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外国籍のパートナーと結婚した後、日本または相手国で一緒に暮らすためには、それぞれの国の制度に沿ったビザ取得が不可欠です。本記事では、代表的な在留資格や申請方法をわかりやすくご紹介します。
国際結婚とは
国際結婚とは、国籍の異なる方同士で婚姻関係を結ぶことを指します。法務省の統計によれば、2022年に日本で成立した婚姻のうち、約4.3%が国際結婚であり、年間およそ14,000組が該当します(出典:法務省・厚生労働省統計)。これは近年の国際的な人の移動や、多文化共生の進展を背景に増加傾向にあるとされています。
ただし、国際結婚は単なる「結婚届」の提出にとどまらず、両国の法律や制度に則った手続きが必要になる点が、同じ国籍の方同士の婚姻とは大きく異なります。婚姻の法的有効性を確保するためには、日本側だけでなく、外国側の法制度も確認し、適切な手続きを踏む必要があります。
国際結婚の手続き
国際結婚の手続きは、どちらの国で婚姻届を出すかによって流れが異なりますが、基本的には次の2つのパターンに分かれます。
1. 日本で婚姻届を提出する場合
日本で婚姻を成立させるためには、以下の手続きが一般的です。
- 日本人配偶者が本籍地または住所地の市区町村役場に婚姻届を提出
- 外国人配偶者の母国で発行された「婚姻要件具備証明書」などを添付
- 必要に応じて、外国語の書類は日本語訳を添付(翻訳者の署名が必要)
婚姻届が受理されると、日本側では正式な婚姻とみなされます。
2. 相手国で婚姻を成立させた後、日本で届出をする場合
外国で婚姻を成立させた場合には、その婚姻が日本法上も有効であることを証明する書類(婚姻証明書など)を取得し、日本の市区町村役場に「婚姻届出」を提出します。受理されれば、日本でも有効な婚姻と認められます。
このように、国際結婚では双方の国の法制度をまたいだ対応が求められるため、事前に相手国の婚姻要件や書類の取得方法を調べておくことが重要です。
なお、国によっては日本人が婚姻する際に特別な許可や宣誓が必要なケースもあるため、領事館などに相談しておくと安心です。
国際結婚した外国人配偶者のビザの種類
国際結婚をした後、日本で一緒に暮らすためには、外国人配偶者が適切な在留資格(ビザ)を取得する必要があります。取得すべきビザの種類は、ビザを取得したい方の結婚相手が日本人か、もしくは日本で暮らす外国籍の方であればその在留資格によって異なります。ここでは、それぞれのケースに応じた代表的なビザを紹介します。
日本国籍の方が国際結婚した場合の外国人配偶者のビザ
日本人の配偶者等
日本人と結婚した外国人が日本に在留する場合、最も基本となるのが「日本人の配偶者等」という在留資格です。
この在留資格では、就労制限がなく、比較的自由に仕事をすることができるという特徴があります。飲食店勤務から事務職、自営業まで、幅広い職業に就くことが可能です。在留期間は6か月、1年、3年、または5年で更新申請が可能です。
日本在住の外国籍の方が国際結婚した場合の外国人配偶者のビザ
永住者の配偶者等
配偶者が「永住者」の在留資格を持っている場合、外国人配偶者は「永住者の配偶者等」の在留資格を申請できます。
このビザも「日本人の配偶者等」と同様に就労制限がなく、幅広い活動が可能で、在留期間は6か月、1年、3年、または5年です。審査においては婚姻の信ぴょう性や生活基盤の安定性が重要になります。
定住者
「定住者」の在留資格は、法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して日本での居住を認めるものです。この資格は、日系三世や中国残留邦人、第三国定住難民など、特別な事情を有する方々が対象となります。
この「定住者」の在留資格を持つ方と結婚する場合、その配偶者も「定住者」の在留資格を申請することができます。なお、このビザも就労制限はなく、在留期間は5年、3年、1年、6か月、または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)となります。
家族滞在ビザ
就労ビザなどで在留する外国人と結婚した場合、外国人配偶者は「家族滞在」のビザを申請することができます。
このビザは基本的に就労が制限されているため、働く場合は別途「資格外活動許可」を得る必要があります。扶養される方を前提としたビザであるため、扶養する方に安定した収入があることが前提となります。また、在留期間は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)となります。
外国人配偶者のビザを申請する際の注意点
外国人配偶者のビザ申請にあたってよくある注意点を以下にまとめましたので、申請を検討されている方はぜひ参考にしてください。
1. 結婚の信ぴょう性が重視される
もっとも重要なのは、「婚姻関係が真実であるかどうか」です。偽装結婚の疑いを避けるため、交際の経緯や日常の様子を示す証拠(写真・メッセージ履歴・会話記録など)を添付することが推奨されます。
交際期間が極端に短い場合や、年齢差が大きい、経済状況に大きな開きがあるような場合は、より詳細な説明や証拠が求められることもあります。虚偽や矛盾のある内容は審査上マイナス要素となるため、正確かつ一貫した情報の準備が大切です。
2. 経済的基盤の安定性が問われる
外国人配偶者を日本に受け入れるにあたって、安定した収入や生活基盤があるかどうかも審査のポイントです。
収入が少ない場合でも、一定の貯蓄がある、または第三者(親族等)からの支援が見込まれる場合は、その旨を資料として提出することで補完可能です。特に、受け入れる側の日本人または外国人永住者等が無職・非正規雇用の場合は、補足資料を丁寧に揃える必要があります。
3. 同居の実態が求められることもある
外国人配偶者が日本でビザを取得する前提として、実際に夫婦として同居して生活を共にする意思と実態があることが必要です。たとえば、住民票上の同居の有無、生活費の共有、連絡の頻度などが判断材料となります。
単身赴任や海外勤務などで同居が難しい場合は、その理由を明確に説明し、関係性が継続している証拠の提出が求められることがあります。
外国人配偶者のビザ申請の必要書類
外国人配偶者が日本で生活するために在留資格(ビザ)を取得する際、ビザを取得する本人が海外にいるのか、それともすでに日本に滞在しているのかによって必要な書類は異なります。ここでは、それぞれのケースに分けて、基本的な必要書類を紹介します。
外国人配偶者が海外に住んでいる場合
この場合は「在留資格認定証明書交付申請(COE)」を行い、その証明書を使って現地の日本大使館や領事館でビザ申請を行う流れになります。
必要書類の例
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 日本人配偶者の戸籍謄本(日本国籍者と外国人配偶者の結婚の場合。婚姻の事実が記載されているもの)
- 婚姻届受理証明書(外国籍者同士の結婚の場合)
- 日本に住む配偶者の住民票(世帯全員分)
- 質問書(交際・結婚の経緯などを記載)
- 身元保証書(日本に住む配偶者が保証人になる)
- 日本に住む配偶者の職業証明書(在職証明書や営業許可証など)
- 日本に住む配偶者の住民税の課税証明書・納税証明書(直近1年分)
- 日本での住居を証明する書類(賃貸契約書など)
- 外国人配偶者のパスポートの写し
- 外国人配偶者の出生証明書(国によって必要)
- 外国人配偶者の国籍国の結婚証明書
- 交際の証拠資料(写真、SNSやメールのやり取り)
外国人配偶者がすでに日本に住んでいる場合
このケースでは、外国人配偶者はすでに何らかの在留資格を持っていることが前提になるため、在留資格の「変更申請」が行われます(たとえば、就労ビザ→日本人の配偶者等など)。
必要書類の例
- 在留資格変更許可申請書
- 日本人配偶者の戸籍謄本(日本国籍者と外国人配偶者の結婚の場合。婚姻の事実が記載されているもの)
- 婚姻届受理証明書(外国籍者同士の結婚の場合)
- 日本に住む配偶者の住民票(世帯全員分)
- 質問書(交際・結婚の経緯などを記載)
- 身元保証書(日本に住む配偶者が保証人になる)
- 住民税の課税証明書・納税証明書(直近1年分)
- 外国人配偶者のパスポートおよび在留カードの写し
- 外国人配偶者の国籍国の結婚証明書
- 交際の証拠資料(写真、SNSやメールのやり取り)
外国人配偶者のビザ申請手続きの流れ
外国人配偶者のビザ申請手続きは、「海外に住む配偶者を日本に呼ぶケース」と「すでに日本に滞在している配偶者の在留資格を変更するケース」に分かれ、それぞれ流れが異なります。どちらの手続きにおいても、結婚の信ぴょう性、生活基盤、収入状況、提出書類の正確性が審査のポイントになります。以下では、一般的な申請の流れをわかりやすく説明します。
1. 外国に住む外国人配偶者を日本に呼ぶ場合
日本人もしくは日本で暮らす外国人の方が結婚相手を日本に呼ぶ場合は、以下のような流れで「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
手続きの流れ
- 日本人配偶者が、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書交付申請」を行う
- 書類審査(約1〜3か月)
- 認定証明書が交付されたら、外国人配偶者に原本を郵送
- 外国人配偶者が、現地の日本大使館または総領事館でビザを申請
- ビザが発給されたら日本へ入国
2. すでに日本にいる外国人配偶者の在留資格変更手続き
留学ビザや就労ビザ等で日本に滞在している間に結婚した外国人の方が配偶者のビザに切り替える場合は、以下のような流れで「在留資格変更許可申請」を行います。
手続きの流れ
- 外国人配偶者本人が、地方出入国在留管理局にて「在留資格変更許可申請」を提出
- 書類審査(1〜3か月程度)
- 審査完了後、結果通知(許可されれば新しい在留カードが交付)
日本人が国際結婚をして相手国に住む場合のビザ
ここまでは国際結婚したカップルが日本で生活をする場合のビザについて説明してきましたが、国際結婚をした日本人が配偶者の母国で生活を始める場合にも、当然ながらその国の「滞在許可」や「配偶者ビザ」の取得が必要になります。各国によって制度や申請条件は異なるため、事前に正確な情報を確認し、しっかり準備することが大切です。
ここでは、日本人が国際結婚をする相手国の上位7か国を例に、配偶者のビザに関する基本情報を紹介します。
韓国
韓国では「配偶者(F-6)ビザ」が基本となります。韓国人と正式に婚姻した後、必要書類を準備して出入国管理事務所に申請します。滞在期間は1〜3年が一般的で、同居実態・収入証明・言語能力(TOPIK)なども審査対象になります。
中国
中国では「私的事由による居留許可(家族滞在)」を取得する形になります。婚姻証明書(中国語訳付き)や経済保証、住宅の提供証明などが必要です。短期ビザ(Q2)で入国後、居留許可に切り替えるのが一般的です。なお、居留許可の期限は一般的には6か月~1年となります。
フィリピン
フィリピンでは「13aビザ(外国人配偶者用)」が取得可能です。申請条件としては、婚姻登録が現地で済んでいること、収入証明や犯罪歴のないことなどが挙げられます。最初は1年間の仮ビザが発給され、その後更新により永住が可能になります。
タイ
タイでは「Oビザ(非移民配偶者ビザ)」が該当します。年間収入または預金残高に関する要件があり、タイでの居住住所証明や結婚証明の翻訳書なども必要です。1年ごとの更新制で、毎年更新時に同様の証明が求められます。
アメリカ
アメリカでは、配偶者ビザ(CR-1/IR-1)または婚約者ビザ(K-1)があります。申請は米国移民局(USCIS)を通じて行い、審査には数か月以上かかることが一般的です。
CR-1とIR-1はすでにアメリカ人と結婚している配偶者が対象となりますが、婚姻期間によって分けられています。婚姻期間が2年未満の方はCR-1の対象となり、このビザは2年間の有効期限があります。一方、婚姻期間が2年以上の方はIR-1の対象となり、こちらは有効期限が10年間となっています。
また、婚約者ビザと呼ばれるK-1は有効期限が90日で、この有効期限内にアメリカで結婚の手続きを行うことを前提としたビザです。
イギリス
イギリスでは「Spouse visa(配偶者ビザ)」が必要です。年収要件(£18,600以上)や英語力の証明(A1以上の英語試験)が条件となり、2年半ごとに更新が必要です。配偶者ビザでの滞在期間が5年を超えると永住権申請が可能となります。
ブラジル
ブラジルでは「家族呼び寄せビザ(VITEM XI)」が取得可能です。結婚証明書、配偶者の身元保証書、収入証明などが求められます。ビザの有効期限は1年で、ビザ取得後に現地でCPF(納税者番号)の取得なども必要になります。
まとめ
国際結婚は、異なる文化や価値観を越えて新たな人生を共に歩む素晴らしい選択ですが、それと同時に法律や制度の壁をしっかりとクリアする必要がある重要な手続きでもあります。特に外国人配偶者が日本に住む、あるいは日本人が相手国で生活を始める場合、在留資格(ビザ)の取得は避けて通れないポイントです。
不安な点や手続きに迷いがある場合は、行政書士などの専門家に相談することで、申請がスムーズに進むだけでなく、後々のトラブルを防ぐ手助けにもなります。制度を正しく理解し、パートナーとの新しい人生を安心してスタートさせましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)