所・店舗」と明記されているかなどが確認されます。また、事業計画書は売上予測だけでなく、「集客・販売方法」「人材活用計画」「キャッシュフロー計画」などを具体的に記載することが求められます。
資本金・投資額の基準
原則として資本金または投資額が500万円以上であることが必要です。2025年8月時点では3,000万円への引き上げ案が検討中のため最新情報の確認が必須です。見せ金のように入金後すぐ引き出す行為は認められず、資金の流れが不明確な場合も不許可となります。通帳コピー、入金証明、資金移動履歴などで資金の実在性を証明できるよう準備しましょう。
経営管理ビザの申請方法と流れ
経営管理ビザは、単に事業を立ち上げただけでは取得できず、入管局が求める条件や書類を満たす必要があります。特に「どこから手をつければよいかわからない」という声も多く、申請前の計画と準備が許可の成否を左右します。ここでは、申請をスムーズに進めるための事前準備から申請後の流れまでを、実務目線でわかりやすく解説します。
申請前の準備と専門家への相談
まずは、自分が申請条件を満たしているかを確認しましょう。主なチェックポイントは以下のとおりです。
- 資本金基準を満たしているか
- 日本国内で事務所を確保しているか
- 具体性のある事業計画が作成されているか
必要書類の準備ポイント
経営管理ビザの申請では、求められる書類を正確かつ漏れなく揃えることが不可欠です。主な提出書類は以下です。
- 在留資格変更許可申請書 または 在留資格認定証明書交付申請書
- 事業計画書(売上計画・運営計画・収支計画を含む)
- 資本金の払込証明書(通帳コピーなど)
- 事務所の賃貸借契約書と内部写真
- 登記事項証明書
- 納税証明書(必要に応じて)
案件によっては役員報酬計算書や雇用予定者の情報も必要です。記載内容に不一致があると追加資料を求められるため、事前に整合性を確認しましょう。
申請から許可までの流れ
必要書類を揃えたら、管轄の出入国在留管理局に申請します。審査期間は通常1ヶ月半〜3ヶ月程度で、途中で追加資料の提出を求められることもあります。こうした要請に迅速に対応できるよう、申請後も準備を続けておくと安心です。
許可が下りると在留カードが交付され、正式に「経営・管理」の在留資格で日本での事業運営が可能になります。許可後は速やかに事業を開始し、在留期間中も要件を満たし続けることが重要です。
経営管理ビザ申請の注意点
経営管理ビザは、会社を設立すれば自動的に取得できるものではありません。実際には審査で不許可となるケースも多く、事前に「どこでつまずきやすいのか」を把握しておくことが重要です。ここでは、申請前に確認しておきたい注意点を整理します。
よくある不許可理由
不許可事例で多く見られるのは、次のようなケースです。
- 事業実態の不足:バーチャルオフィスや家具のない事務所など、事業を行っていると認められない状態
- 資金管理の不備:資本金500万円以上を用意していても、すぐに引き出して残高が減少している、または資金の流れが不明確な場合
- 事業計画の不十分さ:売上の根拠が曖昧、集客方法や人材配置が未定など、実現性に乏しい計画
- 常勤職員の不在:近年、常勤職員の配置が審査の重要なポイントとなる傾向
単に「店舗を開く」だけでなく、売上の立て方や収益計画の現実性、人材の活用方法まで説明できる計画が必要となってきます。
不許可となった場合の対応方法
不許可になっても、理由を分析し改善すれば再申請は可能です。改善の方向性としては、例えば以下が挙げられます。
- 事務所契約の形態や設備を基準に合うものへ変更する
- 事業計画を具体的な数値や契約書を交えて再構築する
- 資金の出所や使用計画を通帳コピーや資金移動記録で明確化する
再申請では、「不許可理由にどう対処したか」を具体的に示し、改善内容を裏付ける書類を必ず添付します。前回と同じ内容では再び不許可になる可能性が高くなります。行政書士などの専門家と相談しながら内容を見直すのがおすすめです。
経営管理ビザの更新・再申請
経営管理ビザは取得して終わりではなく、在留期間ごとに更新と適切な事業管理を行う必要があります。「更新の審査は厳しいって本当?」「不許可になったらどうすればいい?」と不安に感じる方も多いですが、更新の仕組みや注意点を理解し、事前に準備すればスムーズに手続きを進められます。
ここでは、更新・再申請の流れと注意点を実務の視点で整理して解説します。
更新申請の流れ
経営管理ビザの更新は、在留期限の3ヶ月前から申請可能です。申請時には次のような書類が必要となります。
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- 更新許可申請書
- パスポート・在留カード
- 直近の決算報告書または月次収支計算書
- 事業活動状況説明書
- 事務所の賃貸契約書の写し
- 納税証明書(法人・個人)
- 社会保険・雇用保険の加入状況証明書
更新で注意するポイント
更新で最も避けたいのは「事業実態が不十分」と判断されることです。税務申告の未実施、社会保険未加入、事務所移転の未届出などがあると、審査が止まる可能性があります。また、決算が赤字であっても、その理由や改善計画を具体的に説明できれば許可されるケースは多いですのでご安心ください。一方で役員の変更や代表取締役の交代などがあった場合も必ず届出を行いましょう。こうした管理の不備は、不許可のリスクを高めます。
再申請時の注意点
更新や初回申請で不許可になっても、改善すれば再申請は可能です。このとき大切なのは「不許可理由への具体的な改善策」を明確に示すことです。たとえば、事務所が要件を満たしていなかった場合は基準に適合した物件へ移転する、収支計画の根拠が弱かった場合は契約書や見積書を添えて計画を補強するなど、改善内容を裏付ける資料を必ず添付します。
前回とほぼ同じ内容で再提出すると、再び不許可になる可能性がとても高いため、行政書士等と相談しながら計画を見直すことをおすすめします。
まとめ
経営管理ビザの取得・更新には、適切な事業の継続、具体的な事業計画、適正な資本金の管理が重要です。事前準備がとても重要になってくるため、行政書士に依頼することで、経営管理ビザのスムーズかつ確度の高い許可・更新が可能です。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)