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配達証明郵便と内容証明郵便、どう使い分ければいいの?その違いを明確にしつつ、それぞれのメリットや併用時の強力な効果、具体的な活用シーンまで、実務に役立つ情報をわかりやすくお届けします。
配達証明郵便とは
配達証明郵便とは、郵便物が確かに相手に届けられたことを郵便局が証明してくれる郵送方法です。書留郵便の一種であり、主に重要な書類や通知、契約関係の文書など、送達の証拠を残しておきたい場面で利用されます。
この郵送方法では、郵便局員が相手に直接郵便物を手渡しし、受取人から署名または押印をもらう形で配達が完了します。この配達記録が郵便局に保存され、差出人には後日「配達証明書」というハガキが送付される仕組みです。これにより、後にトラブルになった際に「確かにこの日、この相手に届いている」という証明ができる点が最大のメリットです。また、配達証明郵便は書留扱いとなるため、日本郵便の「追跡サービス」を利用して配送状況をリアルタイムで確認することもできます。
ここでは、配達証明郵便の効果や費用、利用方法について詳しく解説します。
配達証明郵便の効果
配達証明郵便を利用すると、「いつ」「誰に」配達されたかを記録に残すことができます。郵便局は配達後に「配達証明書」というハガキを発行し、差出人に郵送してくれます。この配達証明書には、受取人の住所・氏名・配達日が明記されているため、契約解除や督促、クレーム対応など、後日紛争の証拠として活用することができます。
たとえば、解約通知や契約解除通知を送る場合、内容だけでなく「届いたかどうか」が法的に重要になります。通常の郵便では届いたかどうかの証明ができませんが、配達証明郵便を使えば、相手に届いた事実を証拠として残せるため、法的な主張がしやすくなります。
費用
配達証明郵便は通常の郵便料金に加えて、書留料金と配達証明料金が必要です。2025年現在、定形郵便25g以内の場合は合計839円で利用でき、料金の内訳は以下の通りです。なお、書類の重さや速達オプションの追加などにより料金は変わりますのでご注意ください。
- 通常郵便(定形25g以内):84円
- 書留料金:435円
- 配達証明料金:320円
利用の流れ
配達証明郵便を利用する際の基本的な流れは次のとおりです。
- 書類の準備:送付する書類を封筒に封入し、差出人と宛先を記載します。
- 郵便局へ持参:最寄りの郵便局の窓口に持参し、「書留」「配達証明」のオプションを依頼します。
- 料金の支払い:通常郵便代+書留+配達証明の料金を支払います。
- 控えの受け取り:差出人には控えが交付され、相手が受け取った後には「配達証明書」が郵送で届きます。
内容証明との違い
配達証明郵便と混同されやすいのが「内容証明郵便」です。どちらも郵便局が証明を行う特別な郵送手段ですが、証明の対象がまったく異なります。
配達証明郵便が「届いた事実(受取人と受取日時)を証明する」のに対し、内容証明郵便とは、「どのような文書を相手に送ったのか」という文書の内容そのものを郵便局が証明してくれる制度です。法律的な通知や請求、警告などの重要な書面を送付する際に用いられ、特に後日のトラブルに備えるための証拠として強力な効果を発揮します。
しかしながら、内容証明郵便は通常の郵便物と同じようにポストに投函されるため、相手が受け取ったという証明をすることができず、相手に「受け取っていない」などと主張されるリスクがあります。これを回避するために有効なのが、「配達証明付き内容証明郵便」です。本項では、この配達証明付き内容証明郵便について説明します。
配達証明付き内容証明郵便とは
内容証明郵便に「配達証明オプション」を付けたものが、配達証明付き内容証明郵便です。これにより「どんな内容を」「いつ」「誰に」送ったかをすべて記録に残すことができます。法的効果や証拠力を最大限に高めたい場合は、この組み合わせが最も安心です。
費用
2025年現在の一般的な費用は以下の通りです。例えば、文書1枚で内容証明+配達証明を付けると、合計で1,274円程度かかるのが目安です。
- 通常郵便:84円(定形25g以内)
- 内容証明料金:内容1枚につき435円
- 書留料金:435円
- 配達証明料金:320円
利用の流れ
- 文書を3通作成(相手用・郵便局保管用・差出人控え)
- 郵便局窓口で内容証明と配達証明のオプションを指定
- 書類を確認後、局員が受付・記録し、手続き完了
- 差出人には内容証明書と配達証明書がそれぞれ送付される
配達証明郵便の利用シーン
配達証明郵便は「相手に確実に届いたことを証明したい」ときに非常に役立つ手段です。裁判やトラブル防止の証拠としても活用できるため、日常的な郵送とは異なる“法的な意味合い”を持つ重要な書面の送付に適しています。特に、前述の「内容証明」と組み合わせることでより法的な効力が増します。
ここでは、配達証明郵便が実際に活用される代表的なシーンをいくつかご紹介します。
契約解除・クーリングオフの通知
もっとも典型的なケースが、契約解除やクーリングオフの通知です。たとえば訪問販売や通信販売などで契約をしたあと、一定期間内であれば消費者は無条件で契約を解除できます。このような法的権利を行使する際には、「いつ」「誰に」「どのような文書を送ったか」を証拠として残すことが極めて重要なため、配達証明だけでなく内容証明と組み合わせるのが良いでしょう。
家賃滞納などに対する督促通知
賃貸借契約において、借主が家賃を滞納した場合、まずは文書で督促することが求められます。このとき口頭ではなく書面を配達証明付きで送ることで、督促の事実と送達日を明確に記録できます。将来的に契約解除や訴訟に発展した場合でも、配達証明郵便があることで「通知した事実」が証拠として機能します。
離婚や相続に関する通知書の送付
離婚協議に入る前の意思表示や、相続放棄・遺産分割の通知など、家庭内の重要な法律関係においても配達証明郵便は活用されます。とくに相手と直接連絡が取りづらい場合や、感情的な対立がある場合には、書面による通知がトラブル回避の第一歩になります。
契約違反に対する催告・通知
ビジネスの場面では、取引先との契約違反に対して警告や履行請求の書面を送ることがあります。このような場合も、配達証明郵便を利用して送付しておくことで、正式な通知を行った証拠が残ります。たとえば「納品が遅れている」「代金が未払い」といった場面で、証拠能力のある通知方法として非常に有効です。
債権の取り立て・返済請求の通知
貸付金や売掛金の返済を求める際にも、配達証明郵便は有効に活用されます。債務者に対して返済期限の督促や法的手続きに移行する旨を通知する際、送達の事実を明確にすることで、交渉や裁判における証拠として活用できます。内容証明と併用することで、より強い意思表示と法的効果を持たせることができます。
労働関係の通知
会社が従業員に対して解雇通知や退職承認通知を行う場合や、従業員側が会社に対して退職届や未払い賃金の請求を文書で通知する場合にも、配達証明郵便は使われます。後々の労使トラブルや労働審判の際に、通知の事実と送達日を立証するために有効です。
まとめ
配達証明郵便は、「確実に相手に届いたことを証明する」ための非常に重要な郵送手段です。通常の郵便とは異なり、書留+配達証明という形式を取ることで、相手に送ったという“記録”と“証拠”を残すことができ、法律的な通知や契約関係の書類を送る場面で広く活用されています。
郵便の使い方一つで結果が大きく変わることがありますので、トラブルを未然に防ぎこちらの正当性をしっかり主張するために、重要な通知・意思表示を行う際にはぜひ配達証明郵便や内容証明郵便を上手に活用しましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)