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配管工事や設備工事を手がける際、建設業許可は必須?資格がなくても取得可能?そんな疑問に答えるため、本記事では許可の基準や取得方法、無資格での申請条件を詳しく解説。管工事業の成功に向けて、確実な一歩を踏み出しましょう!
管工事とは?
管工事とは、建築物やインフラ設備において、配管や設備の設置、修繕、改修を行う工事のことを指します。建設業法において、管工事は「給排水、冷暖房、換気、ガス、消火設備などの配管・設備を設置する工事」と定義されており、専門的な知識や技術が求められる分野です。また、これらの工事は安全性や耐久性に直結するため、建設業許可が必要になるケースが多く、一定の資格要件が求められます。
建設業許可が不要なケース
管工事を行うすべてのケースで建設業許可が必要なわけではありません。以下のような場合は、許可なしでも工事を請け負うことができます。
1. 500万円(税込)未満の工事
建設業許可は「請負金額が500万円(税込)以上」の工事で必要とされます。そのため、500万円未満の小規模な工事であれば、許可がなくても施工可能です。
例:
- 住宅の給排水設備の修理(50万円程度)
- 小規模なエアコンの取り付け(30万円程度)
- ガス給湯器の交換(20万円程度)
2. 軽微な修繕やメンテナンス
「建設工事」に該当しない修繕やメンテナンス業務であれば許可は不要です。
例:
- 配管の清掃や点検
- 部品交換や簡易的な修理
- 既存設備の軽微な補修
3. 施主が自社の従業員で工事を行う場合
建設業許可は「他人から請負って工事を行う業者」に適用されます。そのため、自社の設備工事を自社の従業員が行う場合は許可は不要です。
例:
- 飲食店が自社店舗の給排水設備を社員で施工
- 工場が自社の冷却配管を社内の技術者でメンテナンス
4. 許可を持つ元請業者の下請として500万円未満の工事を請け負う場合
建設業許可を持つ元請業者の下請として、小規模な工事(500万円未満)を請け負う場合も、許可は不要です。
例:
- 許可を持つ建設会社の指示で配管工事の一部分を担当
- 消火設備工事の補助業務(スプリンクラー交換のみ)
5. 指定工事業者制度が適用される場合
自治体によっては水道やガス工事において「指定工事業者制度」があり、市町村の許可のみで施工可能な場合があります。ただし、内容によっては建設業許可が必要なこともあるため、事前に確認が必要です。
管工事の建設業許可を取得するための要件
管工事業を営むためには、建設業許可が必要となる場合があります。許可を取得するためには、以下の要件を満たすことが求められます。
1. 経営業務の管理責任者の設置
建設業許可を取得するには、経営業務の管理責任者(通称「経管」)が必要です。これは、過去に建設業の経営経験を持つ人物が該当し、以下の基準をクリアする必要があります。
- 建設業の経営経験が5年以上あること(法人の役員、個人事業主としての経験)
- 他業種を含めた経営経験が7年以上あること
2. 専任技術者の配置
工事の品質や安全性を確保するため、現場ごとに専任技術者を配置することが義務付けられています。専任技術者として認められるためには、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
- 1級または2級施工管理技士(管工事)の資格を取得している
- 10年以上の実務経験を持っている
- その他、国が認める民間の資格を保持している
3. 財務的要件
建設業許可を取得するには、一定の財務基準を満たす必要があります。
- 資本金が500万円以上あること
- 銀行の預貯金証明があること(資金力があることを証明)
4. その他の要件
- 誠実性要件:過去に重大な法令違反や不正行為がないこと。
- 適切な営業所の確保:事業所が許可基準に適合していること。
これらの要件をすべてクリアすることで、管工事の建設業許可を取得することが可能です。
国家資格を持たずに管工事の建設業許可を取得する方法
管工事業の建設業許可を取得するには、通常1級または2級の施工管理技士などの国家資格が求められます。しかし、国家資格を持たない場合でも一定の条件を満たせば許可を取得することが可能です。
1. 10年以上の実務経験を証明する
国家資格を持たない場合でも、10年以上の実務経験があれば専任技術者として認められる可能性があります。
10年の実務経験を証明する方法:
- 工事請負契約書や請求書の提出
過去に請け負った工事の契約書や請求書が証明書類として認められることがあります。
- 工事経歴書の作成
これまでの工事実績を詳細に記録し、行政機関に提出する。
- 勤務証明書の提出
過去に勤めた企業から、工事に関する業務経験を証明する書類を取得する。
この方法を用いることで、専任技術者として認められ、建設業許可の申請が可能となります。ただし、行政側の審査基準は厳しく、証明書類が不十分な場合は認められないこともあります。そのため、事前に専門家(行政書士など)に相談し、必要書類を準備することが推奨されます。
2. 民間資格を取得する
国家資格がなくても、管工事に関連する民間資格を取得することで、建設業許可の取得につなげることができます。
例:
- 給水装置工事主任技術者(水道工事関連の資格)
- 排水設備工事責任技術者(下水道関連の資格)
- 冷凍空調技士(冷暖房設備の施工技術者向け)
- 液化石油ガス設備士(ガス配管関連)
- 消防設備士(消火設備工事を行う際に役立つ資格)
これらの資格を保有していることで、実務経験が10年未満でも専任技術者としての要件を満たすことが可能とされています。ただし、具体的な取り扱いは各自治体によって異なる場合があるため、申請前に該当する自治体の建設業許可窓口や専門家に確認が必要です。
管工事の建設業許可取得までの流れ
建設業許可を取得するには、一定の手続きと審査を経る必要があります。許可の取得にはどれくらいの時間がかかるのか詳しく解説していきます。
建設業許可取得に必要な期間
管工事業の建設業許可を取得するための期間は、申請準備から実際の許可が下りるまで通常3〜6ヶ月程度かかります。具体的な流れを見てみましょう。
- 申請準備(1〜2ヶ月)
- 必要書類の収集(経営業務管理責任者や専任技術者の証明書類、財務資料など)
- 会社の法人登記手続き(新規設立の場合)
- 営業所の準備と要件確認
- 申請手続き(1〜2週間)
- 申請書類の作成および提出
- 行政機関による受理・審査開始
- 審査期間(約2〜4ヶ月)
- 各種審査(書類審査、現地調査など)
- 追加書類の提出要請があった場合の対応
- 許可通知(申請から3〜6ヶ月後)
- 許可証の発行
- 事業開始の準備
特に、申請準備に時間がかかるケースが多いため、事前に必要書類を整え、スムーズな手続きを進めることが重要です。
管工事の建設業許可取得に必要な費用
建設業許可の取得には、以下のような費用がかかります。
1. 行政への申請手数料
許可の種類 | 手数料(都道府県知事許可) | 手数料(国土交通大臣許可) |
新規許可申請 | 約9,0000円 | 約15,0000円 |
更新申請 | 約5,0000円 | 約15,0000円 |
業種追加 | 約5,0000円 | 約15,0000円 |
※各都道府県により若干の違いがあります。
2. 代行費用(行政書士などに依頼する場合)
建設業許可申請は、専門知識が必要なため、行政書士などの専門家に依頼することが一般的です。その場合、約100,000円〜300,000円程度の代行費用がかかります。
3. その他の関連費用
- 法人設立費用(新規会社設立の場合):約200,000円〜
- 営業所の賃貸費用(必要な場合):月額100,000円〜
- 保証金・資本金の準備:500万円以上の資本金が必要(預貯金証明などで代用可能)
許可取得後も、5年ごとの更新手続きが必要になります。更新費用も事前に考慮しておくことが大切です。
費用を抑えるポイント
- 自身で申請手続きを行う(ただし、ミスなく進めるには専門知識が必要)
- 既存の法人を利用する(新たに法人を設立する必要がなければ費用を抑えられる)
- 資格を持つ人材を事前に確保する(専任技術者の確保に時間がかかると、費用が増す可能性がある)
まとめ
管工事業の建設業許可は、必要な書類や条件を満たせば確実に取得することができます。しかし、資格や経験がない場合は、適切な方法で許可要件をクリアすることが重要です。また、取得後の維持管理にも注意を払い、法令遵守を徹底することが求められます。
もし申請に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することで、スムーズに手続きを進めることができます。建設業許可の取得を成功させ、管工事業を発展させていきましょう。

特定行政書士として、幅広い業界における法務支援やビジネスサポートに従事するとともに、業務指導者としても精力的に活動。企業法務や許認可手続きに関する専門知識を有し、ビジネスの実務面での支援を中心に展開しています。(登録番号:03312913)